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070 いやー、レベル5は毎回、最高に盛り上がるから、楽しみで仕方無いねぇ!

「いやー、面白かったな、今回は!」


 心の底から楽し気な口調で、アスタロト人形は続ける。


「男にナンパされまくるわ、女装趣味だと思われるわ、おまけにレベル5にもなるわで、こっちは盛り上がりまくりだったよ!」


「男にナンパされたの?」


 マリオンに問われ、果敢は目線を逸らし、気まずそうに答を返す。


「まぁ、何度か……」


「こっちの女連中に、お前の女装……大受けだったぞ!」


 楽し気な口調で、アスタロト人形は付け加える。


「ナンパされた男に、宿に連れ込まれて押し倒されたりしたら、もっと盛り上がったのになぁ!」


「幽霊共を盛り上がらせる為に、男に押し倒される趣味はねぇ!」


 果敢が語気を強めて、言葉を返した直後、足下に光る呪印が姿を現す。

 呪印から放たれた光に包まれながら、果敢はディアンドル姿から、バスローブ姿へと姿を変える。


 元通りの姿となった果敢を残し、足下の呪印は消え去る。

 バスローブ姿となっても、はだけられたままの胸には、数字の「5」だけが記された、満月のような呪印がある。


「という訳で、『勇気を出して初めての女装二十四時』は終了!」


 おどけた口調で言い放ってから、去り際の決まり文句を、アスタロト人形は口にする。


「それじゃ、また次の呪いで……といっても、レベル5の呪いは確定してるから、どうせすぐ呼び出されるんだろうけどな」


 バスローブ姿になっている、ヴィルナとマリオンを指差しつつ、アスタロト人形は続ける。


「女共は、既に準備万端って感じだし」


 レベル5の呪いが始まる前、女性陣がバスルームで身綺麗にしてから、バスローブ姿で呪いが始まるのを待つのは、毎度の事なのだ。

 それを知っているので、アスタロト人形は「準備万端」と表現したのである。


「いやー、レベル5は毎回、最高に盛り上がるから、楽しみで仕方無いねぇ!」


 そう言い残すと、アスタロト人形は、テーブルの上に現れた光る円の中に、姿を消してしまう。

 光る円も、すぐに消滅する。


「相変わらず、ふざけた奴だね」


 呆れ顔でのヴィルナの呟きに、果敢は言葉を返す。


「アスタロトの野郎、昔からふざけた奴だったらしい」


「何で知ってるの?」


 不思議そうに訊ねるマリオンに、チキータとの会話を思い出しながら、果敢は答える。


「今回戦った特級魔族が、アスタロトを『ふざけた野郎だった』と言っていたからね」


「あんなふざけた奴に支配されたら、この世界……とんでもない事になっていただろうから、倒せて良かったよ」


 ヴィルナの言葉に、果敢とマリオンが頷いて、この話題は終わる。


「レギーナが戻ってきたら、始めようか?」


 ヴィルナの問いに、果敢とマリオンが頷いた直後、バスルームの扉が開く音がする。

 そして、バスローブ姿のレギーナが、姿を現す。


 大雑把に水気を取っただけの髪は、普段のように結われてはおらず、背中の辺りまで垂れている。

 濡れた髪は照明の光を浴び、艶やかに煌めいている。


「やっぱり呪い、終わったんだ」


 ディアンドルではなく、バスローブ姿になっている果敢を見て、レギーナは続ける。


「脱衣所にあったディアンドルが、カカンの戦闘服に戻ったから、呪いが終わったんじゃないかと、思ってたんだ」


 レギーナの言う通り、果敢が脱衣所で脱ぎ捨てたディアンドルは、戦闘服に戻っていた。

 呪いの影響が終わり、本来の状態に戻ったのだ。


 果敢の左隣に、レギーナは腰かける。

 ソファーが沈み、果敢の身体はレギーナの方に傾く。


 そのせいで、レギーナの濡れた髪や肌、湿ったバスローブに、果敢は自然に触れる状態になった。

 身体からは石鹸の香り、髪からは洗髪料の鮮烈な香りがして、レギーナが女性であるのを、果敢は強く意識し、少し緊張してしまう。


「レギーナが戻って来たら、始めようって話してたんだけど、まだ髪とか濡れてるし、どうする?」


 緊張を誤魔化すように、果敢は問いかけた。


「いいよ、始めよう」


 レギーナは即答する。


「どうせこれから、他のとこも濡れるんだし」


(前は下ネタの冗談とか、言わなかったんだけど……)


 意味有り気な笑みを浮かべる、レギーナの顔を目にして、果敢は呆れながら、心の中で呟く。


(ま、そうなったのも……俺のせいか)


 そんな冗談を、レギーナが言うようになったのは、自分と身体の関係を、継続的に持つようになってからである自覚が、果敢にはあった。

 故に、レギーナを窘める気に、果敢はなれなかった。


「じゃあ、始めるよ」


 レギーナ達が頷いたので、果敢は右手の指先で、ボタンを押すかのように呪印を押す。

 すると、呪印が光を放ったかと思うと、応接セットの近くの床に、光り輝く円が現れ、アスタロト人形とルーレットを載せたテーブルが、せり上がりながら姿を現す。


 光はすぐに消え去り、アスタロト人形は楽し気な口調で、声を上げる。


「ルーレットターイムッ! お待ちかねする程に、時間が開かなかったけど、ルーレットの時間だよ!」


 おどけた風な動きと声で、アスタロト人形は続ける。


「今回は、どんな呪いを引き当てるのか、乞うご期待! 何せ呪いのラインナップが、過激な下ネタ揃いのレベル5だから、こいつは盛り上がる事、間違い無しだ!」


 アスタロトの声に混ざり、アスタロトの幽霊の近くにいるだろう、他の幽霊達の歓声が聞こえて来る。

 男女入り混じっていて、普段よりも幽霊の数は、かなり多い感じであるのが、果敢には聞いただけで分かる。


(ストリッパーやAV男優にでも、なった気分だ……)


 げんなりとした気分で、果敢は溜息を吐く。

 幽霊とはいえ、数多くの他者に見られる状態で、性的な行為をする羽目になる、レベル5の呪いが始まる前、果敢は大抵、似たような気分を味わう。


 どちらかといえば、女性達の方は堂々としている。

 女性の方は三人いて、「自分だけではない」せいか、果敢よりも精神的に楽なのだ。




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