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069 えー、長らくお楽しみ頂きました、『勇気を出して初めての女装二十四時』ですが、とうとう終わりの時を迎えましたー!

「ヨリンデとマーガレットが、学校の指導教官ねぇ……」


 意外そうな表情で、果敢は続ける。


「マーガレットはともかく、ヨリンデは大丈夫なの? あいつなら、生徒を半殺しにしかねないだろ」


 果敢の言葉に、ヴィルナが言葉を返す。


「初日に、マーガレット相手に舐めた口利いた生徒を、何人かぶちのめしたらしいけど……死なない程度に」


 ヴィルナの言葉を、マリオンが受け継ぐ。


「大丈夫だよ、大抵の怪我なら、マーガレットが治してくれるから」


「全然、大丈夫じゃない気がするんだけど……普通の学校なんだろ?」


 呆れ顔で訊ねる果敢に、ヴィルナが答える。


「普通というか、魔術教育の名門で、割と有名な学校なんだ。パトレアス総合学園っていうとこ」


「パトレアスって、聞いた事あるな。どこかの町の名前だっけ?」


「グリム大陸の南にある、港湾都市だよ」


 マリオンの返答を聞いて、果敢は思い出す。

 以前、近くの町までは、行った経験があったのだ。


「キュレーター島にも定期便が出てるから、二人共……仕事が終わったら、魔女の塔に戻る前に、カカンに会いに行くって、僕に自慢してたよ」


 マリオンは嬉しそうに、言葉を付け加える。


「まぁ、ヨリンデやマーガレットより、僕達の方が先にカカンに、会えちゃったんだけどね」


 ヨリンデとマーガレットというのは、トレイル・ブレイザーズのメンバーの、ヨリンデ・ヴァルターとマーガレット・ゲルハルトの事である。

 メンバーの中では最年少の二人であり、果敢よりも一つ年下だ。


 ボーイッシュなヨリンデは、かなり荒っぽい性格をしている。

 戦争中には、軍の年上の兵士達を相手に、魔術の指導をしていた事もある。


 その指導は、大人の軍人ですら音を上げる程に、厳しかったらしいと、果敢はヴィルナ達に聞いていた。

 故に、そんなヨリンデが、先週から一カ月だけとはいえ、学校で魔術の指導教官を務めると聞いて、驚いたのだ。


 パトレアス総合学園は名称通りに、様々なジャンルの教育を行う学園である。

 グリム大陸のエリート校では、珍しくはない事なのだが、戦闘用の魔術の教育も行っている。


 戦闘用の魔術を学んでいる、生徒達の実力を引き上げる為、パトレアス総合学園は毎年のように、魔女の塔から指導教官を招聘し、短期間の実戦講習を行っている。

 今年はヨリンデとマーガレットが、魔女の塔から派遣されたのである。


 マーガレットの方は、実力の高い魔女の中では珍しく、果敢よりも背が低い程に小柄であり、可愛らしい少女のような見た目をしている。

 トレイル・ブレイザーズの中では、戦闘能力は最低なのだが、聖魔術にも通じている為、回復系の能力は最も高い、回復やバックアップを担当する、後衛を専門とする魔女だ。


 子供の頃からの付き合いであり、親友同士であるヨリンデとマーガレットは、コンビで行動する場合が多い。

 今回の指導教官の仕事も、二人で引き受けたのである。


 ヨリンデやマーガレットの話を、三人がしているのは、レギーナの家の二階にある、広々とした部屋。

 白いシーツに覆われた、かなり大き目のベッドや、白いソファーの応接セットなどがある、白壁に覆われたゲストルーム。


 飾り気が無く、シンプルで実用的な内装なのは、レギーナの趣味だ。

 バスルームやトイレなどもあるので、この部屋で暮らす事も出来る。


 魔女の塔の長であるレギーナの元には、友人の魔女達だけでなく、部下達も頻繁に訪れ、そのまま泊まる場合も多い。

 故に、建物の二階には、四部屋のゲストルームがあるのだ。


 果敢も魔女の塔に滞在する場合、大抵はゲストルームの一室を借りる。

 魔女の塔の魔女に合わせた作りなので、ベッドなどの家具は、果敢には大き過ぎるのだが。


 夕食の後、果敢はレギーナから検査を受けたり、様々な話題について、皆と話したりした。

 その後、発動中の呪いが終わる夜中が近付いたので、果敢達はゲストルームに移動したのだ。


 レベル5に達した果敢の呪いは、発動中の「勇気を出して初めての女装二十四時」が終わらなければ、発動させる事が出来ない。

 果敢達はゲストルームで、呪いが終わるのを待っているのである。


 ゲストルームの応接セットで、果敢はテーブルを挟み、ヴィルナやマリオンと向かい合わせに座りながら、雑談を楽しんでいた。

 ヨリンデとマーガレットの話題は、その雑談の中で出て来たのだった。


 レギーナがいないのは、バスルームの中にいるから。

 バスルームの方から水音が聞えて来るのは、レギーナが身体を洗っている最中だからである。


 ゲストルームに移動してから、果敢達は順番に、バスルームで身体を洗った。

 ヴィルナとマリオンが、白いバスローブに身を包んでいるのは、身体を洗い終わった後だからだ。


 身体を洗い終えたのだが、果敢はディアンドル姿のままである。

 果敢も一応は、バスローブを着てみたのだが、バスローブは呪いのせいで、すぐにディアンドルに変わってしまったのだった。


「カカンがこっちに来た事知ったら、ヨリンデとマーガレット、悔しがるだろうねぇ」


 ヴィルナの楽し気な言葉の後、突如……果敢の足下に、満月の呪印が現れる。

 ほぼ同時に、テーブルの上に光る円が現れ、その中からアスタロト人形が姿を現す。


 光る円は、すぐに消え去り、アスタロト人形が口を開く。


「えー、長らくお楽しみ頂きました、『勇気を出して初めての女装二十四時』ですが、とうとう終わりの時を迎えましたー!」


 呪いが始まってから、二十四時間が過ぎたので、アスタロト人形は呪いを終わらせる為、姿を現したのだ。




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