表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/84

057 何を……そんな馬鹿な事を! 魔族が聖堂にいる訳がないでしょう!

まずいな……出来れば、余り人目につきたくは、無かったんだが)


 果敢は一度、身を隠すべきかどうか迷う。


(いや、アウラ・マーカーの効果は、そんなに長くはもたない。早く連中を、探さなきゃならないんだ)


 果敢は身を隠さず、このまま魔族達とゴッドフリートの追跡を、続ける事にする。

 空中停止したまま、果敢は目を閉じて、アウラを探る。


(分散していない……集まってる感じだ)


 目を開くと、果敢はアウラを感じる方向に目をやる。

 すると、町の中心部近くにある、古びた感じの大きな建物が、果敢の目に留まる。


 二本の尖塔に挟まれた、大きなホールのような、白い建物だ。

 尖塔の上には、円の中に十字が収められた、グリム聖教の紋章……円十字を象ったオブジェが、飾られていた。


「グリム聖教の……聖堂か」


 果敢は驚きの表情を浮かべながら、グリム聖教の聖堂に向かって、急降下して行く。

 聖堂の近くにいた住民達が、大騒ぎをしながら逃げ惑う。


 自分達の領主のゲストハウスを、島ごと吹き飛ばすような戦いの当事者が、近付いて来たのだから、住民達が逃げ惑うのも当たり前だ。

 果敢からすれば、逃げて遠ざかってくれた方が、都合は良いのだが。


 古城のような趣を感じさぜる、グリム聖教の聖堂の正面に、果敢は降り立つ。

 ローゼンシュタットの聖堂は、大聖堂に近い大きさがあるのだが、司教が置かれていないので、あくまでもただの聖堂だ。


 建物の扉は開け放たれていたので、果敢は聖堂の中を調べるべく、出入り口に近付いて行く。

 すると、通りにいた黒いキャソック風の祭服を着た、五十歳前後と思われる、厳めしい顔立ちの細身の男が、果敢の前に立ちはだかる。


(司祭か)


 黒のキャソックを着ているのは、グリム聖教の場合は司祭なので、そう果敢は判断する。

 果敢が判断した通り、その男は聖堂の司祭であった。


 通りが大騒ぎになっていたので、司祭は様子を見る為に、通りに出ていたのだ。

 司祭は通りにいた人々に、大騒ぎの原因を訊いた。


 キール湖の辺りで、島を消し飛ばす程の戦いが行われ、その戦いの当事者らしき、血塗れのディアンドル姿の何者かが、ローゼンシュタットの上空に現れた……。

 人々は司祭の問いに、そういった感じの答を返した。


 すると、その血塗れのディアンドル姿の何者かが、聖堂の上空に現れ、地上に下りて来て聖堂に入ろうとしたので、司祭は慌てて、制止しようとしたのである。


「お待ち下さい、お嬢さん。そのような物騒な格好で、聖堂に立ち入られては困ります」


「この聖堂に、ローゼンハイン侯爵と……奴が引き連れた魔族達がいる筈だ。どこにいる?」


 果敢に問いかけられ、司祭だけでなく、距離を置いて様子を見守っていた、野次馬の住民達は、驚きの表情を浮かべる。


「何を……そんな馬鹿な事を! 魔族が聖堂にいる訳がないでしょう!」


 司祭は強い口調で、言葉を続ける。


「それに、侯爵が魔族を連れているなんて……」


「ローゼンハイン侯爵は、領内の平等派潰しをやらせる為、魔族を召喚した。私は魔族を狩る為に、派遣された者だ」


 普段の一人称は「俺」なのだが、果敢は女装姿に合わせ、「私」にしている。


「侯爵が魔族を召喚? そんな……有り得ません! 侯爵はグリム聖教の教徒です、聖なる教えの教徒が、魔族の力を利用しようとする訳がないでしょう!」


「隠すと為にならない。人を大量に殺した魔族と、魔族を召喚したローゼンハイン侯爵を、隠すというのなら、相応の目に遭わせる」


 脅しでは無く、果敢は本気である。


「隠してなどいませんよ。侯爵も魔族も、ここにはいません」


 果敢の圧力にも怯まず、堂々と司祭は言い切る。


(嘘を吐いている感じでは無いな……)


 そう判断した果敢は、司祭を押し退け、強引に聖堂の中に入る。

 日本の学校の、体育館程の広さがある聖堂の中には、宗教画が描かれた高い天井に、カラフルなステンドグラスの窓、行儀よく並んでいる椅子に、祭壇などがある。


 十字架が円十字となっている事を除けば、カトリック系のキリスト教の聖堂と、見た目は余り変わらない。

 聖堂の中には、果敢と司祭、そして司祭の元に駆け付けた、二人の助祭しかいない。


「困ります、お嬢さん!」


 司祭は声を上げるが、果敢は無視して、魔族達やゴッドフリートを探知する為、目を閉じて精神を研ぎ澄ます。

 すると、地下の方から、自分のアウラの存在を、果敢は感じる。


 果敢は目を開き、司祭に問いかける。


「この下の地下室に通じる通路は?」


「地下室? そんなもの、ありませんよ!」


 司祭は驚き、地下室の存在自体を否定する。


「宿舎の地下になら、倉庫がありますけど……聖堂の地下には、何もありません!」


「教えないなら、床に穴を開けて、調べるだけの話だ! 知っているなら、さっさと教えろ!」


「だから、聖堂の下には、地下室なんてありません! 地下室が無いんですから、通路もありませんよ!」


(知っていて、惚けているという感じはしないが……訊くだけ無駄か)


 司祭は嘘を吐いているように、果敢は感じられなかったが、確証がある訳ではない。

 どちらにしろ、教えないというなら、相手にするだけ無駄だと、果敢は判断。


 右手にアウラを集めて光らせながら、果敢は司祭と助祭に警告する。


「床に穴を開ける! 怪我したくなければ、離れていろ!」


 問答無用と言わんばかりの、果敢の警告を聞いて、司祭達は慌てて逃げ出す。

 司祭達が遠ざかったのを確認してから、果敢は石が敷かれた聖堂の床に右手を向けると、数発のアウラ・ショットを放つ。


 爆発音を響かせながら、聖堂の床に大穴が穿たれ、大地震で崩落するかのように、床が崩れ始める。

 聖堂の椅子の一部も、穴の中に落ちて行く。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ