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046 魔族を召喚した張本人も、召喚された魔族のボスも、判明した事だし、そろそろ調査は終わりだな

「それよりも、この辺りの平等派には、魔族を倒せる程の強力な戦力は無いと、お前は言っていたよな?」


 今度はチキータの方が、ゴッドフリートに問いかける。


「下級の連中だけで編成されていたパーティとはいえ、人界で人族を殺りまくって、相当に力を増し、中級に劣らぬレベルまで、力を上げていた連中なんだ!」


 強い口調で、チキータは付け加える。


「それを全滅させられる程に強力な戦力を、平等派が持っているなんて話は、契約した時には聞いていないよ! 話が違うじゃないか!」


「配下の騎士連中は、元英雄の討伐の為に、他所にいる筈だし、俺の許可なく、国民軍は俺の領地には入れないので、国民軍もいる筈が無い」


 ゴッドフリートは気まずそうに、弁解を口にする。


「だから、魔族を五人も倒せる戦力が、領内に存在する筈が無いんだが……」


(会話の内容からして、ゴッドフリートが魔族連中のボスである、チキータって女を召喚して、平等派の殲滅を依頼したって事で、間違い無いみたいだな)


 心の中で、果敢は続ける。


(上級魔族を部下にしているのだから、チキータは上級以上……まぁ、特級魔族と考えておいた方が良いだろう)


 上級魔族が上級魔族を、従えている場合もある。

 だが、上級魔族を何人も従えているとなると、特級魔族の可能性が高いと、果敢は考えたのだ。


(魔族を召喚した張本人も、召喚された魔族のボスも、判明した事だし、そろそろ調査は終わりだな)


 潜入調査の段階は終わり、魔族を狩り尽くす段階が来た事を、果敢は悟る。


(あ、そうだ……顔隠さないと)


 猫の仮面は、普段はベストのポケットに入れている。

 だが、着衣がディアンドルに変化したせいで、ベストのポケットの数が、減ってしまっていた。


 そのせいで、猫の仮面などの、ベストのポケットに入れてあった物は、今はリュックのポケットに移動してしまっているのを、果敢は既に確認済みであった。

 果敢はリュックのポケットから、猫の仮面を取り出す。


 気のせいか、猫の仮面のデザインも、どことなく雌猫っぽい感じに、微妙に変わっているように、果敢には見えてしまう。

 果敢は猫の仮面を、顔に装着する。


 そして、役目を終えたアウラ・リダクションを、果敢は解除する。

 直後、サイレンの如き警戒警報が、ゲストハウス中に鳴り響く。


 天井裏にも仕掛けられていた警備用の魔術が、人間レベルのアウラを取り戻した果敢を感知し、警報を発したのだ。

 喧しい警報の音を聞きながら、果敢は膨大なアウラを、一気に練り上げる。


五月蠅うるさいよ」


 果敢は周囲に強烈なアウラを放ち、隠蔽魔術で見え難くしてあった、警備魔術の魔術印や魔術道具を、片っ端から吹き飛ばす。

 その衝撃で、果敢の周囲の天井は吹き飛び、大穴が開いてしまう。


 天井の破片群と共に、果敢は大広間に落下する。

 落下物が降り注ぐ音と、魔族達の驚きの声が響き渡る大広間、麾下召喚印の中央辺りに、果敢は着地する。


 埃が舞い上がる中、果敢は周囲を見回す。

 天井裏にいた時に、大雑把に数は把握していたのだが、数と位置を再確認したのだ。


(ここにいるのは、五十三人……外にもいるだろうが、総数で百には届かないだろう)


 心の中で呟く果敢の周りで、魔族達は騒然となっている。


「何者だ?」


「敵の襲撃だ!」


「コンラード達をった奴か? 女だったのかよ!」


「猫の仮面をかぶってやがる、ふざけた女だ!」


 周囲で一斉に上がり始めた、魔族達の声を聞きながら、レベルの低い隠蔽魔術なら解除出来る、汎用解除魔術のクリケを、果敢を唱える。

 果敢の身体から閃光が放たれたかと思うと、閃光を浴びた殆どの魔族達の頭に、一本の角が現れる。


 隠蔽魔術の一種である、人化魔術が解除され、魔族達の偽装が解かれ、魔族としての姿を現してしまったのだ。

 上級以下の魔族は、角を一本しか持たないので、この場にいる殆どの魔族達は、上級以下という事になる。


 唯一の例外が、チキータであった。

 チキータには果敢の魔術が通用せず、魔族としての正体を、現さないままでいたのだ。


(俺の汎用解除魔術で、人化魔術が解除出来ないとなると、特級魔族という事になる。やはりこの女……特級魔族のようだな)


 果敢はチキータに、煽り口調で声をかける。


「角を隠すのが、ずいぶんと上手いじゃないか! 醜い魔族の姿を、そんなに晒したく無いのかい?」


 チキータは不快そうに、顔を顰めると、サングラスを外して、鋭い目付きの整った顔を晒すと、右手の指を鳴らす。

 すると、チキータの頭に、角が現れる。


 自ら人化魔術を解除して、魔族としての姿を現したのだ。


「魔族の姿では、人界は色々とやり難いんでね、角が無い上……惰弱で醜い人族の姿を、装っていただけだ!」


 チキータや配下の魔族達は、ゲストハウスに居る場合も多いのだが、入れ替わりで城の外に、外出していた。

 平等派への襲撃や、人間狩りなどを行っていたのは夜間だけだが、平等派に関する情報収取などは、日中にも行っていたのだ。


 それ故、襲撃や人間狩りを行う場合を除き、目立たないように人族の姿に偽装するのが、常態化していたのである。


(二本の角……これで、特級魔族である確認が取れた)


 果敢はチキータの頭に現れた、二本の角を見て、心の中で呟く。

 二本の角は、特級魔族……もしくは、それすら超える魔神だけが、持っているのだ。


 複数の上級魔族を配下にしている時点で、チキータが特級魔族である可能性が高いと、果敢は考えていた。

 そして、自分の汎用解除魔術が通じなかったので、チキータが特級魔族だという考えは、果敢の中では、ほぼ確信に至っていた。


 その上で、特級魔族かどうかを確認する為、チキータを言葉で煽り、魔族としての姿を晒すように、果敢は仕向けたのである。


(本当に特級魔族が、召喚されていたとはな……)


 果敢はゴッドフリートを、腹立たし気に睨み付ける。

 百人程の人間を、生贄として捧げなければ、召喚出来ない特級魔族を召喚したのだから、果敢がゴッドフリートに強い怒りを覚えるのは、当たり前といえる。




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