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045 魔石の配置、間違えるんじゃないよ! 間違えると、召喚が失敗する上、魔石が無駄になる!

(あれは、大魔術印!)


 大きな黒い円は、大規模な儀式魔術を発動する際に使用される、大魔術印であった。

 しかも、人族が使う魔術では無く、魔族が使う魔術に使われるものであるのが、魔術に通じている果敢には分かった。


(しかも、麾下きか召喚印じゃないか!)


 大広間の床に記されていたのは、麾下召喚印の魔術印であった。

 魔族が自分の配下……麾下に入っている魔族を、人族の世界に召喚する魔術が、麾下召喚魔術であり、それに使用する儀式用の魔術印が、麾下召喚印である。


 過去に魔族の拠点を襲撃した際、果敢は麾下召喚印を、何度も目にした事があったので、見ただけで分ったのだ。

 ただし、大広間に記されていたのは、まだ完成してはいなかった。


 麾下召喚魔術は、特殊な魔術であり、膨大な量の魔石が必要となる。

 それ故、麾下召喚印には、大量の魔石が配置されるのが普通なのだが、まだ魔石の数が、明らかに足りていなかったのだ。


 麾下召喚印は使い捨ての魔術印であり、魔族を召喚する度に、新たに用意しなければならない。

 人界と魔界を隔てる結界に、自力で穴を開けて、強引に通路を作ってしまえる魔神とは違い、他の魔族が配下の魔族を呼び寄せるのは、かなりの手間とコストがかかるのである。


(麾下召喚魔術の準備を進めている以上、こいつらが魔族であるのは、間違いないな)


 断定する果敢の耳に、鋭い女性の声が届く。


「魔石の配置、間違えるんじゃないよ! 間違えると、召喚が失敗する上、魔石が無駄になる!」


 声を発したのは、ダークスーツを身に纏う、長身の女性だ。

 果敢よりも、頭一つ以上背が高く、日に焼けた風な小麦色の肌をしている。


「下級の連中とはいえ、ファミリーの魔族が五人も殺られたんだ! 何者かは分からないが、かなりの手練れが、敵側に回っている!」


 強い口調で、女性は続ける。


「幹部連中の召喚に失敗したら、危険な目に遭うのはお前達なんだ! 分かってるんだろうね?」


「はいッ!」


「勿論ですッ!」


 ダークスーツ姿の使用人達……部下達が、長身の女性魔族に、威勢の良い声で返答する。


「分かってますって! チキータの姐さん!」


 部下達の中には、チキータという女性魔族の名を、口にする者もいた。

 そのお陰で、果敢には女性魔族の名が分かった。


(五人……俺がリットナーの倉庫街で、倒した魔族の数と同じだ。部下をやられたから、戦力を補充しようとしているんだろう)


 会話を盗み聞きながら、果敢は思案する。


(幹部連中という事は……それなりの強さの連中を、魔界から召喚しようとしているみたいだな)


 心の中で呟きながら、果敢はチキータに目をやる。

 金色のショートヘアーをオールバックにしている、マニッシュな雰囲気の女性だ。


 サングラスで目を隠していて、顔は分からないし、帽子をかぶってはいないのだが、頭には角が見当たらない。


(あのチキータって女が、ボスのようだが……)


 忙しなく魔石を運び込んでは、麾下召喚印に魔石を配置する、他のダークスーツ姿の者達とは違い、大広間の端に置かれたテーブルの席に、チキータは腰かけていた。

 大物然とした、堂々とした態度で。


 テーブルの上には、酒瓶とグラスが置かれている。

 そして、テーブルの対面の席には、緑のスーツ姿の男性が座っていた。


(ゴッドフリート……ここにいたか!)


 テーブルを挟んで、チキータと向かい合って座っているのは、ゴッドフリートだったのだ。


「魔石を集めるのに、大金を使ってるんだ。あっさりとやられるような、雑魚共を召喚されても……困るぞ」


 対面に座るチキータに、ゴッドフリートは苦々し気に言い放った。


「安心しろ、今回召喚するのは、これまでのような下級魔族じゃない。あたしのファミリーじゃ幹部級の、上級魔族だ」


 チキータは自信有り気に、ゴッドフリートに言葉を返す。


(使用人連中には、恋人とか言っていたらしいが、どう見ても……程遠い雰囲気だな)


 二人の口の利き方や雰囲気は、人間の商人同士の会話のように、ビジネスライクな感じに、果敢には思えた。

 果敢が察した通り、ゴッドフリートとチキータは、仕事を依頼した者と、依頼された者としての、関係でしかない。


 恋人というのは、使用人達に疑われない為の、単なる方便に過ぎない。


「召喚する数は五人、各パーティに最低でも一人、上級魔族を加えた編成に、パーティを再編成した上で、平等派の掃討を再開する」


 下級魔族だけで編成したパーティが、あっさりと全滅させられたので、チキータは上級魔族を魔界から召喚し、戦力を強化する事にしたのだ。

 それぞれのパーティに、一人ずつ上級魔族を配しておけば、下級魔族五人を倒した相手だろうが、負ける事はないだろうと考えて。


「最初から上級魔族を、召喚しておけば良かったんじゃないのか?」


 ゴッドフリートの問いに、チキータは不愉快そうに返答する。


「上級魔族を召喚出来るだけの魔石を、お前が最初から用意しておけば、最初から幹部連中を召喚していたさ!」


 麾下召喚魔術で、部下の魔族を召喚する場合、召喚する魔族のレベルと、必要となる魔石の量は比例する。

 能力の低い下級魔族よりも、能力の高い上級魔族を召喚する場合の方が、より大量の魔石を必要とするのだ。


 魔族は人間を襲い、その生命エネルギーを吸収すれば、膨大な魔力を得られるのだが、麾下召喚魔術は魔族の魔力だけでは、発動する事が出来ない。

 魔族自身の膨大な魔力も必要なのだが、麾下召喚印に配置する、膨大な魔石の魔力が無ければ発動出来ない、特殊な魔術なのである。




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