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031 これは、下手すりゃ……レベル3行くか? いや、魔族は弱かったし、ここで止めとけば……何とかレベル2で済むかも

(警戒されてるな……まぁ、当たり前か)


 心の中で呟いてから、果敢は声をかける。


「人が埋まってるんだろ? 魔術で瓦礫を浮かせるから、瓦礫の上から退いてくれ」


 果敢の言葉を聞いて、瓦礫の上にいた人々は、一斉に退き始める。

 まだ果敢への警戒を解いてはいないが、あっさりと魔族を片付けた果敢を恐れ、言う事には従うのだ。


 果敢はクリケを唱え、飛行魔術を発動する。

 飛行魔術はエアリアルとは違い、スピードや空中での運動性能に欠けるので、空中戦には向かない。


 だが、自分だけを飛ばせるエアリアルとは違い、自分では無い人や物を、浮かせたり飛ばしたりする事が出来る。

 それ故、垂直離着陸が可能な飛行機などにも、飛行魔術は利用されているのだ。


 飛行魔術を発動すれば、対象とした存在を、飛ばして移動させる事が出来る。

 そして、果敢が指定したのは、学校の校庭程の広さに散らばり、瓦礫の山を形作る、全ての瓦礫だった。


 膨大な量の瓦礫が、ゆっくりと浮かび上がり始める。

 果敢が浮かせたのは瓦礫だけなので、瓦礫に埋まっていた人々は、浮かび上がらない。


 上に載っていた瓦礫から解放された、百人近くの人々は、茫然とした顔で、浮かび上がる瓦礫を見上げている。

 無論、埋まっていた人達を助けようとしていた人々も、有り得ない光景を目にしたかのような、驚きの表情で、宙に浮いだ膨大な瓦礫を眺めている。


(真夜中の倉庫街にしちゃ、人の数が妙に多いな)


 瓦礫の下から姿を現した人々を見て、そんな感想を果敢は抱く。


(しかも、倉庫街で働いてるって感じじゃない、見た目の連中が多い)


 果敢の目線の先にいる人々は、スーツ姿であったり、カジュアルな私服であったりと、様々な服装をしていた。

 だが、倉庫街で働いている感じの、作業服姿の人達は、余りいなかったのだ。


 真夜中の倉庫街に、作業員らしくない人々が集まっていた理由が、果敢は気になったのだが、その理由を考えている場合ではなかった。


「そんなに長くは、浮かせてはいられないし、これだけの瓦礫を浮かせたままだと、俺は動けない!」


 声を張り上げ、果敢は続ける。


「自分で動ける奴は、さっさと逃げろ! 動けない人は、運んでやってくれ!」


 果敢に指示され、瓦礫に埋まっていた人々の半分程は、起き上がって逃げ出し始める。

 半分程は自力では動けないらしく、他の人達により運び出される。


 助け出された人達は、喜びの声を上げる。

 だが、自力で動けなかった人々を助けようとした人達の一部が、悲痛な声を上げる。


 助けようとした相手が、既に死んでいたのだ。

 自力で動けなかった者達の中には、建物の崩落時に即死していた、数名の死者も混ざっていたのである。


 死体だからといって、放置する訳にはいかない。

 悲しみの表情を浮かべながら、死体に駆け寄った者達は、死体を運び出す。


 障害となっていた瓦礫が、宙に浮いた状態なので、脱出はスムーズに進んだ。

 二分もかからず、瓦礫の下にいた人々は、脱出する事が出来た。


「もう誰も残っていないな?」


 果敢は自分の目で、一応は確認したのだが、念の為に他の人達に問いかける。


「いないなら、瓦礫落とすよ!」


「いません!」


「みんな脱出しました!」


 人々の中から次々に上がる返事を聞いて、果敢は飛行魔術を解除する。

 三メートル以上の高さまで浮いていた、膨大な瓦礫が、轟音を響かせながら、土砂崩れのように地面に落下し、土煙を立てる。


 低いビル程度の高さの倉庫とは言え、十棟程が崩れて発生した、瓦礫の山なのだ。

 短時間とはいえ、一人で大型飛行機を浮かせるに等しい程の、強力な飛行魔術を使ったので、果敢は当然のように、かなりの魔力を消耗してしまった。


(これは、下手すりゃ……レベル3行くか? いや、魔族は弱かったし、ここで止めとけば……何とかレベル2で済むかも)


 人助けが終わったので、果敢は自分が身に受けるだろう、呪いのレベルの方が、気になり始めてしまう。

 魔族に襲われていた人々を助けられた事には、喜びを感じていたのだが、仮面の下の表情は晴れない。


 呪いのせいもあるが、助けられなかった数人の犠牲者の姿が、目に入ったので。

 そんな果敢に、この場にいた人々のリーダーらしき男が、声をかけてくる。


「助かりました、有難うございます!」


 まだ警戒の色を残した表情で、礼を言い頭を下げたのは、三十歳前後の男だ。

 あちこちが破損したグレーのスーツ姿の、精悍な感じの男である。


「礼には及ばない、当たり前の事をしたまでだ」


「当たり前とは……思えないんですが」


 圧倒的な戦闘力と、異常なレベルの魔術を目にした男は、つい本音を口にしてしまう。

 果敢が見せた能力は、当たり前で片付けられるような、生易しいレベルではなかったのだ。


「正直、貴方に助けて頂けなければ、私達は全滅していたでしょう。本当に……有難うございます」


 再び、男は深々と一礼した上で、探るような口調で、果敢に訊ねる。


「それで……あの……貴方は一体?」


「旅行中の、猫好きの男だ」


 しれっとした口調で、果敢は冗談を口にする。

 正体を明かす訳には、いかないので。


「その……猫好きの貴方は、何故……ここに?」


(どうやら俺は、相当に怪しまれてるらしいな。ま、こんな仮面かぶってるんだ、仕方が無いか)


 男の表情と言動から、自分に対する強い警戒を感じ取った果敢は、仮面の下で苦笑いを浮かべる。




ブクマどうも、励みになります。

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