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027 ローゼンハイン侯爵が、まともに魔族を退治しようとしていない?

 木製の柱や漆喰が目立つ、古びた木骨造の建物の中は、夜でも賑わっている。

 内装が少し古い事を除けば、有り勝ちな酒場の光景だ。


 まだ夜は浅いのだが、店内の席は酔客達で、八割程が埋まっている。

 カウンター席でソーセージをつまみに、ビールを飲んでいる果敢も、その一人。


 ここはファン・レントから二十キロ程離れた町、ファン・アルムジックの酒場。

 ファン・レントよりも小さいのだが、ローゼンハイン侯爵領の近くにある商業都市の一つが、ファン・アルムジック。


 ファン・レントを離れた果敢は、地図とアシェンプテルから渡された資料を頼りに、計画を練り直した。

 当初の予定を変更し、ファン・アルムジックで情報収集を行う事にしたのである。


 ファン・アルムジックに辿り着いた時、既に日は落ちていた。

 情報を集めるなら、各地を旅する商人が集まり易い、酒場が良いと思ったので、果敢は情報収集のついでに、空いた腹を満たす為、繁華街にある「ヴァルケ」という、賑わっている酒場を訪れた。


 果敢はカウンター席で、一人酒と軽食を楽しみつつ、酔客達の会話に聞き耳を立て、情報収集中なのである。

 英雄として各地を転戦していた時、魔族に支配されていた場所に潜入し、情報収集をする場合もあったので、そういった盗み聞き……情報収集の技術には、果敢は長けている。


 服装は戦闘服ではなく、薄手のカーキ色のコート姿だ。

 戦闘服は警戒される場合があるので、ベストを脱いで、リュックに入れて持って来たコートに、着替えたのである。


 追加で注文するかもしれないので、果敢はカウンターに置かれたメニューを見る。


(美味いけど、高いね……)


 果敢が知っている、ブレーメンでの庶民向けの店の相場より、この店のメニューに並ぶ価格は、かなり高い。

 バツ印で消されている、以前の価格の方が、果敢が知っている相場の価格に、近い感じであった。


(アシェンプテルが言ってた通り、インフレで物価高なんだろうな)


 メニューを見ながら、心の中で呟いた直後、他の客達の会話が、果敢の耳に飛び込んで来る。


「リットナーに売込みに行く? おいおい、止めとけって」


 リットナーという地名が出て来たので、果敢は集中的に、その会話に聞き耳を立てる。

 何故なら、リットナーはローゼンハイン侯爵領にある、商業都市の名だったので。


「あそこは最近、魔族が暴れ回ってるからな。昨夜も魔族に、商業組合の建物が、潰されたばかりだ」


「そうなのか? そんな事、新聞には載ってなかったけど」


「夜中だったからな、間に合わなかったんじゃない?」


「ローゼンハイン侯爵領は、先月だったか……新聞社までも、魔族にやられてるから、まともに外に情報が出ないぞ」


「新聞とかには出ないが、最近……ローゼンハイン侯爵領は、魔族の襲撃が多いんだよ。アリアンツとの国境近くの町が、幾つか酷くやられて、かなりの数の難民が、アリアンツに流れたって話もある」


(アシェンプテルが言ってた話か……)


 果敢は更に、聞き耳を立て続ける。


「リートミュラーも、確かやられたばかりだろ。あそこも商業地区だぜ、やられたのは」


「最近の魔族は、商人狙いなのかね? 私達……狙われちゃうんじゃない?」


 話している者達は、四人の商人達なのだ。

 ちなみに、話している人物の一人は、女性である。


「城下町なら、余り魔族は出ていないらしいから、商売やりに行くなら、今は城下町近辺にしとけ」


 城下町というのは、ローゼンハイン侯爵の城がある、都市の事だ。


「そうなのか、良い話聞いた、ありがとう。リットナーに行くのは、魔族が出なくなってからにするよ」


「そうした方が良い。まぁ、政府もローゼンハイン侯爵も、まともに魔族を退治しようと動いてないから、魔族がいなくなるのは、何時になるか分からないが」


「難民がアリアンツに流れたのも、政府や侯爵が、当てにならないからって話だ」


(ローゼンハイン侯爵が、まともに魔族を退治しようとしていない?)


 果敢は疑問を抱く。


(貴族連中は、戦争からは逃げてたくせに、自分の領地に関しては、きっちり魔族連中から、守っていた筈なんだが)


 多くの貴族達は、軍事力を持ちながら、グリム大陸どころか世界の危機であった、アスタロト・ファミリーとの戦争には、まともに参戦しなかった。

 自らの領地を魔族達から守る為だけに、保有する軍事力を使っていたのだ。


 そんな貴族の一人であろう、ローゼンハイン侯爵家が、自らの領地を荒らし回る魔族を、退治しようとしていないという話に、果敢は引っ掛かりを覚えたのだ。

 政府の方は、色々なゴタゴタで、辺境の小規模の魔族騒ぎにまで、手が回らないというのが現状なのを、果敢はアシェンプテルの資料で知らされていたので、疑問には思わなかった。


「盛り上がってるじゃないか?」


 果敢が聞き耳を立てていた、近くのテーブル席で話していたグループに、店に入って来たばかりの、三十代と思われる女性が、新たに加わる。

 灰色のツナギ風の服を着た、ワイルドな感じの女性だ。




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