026 やっぱ、下ネタは鉄板だな!
「いやー、今回の呪いは、うちの女共が、大喜びだったよ!」
川原のテーブルの上で、アスタロト人形は嬉しそうに、果敢に話しかける。
ゴダイヴァ・ランニングを終えた果敢が、川原に戻って来た直後の事だ。
「それどころか、人族の女連中も、たくさん見物に来てたから、レベル5の呪いを除けば、最高といえるくらいの、大盛り上がりだったぜ!」
「な、何で人族まで、そこにいるんだよ?」
服を着ながら、驚きの声を上げる果敢に、アスタロト人形は答を返す。
「言ってなかったか? 幽霊界にいるの、俺達魔族だけじゃないから、お前のルーレットタイム、前から結構、人族の幽霊連中も、見物に来てたんだぞ」
「いや、幽霊界に人族の幽霊もいるのは知ってるけど、何で魔族の幽霊と一緒になって、俺のルーレットタイムを見物してんだよ?」
「そりゃ、お前……どうせみんな死んじまったんだから、ここで揉めても仕方がないし、面白そうな見世物を、一緒に楽しむくらいの事は、やっていてもおかしくはないだろ」
「初耳だぞ、それは!」
「まぁ、さすがに人族の為に、異世界から来て戦ってくれたお前を、見世物にするのは気が引けるのか、普段は見物に来る人族は、そんなに多くはないんだけど、下ネタの回は……たくさん来るんだ!」
アスタロト人形は、楽し気に続ける。
「やっぱ、下ネタは鉄板だな!」
「お前、本当に元魔神か? 下世話なテレビ番組のプロデューサーか何かじゃないのか?」
「何だ? そのテレビ番組やプロデューサーというのは?」
「お前に分かるように説明してたら、日が暮れるわ!」
果敢対策として、日本についての様々な情報を集めていたアスタロトとはいえ、さすがにテレビやテレビ業界に関する知識は無い。
説明したら長くなりそうで面倒だったので、そんな言葉をカカンは返したのだ。
「さっさと帰れ、元魔神!」
「怒りっぽいと、長生きしないって、人族の幽霊が言ってたぞ」
おどけた口調で言葉を返してから、去り際の決まり文句を、アスタロト人形は口にする。
「それじゃ、また次の呪いで!」
すると、アスタロトの人形とルーレットを載せたテーブルは、地面に現れた光る円の中に入り、光る円と共に姿を消してしまう。
会話を続けながらも、着衣を整え終えていた、果敢を残して。
「まさか、人族の幽霊にまで、見られていたとは……。人族の幽霊連中、何考えてやがるんだか……」
異世界から、この世界を助けに来た自分を、人族の幽霊が笑い物にしているのを知り、果敢は呆れ果ててしまう。
「当然、レベル5の呪いの時も、人族の幽霊連中にも、見られてたんだろうな……」
魔族の幽霊達に、見られていた自覚はあるのだが、人族の幽霊達にまで、性的な行為を覗き見られていたのを知り、果敢は酷く落ち込む。
そんな果敢の耳に、遠くから人々の声が聞えて来る。
「変態全裸ランナー、いたか?」
「いや、こっちにはいない! こっちにいる人は、みんなちゃんと服を着ているから、変態全裸ランナーじゃない!」
「どこに行きやがった、あの変態全裸ランナーは? ガキのくせに、うちの女房と娘に、俺よりデカい物を見せ付けやがって!」
「いや、それお前の物が小さいだけじゃね? わりと普通の大きさだったと思うぞ」
「川原の方、誰か確認した?」
「まだだ! 川原の方を探してみようぜ!」
「変態全裸ランナーのガキ、絶対に逮捕して、晒し者にしてやる!」
「いや、あの変態なら、晒し者にされたら、喜んじゃって、刑罰にならないんじゃないのか?」
「確かに、全裸を晒して喜びを感じるような、変態全裸ランナーだからな!」
自分を探している、ファン・レントの人々の声を耳にして、果敢は慌てる。
「やばい、逃げないと!」
既に着衣は、整え終えていたので、果敢はリュックを背負うと、ファン・レントとは反対の方向に向かって、走り始める。
呪印が満月に近付かない程度に、僅かなアウラを使って、アウラ・アクセルを発動した上で。
その程度のアウラ・アクセルでも、普通の人間達の追跡を振り切るには、十分過ぎる程なのだ。
「まったく、誰が変態全裸ランナーだよ」
愚痴りながら、果敢は川原を駆け抜けて行く。
すぐに、追手の声は聞こえなくなったのだが、追い付かれる可能性が無いだろう場所まで、果敢は走り続けた……。
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