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バケモノ×ケンゲキ  作者: 伏見 七尾
参.犬神欠点
19/89

その六.兄はカフェにいる?

「え、二人……?」


 吹雪は目を見開く。

 優雅に紅茶を飲んでいた綾廣も、十真の言葉に首をかしげた。


「ん? 年寄りとかじゃなくて、ブキちゃんみたいな感じの?」

「あぁ。私も一瞬老人かと思った。三日前、仕事を終えた後にあるカフェに行ったのだが、そこで私とすれ違った男が――」

「そ、それ、どこの――?」


 やっと兄の手がかりを見つけたかもしれない。

 早まる鼓動を抑えつつ、吹雪は白髪の男について十真にたずねようとする。

 しかし、その言葉は途中で遮られた。


「小娘!」

「御堂さん……?」


 食堂の入り口に時久が立っている。

 時久は大股で吹雪達のテーブルに近づいてくると、吹雪に向かってたずねた。


「ちょうど良い所に。この後は暇か?」

「御堂、ブキちゃんは午前休みだぜ? 夕方までゆっくりさせてあげなよー。あ、それともまさかデートのおさそ」

「そんなわけがなかろう。――社長の用事だ、三十分だけあれば良い」


 へらへらとした綾廣の言葉を叩き切り、時久は付け加える。

 吹雪はじっと彼を見上げた。


「昨日の件、でしょうか?」

「……う、む。そうとも言えるかもしれない」


 何故か微妙な表情で時久は視線をそらし、言葉を濁した。

 綾廣が目を細め、紅茶を口に付ける。


「昨日のって――ん? もしかして、昨日おやっさんから聞いた案件かな?」

「あぁ。――とりあえず小娘、来られるか?」

「え、と……」


 吹雪は一瞬悩み、十真の方を見る。

 すると十真は申し訳なさそうな顔で片合掌をし、頭を軽く下げた。


「すまないが、私は今日と明日は仕事なんだ」

「そうですか……」

「だが明後日なら空いている」


 がっくりと肩を落としていた吹雪は、その言葉にはっと顔を上げた。

 十真は軽く顔を傾け、にこりと笑った。


「もしそのカフェが気になるなら明後日案内しよう」

「あ、ありがとうございます!」


 吹雪はパッと顔を明るくして、十真に頭をさげた。

 そして、時久に向き直る。


「今、参ります」


                   * * *


 時久に連れられ、吹雪は紅梅社中の会議室に足を踏み入れた。

 広い部屋の中央には、ちょうどロの字型になるよう長テーブルが置かれている。テーブルにはすでに夕子とサチが着席していた。

 吹雪達の正面には黒板が掛けられ、演台が置かれている。その演台に慶次郎が立ち、ひどく渋い表情で飴を舐めていた。


「社長。連れてきた……なんだその顔は」

「うちの長女がよこした珈琲飴がクソ苦ぇんだよ」

「嫌がらせだろう。いい加減学習したらどうだ」

「うるせぇな。ここで負けてたまるか――とりあえず好きなとこに座ってくれ」


 渋い表情をしたまま慶次郎がテーブルを示す。

 無言の時久に促されるまま、吹雪は恐る恐るサチの隣の席に座った。

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