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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
四章⊟~ルークと原点

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5話

誤字報告ありがとうございます。

ボスが言うには数日掛かるとの事だった。その間にウィリアムの知っている帝都の情報と自分の持っている情報を擦り合わせて侵入路を決めることになった。また、その中にはプロトから得られる相手方の戦闘力も計算に入れる。どれだけ考えても現状、無傷で侵入は難しいとの計算だ。とは言え、それ自体に不満はない。大国の、しかも自分たちに向かって戦う準備をしている相手に向かって行くのだから全てが都合良くなんて夢が過ぎる。全部悪い方に考えて選択していくべきだろう。まぁ、ボスとウィリアムが打ち合わせるのだ。どんなルートでも文句はない。それにウィリアムが自分の戦力を値に入れて計算する以上、絶対に無理な物は選ばない筈だ。そして2人が作戦を立てている間、自分とミラは言われた通りに船の中で手伝いに回っていた。


「よっと」

最後の荷物を下ろす。そして額の汗を拭えば溜息も出た。部屋を見渡せば始めより随分片付いたと思える程には綺麗になった倉庫の姿がある。

仕事、とはついているがその実自分にとっては慣れた作業と言っていい。それにどうせ船の中で完結することもあって、そこまで大仰でもない。今も今日の練習の片付けをしていたに過ぎなかった。

「いや、にしても随分落ちたなぁ」

自分の手を見る。今日はショーの稽古もした。久しぶりなのもあるし、また彼らとショーをするのは一つの願いだ。だから稽古にも参加したが精細を欠いた動きだったのは言うまでもない。何せ、武器の振り方一つ取っても実際の戦いでの振りとは大きく違う。なのに自分はずっと魔物と戦うだけの日々だったから余りにも武骨な見た目になってしまっていた。舞踊だともっと優雅に、柔らかさや、人目を引くゆとりがいる。言ってしまえば無駄が必要なのだ。なのにそれが完全に削がれていて、ぎこちなさが出ていたのだ。仕方が無いことだし、必要なのは無駄を削ぎ落した実戦的な動きだったのだから現在は無用と言えば無用だ。それに戦いが上手くなったのは誇るべき事なのだが、それでもやっぱり好きな事が出来なくなっているのは少なからずショックもある。儘ならない。


「ミラとかプロトにも見せてやりたいんだけどなぁ」

自分たちがショーをした時はミラは体調不良として直ぐに部屋へ引き籠ってしまった。だから碌に自分たちのショーは見ていないだろう。もしかしたら皇女としての仕事でもっと凄い物を見たことがあるかもしれないが、自分たちの物だって決して劣るとは思わない。だから見て欲しいと思う心があった。それに反してプロトはあの時見ていたが彼はチケットを持っていなかった筈だから大分遠くで見ていただろう。それでもよく記憶してくれていたし、最初に魔物との戦闘でも凄い、と喜んでくれたのだ。だから今度は近くで確りと見せてやりたい気持ちがあった。それに今も魔道部隊の仮想相手として団の戦闘員たちと訓練もしてくれているのだ。何か返してやりたいという気持ちがあった。

「それにしてもプロトも成長してる、よな?」

思い返すとプロトは杖を替えた以上に魔法が成長している様に感じられた。基礎的な物しか出来ないと言っていた頃と比べて幾らか等級が上の魔法を使えているように感じられた。これが只の魔法使いならありえなくも無いがプロトはあくまで兵器として作られた存在だ。そんな存在が人の様に成長するなどあるんだろうかとも思った。彼自身が本当に出自を感じさせない位良い奴だから忘れていたが成長とはほど遠い存在の筈だ。そう思うと疑問が改めて湧き出す。そう言う意味でもαやβとは違う感じもした。彼らは口も聞けば考える様な素振りもあったが何処までも人形の印象を拭えなかった。それはプロトを見ていれば尚のことだ。だから出来損ないと呼ぶ彼らが気に食わないとも思うし、枠を外れた感じのするプロトをそう呼ぶのも理解出来なくはない気もした。

「やっぱり聞かなきゃ分んないか」

暫く悩んだが結局自分の頭では何も思い付きはしなかった。そしてその答えはやっぱりノクスが持っているのだ。不本意だ。それでもこの感情全てを押し込めてアイツと向き合わなければならない。そう思った。


「よっ!調子はどう?」

仕事を終えて、食事の時間にほど近くなった。何かして潰すには短い、そう思って先駆けて食堂へ行ってみればミラが厨房で働いているのが見えて声をかける。

「あら、ルーク。今日は早いのね」

すっかり恰好を旅装束から着替えて盗賊風味に替えた―着替えさせられたともいう―ミラが振り向いて手を振ってくる。彼女の格好としては珍しく頭にバンダナを巻いて、半袖にオーバーオールを着込んで肩紐の片方を外していた。その何れもが見たことが無いが彼女の皇女然とした見た目に荒っぽさが加わって、不思議な親しみやすさと高嶺を表現していた。でも誰かの庇護下で生きている様な弱さも感じられなかった。それが彼女のこれまでの生き方ゆえか、はたまた生まれついた物かは分からなかった。

「あぁ、厨房なんて大変な所だからさ。調子はどうかなって。最近はあんまり喋れてないしね」

仕事の関係上、ミラとは離れ離れになってしまった。別に悲壮感のある様な事ではないが厨房でクルクルと動き回る彼女と長々と話すのは躊躇われた。それにオリヴァーに迷惑をかけるのは本位じゃない。他にも休憩時間が必ずしも被る訳ではないし、その時間も団の女性陣がミラを猫かわいがりするものだから自然と弾き出されてしまっていた。だからこうやって2人だけで短時間とはいえ顔を合わせるのは久しぶりだった。

「そう言えばそうね。不思議ね。旅の時はずっと一緒だったのに。毎日顔は見てるし、一言も喋らない訳でもないのに凄く久しぶりな感じがする」

カウンターから出てきた彼女がエプロンを外す。髪の毛も後ろで一つに纏められ、彼女の七色の髪が花弁のように揺れながら室内灯の明かりを反射する。旅の時はどうしても身綺麗にしきれないがこの船で磨かれた彼女は本来の姿を取り戻してもいた。だから自然と目が彼女に惹きつけられてしまう。

「どうしたの?」

だからだろうか、不思議に思った彼女が首を傾げる。それに対して少し気恥ずかしさを覚えて、やや下を向いて少し熱くなっていた耳と頬を隠す為に顔の前で手を振る。

「いや、何でもないさ。それよりミラもすっかり馴染んだな」

「そう見える?そう言って貰える嬉しいわね。ここの人たちには本当に親切にしてもらってるの。オリヴァーさんもいい人ね」

「そうだろ、アイツ、顔は怖いけど、良い奴なんだ」

家族が褒められれば素直に嬉しい。それから食事の時間までミラとアガパンサス団の家族の事について話し合った。


「よぉ、ルークよく来たな。まぁ座れや」

そう言ってボスが顎をしゃくる。周りには他の人は誰もおらず、ボスと2人だけだった。

「どうしたんだボス?」

座ってボスの顔を見る。これと言って何かした覚えはないし、ボスの表情も悪くはない。だからこそなぜ呼び出されたかが分からなかった。

「いや、大した話じゃねぇんだ。ただ、お前に新しい仕事を頼みたくてな。お前たちの要望にも繋がるもんだ」

「そうなのか。構わねぇけど、何をするんだ?」

「あぁ、今そっちのウィリアムと侵入経路について話し合ってるんだが、実際に使えるかが分からねぇ場所が幾つかあってな。お前に見てきてほしいんだ。勿論お前だけじゃねぇ、ウィリアムの野郎と2人だ」

ボスが言うには帝国領への侵入はそこまで難しくないようだが、やっぱり帝都への侵入が困難になっている様だった。此処から帝都までは地上なら乗り物を使えば往復で10日は掛かるだろうか。流石にこれだけ距離があると調査も難航しているようだ。それにいざ行ってから駄目でした、という結果は好ましくないという理由で帝都への進入路の調査を行う事になったらしい。

「成る程ね。で、その間ミラとプロトはお留守番か?」

「あぁ、お嬢ちゃんとプロトは目立ちすぎるからな。まぁ安心しろその間位なら隠し通して見せる。いざとなれば飛んででも逃げる」

「そう言わりゃそうだな。良し、分かった。いつ出ればいい?明日か?」

「そうだな早い方がいいだろう。荷物はこっちで用意してあるから直ぐにでも発て。ウィリアムの方は了承済みだ。打ち合わせすんなら今晩中にな」

「了解。ほんじゃ、サクッと行きますかね」

そう言ってボスの部屋を出る。ウィリアムと二人旅か、変な気分だ。仲が悪いとは言わないがやっぱり互いに溝がある。旅の成功は疑わないが、好調に行くかは少し不安に思えた。


翌日、まだ陽も登り切らない頃、ウィリアムと並んで船を出た。見送りの為に態々早く起きてくれたミラと手を振って別れた。プロトは昨夜の内に済ませた。どうしても決まった時間で行動しなければならない彼には謝られたが彼のせいでは無いし、どうせ近いうちにまた会えるのだから気にする程の事ではないと言い含めた。

「ま、暫くよろしくな」

「ふん」

馬に乗りながらウィリアムにそう言えば鼻で笑われる。まぁ、仲良しこよしも気持ちが悪い。肩を竦めて済ませた。

「そう言えば今回見るのは何処なんだ」

場所はウィリアムに完全に任せられている。だから何処に行くかは知らなかった。

「・・・騎士団長に口伝でのみ伝えられる通路だ。此処を通れれば最高で帝都を抜け、直接城へ侵入できる」

「へぇ、そんな道があんだなぁ。でもそれって向こうも知ってるんじゃないか?」

普通に考えればそんな場所封鎖するに限る。ノクスが裏にいるなら猶の事、彼にとっては帝国だってどうでも良いのだから予め閉じていても変ではない。

「可能性は否定しない。ただ、これは俺のみに伝えられる道でもある。これが守られていれば期待しても良い。その為の調査だ。それに最高は城への侵入だが途中で帝都にも出られる。それだけでも大きいはずだ」

「へぇ、それならまぁ、って感じだな」

ようは何か有った時にそれぞれが秘密の通り道を知っている、ということだ。流石帝国と思うと同時にそんな国が乗っ取られれている事に無常を感じる。

「兎に角、お前はついてこい。そこからがお前の仕事でもある」

「まッ任せな!」

そう言って胸を叩いた。そう、自分の仕事はウィリアムが知っている道で違和感を探すことだった。昔からこういうのを見つけるのは不思議と得意で、鼻や耳が特別優れている訳では無いのだが罠に引っかかった事はない。そしてそれを期待されての人員だった。そんな自分を横目にウィリアムが小さく頷いた。

良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

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