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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
四章⊟~ルークと原点

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3話

旅は順調に続く。帝国に近付くにつれて平原が多くなり、見通しの良い場所も増えてきた。帝国を筆頭に大国のある場所は総じて行き来がしやすく、気候も安定して肥沃だ。だから旅に支障が出にくい。ただ、それは人の目に付きやすいという事も意味した。もっとも旅人自体が稀な事と、流石に歩いている場所が帝国とアスケラの近くとなればそこまで歩きの旅人はいない。いっそ地方の村が点在している場所の方がそういった人々に会う。だから気にするのは飛空艇そのものだ。大きな影が見えたら身を伏せて、姿を隠す。それが帝国の物となれば猶の事その必要があった。大袈裟に思うかもしれないが、視界に優れる種族が見張りをしているのだから空からでも見えてしまう。特に翼種であれば豆粒にしか見えなくてもハッキリとこちらを認識しかねない。其処から芋づるに報告があれば、今の帝国なら十分に軍が出てくるだろう。目的の国、サオルサに辿り着くまでは絶対に騒ぎを起こしたくは無かった。


目的地のサオルサはこれと言った特徴の無い国だ。大国とは言えないし、何処かに手を伸ばそうとすれば帝国かアスケラにぶつかる。或いは広大な無人の野を開拓する必要があった。開拓は時間と手間の割には実りも悪く、広げすぎれば大国に睨まれかねない。だから自然と手つかずの状態を維持していた。ただその代わりと言っては何だが大国と近い分流通は確かで、それでいて物価の類も土地が安い分低い傾向で、住みやすい。また輸出の類も相手には困らない事もあって大陸を見渡せば十分に裕福な国と言ってもいいだろう。それでいて自治は確りとしていて容易く大国の圧力を通さないだけの誇りがあった。だからアガパンサス団が隠れるには丁度よく、むしろ大きい分帝国からの手が伸びやすそうなアスケラよりも隠れるには案外丁度よかった。それに皇后の目が結局自分たちに向いた事を思えば尚のこと隠れやすかったに違いない。そして今、サオルサを目前にしていた。


「とうちゃ~く!」

服の汚れを叩きながら後ろを振り返る。サオルサの門は自分達を拒まなかった。ミラやウィリアムの姿は酷く有名だし、帝国に近いこの場所で知られていない訳が無かったが化粧でどうとでもなった。人はパット見の印象で人を覚えてしまう。だからその特徴を隠せさえすれば案外目は緩い。偶々通りすがった人の顔でも美人だなと思ってもその細かい造形には一切覚えが無く、何なら顔もぼんやりとしている事がある様に、一番の特徴だけを覚えてしまう。だからミラも髪や目の色を上手い具合に覆えばバレないし、鎧を着ていないウィリアムは本当に平民の金鬣族に見えるのだ。

「無事に入れて良かったわ」

いつもと違って少しばかり輪郭をぼやけさせたミラがそう呟く。彼女のメイクは美貌を隠すためにやっているので何だが不自然でもある。紛い物を本物と言い張る商人の様な気味悪さがあるがそれのお陰で難なく門を通れた。本人が気にしていないのが救いだが早く落として欲しい気もある。

「で、当てはあるのか?」

宿に向かって歩く道すがらウィリアムが声を掛けてきた。

「あぁ、当てって程じゃ無いけどアイツらは飛空艇があるだろ?だから港に行けばヒントがあると思うんだよね。この国の港はちょっと広いけど、アンガスの癖があるから船も見つかるとは思う。あ、アンガスってのは内の技師だ。転瞳族の奴で、少しやらかし癖がある」

「技師なのにやらかし癖があるの?」

「そうだな。まぁ船に関しては真面目だからさ。それにいいか、プロト。技師なんて連中は皆どっか可笑しいし、やらかし癖があるんだ。そう言う種族だと思った方が良い。プロトも気をつけろよ。万が一目を付けられたら何をされるか」

身震いする。アイツらは興味を持った物に異常な執着を見せる。おまけに口では「理解されなくてもいい」なんて言うくせにいざ理解や関心を向けられないと分かると烈火の如く切れ散らかしてふてくされるのだ。だから程々に相手をしつつ興味を持たれない事を祈る他無い。

「そうなんだ・・・」

身震いする自分を見ながらプロトが呆気に取られる様に呟く。まぁ、こればかりは彼らという種族と付き合わなければ分からないだろう。

「当てがあるなら先に向かうか?」

「そうだな。もしそこで会えれば同じ場所で休んでも良いしな」

ウィリアムに頷く。先に宿でも良いのだが陽はまだ高い。それに金も無いことから叶うならアガパンサス団と合流したい。彼らがアスケラに帰っていない以上、裕福という事は無いだろうがこちらの宿代を浮かせてくれるならそれに越した事はない。というか結構な日数が経っているのにまだ此処にいるなら相当なサボリでもある。もし、ミラとアスケラで別れる事になっていたら本格的にプロトと旅をしていただろう。


「う~ん、あるかなぁ・・・」

サオルサの港に辿り着く。港とは言うものの開拓したくとも出来ていない方面に広がる土地をそのまま港に見立てているだけの広場だ。これと言って立派な施設も無く、船を支える台座が家の様に点々と置かれているだけで、随分雑だ。ただ、ここで船を作り直す事を思えばこの位雑な方がやりやすい面もあるだろう。何せ森も近いことで木材には困らない。パーツも流通は十分、それでいて似たような中小規模の船が転がっているのだ。隠れるには十分だろう。これがアスケラとなると飛空艇の大本でもあるだけに面倒な手続き何かが入って来てしまうし、改造も大っぴらにしにくい。勿論施設としてはアスケラの方が何倍も優れているが、自由にやりたい願望が強すぎるアンガスにとっては案外此処のほうがあっていたりもするだろう。

「どれもそんな差は無いように見えるけど・・・」

ミラが横に立って同じように船を眺める。まぁ、中小規模の船は容量の問題でどうしてもそうなるし、大規模ともなれば目的がハッキリとしてるから似通うのは事実だ。ただその中で技師達は趣向を凝らす。

「ミラ、一応言っておくと俺は良いけど、アンガスの前ではそう言わない方が良い。最悪癇癪を起こす」

「え、そう、なの?」

「あぁ、間違いなく、な。プロトに言ったのと似てるんだが、アイツらは自分の制作物に絶対の自信と趣味をつぎ込んでるんだ。だから「他と一緒」とか「違いが分からない」は割と逆鱗になる。出来れば止めといてやってくれ。拗ねると面倒なんだ」

「そう、なのね。分かったわ」

ミラが困惑をそのままに了承する。こればかりは仕方がない。実際興味が余り無ければ彼女と同じ意見になっても仕方がないのだ。


そうして暫くの間広場探していると如何にもといった具合の飛空艇が見つかる。基本は船そのものだが何処か愛嬌と雑多とした雰囲気が酷く目立つ船だった。まるで家で不要な物を詰め込んだ倉庫の様な、或いは多種族が纏めて住んでいるアパートの様な赴きの船はアンガスの好みとアガパンサス団が表向きはサーカス団である事を仄めかす為の細工だ。パット見でそう言った集団だと分かる様にしてあることをアンガスが長々と語っていた記憶が蘇ってくる。

「これなの?」

プロトがまじまじと船を見た後に顔を上げる。

「多分な・・・うん、はみ出してる物も・・・うん、見覚えがあるし・・・そうだなこれだろう」

甲板には洗濯物らしき物が干されている。その中には普段着に紛れてショーで使いそうな派手目の物も混じっている。

「ちょっと声かけてくるから。待っててくれ」

「大丈夫なの?間違ってたら・・・」

「そん時は謝るさ」

そう言って梯子に足をかけて一息に登る。こうやって梯子が確り掛かっているなら中に人はいるし、見張り役もいるに決まっている。だから案外乗り込んでも甲板で声をかけたりするくらいは目こぼしされるものだった。


「おーい、誰かいないか!」

甲板には誰もいない。風に揺れる色とりどりの洗濯物が踊る様にひらひらとしていた。真新しい雰囲気のある船だ。作られてからやっぱり左程時間が経っていない。軋みもほぼなく、素材が一級とは言わないがそこそこに良い物を使っているのが足裏の感覚から良く分かった。そして声を掛けると足元からバタバタと強めの雨粒がぶつかる様な音がして近寄ってくるのが分かった。

「なんのようだ!?」

扉が勢いよく開く。おまけに輩としか思えない声でとても来客を向かえる声ではない。でもその声が酷く懐かしく、口角が上がった。そして現れた姿にとうとう堪えきれず声が漏れた。

「ははは久しぶりだな!アッシュ!」

「あ、ルークか!?なんだお前、無事だったのかよ!」

現れたのはアッシュだった。何だが数年ぶりにあったような心地だ。変わらない深紅の毛並みがユラユラと揺れるのを見て心が軽くなっていく。

「おいおい、なんだなんだ。元気そうじゃないか。どうしたんだよ?お~い、ルークが帰ってきたぞぉ!!」

肩をバシバシ叩きながらアッシュは大きな声で笑う。それにつられて自分も笑った。そしてアッシュの声を聞いたのか中から家族たちがワラワラと出てくる。

「お、ルークじゃん。どした、寂しかったんか?」

「元気そうじゃない」

「アスケラのアジトはどうしたんだ?つうか姫さんはどうした?」

ワラワラと出てきては口々に質問を飛ばす。でもその答えを待つ前に頭や肩を遠慮なく叩いてくる。それがなんだか嬉しくて同じようにやり返しながら適当に返事をしていく。

「で、本当にどうしたんだよ」

アッシュが自分から人を引きはがして口を開く。

「あぁ、それで用事があったんだ。姫さんもいるし、新しい奴もいる。一回乗せていいか?」

「あ?いんのかよ。構わねぇぜ。ボスは今いないけど、大丈夫だろ」

「出てんのか?」

「あぁ。でも夕方には帰ってくるぜ」

「そっか、ならボスに話があるんだ。それまで待たせくれよ。おーい、乗って良いってさ!」

甲板から身を乗り出して声をかければ下にいた3人と目が会う。少し待たせすぎたからか心配そうに見えたが顔を見せたら落ち着いた表情を浮かべる。そして手で招けば梯子を使って登ってきた。


「ミラは分るよな。あとはプロトとウィリアム。二人とも、これがアッシュ。俺の兄貴分だ」

「よろしくな、プロトにウィリアム、っつうか、アンタ騎士団長じゃねぇか。どうなってんだ?」

アッシュがウィリアムを見て警戒心をあらわにする。

「色々あったんだ。その辺も後で話すからさ。今は俺を信用してくれ」

「まぁ、良いけどよ。それじゃ、歓迎会の準備でもするか。ルーク、新しい船の案内してやるよ。着いてきな」

渋々、といった雰囲気もあったが今は自分の言葉を信用してくれるらしい。まぁ、この辺は仕方がないことだ。ウィリアムは気にした様子はないし、プロトも興味深げに周囲を見ている。ミラは、早速とばかりに女性陣に囲まれていた。

「おーい、ミラ行くぜ!ウィリアムにプロトも着いて来てくれ」

「あ、はい!ごめんなさい」

ミラが女性の壁を突破してやってくる。そして揃った所で入り口でこっちを見ていたアッシュの元に寄って彼の案内で船に入る事になった。

良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

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