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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
五章~ルークと新たな時代~

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24話

 十分な休息をとった後、プロトの案内に導かれる形で出口を探す。倒した敵は休んでいるうちに溶け切り、何も残すことなく消え去ってしまった。やはり普通の生き物ではなかった。ノクスの言を信じるのなら、ここを作り出した謎の集団の技術が使われた何か、ではあるのだろう。ノクスが勝てば、ああいった存在が世界に流れ込むのだろう。そう思えば、疲れた体も覚悟の鞭で叩いて背を伸ばせる。決して負けるわけには行かなかった。


「こっちだよ」

 先頭で歩いていたプロトが杖で示した先を見るが、闇が渦巻いているだけで、良く分からない。

「何かあるのか?」

「うん。見た目は何も無いように見えるけど、ここから魔力がどこかに通ってるよ。だから、出られると思う」

「そうなのか。ま、行ってみるか」

 幾ら言われても良く分からない以上、自分にはどうしようもないことなのだと諦めた。それよりも仲間の言葉の方がずっと信用できる。

「誰から行くの?」

「う~ん……ま、俺から行くかなぁ。で、悪いんだけどプロトが最後だな。大丈夫か?」

「勿論!」

「なら、俺、ミラ、ウィリアム、プロトの順にしよう。これならどこで分断されてもある程度持ち堪えれるだろうから」

「うむ。問題なかろうな」

「私も、それでいいと思う」

 全員の意思が纏まった。一度頬を叩く。それから右手に双刃剣を握り締め、仲間の顔をもう一度見渡してから、プロトの指示通りに闇へと足を伸ばした。


「ん? おぉ? っと!?」

 抜け出す時、一瞬だけ肌全体を撫でられるような感じがした。それが魔力の壁を通ったからなのかは分からないが、それも直ぐに消えて、嫌な浮遊感に襲われた。まるで落とし穴に嵌った時のような。そう思った時には完全に落下が始まっていた。

「やばばあばば!!?」

 何を口走ったのかも分からない位に焦ったが、目に映る景色を見て直ぐに状況を理解した。そして体勢を整えて着地の姿勢をとる。

「おっとっと……ふぅ、焦ったぜ」

 カツン、と硬い地面を叩く音が響く。幸い高さはあまりなかった。荒くなった呼吸も直ぐに収まって周囲を見る余裕も生まれる。

「さっきの研究室か?」

 緑がかった光に覆われた部屋だ大きなガラスの菅もあった。壊れている方も一致しているから、間違いはないように思える。

「アイツは、まぁ……いないよな」

 敵らしい気配もない。だから自分の声が良く響いた。さっきまで居た謎の空間のような気配もしないから、敵地にも関わらず、少しだけ気分が落ち着く。

「あ、そうだ。みんな同じところから落ちてくるんだ」

 まだやって来ることはないと思うが、それでも突然落ちる可能性がある。特に次に来るのはミラだ。彼女も旅を通して随分活発に動けるようになったが、これは怪我をする可能性もある。さっきの戦いで大きく魔力を消費したこともあって、無駄に聖魔法を使わせる訳にもいかない。

「どっからくるかなぁ」

 一応目星は付けられなくもないが、扉が有るわけではないから、確実性に欠ける。だから星座を探すように上をジッと見つめた。


「えっ……きゃぁ!?」

「あ、来た」

 突然に空間が歪み、足が突き刺さったみたいに飛び出してきた。そして直ぐに引っ張られるようにしてミラの全体が落ちてくる。

「よっと。大丈夫?」

「え、えぇ……ありがとう、ルーク。ふぅ……びっくりした」

 受け止めた腕の中でミラが胸を抑える。

「怪我無くてよかった。立てる?」

「あ、うん。大丈夫」

 ゆっくりとミラの足を地面に下ろす。すこしだけふらつきはしたが、問題はなさそうだ。

「ここに戻ってきたのね」

「あぁ。ま、行先は相変わらず不明だけどな」

 研究所を見渡してもハッキリと道筋が示されている訳ではない。恐らくこっちだろうというのがあるだけだ。

「それでも、あんな場所よりマシね」

「違いない。さて、そろそろ、ウィリアムも来るか?」

「受け止めるの?」

「いや、無理だし、アイツなら大丈夫だろ」

 肩を竦めればミラが揶揄うように笑う。そもそも受け止めた後の絵面が悪すぎた。


「お、これで全員無事だな」

「わわ……ありがとう」

 ウィリアムにプロトと全員が無事に戻って来ることができた。最悪、分断されることも考えていたから、正直言えばホッとした。

「また、ここに戻って来たんだね」

「あぁ。今はウィリアムがちょっと探りに出てる」

 指を差せば、少しだけ離れた所でウィリアムがキョロキョロと探し物をするように首を頻りに振っているのが見えた。

「プロトはどう? また何か感じる?」

「ううん……ここはあんまり、かな。ごめんね」

「謝ることないぜ! 皆で探せばいいしな」

「そうね。全員集まれたし、これなら探しにも行けるわ」

 ミラの言う通り、全員集まったことで行動範囲を広げられる。ウィリアムの調査も、離れられないからほぼ形だけの物だ。勿論、ここが研究室であることから必ず出入り出来るようになっている筈で、無駄に隠すようなマネもしてないと想像はつくから、彼の働きが無駄ということはない。


「お、こっちじゃないか?」

 全員で集まって道を探す。研究室は意外にも広く、そのうえそれに見合うだけのものが散乱していたために扉を探すのにかなり手間取った。

「ほら、この先になんかありそうだぜ」

 扉はひっそりと佇んでいた。錆びついたりもしていないのか、取っ手を捻れば簡単に開いた。そしてその先はまた薄暗い廊下が続いているのが見えた。

「何処に続いてるのかしら?」

「さぁな。で、どうする? 他の場所を探しても良いけど」

「まずはここからで良いのではないか? 端、という訳ではないだろうが見つけた場所からしらみつぶしの方がよかろう。それに、最終的に繋がっている可能性も否めん」

「ボクは任せるよ」

「なら行っちまおう。それに、態々俺たちを迷わす意味もない。アイツはそう言う奴だ」

「そうね。ちょっと腹正しいけど……間違ってない気もするわ」

 話が纏まった。なら後は行動するのみだ。


 廊下は比較的綺麗に保たれていた。埃こそ見えるが足元に困る感じはしない。加えて、魔物の気配もしなかった。

(本当にただの廊下、って感じだな)

 警戒するのが馬鹿らしい程に何も起こらない。そして廊下は直ぐに突き当り、別の空間に辿り着く。

「お、終わりか。で、またこれか」

 扉はなく、そのまま入れば円形の部屋だった。そして中央にはここまでやって来たあの透明の筒があった。間違いなく、これで別の場所に来いということだろう。

「どうする? すぐに行くか?」

 多分、もうこの後は休めないだろう。そんな意図を籠めて振り返る。そうすればそれぞれが自分の身の回りを確認する。もっとも一応でしかなかったし、必要なものしか身に着けていないから、本当に最後の心残しを消す為のものだ。

「よし、じゃ行くぜ」

 全員で顔を見合わせて頷く。この先、どうなっているかは分からないが、突然に戦闘が始まる可能性もある。大きく息を吸って吐く。そして筒の中に入り込んだ。

 筒は全員が入ったと同時に閉まり、動き出す。特に操作も要らないようで、自ら獣の口に入った気分だ。でも案外間違ってもいないだろう。そして静かな時間が流れた。


(ノクスが、いるんだろうか……?)

 壁に寄りかかりながら目を瞑る。こうしていると疲れを自覚するが、考えるには丁度いい感じもした。

(思えば遠くまで来たもんだ)

 スラムでの記憶から、ここまでが頭の中で何度も通り過ぎていく。その何れもが今となっては悪くない記憶だ。願いは叶った。望んだ形ではなかったが、未練は何一つとして無かった。後は決着をつけることだけが望みだった。仲間には悪いが結果までは望めなかった。でも、そんな気分だったのだから仕方がない。一人、心の中でそう思った。

「? どうしたの、ルーク?」

「ん。なに随分遠くまで来たなって改めて思ったのさ」

「なぁに? これからなのに、もう思い出に浸ってるの?」

「呑気なものだ」

「はは、そう言わないでくれよ。本当にふと、思っただけなんだから」

 主従が揃って茶化して来る。一度は全部が壊れても可笑しくなった関係が、今や以前より強固になった。なんならこんな最前線に世界一のお姫様と騎士がいる。そう思えばなんだかあまりにも変で、笑ってしまいそうだった。

「でも、ボクは良い旅だなって思うよ。勿論、今も。もしかしたら、帝都のスラムでずっと迷ってたかもしれないから」

「そう言えば俺たちが逃げる時に偶々樽に入って国から出ちまったんだもんな」

「そう。今思えばルークたちに会ったのは奇跡だったよ」

「それはお互い様ね。プロトに会えなければ私とルークは洞窟で死んでた」

「そんなこともあったなぁ……」

 綱渡りの日々だった。それはウィリアムと出会ってからも変わらない。

「それから馬鹿みたいに追って来たウィリアムといざこざもあったな」

「ふん」

「ふふ、そこからも逃走と探検の日々だったわ」

 本当に、何かがずれたら終わっていた旅だった。でもそれも終盤だ。これが終わったら。本当にそれぞれの人生を歩み直す時が来るのだ。そう思うとちょっと寂しさもあった。センチメンタルが移ったのか、和やかな空気に少しだけ寂しさが混じった。でも、だれもその事を口にしなかった。まだ、そこまで考えるべきじゃない。それが真実でもあったから。


「お、止まるぜ。さ、行こう。この旅、ハッピーエンドで終わらせよう」

「そうね」

「あぁ」

「うん!」

 そして開かれた扉から全員で一歩を踏み出した。


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