24_恥ずかしい…
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「うん、えっと…」
灯真はドギマギして汗をかきながら周りを確認すると、当然と言うか案の定、周囲の紳士淑女の注目の的になっている。尚も椿は片膝をつきながら目を伏して宣言する。
「必ずや、灯真様のご期待に応えてお見せします」
(うわぁ。ちょっと、恥ずかしいからやめてもらえない?軽い気持ちだったんだよ。「ここからはお前たちが主役だ」とか、いや、確かにちょっと悦に入ってたところはあるよ?それは認めるけどすまん!そこまでしなくていいんだよ。ほらみんなヒソヒソ言い始めてるよ!自律人形にそんなこと言わせるように自分で仕掛けているの?とか言われてるよ!)
心の中で頭を抱えて悶える灯真だが、それは逆に椿の気持ちを踏み躙る行為なのでは、とも考えてしまうし、頼んだよ、ときっかけを作ってしまったのも自分だ。
ここはぐっと堪えて息を飲み込むと
「うん…よし、じゃあ行こう」
と言って歩を進めることにした。椿たちも「はい」と言ってついてくる。
そしてそのまま、わき目もふらずに館の中へ入ると、そこは外とは全く切り離された空間が広がっていた。
「……へぇ」
天井が、高い。その高みから、シャンデリアがいくつも下がっていた。数えきれない硝子の粒が光を弾いている。壁際には古いガス灯も残っていて、そちらはやわらかい橙の光を落とし、二種類の光が混じり合うようだった。
「おお! 来たか、御影灯真!」
石段の上から、よく通る声が響いた。成益金田一である。
今日の金田一は白ではなく、濃い葡萄色の背広に身を包んでいた。胸元には金の鎖、襟には成益家の紋を象った飾りが光っている。
「うるさいな。朝から」
「うむ。調子がよさそうで何よりだ!」
このうんざりしている表情が、脳内でどう変換されれば調子がよさそうに見えるのか、灯真にはまるで分からないのだが、今日の金田一は先日よりもさらに派手なオーラを出している。これなら福溜めの守りが一時間かからず満タンになるのでは、と思うほどだった。
そして、その隣に。
「……ちょっと、声が大きいってば」
詩乃舞が呆れた表情で立っていた。金田一の誘いを受け、今日一日はともに行動するらしい。淡い藤色のドレスを着ている。着慣れない衣装だからか、少し動きにくそうだ。
灯真は、改めて館を見回す。
「流石に格式が高いな。……場違いなんじゃないか?」
灯真はやや不安気に言うが、金田一は「何を言うか!」と笑った。
「お前が演奏に合わせて舞を踊らせるというから、舞台まで用意してやったのだぞ!」
「あはは…そりゃぁどうも」
灯真は指で頬をかきながら苦笑いする。
ここまで来たらやるしかないのだ。
「じゃあその舞台、見せてもらおうかな」
***
館はいくつかの展示区画に分かれている。それぞれが大広間と呼べるほど面積も広く、天井も高い。
そして御影人形工房の展示区画は、会場東側の壁沿いに設けられていた。
「これは……」
灯真は思わず感嘆する。
一段高い小上がりの舞台には屋根まで付いている。光沢のある床板。背後には金屏風があり、演奏人形が座れるだけの空間も用意されている。
「神社の神楽殿を模して造った」
金田一が灯真の横に立ち、その舞台を見ながら言った。
「すごいじゃないか。これだけで展示物になりそうだ」
洋風、舶来の展示物が並ぶ中で、異質とも言える空間だが、それだけに目を惹きやすい
「御影灯真よ」
視線を移した先の金田一は、今まで見てきた中で最も真面目な表情をしていた。
「お前の技術は儲からないかも知れん。だが時代を牽引するものだと俺は考えている」
だからこそ、この場で広める必要があるのだ——と、よく通る声でそう言った。
その横にいる詩乃舞が視界に入る。
麗しの君と言われている彼女は、少し意外そうな、納得するような目で金田一を見ていた。きっと見直したんだろう、と思う。それはそうだ。灯真だって、金田一のこんな側面があるのを知っているのは、福溜めの守りで尾行した一件があったからだ。
「お前とは詩乃舞嬢を取り合う仲だが、それとこれとは話が別だ!だから今日は楽しみにしているぞ!」
いちいちそんな落ちをつけなくていいから、と灯真はまた、苦笑いをした。




