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この宇宙の片隅に  作者: verisuta
ビックカンパニー
9/11

新たなる事業

人が増えれば仕事も増え、会社も大きくなる。


ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー

・ストーム級フリーゲート

 エマンクリシット皇国プリズムミリタリー社製のフリーゲート艦、巨人族系国家で主に採用されるモデルでフリーゲート艦としては銀河最高速を誇るが旋回性能はお察しの通りである。長射程高火力の帝国艦に対して、素早く主砲の届く区域に侵入する為に在来のサヴェージ級よりも高速性能を向上させた。その速力はしばしば帝国軍の前線艦隊を疲弊させ、皇国軍の活路を確立する為帝国軍の悩みの種となっている。


・ES17戦術偵察機

 オヴィルツィッヒ帝国軍スパーリア社製の4人乗りの戦術偵察機。人類は他種族とは異なり偵察任務を長期間の長距離化させる傾向にある為、同等クラスのライバル機種よりも比較的大型だが、人類にしては珍しく銀河トップクラスの高速性能を有する。

エルーラ製のEシリーズとコンセプトは同じだが関係性は無い。

 アーバン船団商事のロゼンダ級がオデム=ササラに現れたニュースはギャラクシーネットワーク経由でフルジア王国中を安堵させた。女神が帰って来たと・・・しかし国賓レベル級の二人については酷い対応、王国に変わって出来る限りの待遇をしているのだが、フルジア王国政府は未対応、むしろ知らないくらいと最悪・・・まぁ、実質リストーン星系の統治権はネドリー運輸の物、未登録の船をいくら走らせようがしょっ引こうともしない・・・おかげで巡洋艦が6隻、フリーゲートは50隻、空母を3隻も保有している・・・もはや小国レベルの規模の軍事力を持った。しかしこんな物、一民間企業が持ってていい物じゃない・・・持ってては良くは無いのだが、リストーン星系から持ち出さなければならない時用に一応登録してある船がいくつかある、その為、表向きの資産として軍用艦はDG9型巡洋艦3隻、ZB8型フリーゲート22隻、サラマンダー級航空母艦は貨物船として1隻しか持っていない事となっている。一応他はリストーン星系内運用に限っているのだが、たまに未登録のストーム級フリーゲートで中古のG-8000Cをマスビダ星系のルーガの工場まで引っ張っても何も言われないのはかなり疑問に残る・・・。

 「シリウス!なぜ我が旦那を拒む!」

 「サシリアも旦那様がお好きなのですね?」

 「ミーミー!!」

 「ツェルナがパパ遊ぼだってぇ?」

 ・・・ちょっと仕事にならない。僅か2カ月、昆虫族の子供はもう歩けてしまう。シリウスはちょっと早めに立てるようにはなったがサシリアはまだまだ立つ気配すら無い、流石にテティア女王が居ればサシリアは多少離れてくれるようになる・・・多少はだ。シリウスはどうしようもないくらいルシャーサにベッタリ、そしてわがままっ子、配下の部下を一番困らせている・・・やはり母親の血が強すぎるのだろう、実際ツェルナもミヴェルマンと重なる点が多い、好奇心旺盛で誰とでも近づく、ちなみにミヴェルマンと異なる所は、お船大好きと言う所・・・一番のお気に入りはまさかのオーエンス、オーエンスが帰ってきている時はお世話係の目を盗んで大概船長室に入り込む。今となっては貴重な書籍で積み木をしたり読んでいたり、ベッドの上で飛び回っていたり、タブレット端末で絵を書いていたりとまぁまぁ自由気まま、泣く事は転んだりして怪我した時以外は完全に無いに等しい、シリウス、サシリアは何にもなくとも頻繁に泣くと言うのにだ。

 膝の上にはサシリア、ズボンの裾を引っ張っているのはツェルナ・・・社長業務自体は居住区画にあるネドリー運輸本社ビルの間接業で雇っている民間人にほとんど丸投げ・・・なにせ経営陣も船を走らせているからな?

 ツェルナはオーエンスでかくれんぼでもしたいかのごとく、中型交易ドックを指さしている・・・整備ドックの横にドッキングしてあるランスロットは雑用担当、ほとんど繋ぎっぱなしなのでそっちに連れて行った事もあるのだが、大体オーエンスに居る・・・他の船ではお気に召さないのだ。

 ・・・それはもう、リーサが気が付かずにスクランブルでオーエンスを宇宙に出してしまった事も度々あったくらいだ。

 幼児を宇宙に出すのは発育的によくは無いが、リーサは子供には甘いので帰りは多少操縦スティックを触らせたりもしたそう、初めてでもデプリをちゃんと避けるように飛ばして見せたらしいので将来有望な船乗りになりそうだ。

 ・・・で、なぜ、ルシャーサとテティアがここに居るのかだ。

 薬の材料と引き換えに薬を持ってズァパリ民国に戻る定期便の初回らしい、この後にも1週間刻みでズァパリ民国の商船がこのステーションを訪れるようだ。シリウスとサシリアの孵化の代金はこの定期路線の確立も含まれる。在来は1,000兆クレジットかけて成功率は1%未満と言われるこの手術、しかしエルムンドドエルの確立した手法ならば500億程度で実現可能、そしてたぶん100%成功する、それに期待してズァパリ民国の悩める乙女達が毎週のように来ると言うのだ・・・・だから他の女に旦那を取られる前に好きなだけ堪能しようと、ドッキングベイの廊下の広い休憩スペースの椅子でギュウギュウ詰めあって座っている訳である。昆虫族の女性は交尾をする前に男性を滅茶苦茶に溺愛するらしい、相手にとって悔いの残らない最愛の女性となる為にだ、交尾後に男性が死亡すれば直ぐに愛が冷める訳では無い、むしろ逆、一生引きずるそうだ、エルムンドドエルがこの前ぼやいていたように、大変愛が重い種族・・・非常に身に染みて感じる、大変重すぎる・・・なので次のドナーにパルサー大尉を推してみた。結果は駄目、なら研究室の男性はどうか、惜しい候補はかなり居たが100%を目指せないので却下・・・らしい。ミヴェルマンの時のように黙って提供すれば気が付かれずに済む・・・が、最善策のようだ・・・出来れば同族の女性と恋愛がしたかったが・・・。

 「ミィィ・・・」

 離れないサシリアを抱きかかえながらツェルナを抱きかかえる。そして窓の近くまで。

 「ほれ、ドーベックおじさんの船はどれかな?」

 「ミー!」

 ツェルナはドーベック艦隊の旗艦を指さした。

 「大当たりだ!じゃあオキタお姉さんの船は?」

 「ミー!」

 DG9型巡洋艦、オキタ大佐の船を指さす。

 「凄いぞ!じゃぁこのステーションの中で一番美しい船の艦長は?」

 「・・・ミ・・・ミ!」

 ツェルナは少し悩んでリーサを指さした。

 「・・・あっれ?じゃ、お姉さんの船に遊びにいこっか!」

 「ミー!!」

 ツェルナをリーサに預ける。

 「・・・ツェルナにとってはオーエンスが一番美しい船みたい」

 「美しいと言うか、自分の船が一番と言うか・・・」

 「ミーミー!」

 「分かりましたよー船長室行きましょうねーちっちゃな船長ちゃん!」

 ツェルナはリーサに連れて行かれる、お世話係もついていった。

 「あははぁ・・・ママの船、不人気みたい・・・」

 「オーエンスはツェルナのおもちゃみたいな物だからな、サシリアもお母さんがおいでって・・・」

 「ミェェェ!」

 「うーん・・・シリウスは嫌がってくれるから楽なんだけれどなぁ・・・」

 「楽とはなんじゃ!わらわが居ない間ちゃんと毎日抱えておらんかったのか!?」

 それでお世話係が焦りだす、それを横目に後ろの自販機に行く。リンゴジュースを買ってヤシマ中尉に開けさせる。それを与えれば大概泣きやみ、そして離れてもくれる。サシリアは甘い物が好きなようだ。なお、この年齢で与えていい物かは分からない。お世話係は止めないのできっと良いのだろう。

 サシリアをヤシマ中尉に渡す。こうなったサシリアはリンゴジュースを飲み切るまで誰に抱かれていようが気にしないのだ。ヤシマ中尉の顔はとろける、普段は抱けない子だ。リンゴジュースをもう一本買ってシリウスにやる。これだけは彼女も大好きである・・・本当はロゼンダ級の厨房の甘いジュースが一番なのだが、安価で簡単に手に入る物はこれしかない。

 窓の外を見ればサラマンダー級航空母艦が2隻、もう修理を終えている。

 「もう修理を終えたんですね、あの2隻」

 「UTA-334プリズムライオッド12とCDW-333エデルゼウス26・・・なんとうちが貨物船運用しているエデルゼウス25の後継艦らしい事は確認出来たよ」

 パルサー大尉の問いかけにそう答える。あの2隻、艦長をしていた者から、先代が修理されて民間貨物船として運用されていた事は知らなかったが今の我らにそんなの関係ない、本艦も貨物船なりに改造して好きに使うと良い・・・と言われて託された船である。

 「・・・なお26代目、しかもサラマンダー級だけで・・・・」

 ついでに命名規則も聞いたら割と安直だったのだ・・・沈んだら次が造船されるのでその時数字が一つ増える。

 「ちなみにプリズムライオッド12は12代目らしい、どれだけの数を沈めあっているかがよく理解出来る命名法則だな?」

 エデルゼウス26は艦載機を満載にして沖停め、プリズムライオッド12はたまに色々要求してくるエルムンドドエルの小型機で済まなかった時用のお使い船、その実態は運用用途が特に無いから置いてあるだけである。一応艦載機はギャラクシーファイター6とスーパーツァーリー8を5機ずつ搭載している。そしてステーションの小型機ドッキングベイは帝国軍機だけになっている。なぜエデルゼウス26に艦載機をまとめたか、もうステーションに収まらないからである。割とこのサラマンダー級2隻は艦載機を多く残していたのだ、早期に被弾して発艦が不可能になったらしい。皇国軍人の言い分から帝国軍人の整備士が推定した噂では新型のFT14型主力戦艦が就役したのかも知れないと言う事、この戦艦が搭載する最新型のHT-712主砲の有効射程は7,000km、つまり、うちにもあるDG9型巡洋艦のHA-603主砲のおよそ1.5倍と言う訳である。ちなみにHA-603主砲もおおよそ5,000kmの長射程を誇るが、消費電力がとんでもない・・・やはり独立した専用ジェネレーターが必要、それの開発に難航して実戦配備が遅れたらしい。いくら速くとも遠くから狙い撃ちにされれば意味が無い、皇国軍の船の速さはそれを避ける意味合いもあるのかもしれない、あるいは気が付かないうちに距離を詰める・・・まぁ、皇国軍と戦争をする理由がそもそも無い民間組織なので戦術的にどうなのかとかはどうでも良い。

 実はDG9型巡洋艦も兵装用に独立した別のジェネレーターを持っている。帝国軍の船は基本的にロングレンジ設計、理由は人間族の作る船は可もなく不可も無い平凡その物だからだ。皇国のように速くも無ければズァパリ民国のように硬くも無い、共和国のように生存性も高く無ければ、ラクトパレト王国のように機動性に優れている訳でもない、ラクトパレト王国の先の魚人族の国のように短距離ジャンプを備えるユニークな機能も無い、まだまだ他にもあるらしいが全部は知らない、これと言って平凡だからどの種族にも劣らない長所が帝国軍の船には必要だった・・・それがロングレンジと言う性質である。帝国軍はそれに主着しており、どんどん距離を伸ばす技術を研究しているのだが、それ以外は全然である事も多いのでそれなりに設計が悪い所も多々ある、現にそこそこ新しいDG9型巡洋艦にはとんでもない欠陥が存在しているようだ。

 補機の位置づけのジェネレーターがある程度大型の帝国軍用艦には必ずと言っていいほど存在する、これは純粋な主砲用ジェネレーター、問題は故障で主機のジェネレーターから主砲にエネルギーを送る事は出来ても逆が出来ない事である。理由は艦内システムは主機に依存しているので主機が落ちればバイパスシステムが機能しなくなるらしい。供給は理論的に可能だが、主機からの電源が来ている時・・・つまり壊れる前に切り替えた時のみに限るようだ。その為主砲用ジェネレーターが生きていても動かなくなる。手動切り替えは複雑で、前方の第二主砲付近の電装室から艦内のエネルギートンネルへ侵入、後方の主砲のエネルギーケーブルを抜き、それを持って大体中間部のメインジェネレーター室の天井のサービスパネルから垂らして繋ぎ替えをする必要がある。そこまでするのに3時間と必要な人員数が100人以上・・・その頃に艦内の酸素が生命維持の規定以下に落ちる。仮に復旧出来ても足の速い皇国軍の船に集中放火を受けてしまう、それをするくらいなら死んだふりして皇国軍をやり過ごし、1時間くらいで民間船が助けてくれるのを待った方が賢いと言う物、他の国にも亡命出来てメリットしか無い、だからマニュアルでそうしろとあってもやらないらしい。

 「ファルマン!何処へ行く!わらわを愛でろ!」

 「・・・仕事をさせていただけませんかね?」

 ルシャーサは腕に絡まりついてくる、さりげなくテティアもだ。子供は部下に任せたようだが、子供ならまだしも、大人二人となっては身動きも出来ない・・・デートする場所も無い、王族クラスが宿泊出来る高級ホテルも無い、このステーションの料理のレベルはロゼンダ級のシェフには叶わず、おまけに酒を入れてしまえばこの二人、シリウスとサシリアになる。本来はちゃんと接待をすべきなのだが、早々に本国へ戻っていただかなければこっちも仕事にならない。大型交易ドックを占有しているロゼンダ級3隻、装甲付きの駐機場扱いだが、残りの4隻目を巡って彼女達の部下、そしてシーモア共和国の大型貨物船が列を成してしまっているのだ。

 研究区画とは言うが、シーモア共和国大手のサイズァー薬品の薬も生産するプラントが半分を占める・・・提携パートナーだという。このステーションの原型はサイズァー薬品も出資していたようだ。薬の材料はズァパリ民国から定期的に来るようになったので増産が始まる。その為の追加の製造機器の納入が行われているのだ。

 ・・・製造機械を持ち込むのは良いが、その分やる事がある。

 この辺は3カ月もすれば薬を買い付けに商船でごった返す事になるだろう・・・その為の航路の掃除も全力、暇している帝国兵を全て不法投棄船に割り当て、不法投棄船の数は200隻近く、この宙域を航行する資材系大型貨物船で正規の船の3倍の数、リストーン星系のオロラ星系寄りのスペースデプリはおおよそ5,000kmの範囲が消失、替わりにコロニーデコイのような集積場が民間星系警察の横にそびえたつ、星系警察の新しいステーションはそこから500km程度しか離れていない近所に建設中、完全にリストーン星系の宙域の治安をうちの巡視船に依存する気だ、膨大な赤字を垂れ流している警備事業は船の税金こそかからないものの、本業やルーガの会社で相殺出来る物ではなくなっていた。だがそれでも船の数だけは超大企業、エルーラ社の営業が目の前に居た。

 「いつもごひいきにさせていただいています」

 「あんたの所からまだ1隻たりとも買った覚えがないんだが?悪いがうちは来年に倒産が確定している!」

 「その事ですが・・・我が社の部品メーカーが次々他星系へ移転していまして・・・御社に納めているER-2000シリーズ、G-7000シリーズその他旧式の部品の販売を終了する運びになった事をお知らせに上がりました」

 「メールで寄こしてくれるだけでいい、わざわざ出向いて来る事かな?」

 「・・・その、新造船への部品も入手が困難になりまして・・・なにせ物流も依然改善されないまま、ほぼ全てを御社が握っていらっしゃいますがゆえに・・・」

 「悪かったな・・・来年からは別の会社がなんとかしてくれる」

 「そういう訳にはいきません!かわりに部品販売の業績がとても好調なのです!なのですが・・・その大部分も御社のおかげでして・・・」

 「古い部品はほとんどうちが買いつくしたらしいからな?」

 「その通りです!さらに御社は廃船上がりの再生中古船を破格で小規模運送会社へ売却するとお聞きしています!」

 「悪いな、ステーションの滞納貨物で利益を出すには中型貨物以上に限るんだ、エルーラが商売上がったりなのは分かる、だがうちだけじゃ本当にどうにもならない。タダ同然、しかも熟練船員も付けて今居る王国の小型機商人に中型貨物船を渡して直ぐにでもビックになって貰わなきゃ、溜まる貨物も移民の雇用も解決しない、移民を食わせる為の税金でさらに他の業種も苦しむだけだ」

 「その船を維持する部品がもう作れません!」

 「なんとか古い部品作らせて食い止めれば良かったのに・・・」

 「そうする前にほとんどの部品工場が見切りを付けてしまったのです!このままでは弊社も倒産なのです!」

 「仲良く無職になろうぜ?」

 「わらわが養ってやるぞ?」

 「・・・いえ、他の国の、ましてや王族にそこまでしてもらうつもりはありませんが・・・」

 「そこで、当社、エルーラ社と提携関係を結ぶべく、ご提案にうかがった次第です!」

 「いや、だからうちも来年倒産が確定してるとだな?」

 「弊社の顧客の中では御社は非常に稀な企業体をしています、本業の物流事業はほぼ採算度返し、廃船修理事業は王国トップクラスの技術力、警備事業はリストーン星系の領有権を実質掌握している、さらには王国軍以上の軍事力、お勤めになられている社員の方はほぼ元軍人、おまけにステーション建築もご自身で行われる程・・・」

 「言っとくが利益は無いぞ?」

 「部品製造事業をリストーン星系で我がエルーラ社と共同で立ち上げてはくれませんか?勿論新造艦用の部品製造のついでに旧型部品は使いたいだけ製造して構いません!」

 「うちにしかメリットが無いが?」

 「御社の非合法なコレクションの技術は我が社の次世代製品の参考にもなります、それと部品輸送専属の船を少し割いて頂きます、そしてなによりマスビダ星系より他の星系とのアクセスも良い立地、十分我が社には大きなメリットが生まれます、材料を納品していただいていた取引先も失わずに済みますし今後も増える帝国軍人の雇用にも大きく貢献出来ます・・・部品が無いと困るのは御社の方では?」

 「・・・土台は作ってやるよ、部品の工作機械はそっちでなんとかしろよ?・・・ついでにマスビダ星系側のジャンプゲートにも星系民間警察の基地が欲しい所だったしな?」

 「流石のご決断です、こちらにサインを!」

 「・・・しょうがねぇな」

 端末にサインをしてさっさとエルーラの営業を帰す、翌日にはエルーラ社の社長と顔合わせだ。

 「なにあれ、高そう」

 「エルーラ社のハイエンドクルーザーだ、政治家や大富豪じゃない限り買えない代物ではあるが、闇ルートで出回る中古のロゼンダ級のおよそ10分の1くらいだ、億万長者はプレミア物のロゼンダ級を選ぶ・・・ま、帝国領内じゃその手の富豪はもっと高級機種にお乗りだから逆に珍しいだろ?見た事が無くて当然だ」

 「来年には倒産が確定している私らには縁が無い乗り物と・・・」

 「それ以前に武器商人ご用達のクルーザーが3隻もあるぜ?あんなもんあれば逆に無用の産物だ」

 ステージアコロニーでエルーラ社の大型高級クルーザーVZR-2000XとPC-800を出迎える。うちはオーエンスとランスロットだけ・・・海賊船に出迎えられ、初対面ではいい顔はされる訳無いだろうが、リストーン星系の研究ステーションまで護送すれば綺麗に並べられた修理待ちの廃船、そして大きく目を引く民間が本来所有してはいけない軍艦の数々、大型船用のドッキングベイから大型交易ドックへ連れて行けばこの星系では非常に珍しいロゼンダ級、それも3隻、うち2隻は銀河に2隻しかいない白く金装飾の入った巡洋艦型、大型交易ドック管理センターの会議室に入れれば完全に別人になった。

 「いつもお世話になっております、エルーラ社ライコネン社長」

 「全くだ!御社の事業はいつも私の邪魔をしてくれる、ネドリー運輸を無理矢理大きくしたのはやはり貴殿か・・・ドミッドラー社長殿?」

 「無理矢理大きくなったのは国からの圧力ですぜ?私が大きくした訳じゃぁ無い・・・しかし、御社からネドリー運輸と共同で新工場建設の話が来るとは予想外でしたよ・・・」

 「もとはと言えば部品の輸送経路が無くなった事が事の発端、部品が一切動かなくなり、製造していた会社は機械を止めざる得なくなった!半年経ってもステーションの滞納貨物が多すぎて出荷もままならない、サリマン運輸がマスビダ星系から離れてからの大混乱は貴殿ら無しでは収束の目途が立たん、ネドリー運輸以外も強引に大きくしなければもはや国家破綻の危機だ、小規模商人にはゴミから出来た船にタダ同然で乗り換えて大きくなってもらわねばならないのだ、これはほとんどその為の工場だ、仕様はこの通り・・・一つでは収まりきる規模ではない、資金は我が社から出そう」

 ルーガが端末を受け取って内容を確認する、そして下へスクロールしていくたびに顔が歪んでいった。

 「スラスターassyにエンジンノズル、隔壁ドアから取付ナット・・・パッキン系はこれ全滅・・・?制御コンソールのモニターまで無いと・・・ああ、ユニットキッチン回りはこのリストに無い・・・となると、キッチン回りしか残ってないのか?これ・・・うーん、実質ほとんどじゃないですか?これでは現行モデルの製造すら出来ないのでは?もちろんそれぞれの工場の従業員も一斉解雇に?」

 ・・・全部・・・。

 そりゃルーガの顔も歪む。例えばエンジン工場が潰れたとか装甲パネル工場が潰れた程度だと思っていた。まさかのおおよそ全部、ルーガから黙って渡された端末を眺めればなるほど、どれが何を作っている工場か、全ては分からないがジェネレーターからちょっとした子部品まで、何処かで見た事があるメーカーの名前もちらほらと、それが数千万の倒産会社リストの中にあった。これでは宇宙に浮かぶキッチンしか作れない。

 「その通りだ」

 ライコネン社長も相当焦っている様子、下請けがほとんど倒産となれば親会社のエルーラ社の存続も不可能に違いない、事の重大さに今気が付いた。このまま静観していればうちの大部分の船は共食い整備ののち、部品不足で運用不能になる。

 「・・・これは早急に着手しなければなりませんね、建築であればドローンに任せれば一カ月もあればそれぞれのプラントは随時稼働していくでしょう、材料などはごらんになられた通り、その辺に交通の障害になりえる程浮いています、よって建築費用はほぼほぼ不要です、従業員だけ用意してもらえれば・・・で、我が社は警備ステーションを兼任する物流コロニーをマスビダ星系側に建造します、ゲート付近は一大工業地帯にできましょう」

 ルーガが言う通り、まずは土台、そう土台、工業用プラットフォームなんて建設にそう時間はかからないはず、年式にもよるが現在支流となっているのは従業員5千人くらいまでが駐在出来る横幅60km前後クラスの居住と貨物ドック併設型の平たいプラットフォーム、工場その物はそれぞれのニーズに会わせてその上と下に建設される。その土台は工程や大きさからもコロニー建設より遥かに短期間で建設可能なはずだ。

 「取引先で解雇された従業員を我が社で集めよう・・・将来的には造船ドックをリストーン星系に構えたいくらいだな、我が社の造船技師が分解してみたい異国の船がこの宙域には沢山ある」

 「ロゼンダ級だけは勘弁していただけると・・・一隻はうちで面倒見てますが全部他社の船なんですよ、あれは・・・」

 「狙う海賊が多い、警備事業が民間で持てない軍艦を大量に抱えている理由がよく分かる・・・我が社もそれだけの価値のある船を作りたいものだ・・・今後も良い関係を築きたい」

 「こちらもです」

 ルーガとエルーラ社の社長が握手する、その様子を隣で眺めていた・・・本来はかなり関係が悪い事業同士、壊れてくれなければ新しい船は売れない、壊れた船を直さなければ食べていけない、特に俺らのせいで壊れきった船を直させているルーガのシルバーロッド整備工場はエルーラ社にとって迷惑極まりない存在なのは事実、しかし現状弱小しか居ないフルジア王国の物流を手っ取り早く早急に立て直す方法は小型機複数機以下の事業者にゴミ同然の中型貨物船に乗り換えてもらう事、これに尽きる。エルーラ社の社長もうちの考え方は理解しているようだ。全く利益の出ないステーションに長期保管の荷物を利益の幅が少ない船で運んでいても永遠に顧客が新造船を買えるようにはならない・・・古い部品を作って早く顧客を生み出してもらわなければならないのだ。もちろんエルーラ社が抱える自社整備工場も潤う、実質売り払った船は他社整備工場へ押し付け状態、アフターサービスはスケジュールが合わなければ同業他社に振っている時もあるし、元々小型機で付き合いのある工場があるのならばそこで面倒を見てもらう事を推奨してもいる。それで他も潤っているのだから整備関係は現在ウハウハではある。

 そうして1カ月後にはエンジン工場が完成したのだが・・・。

 「今日は海賊船とは珍しく商人らしいでは無いかね?」

 「俺の船は元々この船ですよ?ネドリー運輸の商船第2号だ、それにセルルド星系に軍艦を持ち込むのは護衛対象無しだと色々勘違いされて厄介なんだ、いまだうちの貨物空母が帝国軍に沈められてないのか謎でならない」

 「新型はともあれ旧型はクルーザーとして使う者も多い、それに海賊船と組んでいるからであろう?そして、君とセルルド星系で会うとロクな事が無い」

 「全くだ、貴方は良い人だがセルルド星系ではズーデンド通商とは絶対に会いたくないよ」

 「オデム=ササラでなら大歓迎なのだがな?今度ステーションで会ったら軽くランチでもどうかね?」

 「是非ともご一緒したいよ・・・今日は相打ちって所だな?」

 「だいぶスーパーツァーリー8が健闘したようだな?ギリギリ帝国の勝ちと言った所だろう」

 「・・・やっぱり警備にフリーゲート欲しくありません?」

 「我は雇われ船長だ、会社が欲しいと言わぬ限り我も要らん」

 「「はぁ・・・」」

 いつも通り、ズーデンド通商含むトライアド籍の船は皇国側、ジェリーガン船団運輸は帝国側のほうに来てくれる。はい、いつものごとく収容限界だ。

 「旦那よ!戦艦は要らぬかね?」

 「これさえあれば、リストーン星系も安泰・・・」

 「ルシャーサ女王陛下?テティア女王陛下?それは流石にフルジア王国軍が黙っておりません、おやめください」

 「とは言え、ZB8型フリーゲートも予備の在庫が海賊の船並みにあるでは無いか?そろそろ艦隊旗艦級の船を揃えるべきだろう?ドーベックに新しい船でも与えんかね?あのような男に駆逐艦は不釣り合いだ、皆の物!拾うぞ!」

 「たかだか海賊相手になぜ正規軍の艦隊と同等の戦力を揃えねばならないのですか・・・」

 ササリッサ級とジェリーガン船団運輸が雇ってくれたストーム級フリーゲートが牽引の準備を始めてしまう。もう女王様艦隊もサルベージはお手の物、実はズーデンド通商も同様の事に長けてきた。しかしフルジア王国とは違い、トライアド民主共和国は乗員の引き上げ後、きっちり押収するそうだ・・・その押収保管宙域も4個艦隊分はあり、民主共和国軍は修繕して運用も考えているようだが、軍事費による増税にデモが発生している為、現状は直して使う事も出来なければ解体する税金も無いらしい。

 「あーあ、始めちゃったね、ついにうちも戦艦持ちかぁ・・・しかもFT14、最新型よ?」

 「絶対にリストーン星系から出しちゃいけない船だぜ?あれ・・・」

 「うちの整備士達が大興奮するのは間違えないわ、そう簡単に乗れない船だもの・・・ま、ルシャーサ女王陛下ならばそれはもう簡単に・・・配下に出来るわね?」

 ストーム級フリーゲートに乗っていた海兵隊員がFT14型戦艦の指揮権の掌握に成功を告げる。むしろ女王様、海賊ごっこを楽しんでいる節まである。ズーデンド通商も新旧問わずのフリーゲートを一杯拾っている、うちの真似をしてニコイチも余裕で覚えたようでなにより・・・だがフルジア王国軍、オロラ星系の前線ステーションの前を通過しようとも無反応、その手のコネクションがありそうなオレット巡査もとい、オレット巡査部長経由でフルジア王国軍に欲しいかどうか聞いてみた、結果は・・・。

 「そんな物を王国軍が運用すれば、帝国軍と皇国軍が黙っていない、お前の膝元で適当に転がしていろ・・・だとよ」

 オレット巡査部長はタブレット端末にその文面を映してテーブルの上に置く。どうせそうなるんだよ・・・。

 「だよな、王国軍の戦艦は射程もポンコツだ、ポンコツだからこそ、皇国軍は手出ししてこない、弱い者いじめは他国が黙ってない、だから押収しない。DG9型巡洋艦の時で大体察しがついてた」

 「ただし、有事の際は徴用するそうだ、何隻でも増やしても構わないがちゃんと手入れはしておけだと・・・実際欲しいのは見え見えだぜ?旦那?」

 「当たり前だ、王国軍の戦艦の4倍の射程だぞ?本当は欲しいに決まってる、セルルド星系に置いておくだけならドライアド民主共和国軍の押収宙域と変わらないからな?皇国軍も帝国軍も民間が人命救助でキャパオーバーの上等手段で破損した軍艦を牽引している事くらい知っているはずだ、その後の処理にも困っている事にもな?それに両軍徴兵された者同士、同情心から一定数航行不能に留めているのを残しているまである」

 「返せと言わないのはそれぞれの造船企業の利権の為だ、それに足りないのは船じゃなく人だ。しかし、自分の部下は自分で産む種族が旦那から護衛の船を雇うとは想定外だな?何故だ?」

 「ロゼンダ級、卵は剥製、船は銀河最高額の高級クルーザー、アーバン船団商事のロゼンダ級のようにちょっとでも治安が悪い所へ足を踏み入れれば直ぐに盗難される、それが宿命だったらしいが、女王様艦隊がストーム級フリーゲートを10隻お雇いになった事がズァパリ民国の価値観に革命をもたらしたようだ、別の種族を雇えば船を増やせる・・・実際海賊船は人気だぜ?ロゼンダ級の足に十分付いていけるついでにちょっと貨物が積める、護衛兼貨物船は赤字も出ずにお小遣い稼ぎにピッタリ、それにズァパリ民国の飯は上手いからな?おかげで元帝国軍人の中でも倍率は高い」

 「へーっ・・・食べてみたい物だぜ」

 「・・・この子を母親の所へ警備すれば・・・食べさせてもらえるかもな?ちょうど昼時だ」

 「ミーッ!!」

 足にベッタリくっついているサシリアを持ち上げる。非常に嫌そうだが、抱きかかえれば即満足顔、流石のサシリアももう歩ける。俺の上ならツェルナとも遊ぶ・・・だが俺から離れる事はしない、俺を見つけたら目にも止まらぬ速さで引っ付いてくる。

 「パパぁ!ご飯ー!お腹空いたぁ!カップラーメン!」

 ツェルナはもう言葉を話せる・・・のだが、よくオーエンスの食堂でヤシマ中尉のカップラーメンをつまみ食いするせいでカップラーメン中毒、昆虫族は基本は草食だが魚介だの豚骨だのを好き好んで食べる・・・消化器官には悪いが、食べられない訳では無いらしい、ルシャーサの部下からは念を押して言われた。

 「人間族の体にもあまり良くないと言う物を好き好んでねだるおチビちゃんだなぁ・・・」

 「ちょっと人間に慣れ過ぎたようだ・・・」

 「早くも子育て失敗か?」

 「ほぼ軍人だらけのステーションだぞ?無茶言うな!」

 オレット巡査部長を連れて居住区へ、駅を出るとズァパリ民国製のリムジンが待っている。人間族の物とはひとまわり大きい、車幅が車線をはみ出してしまうが、これは女王様達の私物、優先手的に通して貰わなければならない・・・これからも月一ペースで来るようだ。その車に乗せられてアーバン船団商事のビルへ、ちょっとお願いすればオレット巡査部長の分まで出てきた。

 「うっひょ・・・こりゃすげぇ」

 「だろ?ズァパリ民国行きはこれが毎日食べられる、肉が無いのは苦しい所だが」

 「わたくし達は本来短命ですので、食事も妥協は致しません!」

 「・・・なのにおぬしら、長寿な事を良い事に毎日しょぼくれた飯で腹を満たしおって・・・そんなので幸福は得られるのか?」

 「それは・・・まぁ・・・そうせざるえない国ですので・・・」

 ひとまずスープをサシリアの口に運んでやる。ツェルナは自分で、シリウスは本日のスープがお気に召さないらしい、お世話係が手を焼いている。

 食事を終えればオレット巡査部長は星系警察本部へ帰っていく。星系警察本部もコロニー型、銀河でも真ん中くらいのステージアコロニーに迫る大きさだが、コロニー型にしては建築期間が異様に短かった。なんとこれ全てが留置場、だから短期間で済んだらしいと言うのがまた酷い、建築費用も2,000兆クレジットはかかっているそうだ。

 「ミピィ・・・」

 食後もサシリアは離れない、お昼寝も俺の上・・・一体何が楽しいのかよく分からないが今日は事務職・・・そのつもりだった。

 「ファルマン!お使いたのもー!」

 「・・・今日は無理だ、王女様が離れてくれない」

 「小型機で済む!ボロでも平気!大気圏突入は無し!」

 「王女様に引っ付かれたまま宇宙には出られないんだ」

 「おねがいおねがい!」

 「悪いがそんな目をしてもお昼寝中の王女様には勝てんぞ?大体今度は何だ?」

 「三つ目属で流行している感染症のサンプルを取ってきて欲しい!」

 「俺のポンコツを貸してやるから自力で行け!」

 「操船免許を持っておらぬが?」

 「・・・貴様ッ!と言うか偵察機隊のパイロットに頼めば良いだろう!?」

 「皇国領を通る!帝国兵の、ましては帝国軍の主力偵察機では不向き!しかも彼らの上から目線の手にかかれば直ぐにドンパチしかねない!お主が行くべき!」

 「・・・この野郎!」

 王女様には悪いが起きて貰う、目をこすりながらも離れない・・・無理に引き剥がせば後は大泣きだ、だが心を鬼にして小型機ドックまで・・・帝国軍の最新鋭の機体が所せましと並ぶ中、ポンコツと非常にポンコツの所に行く。E-900MとルーガのE-1000Mだ。機体電源を入れて出発準備を整える、そしてアンドッキングだ・・・しかしポンコツ、久々に動かしたせいでエンジンがちょっと怪しい・・・しょうがない、プリズムライオッド12から適当な皇国軍機を借りるか・・・。

 プリズムライオッド12に着艦、基本的に用途が無いので無人で係留エリアに沖止め、自動応答の着艦システムで着艦、そして席を立ち上がれば、お嬢様がお二人・・・こちらを見ていた。

 「・・・機内はもう少し確認しておくべきだったが・・・サシリア!何でついてきた!外は危ないんだぞ!?」

 「ミェッ・・・」

 サシリアはぐずりだした。

 「サシリアちゃん、パパのお手伝いしたいんだよねぇ?」

 ツェルナの言葉でサシリアは頷く、ツェルナはサシリアの頭を撫でながらE-900Mから真っ先に降りて行った。

 「おっきぃ!今日はこれでお仕事ぉ!?」

 「・・・そのつもりじゃ無かったんだけれどな」

 ここへ置いていく訳にもいかない、皇国軍の偵察機、サイレントスリーパー5は単座だ、短距離用途の機体で道中も厳しいが、ステーションを点々とすれば不可能では無い。そのつもりだったが、プリズムライオッド12はクソトカゲのお使いの最終手段用なので商船よりかは安く済むクルーザー扱いで登録してある。個人の貨物受け取り程度であれば商船登録など金の無駄遣い、なぜ武装そのままなのにクルーザー登録出来たか、兵装系統の電源ケーブルを電源管理室で軒並み外して使えなくしてあるからだ。ちなみに艦載機はサイレントスリーパー5の1機を除けば全て未登録である、ステーション連絡機としてクルーザー登録に必要だっただけ、これは別に短距離シャトルでもいい。何故それで登録が出来てしまったのか、皇国の武器商人のクルーザーは私兵を一杯抱えたサラマンダー級を筆頭とした空母が主流であるからだ。貨物船運用は銀河ではうちだけだが全方位から恨まれる人ほどこの船に乗る傾向にある。

 艦橋に行くも誰も居ない。ツェルナは艦長の椅子の上に立ち、しゅっこーと言う、サシリアもみゅこーと言う・・・言葉を話せるようになってきたのはサシリアの方だった。

 「・・・悪い、今日一日プリズムライオッド12を借りてく・・・いや3日くらいかな?」

 ルーガに電話してから操縦コンソールに座った。帝国軍にさえ気を付けていれば皇国軍には何も言われないようだ。

 「僅か半年も立たずに死の商人にでもなったのかね?」

 「本当は乗り回すつもりじゃなかった・・・王国製のポンコツ偵察機で面倒事を終わらせるつもりだったんだ」

 「サラマンダー級をクルーザー登録する者は他にも居る、登録通りなら民主共和国軍からとやかくは言われぬ」

 「これからトライアド民主共和国の厄介な疫病の治療薬を作る為のサンプルを取りに行くんだ、少なくとも俺は死の商人では無いはずだ・・・たぶんな?」

 両脇にはノア級大型貨物船、ベーベル級大型貨物船がそれぞれ一隻ずつ、ギャラクシーネットワーク上のトランスポンダーは両方ともノースソルドック商事、エルムスミエルの貨物船団だ。

 「エルムンドドエル博士が薬を作ってくれるのだな?我々は祈りを捧げて何でも解決しようとする種族・・・ゆえに医学に弱いのだ、これで我も安心してステーションに降り立つ事が叶う、それにしても小さな船長達ではないか?良いのかね?」

 「・・・この巨体だ、大丈夫だろ?ミヴェルマンの子のツェルナとズァパリ民国ランドラー王家のテティア女王陛下のサシリア王女殿下だ」

 「なんと!噂に聞いていたミヴェルマンの子とは・・・誠に愛らしい!」

 「あー!ママの3つ目のお友達ぃ?」

 「エルムスミエルおじさんだぞ?ご挨拶は?」

 「おじさんこんにちわ!」

 「こんみちゅわ!」

 「おーうおーう!こんにちわぁ!」

 エルムスミエルの顔が満面の笑みで緩み切る・・・巨人族も緩むようだ。

 「こ・・・子供とは誠によき者だな・・・」

 「早く相手見つかると言いな?」

 「うるさい!もうすぐでジャンプゲートだぞ!一度通信を切る!」

 「了解」

 通信が切れる。それから6つのジャンプゲートを飛び、グリッドロッド星系のドライアド民主共和国の首都惑星メルスナルの大型ステーション、グリニッジステーションに付いた。銀河で3番目に大きいステーション、ほぼ銀河の中心とも言える商業都市コロニーだ。ステージアコロニーの10倍もある、人口は100億超えと言う、非常に巨大なステーションが目の前にあった。

 「でっかい!」

 「そうだな?」

 巨大建造物と言えば自分達が暮らしているコロニーしか知らないお嬢様達が更に大きなステーションを目の前にして大喜びする・・・しかしこれでも3番目、2番目は帝国のリコリスⅡ国際ステーション、1番は皇国のエルガバ神殿要塞、銀河の経済の中心が一番大きなステーションなのは当然の事である。ステージアコロニーは下の方のランク外だ。

 「さて、人間族は宇宙服を着たまえ、小さき船長は必ず置いていくように」

 「与圧されていないのか?」

 「馬鹿者!今流行っているM-25DROSウイルスは人間族を直ぐに殺す驚異的なウイルス、我々にも防護服が国から支給されておる、そして貨物の受け取り以外は許可されぬ!」

 「分かった・・・そういう訳だから、ツェルナお姉さんと一緒に居てくれ」

 「ぱぱ、しんみゃうの?」

 「宇宙服着ないと死んじゃうな?ツェルナ・・・マジで頼むぞ?」

 「任せてぇ!」

 ツェルナはサシリアをギュッっと抱きしめて艦橋に残ってくれる。サシリアはバタバタ泣き叫んで居るが下に居る軍人らしい人を待たせる訳にもいかない。宇宙服を着てプリズムライオッド12を下船、そして核物質運搬容器のような危険物中の危険物のコンテナの横に軍人が立っていた。ひとまず敬礼しておく。

 「エルムンドドエル博士の使いの者よ、遠い銀河より大変ご苦労である!本来礼儀として握手を交わすべきだがこの災厄の真っ只中、お互いの為にも省略させて頂く事とする!」

 防護服を着た民主共和国軍の兵士はまず目の前に小さいケースを置く。

 「これは我が国で調べた大まかなウイルスの特性などの解析データである、博士にお願いしたい、それとこれはそのウイルスのサンプル、扱いには気をつけたまえ、事態の早期解決に是非ともご尽力頂きたい次第」

 「謹んでお受けいたします」

 そう言って頭を下げる。明らかにヤバそうな貨物はクレーンで射出甲板まで上げられ、甲板の壁際に固定された、そして、船に戻る際に透明な液体をかけられる、消毒液だそうだ・・・プリズムライオッド12で来て正解だったのかもしれない。カーゴベイに搭載してはならない危険な貨物みたいな扱い、カーゴベイはあるが使われなかったと言う事はそういう事だ。巨人族がサラマンダー級のカーゴベイの場所を知らない訳が無い。

 「ツェルナ?戻ったぞ?・・・何でそんなにびしょ濡れなんだ?」

 「パパが早く帰ってこなかったからぁ?」

 「言ってたかが10分程度だぞ?」

 ぐじゅびっ・・・。

 航行コンソールの下でサシリアが膝を抱えて丸まっている・・・要するに10分くらい泣きっぱなしだったらしい、ツェルナの顔には泣いた後が一切無い。

 「ほら、サシリア、戻ったぞ・・・?」

 そう声をかけ、まばたきをした時には航行コンソールの下にサシリアの姿が無い・・・ゆっくり下を見れば膝に抱き付いて大泣きしていた。ツェルナはまた別の意味で俺の足をすりすりしている・・・いつもお世話係達はどうしているのだろうか、こうなってくると非常に疑問である。

 「ネドリー運輸のサラマンダー級、至急当ステーションからアンドッキングせよ、長居は危険である」

 「UTA-334プリズムライオッド12、直ぐ上がる!」

 ひとまずサシリアを抱えて操縦コンソールへ、自動シーケンスでアンドッキング、貨物船としては規格外の大きさである空母すら飲み込む大型交易ドック、もう少し見て回りたい所だが、他の船も荷役を終えれば即アンドッキング、銀河時刻では昼なのでステーション近くの沖停め宙域は大型商船で一杯、そこで休憩だが・・・。

 ・・・変な味なんだよな・・・。

 謎のゼリーパック・・・巨人族の主食レーション、我慢すれば食べられなくも無いが、何と言うか、不味い。ツェルナ達にはカップラーメン、E-900Mに買い置きしていた物だがそんなに数は無い。

 「わーい!カップラーメン!」

 「・・・かっぷみゃーめん」

 「・・・マジでママ達には内緒だからな?」

 この船でツェルナ達に与えるのは3回目、もう2回もこっそり与える必要がある。ひとまず謎のゼリーを我慢して食べるが、食後・・・なんか意識が飛びそう・・・。

 「・・・ここは?何でゾリゾさんが?」

 「良いから食いな!」

 気が付いたら気絶していたらしい。マドリニスゾリゾによく見るクッキー型の高カロリーレーションを口にぶち込まれる。

 「我らの主食は消化器官の短い他の種族では一切栄養は吸収出来ん!道中のリストーン星系の通行止めで追いついたので声をかけてみればミヴェルマンの子が一人で操縦しておったぞ!」

 「よく事故にならなかったねぇ・・・交通量滅茶苦茶多いんだよ?あのルートは・・・全く一人でよく止められたねぇ・・・」

 「えへへぇ・・・リーサお姉ちゃんが動かし方教えてくれたのぉ!」

 ツェルナはマドリニスゾリゾに頭を撫でられる・・・。

 「どう考えても、この天井はオデム=ササラだな・・・俺の記憶ではグリッドロッド星系すら出ていなかったような・・・」

 「なんだい?ミヴェルマンの娘はこの歳で無免許運転かい?いくらクルーザー扱いとはいえもう少し人を乗せんかい!お前の所なら負債になるくらい余っているんじゃないのかい!?」

 「とはいえ、ただの栄養失調で安心した、グリニッジでウイルスに感染したかと思ったぞ!」

 「エルムスミエルさん、ゾリゾさん、すみません」

 「トライアドの方まで飛ぶなんて珍しいじゃないか、それこそあんたみたいな自国の商人にここまで持ってきてもらえば良かった物を・・・」

 「軍はそこまで考えていなかったようだな、緊急事態でネドリー運輸を直接指名したのだろう・・・とはいえあの船をここに乗りつける訳にもいかん」

 「そもそも入らないよ!あんな横が広すぎる船!特大型級だ!」

 エルムスミエルとマドリニスゾリゾが言い合っている間に起き上がる。サシリアが張り付いていた。真上にはベーベル級の丸い船首、ゾリゾの足元にはコンビニエンスストアのビニール袋、人間族が食べられる物を急いで買ってきてくれたのだろう、ベーベル級の船首の先方向を見れば、色々な種族の商人がせわしなくしている。

 「安心したまえ、君のクルーザーは沖に止めて置いてある・・・悪いが・・・その・・・」

 「乗員も補充してくれたってさ?帝国軍人がパンパンらしいね?わたしゃ知らん、セルルド星系に行く用事が無いからねぇ?今後はコイツらのレーションは絶対に口にしちゃいけないよ!逆に私らの飯は三つ目族にとってもあまり良い物ではないんさ、ほら、やるからこれ食って今日はゆっくり休みな!」

 マドリニスゾリゾは足元のビニール袋を投げつけてくる、ちゃっかりリンゴジュースが2本、子供二人が目を輝かせる。

 「ありがとう、ゾリゾ」

 「ゾリゾー!ありがとぉ!」

 「あみがとう!」

 「あの船はもっとおおきくなって、お船を操縦する免許を取ってから乗り回そうねぇ!おばちゃんとの約束だよ?」

 「えー!リーサに頼めば何にでも乗せてくれるのにぃ!」

 「・・・アンタの所は何処まで無法地帯なんだい?」

 「・・・エルムンドドエルの研究ステーション初めての子供なんだ、皆このように緩み切った顔をしてなんでもいう事を聞く」

 エルムスミエルの顔を指さす、マドリニスゾリゾはゆっくりエルムスミエルの顔を見上げた。

 「へぇ、アンタもそんな顔できるんだ、そういやアンタ、まだ相手見つけないのかい?」

 「も・・・もう少し!会社を大きくしてからだ!ほら行くぞ!荷役が終わった!」

 エルムンドドエルは同様しながら俺を引きずってベーベル級の搭乗口に行く、マドリニスゾリゾがニヤニヤしている。

 「じゃーねぇ!ゾリゾー!」

 「ゾリゾー!」

 「元気でねぇ!」

 ツェルナとサシリアはマドリニスゾリゾに手を振りながらついてきた、マドリニスゾリゾもまた手を振り返す。その後はエルムスミエルの船でプリズムライオッド12へ、ゾリゾに貰ったケバブサンドを食べながら人の多い艦橋の艦長席に座る。

 「しゅっこー用意!リストーン星系のお家までぇ!」

 「かしこまりました!キャプテン!」

 「・・・セルルド星系のエルムンドドエル所有の研究ステーションまでな?ギャラクシーネットワークの星系図に登録してある」

 ・・・しかし辛い。

 爬虫類族は辛い食べ物が大好物なのである・・・。

 プリズムライオッド12は帝国軍人の操船で研究ステーションに向けて出港、まさかとは思うがAT3型航空母艦4隻、ZB8型フリーゲート20隻、FT14型戦艦2隻、DG9型巡洋艦が4隻、MA30型重巡洋艦が6隻も付いてくる気か?・・・いや、まさかな?

 結局一個艦隊を率いて戻って来たお嬢様方はそれぞれのママにお叱りを受け、そして俺もお世話係にこっぴどく叱られた・・・泣く程でも無かったが、リーサのようにちょっとその辺程度では無かった、ガッツリ遠洋航海だったからだ。帝国軍人達はセルルド星系からのお土産でそれどころでは無い、あいにく仕事先はいくらでもある・・・問題はこの一個艦隊だ、何処と戦争する気なのだ?たかだか海賊清掃に充てる戦力では無い、あいにく整備士がかなり居るので、セルルド星系からの追加のゴミ回収でもれなく全艦復旧してしまう訳だが、この星系はもうネドリー運輸の国とでも言わんばかりに好き放題私物化している状況、護衛艦隊はもうDG9型巡洋艦が主力、警備船登録してある船は星系外でも使えるが、使えないZB8型フリーゲートの数が多い、もう戦艦の数でさえフルジア王国軍を超えてしまった。


ー銀河の常識ー

 獣人族国家の一つで獣人族系の様々な種類が暮らす多種族国家、人口比率は人類的に言えばは猫科と言える種族が最も多く、本来爬虫類属に分類されるべきとも思われる竜族、ドラゴン属が2番目に多いが、獣人族連合と言う派閥の都合上、たとえ爬虫類属だろうと、人造生命体だろうと、昆虫だろうと所属していれば関係なく獣人として扱われる。

主なコロニー

一応通行に支障はない程度に空き宙域やコロニーは整理されているが1銀河に数えきれない程一杯

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