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この宇宙の片隅に  作者: verisuta
ネドリー運輸
8/11

女神の復活

スミオル・ミヴェルマン、フルジア王国建国以来初めてマスビダ星系に訪れたズァパリ民国人にしてフルジア王国の深刻な物流問題に手を差し伸べた初めての外国籍商船の船長。その船団の旗艦は赤く、とても美しい事で知られる。


ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー

・AT3型航空母艦/AB-6000型航空母艦

オヴィルツィッヒ帝国軍ユーリアス社製の現行型航空母艦。全通式甲板を持ち、上から着艦、船首から発艦する方式で、カタパルトを装備しない銀河では珍しいタイプの空母となっている。

フルジア王国軍が運用するエルーラ社製のAB-6000型航空母艦はAT1型航空母艦の改良派生品で主要な構成は同じ設計をしているが、性能的にAB-6000型はAT3型に比べ遥かに劣る。

帝国艦の中では唯一箱型の形状をしているが、大気圏突入や惑星海上への着水も想定した作りをしており大気圏突入用の甲板閉鎖扉を備える。この扉はステーションから直接機体補給を可能としており、空母以外にも補給や強襲揚陸と言った専門外の用途も可能としている。

ネドリー運輸ではAT3型航空母艦のエンジンをセブンスターエンジンへ換装し高速化を図った結果、銀河最高速の空母に成り上がってしまった。割と伸びしろがある空母でもある。


・F405戦闘機

オヴィルツィッヒ帝国軍スパーリア社製の単座戦闘機、真空から大気圏まで幅広い環境での操縦性能も良好な為、速度以外は銀河最高性能を有する優秀な戦闘機と言われている。主な武装はレーザー系だが重火器についてはALMAAスペースミサイル等実弾系を使用する為皇国軍機に比べ手数が少ないのが最大の欠点とも言える。その為実弾兵器を調達出来ないネドリー運輸では余程が無い限り運用に着かない。


 ルーガ達の手でも割と時間がかかるロゼンダ級の修理作業、だがそれはルシャーサ、テティアの部下でも同じ、どんな手を使っても、どんなに良い施設でもそれなりに時間がかかってしまうと言う。理由は多種族の船のような、鋼鉄のパネルや部材の組み合わせという訳では無いからだ、簡単に言ってしまえば樹脂製のような船と言って良い。厳密には樹脂では無いが、その成形や材料加工にもの凄く時間が掛かる・・・そうしておおよそ一カ月もかかって大体元通りとなったミヴェルマンのロゼンダ級大型輸送船、やはり美しい・・・が、ツェルナが生まれた以上、本来は存在してもいけない船、なぜなら無精卵を抱えながら恒星ルミナスの先へ旅立つ為の棺桶であり、抱える無精卵が無くなってしまった以上そもそもの役目を果たせなくなってしまう・・・と言うのも、通常昆虫族も土葬が一般的、例外は船乗りに多いのだが、ズァパリ民国自体も基本は母なる惑星、ズァパリで土葬される決まりに従う事となる。必要性を失う船は早々無いのだが、クソトカゲの医療革命はそういう船を生み出してしまうのだ。

 大変美しいロゼンダ級、本来廃艦となるのは非常に勿体ない・・・ミヴェルマンのロゼンダ級は今まで通り商船として今後も運用されるのだが、ルシャーサ、テティアのロゼンダ級は本当に用途廃止にするつもりらしい。

 ・・・外交とかはどうするのだろう?

 そう思うのが普通だろう。実はロゼンダ級の4倍以上の大きさを有する王家専用お召艦のクイーン級という艦種が存在するらしく、本来外交などはクイーン級を使用するのが通例だったようだ。むしろロゼンダ級を使う事自体が異例だったと言う。

 「ミヴェルマンよ、まだ棺桶は使う気なのだな?」

 「勿論でございます。女王陛下、ツェルナの為、エルムンドドエル様に恩を返す為に必要な船でございます・・・それに、他社籍の巡洋艦をいつまでも旗艦として使い続ける訳にもいきません」

 「そもそもお主の為に建造された船だ、今更国に返還しろとは言わぬ、今後も役立てたまえ・・・聞くに部品を買い付けようとした修理業者と商船会社は三つ目属と人間族の戦争のせいで難民を抱え大赤字と聞く、その為お主の船の修理費は国費で修理する事とする・・・お主の船の一件が無ければ我も次の世代も宿せなかった事だ」

 「ありがたく存じ上げます」

 「シリウスとサシリアはしばし預けるぞ?旦那よ、赤子は直ぐには宇宙に出せないのでな?」

 「またお会いできるのを楽しみにしております、旦那様」

 「大きく成長なさったその時まで当社がお預かりいたします」

 「なに、直ぐに会いに来る!本当に婿として我が国に来てくれぬのか?」

 「医学的には繋がりがございませんので・・・」

 「うぬう・・・いい加減認めぬか!」

 ルシャーサは頬を膨らませる。だが彼女らには統治しなければいけない国がある・・・二人はそれぞれのロゼンダ級巡洋艦に乗り込んでいく・・・白い船体に金装飾は王族の証、船体の見た目は同じだが実はロゼンダ級の船体で主砲を備える巡洋艦型は目の前の2隻だけだという。ズァパリ民国の戦闘艦は本来ロゼンダ級の船体を使わないらしい・・・なぜ二人の船がロゼンダ級なのか、それは彼女らも在来種と言う理由からなのだ。

 真っ白な船体がオゾンシールドを抜けてリストーン星系の恒星の光とガス雲で紫がかる。実に美しい船だ。ZB8型フリーゲート22隻にDG9型巡洋艦3隻、エデルゼウス25、海賊船が30隻、ストーム級フリーゲート10隻を護衛に付けてオレスト星系を目指して航行を始めた、流石に王族となれば一個艦隊を本気で用意しなければならない、これがうちの最大火力だ、海賊船など近寄れなかった・・・しかし艦隊に近寄れないだけ、ステーションを直接襲いに来たのだ!

 ・・・めんどくさい連中だな!

 海兵経験者が迎撃体制に入る。お目当ては貨物?医療品?研究データ?いや・・・ロゼンダ級大型輸送船だ!せっかく修理したロゼンダ級大型輸送船の上で白兵戦だ!だが数はこっちが圧倒的・・・勿論練度もだ・・・そのはずである。

 「お待ちしておりました!司令官殿!」

 「状況は?」

 「敵海賊船は435隻、オーエンス、ランスロット、ES17型戦術偵察機、F405戦闘機、B57重戦闘機等、今回護衛任務に不向きな武装搭載機は全出撃中!我が軍・・・いえ、我が社の海兵隊はロゼンダ級大型輸送船船内に200人待機、その時間を稼いだ白兵戦兵は56人戦死!現在60人が撤退中、その支援の為にスクラップのジェネレーターをかき集めストーム級フリーゲートの主砲をアクティブにすべく整備兵含め約2000人程作戦行動しています!ステーション内攻撃に備え各交易ドックに1000人の海兵を待機!当ステーションは主要ドッキングベイを隔壁閉鎖・・・しかしこのステーション、防衛設備が無さ過ぎます!」

 「そりゃ民間ステーションだからな?んなもんねぇよ!」

 ファルマンは海兵隊員からビームライフルを渡される。RK-334オートビームライフル、帝国軍標準の武装、拾ってくる船にいくらでも搭載されている事は勿論、セルルド星系に限ってはデプリ帯で適当に飛んでても1時間に1本くらいは拾えるレベルの入手しやすさを誇る代物だ。うちの武器装備品は基本的に残骸上がりの物で、サルベージされた直近の物は簡易整備プラットフォームにしているAT3型航空母艦の一部にあった、軍用艦なら大体武器庫がある、そこが大量に抱え込んでいた代物である。使い方は知らなくともその辺の誰かが教えてくれる。

 「しかしあの船は修理を終えたばかり・・・おかしいな?」

 「たぶん・・・卵・・・目当てだと思う」

 ミヴェルマンが慌ただしい海兵を心配そうに見守りながらそう答える。特に指示はしていないがミヴェルマンの回りには海兵30人の護衛が既に待機していた。

 「卵?そんなに高価な値が付くのか?」

 「詳しくは知らないけれど、獣人族のある種類の部族では剥製として数十億すると聞いた事があるわぁ・・・そうじゃないにしても、ロゼンダ級大型輸送船は材料が希少なズァパリ民国人専用販売の船、クイーン級と同じ材料を使って居る特注艦でその希少性から異星人は購入できないがゆえにその価値は非常に高価、中古船は巨人族には超高級クルーザーとして売れるの、正規の中古でならササリッサ級だけが出回る事はあるけれども単艦ではまともに飛べないからほとんど価値は無いわぁ・・・自動操縦でルミナスに送られる時も途中で鹵獲する闇業者も多いの、だからほとんどルミナスの炎に触れる船乗りと卵は無い、銀河中のお友達に見送られたいのは沢山の人にルミナスに近い所まで安全に護衛してもらう為なの・・・ごめんねぇ?本当は寿命がもう残り僅かな時に言いたかったんだぁ・・・私兵を持ってる大企業の商人は少ないから実は途中で一番のお友達にお船をあげちゃってたりするのぉ・・・ゾリゾちゃんにあげようかなって思ってたんだけど空母も持ってるファルマンちゃんに護衛を頼もうかななんて最近考えてもいたんだぁ・・・もうその必要も無いけれどぉ」

 「友人としてそれはとても重大な責務だ、その時が来れば一個艦隊は用意すべきだな・・・美しい船だが闇の深い船だよ、まったく・・・だが、なんとしてでも守る、直したばかりだぜ?」

 「ファルマンちゃん・・・無理しなくていいよぉ?お船より皆の命の方が大事だよぉ!!」

 「いや、無理くらいさせろ、あの船を2度も守れないのはあってはならない・・・彼らの為にもな・・・」

 「司令官殿!ロゼンダ級の船体に海賊共が穴を開けようとしています!」

 「リーサに伝えろ!オーエンスのエンジンで焼いちまえ!」

 「承知しました!」

 「焼くってぇ!?」

 「穴が空くくらいなら焦がした方がマシだ!」

 中型ドックの管理センターの管理室から外部の映像を映し出すモニターを見る、お望み通りリーサがオーエンスのエンジンノズルをギリギリまで近づけて取りついた海賊を焼きながらもスラスター全開でぶつけずロゼンダ級後方まで滑っていく・・・当然焦げるが、こっちの方がまだ修理が簡単、磨けば良いだけだ・・・大概の船は2000度近くまで耐えられる設計、勿論ロゼンダ級も例外じゃないはずだし、話を聞いている限りでは耐熱温度はもっと高い、エンジンの直火程度ではまず溶ける所まではいかないはず。B57重戦闘機も翼のようなビーム機関砲の支柱で海賊を刈り取っていくかのように払いのける、海賊側に混乱が出ている隙に宇宙に出ている海兵隊が倒している・・・ロゼンダ級がどんどん汚れていくが直せないよりかはマシだ・・・だがミヴェルマンは壁際で泣きながら震えていた。

 「60隻の海賊船団が接近中!外の戦闘がさらに激化します!このままでは宇宙に出ている海兵が全滅です!撤退指示を出します!」

 「・・・しつこいなぁ、無理はしなくていい、戦闘機でどうにか出来ないか?」

 「指揮官殿!雷撃機隊よりロゼンダ級のエンジン破壊の許可を求めています!」

 「エンジン?」

 「はっ!容易に動かせなければ奴らも諦めるかと!それにエンジンだけは他種族製です、我々の手でいくらでも直せます!」

 「そうか、その手が・・・やれ!」

 「了解、セルーナ隊、ロゼンダ級エンジンへの軽魚雷攻撃を許可する、カンザキ隊は援護に回れ」

 しばらくすればB57重戦闘機から軽魚雷が放たれる、ロゼンダ級のエンジンを全て破壊した。

 ・・・手際が良すぎる。

 流石元軍人達・・・感心したくなる程に手際が良い・・・だが、海賊にも頭が回る奴が居たようだ・・・エンジンを破壊した、この事で海賊の動きが変わった、ステーションを制圧する気だ!

 「奴ら、ドッキングベイから来るぞ!」

 「Cドッキングベイの迎撃体制は?」

 「まだ防衛陣の形成が不十分です!」

 「急がせろ」

 「はっ!」

 とはいえ、こうなる事態も考慮して防衛を固める準備はしていた・・・やはり手際が良すぎる・・・完全に目の前の元帝国軍の少佐に任せっぱなし、一応彼は帝国軍時代は海兵隊の部隊長、そしてネドリー運輸としては帝国兵難民の第一期兵、直近ではルーガの雑用要員とも言える。そしてそもそもこのステーションには元々100人くらいの警備組織しか用意していないくらいステーション警備にはあまり予算を割いていない・・・これに関して言えばネドリー運輸経営陣の危機管理不足とも言えるが、ステーション警備に割く予算がそもそも無い・・・その100人くらいの元帝国軍海兵も本来はエルムンドドエルの金で雇っている研究区画選任の警備兵である、それ以外には10~40人くらいが貨物船に常駐しているだけだ、そろそろステーション警備も考えなければならない・・・そんな事を考えていた矢先だ。

 「ササリッサ級がこちらに向かってきます!」

 ・・・ササリッサ級?そもそもササリッサ級、何処にある?誰の持ち物?・・・ジェリーガン船団運輸から一隻預かっているが、そもそも旗艦無しでは大した距離を飛ぶ事が出来ないので動く事はまず無いはず・・・ならアーバン船団商事以外考えられない、そしてミヴェルマンは真後ろに居る、つまり非番、だったらステーション裏の沖止め係留区域だ・・・ここにはうちの船もある!

 「待機してるER-3000Cにぶつけてでも止めろと伝えろ!ついでに生命維持系が壊れたふりでもして乗り込んでそのまま操船権を掌握してくれ!」

 「了解!」

 ステーションの反対側では護衛を全て連れて行かれたので非番のER-3000Cなどの大型貨物船が待機している、それらで全力阻止するも・・・ササリッサ級、意外にも硬い、そりゃ廉価機といえどもロゼンダ級に伴走する船だ、勿論性能もそれに見合っていなければいけない。ER-3000Cの荷室を船首が貫通・・・いや、うちの船が脆いだけか?

 ・・・いや、脆い。

 そう言えばエルーラのERシリーズは人類の間では紙風船とも呼ばれる船だった、銀河平均で言えばそこそこ強度はあるものの、人類至上最も脆い大型貨物船でもある・・・と言うより、人類が作る船は貨物船であっても重装甲艦になりがちな船で、経済性能はほとんど捨てていた、ERシリーズは経済性能を優先した設計思考の船である・・・ついでに言えばうちの船は皆一回は穴が空いている、修復歴無しの船よりは確実に弱い。

 ・・・だが9隻はER-3000Cが体を張って止める事が出来た。

 舌打ちするしか無いが、よくまぁ止められたな?とも褒める状況でもある。

 「駄目です!1隻逃しました!」

 ER-3000Cを真っ二つにしてなおも航行を続けるササリッサ級、2隻で動きを封じる事が出来なかった一隻だ、しかもササリッサ級、速い・・・いくらセブンスター、シックススターエンジンを搭載していようとも元が用途の幅広い汎用大型貨物船のERシリーズ、空荷で本気加速の高速貨物船にそもそも勝てるポテンシャルが無い、中型貨物船なら追いつけるが、中型船程度で大型船の動きを封じるのは無理に等しい、しかも中型の武装搭載貨物船は海賊船上がりしかうちでは運用していない、その海賊船は既に最前線に居る・・・だが、どうしても止めるなら海賊の手口他ならない。

 「ミヴァルマン!ササリッサ級のエンジン系統はロゼンダ級と設計は同じか?」

 「大体そう・・・だけれどもぉ!」

 「すまん、やる!雷撃機にエンジンをやれと伝えろ!」

 「司令官!攻撃可能な雷撃機が現状ありません、最も補給が早く終わる機体でも攻撃が間に合いません!」

 「クソッ!」

 「ササリッサ級の一隻が穴の開けられたCドッキングベイに向かって進行中!集中砲火を受けています!ですが止まりません!当ステーションの呼びかけにも命じず!被害甚大、爆発します!」

 ササリッサ級が爆発、Cドッキングベイに集まる海賊達をステーションから遠くへ弾き飛ばす、そして残骸がCドッキングベイの桟橋に激突して物理的に塞いだ・・・状況的には大変嬉しいが、民間船を巻き込みたくはなかった・・・うちも民間だが・・・。

 「はぁ・・・で、残りの海賊は?」

 「半数まで制圧!何隻かは海兵隊が拿捕して攻撃に当てています!星系警察の巡視船があと5分後に到着予定!数は8!」

 「少ない!」

 「しかし、8隻もと言う事は全出動です!」

 「知ってる!」

 「エデルゼウス25からスクランブルしたギャラクシーファイター6とスーパーツァーリー8もまもなく到着・・・司令官殿・・・我々の勝利です」

 「スーパーツァーリー8はありがたい・・・」

 無限高火力兵装搭載の元皇国軍戦闘機隊は海賊船を次々に沈黙させていく。

 「司令官殿、制圧はまもなく完了ですが、星系警察のPC-700の被害は甚大!2隻大破!5隻航行不能!被弾多数は1隻のみです!それと、PC-700が全て当ステーションに急行したのを見計らって星系警察ステーションが一方的に攻撃を受け、海賊が大勢脱走したとの連絡を近隣の採掘ステーションや採掘船などから連絡を受けました!」

 「ひぃ・・・所詮非軍事組織の行政かッ!リストーン星系の警察組織が消し飛んだぞ!?」

 「当星系に治安維持軍は居ません!」

 「オロラ星系が主だからな?」

 「ラシード艦隊がもう間もなくオロラ星系からリストーン星系にジャンプしてきます!」

 「ストーム級フリーゲート、流石は最新鋭の皇国軍の船ってところか、バカみたいに速いからな・・・」

 「我が社の中で最も高速性能を誇る中型戦闘艦であります、当然です」

 「海賊船より上、B57重戦闘機より遅い・・・何故巨人族はスピードにこだわるのか・・・リストーン星系の星系警察本部へ向かわせてくれ!負傷者の救護と犠牲者の確認、損害を調べてくれ」

 「了解」

 ・・・ひとまずステーションは片付いた。

 「皆ぁ・・・ごめんねぇ・・・」

 その後の被害状況の確認、Cドッキングベイにぺたんとミヴェルマンが座り果てる。どうしてもCドッキングベイに行きたいという要望があったのだ。目の前に居る帝国軍兵士の遺体を撫でる。海兵隊の死者は386人、なおも増加中との事だ。

 「ミヴェルマン様、我々の仲間はこの価値ある戦いに率先して参加致しました、我々帝国軍人、本来であれば何故戦うのか分からず国に不満を抱えながら死ぬ運命でした、守るべき明確な目標の防衛の為に身を投じられた事、大変光栄に思っております、なのであまり気を落とさず」

 海兵隊を指揮していたチェ・リユン少佐は大泣きするミヴェルマンにハンカチを差し出す。それを受け取ったのを確認すればCドッキングベイの桟橋の隔壁に向かって敬礼、リユン少佐も涙を流していた。そして爆散したササリッサ級の搭乗員は全員死亡が確認された。

 「・・・海賊などに手を染めおって・・・」

 リユン少佐はある海賊の遺体の顔を眺めて無念の独り言を言い放った。特徴からして帝国領内の人間である事は間違えない、その敬礼は10分間も続いた。

 ラシード艦隊からの報告ではリストーン星系の星系警察本部は全壊、生存者無しと報告が届いた・・・つまり、星系警察はPC-700から引きずりだした24人しか残っていない、この宙域では一番腕の良いと噂のオレット巡査の船も動きはするがボコボコだ。

 「・・・まさかここまで海賊が力を付けているとはな、ネドリーの旦那の所の・・・私兵ですらこのザマとは」

 「タイミングが悪かっただけだ、ズァパリ民国の王族が来ているのに艦隊を派遣しなかった王国軍にも問題がある」

 事務所の椅子には右腕を骨折したオレット巡査が座っている。手当を受けて居場所も無い様子、仮設の警察本部の部屋を用意しても良いが、今回の騒動、星系警察内でどういう対応となっているのかが分からない。

 「旦那は知ってるか?ここ最近、監獄棟を作っても作っても直ぐ一杯になる原因を・・・」

 「うちのドーベック大佐か?」

 「・・・それも・・・あるけどよ、海賊自体が旦那の所の貨物船建造の10倍の勢いで海賊船を増やしているんだ・・・取り締まろうにも取り締まり切れなくなってるんだ、最近俺らが仕事してないのは押し込む場所が無いからだ、悪いな」

 「まさか海賊を野放しに?」

 「いや、その代わりに海賊基地と海賊が増え続ける理由について調査していた」

 オレット巡査が警察用の端末でマスビダ星系の星系マップを表示して見せてくる。映っている物は星系警察ネットワークの物、事件や事故などの要請などが表示してあるという、民間では出回らない機密内容を含んだ物だ。

 「まず基地はマスビダ星系の惑星レウスの小惑星群に造船所が10箇所点在している。こっちはフルジア王国の民間人がスクラップ解体業をしているだけだ、違法性も正直無いから手が出せない。問題はデルビア星系、ビーア星系の隣だ、ここに海賊惑星、サルターンがある、いわば海賊の本部だ、ここには海賊船と闇商船、そしてサリマン運輸の船が出入りしてる」

 面倒そうな顔をしながら小惑星群をずっとタップし続ける。

 「サリマン?」

 ・・・いやしかしなぜサリマン?フルジア王国の経済情勢にほぼ確実に絡んでくるサリマン運輸、海賊絡みでフルジア王国から撤退したはずだが何故海賊と仲良くしている?

 「まあ落ち着け、どうしてそれが分かったのか・・・押収品で海賊船を持っている、レウスの海賊基地で建造された海賊船はサルターンで売買される、それを押収品で追跡し、そして突き止めたついでだ。サリマン運輸は各国で抱え込んでいる帝国軍や皇国軍の兵士を集めてここへ運んでいるんだ、リストーン星系で海賊が大規模艦隊を組むようになったのは・・・正直、ネドリー運輸のせいだ」

 「うちが何をしたって言うんだ?」

 「別に旦那がやっている事は合法の範囲さ・・・巡洋艦とか・・・それとかの所持には目をつぶっているけどな?」

 オレット巡査は持ったままだったビームライフルを指さす、それを慌ててテーブルの上に置いたら溜息を吐かれた。

 「あーあー、そんな物、セルルド星系に行けばいくらでも手に入る、押収した所で保管場所に困るから要らん!俺らは見なかった事とする!」

 「あんたら行政が持って行かないからずっと保管しているだけだ!」

 「たった半年でネドリー運輸は弱小から見かけだけは交易ステーションを持ち、大型貨物、そして私兵、造船業も抱えるビックカンパニーへ変貌した・・・その私兵が使う護身用の武器にでも使え、出力規制には大幅に違反しているが、船も買えないんだからどうせ合法な武器も買えないだろ?」

 「それでもアンタは警官かっ!?」

 「黙認してやるから悪用すんなよ?・・・話を戻そう、旦那の会社は半年でフルジア王国大手の総合物流商社に上り詰めた、その背景には難破船から作り上げたスクラップ貨物船がある。難破船から船を作る事、これは実質タダで船を手に入れる一番の手段だが、商船登録費用、税金諸々、初期費用がかかるんだ」

 「うちも、来年は倒産が確定しているぞ?」

 「旦那の所には倒れられちゃ困る!最悪国がなんとかしてくれるはずさ!現状ならそれを払うだけでいい、だが会社を設立しなければそれを運用する事が出来ない、そして大概の国は自国籍を持ってなければ会社は起こせない、飛ばすだけなら外国人労働者でも問題ないが、利益をあげる以上会社が無いと駄目だ。旦那に拾われた帝国軍兵はかなり優遇されている、ネドリー運輸の下で会社員として船を飛ばせられるんだ、あんたの子会社扱いで独立だって出来る!独立してしまえば外国人でも起業出来る!資本提携を切ればもう完全独立完了だ、そのサイクルを繰り返していけば自然と物流問題は解決、別に何処も違法じゃない」

 「だいぶ回りくどいが・・・・なぜそれが海賊を増やす結果になった?」

 「だがここまでの話はちゃんとした商船会社に雇われた人間の話・・・そう、旦那の所だけの利点、他の商人は船を増やす資産が無ければポンポン人も雇えない、難破船を引っ張って来る手段と能力、それを修理する知識かその手の伝手も無い、おまけにスクラップメタルや中古部品の価格はかなり暴落していて今底値とも言われている」

 「・・・オーエンスを起こした時よりスクラップ関係の買い取り価格が下がっているのか・・・」

 「そうだ、2隻引っ張ってニコイチにした所で、一隻登録するのに今じゃ10隻くらい必要になって来る、その価格を暴落させてるのがシルバーロッド整備工場、旦那の傘下の整備会社だよ、他も真似したい所だが現状利益が出せない、整備工場的には整備で金取った方が遥かに儲けが出るらしいからこの手の話も他の整備工場は余程の関係が親密じゃない限りは受け付けていない、そして物流で今後主力となる弱小物流会社は中型以上の整備工場と基本的に関わりがまだ無い、分かるな?」

 「当然だ、うちも1機のオンボロ偵察機から始めている、ルーガさんの整備工場なんて早くても10年くらいは縁の無い大型用整備工場だったんだ、おまけに小型機の中古ディーラーはかなり多いが中型と大型は2桁と少ない、中型に乗り換えもかなり狭い門なんだ」

 「とまぁ、そんな理由で国がどんなに補助金をばらまいても同業他社の成長速度は鈍足、その間に経済状況は未だ急落状況、旦那の船の増え方と下降ペースの減少が比例しているくらいだ、その間にも必然とコロニーに無職の移民が増えていく、これを大量に受け入れているのがサリマン運輸だ」

 「だがこの宙域にサリマンの所の船はしばらく通っていないはずだ、宙域の管制業務もどさくさに紛れてうちがやってるんだぞ?」

 「子会社だよ、子会社、そいつらがタダ同然の船を売っている所に運んでやる、そこで商人にでもなれとそそのかしているのだろう、喜んで乗ったが買った物は海賊船、複数人で買うから本当に一文無し、商船登録なんて勿論出来ない、じゃあ他の船から物を盗んでライセンスを持った商人に売りつけるしかない、だがそこでも一定数成功者が居る、商人伝手で会社を起業、商船登録をして仲間の為に他へ売りさばくをループしているようだ。一方でマジの海賊も居る、そいつらが見習いを率いて、常に過積載のあんたらを襲いに来る。他の船より鈍重、成功すれば他の商船を襲うよりお得って訳だ。ま、実態は帝国軍の補給艦隊みたいなもんだからほぼ無理に近いけどな?」

 「巡洋艦3隻に空母が1隻、戦闘機隊まである、無理だぜ?」

 「だから正直ほとんど諦めてる、最近じゃ仕返しする事に躍起になっているようだ、しかし危険を犯してまで奪う価値のある船がここに現れた・・・ああ、銀河最高級のクルーザーがね」

 「・・・クルーザーは無いが?サラマンダー級も一部ではクルーザーだが高いか?あれ・・・」

 「ロゼンダ級だよ、奴らは何が何でも奪おうとしてくる、奪えれば艦隊で襲って分配しても全員が金に一生困らなくなるからな、ステーション襲撃の答えはそれだ、あの美しい船を手元に置いておきたきゃ普段から巡洋艦とありったけの警備兵でガチガチに囲んでおく事だ」

 「今回のでよく反省した」

 「それは良かった、だがもう一つ、この宙域には美味しい食い物があるんだ」

 「・・・海賊は採掘でもするのか?」

 「ハズレ、エルムンドドエル博士だ、博士はここに王国向けの薬品プラントを作ろうとしているが、元々それ以外の種族も簡単に買い付け出来るようじゃないか?おかげで経済の中心がこのクソ田舎まで広がって来るのは願ったり叶ったりだが、それをされると流通の形が大きく変わってしまう、薬に関しては帝国もそこそこ得意だが、シーモア共和国の方が技術的にも信頼度が高い、ビーア星系の流通ルートの価値が大きく下がるんだ。そこでサリマン運輸は帝国のシノノギ製薬にエルムンドドエルが開発している薬と同様の物を作らせビーア星系の流通をさらに強化しようとしている。先に作ってしまえば利権も全てシノノギ製薬の物だ、この星系の価値がさらに下がる・・・無だからこれ以上下がらないって?そうだけどよ?」

 「これかの?」

 エルムンドドエルがカプセル錠の束をテーブルの上に投げてきた。

 「お前何処から沸いて出た!」

 「失礼な奴だなぁ!ノックはしたぞ?」

 「・・・ああ、特に人間族や昆虫族、爬虫類族の寿命を伸ばす薬だ」

 「三つ目属には効果は無いがの?ただでさえ長寿、これ以上伸ばしてどうする?」

 「まぁ・・・250歳でようやく中年だし・・・」

 ファルマンは知り合いの巨人族達の顔を思い浮かべる、エルムスミエルは234歳のおおよそ中年男性、巨人族の平均寿命は確か500~600年ほどだったと思う。

 「なに、もう昆虫族で臨床試験は終えておる!半日前に送り出したルシャーサ、テティアはもう120歳!昆虫族の寿命4倍は生きている!」

 「は?王族で臨床試験してたのか!?」

 「しょうがなかろう?元はと言えば滅びゆくズァパリ民国の在来種の為に色々研究している!たまたまそれが他の種族にも有効である事が多いだけ!あ、でも冷蔵保存されていた無精卵を有精卵にする技術は卵を持つ種族にしか対応せんぞ?ファルマンは他の人間族のメスと原始的な交尾をして子孫を増やすといい、快楽も得られるようだしな?それに最悪は人工子宮もある、おぬしらには昔からその手の技術もあるだろう?」

 「やたら昆虫族とコネがあるのはそういう事だな?」

 「勿論自分の体でも試している!他人に飲ませるだけでは証明つかないからね?私も113歳!平均寿命は超えたよ!本来はもうとっくに歩けなくなっている年齢なのにも関わらず、未だ杖なしで生活出来ている!そしてここはこれの生産工場でもある!一か月後にはズァパリ民国で流通を始めるよ!」

 「・・・まさか今すぐもってけと?」

 「それは無い」

 「それは良かった」

 「持って行かなくとも良いが、向こうが取りに来る、だからファルマン!もっと軍拡せい!」

 「は?ふざけんな!クソトカゲ!うちは物流企業だ!警備会社じゃない!」

 「おねがいおねがい!」

 またクソトカゲはつぶらな瞳・・・だがここは物理的に俺の周りを周回出来ない、椅子とテーブルと汚職警官が邪魔だからだ。

 「悪いがリストーン星系は今無法地帯だ、星系警察の新しいステーションが建設されようがされなくとも、された後も、どのみち旦那に星系の治安を維持してもらわなければいけない・・・星系警察が軍人を雇えれば良いんだが国家公務員だ、法的に問題があるし、実質この星系はもう旦那の国に等しい、戦艦だろうが何だろうがどんどん増やすがいいさ・・・もしかしたら国や王国軍からPMCとしての仕事も振られるかもな?」

 「それでもあんたは警官か!?オレット巡査!!」

 「今回の一件で俺らの首も飛びそうだ、そうなればこの星系の治安維持はマジで旦那頼みなんだよ!頼みますぜ?」

 「使えない星系警察だな!!・・・しばらくこのステーションを使うといい、今回の襲撃で捕獲した海賊船を押収して巡視船にでも使えよ、うちはもう要らないんだ、採算が全然取れないからな!壊れた巡視船も牽引くらいはやってやるが税金で直しな!ただでさえ高騰してるんだ!うちはそこまでお人好しじゃないぞ?」

 「そうさせて貰うよ、良い船を頼む」

 「良い感じのを後でいくつかピックアップして送っておく、今、ルーガを呼んだから居住区の民間警察署かこの辺の空き部屋、適当に交渉してくれ」

 「すまないな」

 ・・・軍拡って言ったって・・・。

 警備船としては優秀な海賊船だが艦隊警護は火力的に中型船団までしか対応出来ない、大型の警備となればZB8型フリーゲートをひたすら拾うしかないだろう。ズァパリ民国籍の船団護衛となれば最低でも巡洋艦と空母が在籍する帝国軍機動艦隊レベルが必要となるはず・・・今後のサルベージも大型艦を狙う他無くなる、だが現状海賊船はかなり余っている、ひとまず無防備になっている近所の採掘所の巡視船にでも当てるか・・・採掘企業から上納金でも貰わないと到底維持できない。

 汚職警官を事務所から追い出した後もやる事がある。

 居住区の公園のような空地、植生は今しがたしたばかり、修理プラットフォームにしているAT3型航空母艦から適当に外してきた装甲パネルに海兵隊の指揮を代表してリユン少佐がペンキで犠牲者の名前を書いている・・・研究ステーション初の墓地だ、火葬場は無いので溶鉱炉で処理した、溶鉱炉は骨すら残さない大火力・・・だがまともな火葬場を今後ちゃんと作らなければならないので、この後建築ドローンにお願いしなければならない。

 その様子を立ち会った・・・雲行きが怪しい・・・生意気にもこのステーション内には天気があるのだ。書き上がれば力のある海兵隊員で直立させられる、自分はその後ろに支えとなる鋼材を設置した。そして敬礼、海兵隊員全てがこの場に集まり敬礼した。

 その後はリユン少佐をステーション防衛司令部総括に任命した。

 ・・・後は星系民間警察。

 海賊船だけなら30隻近く余っている。ひとまず適当な空き部屋に完全に機能していない星系警察とは全く別な組織、星系民間警察本部を設置する、オロラ星系ジャンプゲート近くに武装付きのステーションを建築する。それまではAT3型航空母艦の残骸が役に立つ、セルルド星系から適当に拾ってきたジェネレーターの生きたAT3型航空母艦の中間部、3分割にされたようだが対空兵装さえ使えればなんだっていい、隔壁閉鎖で与圧も確保出来るので建築中の定点防衛拠点にピッタリ、肝心の建築材料なら不法投棄のER-1000BやER-2000Bを宙域清掃業務の名目で黙ってフル稼働させれば直ぐに集まる、ついでに応募が殺到して採用がパンクしている民間人の船員育成にも使える。サルベージ業務を任せた元帝国軍の比較的高齢だった大将ら教官群からは不採用枠の船員候補も一カ月間は実務を積ませ、他の会社の採用の手助けをすると申請があった、勿論給料は食事と住居、教育費で相殺するという労働基準法としては違法状態、しかも採用はしていないので中々アウトに等しい事でもある。そして他の採用率が上がるかについても悩ましい所であるが、メリットも大きく存在する。ライセンススクールに通わなくては身に付かない操船実技や法規の座学をタダ、しかも厳しい帝国軍方式で学べる、王国ではこれだけでもこなせれば操船ライセンスなど寝てても取得出来る内容である、しかも教習に使う船は中型や大型艦、間違えなく小型ですらスペースデプリに突っ込む程度のレベルのライセンス持ちに育つ事は無いだろう。

 ひとまずはこっそりやってくれとだけ伝えてこの件は秘密裏で行う事とした。その教習区域に建てるコロニー型ステーションは来月には部分運用が可能になる、ついでなので中型艦用の整備ドックを併設する設計にした、主要なビジネスは、民間警備業務と中古部品販売と建築資材販売、そしてコロニー建築の後に発生する不動産業だ、これだけでも大赤字の本業の穴埋めに強力な稼ぎになっているビジネスが半数を占めるのだが、今後、これにさらに増える事となる。

 「船の売却・・・ねぇ」

 週の生産艦数がリストーン星系だけで20隻となるのでマスビダ星系のルーガの整備工場はついに中古の中型貨物船を売れるようになった。ルーガからのメールにはそう書かれている。

 どうせ元がゴミなのでE-900Mに迫る船体価格、そう宣言した瞬間に小型貨物機で頑張っていた商人達から300隻以上の注文が入った。ついでに船員も雇う条件付きだ、これで無職の帝国軍人とあまり儲けてない他の整備ドックが仕事にありつけるようになるのだ。勿論エルーラ社は激怒している、今新品を買える商人は何処にも居ないのだ。今後もパーツ購入でなだめる他無いだろう。

 これでルーガの本業に同業他社の顧客が付く事が確定した。だが、この話は人間族だけで驚異的な速さで広がっているだけでは無かったようだ。

 「ファルマンちゃん!」

 「どうしたんだ?ミヴェルマンさん、DG9型巡洋艦をまたか?」

 「ううん!海賊船を10隻欲しいの!勿論搭乗員付きで!」

 「構わないが・・・そんな雑魚じゃ無くてもDG9型巡洋艦を護衛に付けるぞ?」

 「それわぁ・・・セルルド星系まででしょ?その先用に欲しいのぉ!」

 「分かった、一番いい奴を用意しよう、ミヴェルマンさんにだったらタダで譲る」

 「お金くらい払う!」

 「うちは要らない、登録費用に使ってくれ・・・処理に困っているレベルなんだ、お財布に余裕があれば本当に好きなだけ持って行って欲しいくらい」

 「でもそれじゃファルマンちゃん赤字・・・」

 「いや、船員を少しでも持って行ってくれるだけで負債が減るんだ、それだけでも大助かりだよ・・・あまりミヴェルマンさんに言うべき事では無いけれど、船員も付けるから船をどんどん増やして欲しいんだ」

 「任せて!一杯買うぅ!」

 「まぁ、赤字に転落しないように少しづつ増やしてくくらいで良いよ、それだけでも助かるんだ」

 「お姉さんにまかせなさい!」

 「とは言え、またロゼンダ級は修理だ、しばらくDG9型巡洋艦で我慢してて欲しい、オキタ艦長の船をまた割り振る」

 「・・・ごめんねぇ?修理代・・・いくら?」

 「セブンススターエンジンが搭載されているサラマンダー級航空母艦の残骸さえ探してもらえればそれでいい、引き上げはうちの担当にやらせるから」

 「修理代くらい!ちゃんと払う!ついでにファルマンちゃんの所のER-3000Cも全部修理代出す!私の子供達がぶつけたんだもん!」

 「今回は明確に俺が破壊指示を出したんだ!ぶつける指示も俺がした!請求できる訳が無い!」

 「良いから出す!もう!聞き分けの無い旦那ちゃん!」

 「医学的にはだな?」

 ぷんぷんするミヴェルマン、しかしER-3000Cも修理費は人件費以外かからない、ER-3000Cの貨物区画なんてニコイチにする過程で割と余らせてもいる部分でもある。ササリッサ級は結構硬く、傷は磨けば落とせる程度、ER-3000Cが完敗したのだ。真っ二つになったER-3000Cは想定通り貨物室部分を部品取りの難破船と取り替えて復活予定、ER-3000Cのいい所は後方部分に主要設備がまとまっている事である・・・勿論海賊的にも襲いやすいデメリットがあるのだが。

 「ツェルナぁー行って来るねぇー」

 後ろを振り向けばオーエンス・・・その前にツェルナにほおずりするリーサ、あのいつもはキツイ帝国軍人の目つきがゆるみ切っている。ミヴェルマンの部下達もその様子を凄く微笑ましく眺めていた。一方でルシャーサ、テティアのシリウス、サシリアはジェリーガン船団運輸の部下達がアーバン船団商事のビルの一部を間借りしてお世話している。こちらは流石王族、全く外に出さない育て方、一日一回は最低でも顔を出すよう言われているらしく、よく部下達が呼びに来るのだ。見つからないようにさっさとオーエンスへ逃げ込む、だがその先には昆虫族の2名が居た。

 「旦那様」

 「シリウス王女、サシリア王女との面会のお時間でございます」

 オーエンスからひきずり出されアーバン船団商事のビルまで連れて行かれた。予定が台無しだ!シリウスからは嫌われている様子でなによりなのだがサシリアはその分ベタベタ、世話係の2人は抱かせようとしてくるがサシリアを抱いてしまえば全く放してくれなくなる・・・なんとか戻ってくればオーエンスの姿は無い、変わりにヤツが居た。

 「おねがいおねがい!」

 「・・・小型機で済む範囲で頼む」

 「小型機で済む!」

 「マジでか!」

 「でもボロじゃ駄目!」

 「・・・無理だな、ボロ以外の貨物容量なんてカスだしな?」

 「おねがいおねがい!」

 「そもそも何故ボロじゃ駄目なんだ!」

 「大気圏で燃え尽きるから!」

 「は?大気圏突入すんのか?・・・うちのラインナップに大気圏突入に耐える船と言ったら・・・あるな」

 「なになに!」

 「ジェリーガン船団運輸のササリッサ級、王女様達のお世話で残った船だ。留守中、使えるもんなら好きに使っていいと言われてる・・・後は耐えられるか不明だが海賊船」

 「単機じゃ飛べない飛べない!」

 「知ってるよ・・・そもそも何処に降りるんだ?」

 「シーモア共和国首都、惑星ヴァルチャーのラースだよ!」

 「じゃ、海賊船じゃまず駄目だな、そもそもボロだし燃え尽きる可能性の方が高い・・・いや、ササリッサ級に随伴させてオデム=ササラに置いてササリッサ級を手動操縦で降下させるか?」

 「面白そう!」

 「たぶん大気圏突入くらいなら単艦でもいけると思うが・・・搭乗員に相談してみる」

 「惑星降下程度なら」

 「単独で可能です!」

 「・・・あんたらいつからここに居た?」

 「見るだけ見て帰ってしまわれるので!」

 「ちゃんと抱かせる事までしてくれとルシャーサ様に仰せつかっております!」

 「会ったんだ!それで良いだろ!大体医学的に!」

 ・・・と、言っても彼らは所詮命令を忠実に遂行しているだけに過ぎない。

 一旦、頭を抱えて溜息を付く。さて、どう話をすり替えようか・・・そうだ、船員が居なければ動かしようが無い、ズァパリ民国製の船は動かした事が無い、きっと腕が足りなくなるはず・・・そう、俺の腕は2本、昆虫族は大アリ属に限らず大概4本以上、奇跡的にそうじゃないにしても集団で動かす前提の仕様で一人では完全不可能な可能性も十分あり得る・・・人間族の人手なら確かに有り余っているが、帝国軍人が全く関わりの無い異星人の船を初見で扱えるかについても無茶な話、手っ取り早い話、運用を熟知したベテラン船員も付いて来てもらわなければならない。

 「・・・そう言えばササリッサ級の他の乗員は?」

 「一部の王女様専属食事係などを除けばササリッサ級に待機しています!」

 「分かった、今日借りる」

 「ちょっとちょっと!ちゃんと抱いて頂かないと!」

 「我々が困ります!」

 「昆虫族は愛が重いのー?」

 「・・・こんのクソトカゲ!誰のせいだと思ってやがる!」

 「客の指示に従ったまで!材料費の報酬もファルマンに払ったであろう?」

 「・・・確かにそうだが・・・とりあえず用意しろ、すぐそこに手の空いてそうな船を手配する」

 「準備なら出来ておる!」

 エルムンドドエルは大きな鞄を持ち上げて事務所を出て行った、ルシャーサの部下は依然待機状態だが・・・ひとまずルーガに電話する、ランスロットの手配と、王女様達の世話を押し付けた。なんとか連れて行かれないように踏ん張っていたら時期にランスロットがやって来た、女王様の部下から逃れて一目散にランスロットへ乗り込む、エルムンドドエルも大きな鞄を抱えて乗り込めば、ひとまずササリッサ級にドッキングする。

 「そう言えば何しに行くんだ?」

 「新薬の発表!」

 「この前のアレ?・・・つかその程度なら最新鋭の偵察機でもいけたじゃねーか!」

 「そう、アレ、それに船は大きければ大きい程良い!見栄えの為にもな?」

 「・・・確かに、ES17偵察機じゃパッとしない、平凡過ぎる、だからと言って軍艦を持ち込む訳にもいかない、メディアの目も引きはするんだが、共和国軍の目も引いてしまう・・・そういえばあの時、来月にはズァパリ民国に売り出すと言っていたな?そのタイミングじゃないのか?」

 「共和国の厚生省が前倒ししろと言う!」

 「・・・何か裏がありそうだな?・・・と言うかお前の命も危ないよな?」

 「そうじゃのー?」

 「・・・大気圏突入は共和国軍に迎えに来てもらえたりとかは出来ないのか?」

 「シノノギ製薬にバレる」

 「ああ、そう・・・じゃ寄り道していいよな?」

 「何故だ?」

 「海賊にはこの船を通常運航の貨物船に見せかける、頑張ればステージアコロニーでうちの大型通常便に合流出来る、丁度大型クラスの船の一部が修理待ちで抜けている、そのせいで滞納貨物は全く捌けてなくて港湾が切迫しているからな?それを理由に動かせば海賊やサリマンの監視もごまかせる、とにかくお前の存在を隠したい」

 「まぁ、急ぎはしてないが?」

 「そのような話であれば、当艦の海兵隊をお使いください」

 ランスロットの船長が接岸間際にそう言った。

 「そうだな・・・航法装置のリンクをササリッサ級と同期してくれ、誘導も頼む」

 「了解」

 そう命令して艦橋を後にした。途中で海兵隊員と合流し、ササリッサ級に乗り込む。事情を説明すればルシャーサ女王陛下よりそういう命令を受けていると言ってあっさり指揮権を譲ってくれた。

 しかしササリッサ級、速い、硬い、旋回性能も良い、確かにロゼンダ級より一回り小さく地味・・・とは言え大型クラスではロゼンダ級と同列の銀河最速の貨物船、全く価値の無いとは言い切れない船でもある。内装色は黒一色、艦内も非常に暗め、懐中電灯が欲しいくらい・・・ロゼンダ級はこれに間接照明だったり装飾も入る。唯一の欠点は貨物容量は多いが搭載重量が低いと言う農業貨物船特化な所、価値が全くないのは基本的に単価が低めの農作物専用の運搬船だからだ。しかも船体の材質がロゼンダ級の廉価品のような物、やはり特殊で航行装置を増設する為のアンテナ類の取付も難しい事もある。当然重い貨物製品を乗せる設計をしていないらしい。港湾によくある通常のコンテナ貨物を半分積めばもう性能は半分以下に落ちてしまう。もっと積みたそうなステージアコロニーだが、我慢してもらい、リストーン星系のジャンプゲート手前でちょっと待ってもらったER-2000Cなどの雑多な異機種船団に加わる。ここからは通常業務のZB8型フリーゲートの護衛が入る。海賊とて、ガチガチに守りを固めてなおかつ、いくらステーションをハッキングしようとも追えない程に適当にぶち込まれて何を積んでいるか分からないレベルの延滞貨物をリスクを犯して奪う価値はほとんど無い、襲われる事無くオデム=ササラ国営ステーションで通常の荷役だ。

 「ネドリー運輸、積む物は沢山あるんだが?」

 ステーションの荷役担当者に聞かれる。

 「他の星系から特別注文があるので、ここからは空荷じゃないと駄目なんです」

 「・・・なんだ、残念だ」

 そう言われて荷役担当者が去っていく。

 「あれぇ?ファルマンじゃないかい?なんでズァパリ民国王家のササリッサ級に乗ってるんだい!?拾ったとは言わせないよ!そう滅多にお目にかかる事は無いジェリーガン船団運輸の船だよ?わたしだって旗艦のロゼンダ級巡洋艦を見た事が無いんさ!この前マスビダ星系の方へ向かってたって噂しか聞いてない!」

 ・・・相変わらずの情報通・・・この人に聞けば銀河中の情報をリアルタイムで入手できそうで怖い。

 「ゾリゾか・・・いや、リストーン星系の海賊が盛大にやらかしてくれてな?うちの工場で直してこれから納品なんだ!」

 「相変わらず田舎は物騒だねぇ・・・君の私兵をもってしてまで船に傷がついてしまうのかい!?ズァパリ民国までかなり遠いが・・・食料をちゃんと用意しておくんだよ!と言うか、客の船で荷物運んで良いのかい?」

 「ああ、それは・・・内密に・・・」

 「王国便は大変だねぇ・・・絶対行きたくないよ!」

 「良い航海を・・・」

 マドリニスゾリゾを見送る・・・本当の事を言っても良いが、彼女は噂を仕入れ、噂をばらまいていく人だ、良からぬ人の目に付くかもしれない。

 ・・・だってだな?

 ササリッサ級の隣にはサリマン運輸のER-3000Cが居るのだから・・・。

 見上げればそこら中に転がっている厄介なあのロゴ、乗ってる奴らまで面倒かどうかまでは知らないが、コイツらのせいでフルジア王国の物流は蒸発した、まとめて恨むくらいさせてくれ。

 降ろす物を降ろしたらさっさとアンドッキング、オデム=ササラ国営貿易センターの管制から離脱、そして目の前に見える惑星ヴァルチャーへ大気圏突入の許可を貰う。船体もどこからどう見てもササリッサ級、船籍はジェリーガン船団運輸なのでズァパリ民国王家の船ともあれば最優先で降ろす他無いが、母艦が無い事を疑われる。そこでネドリーの名前を出せばあっさりと突入許可が出た。  降りた事すら無いのに地上管制からもまたお前かと呼ばれる程に有名なネドリー運輸、ササリッサ級は惑星ヴァルチャーの突入進路を進み降下を開始した。

 ・・・あっ、これ一人じゃ駄目な奴だ。

 ルシャーサの部下は大勢でせわしなく大気圏突入プロセスを確実に実行していく、その光景を見てそんな感想を持った・・・持ち場を確保する為にあえて自動化はされていないようだ。

 船体が軋む音はしない、そもそも材質が違う、これだけでも不思議な感覚だが艦橋の窓の赤みが取れてくると若干砂っぽい空が見えてくる、減速を終えると基本的には宇宙では閉じっぱなしの羽のようなエネルギーセイルを展開するらしい、大気圏内では飛行用の翼になるようだ。そしてシーモア共和国首都、ラースの国際空港へ着陸する、少し報道が多い。

 ササリッサ級から降りれば乾燥した空気で鼻の奥が乾いていくような感覚を得る。重力は高重力気味で体がなんとなく重い。目の前には黒塗りの高級車と護衛の車、あからさまに軍人のような人物と政府関係者のような人物が目の前に立っていた。ひとまずその前に行って一度人間族標準の敬礼をしておく、その後ろではうちの海兵隊が重装備でエルムンドドエルの回りを固めて続いてきた。

 「博士の移送ご苦労、あとは我々に任せろ、王国の問題児よ」

 まずは共和国軍人が口を開く、勲章や階級的に相当高官であろう事は分かるが、あいにく共和国軍の階級云々は調べていないのでよく分からない。

 「・・・クレームはフルジア王国政府に直接よろしくお願いいたします・・・ひとまずここから先はお任せしますよ」

 共和国軍人にエルムンドドエルの鞄を渡し、黒塗りの高級車に乗せられていくのを見届ける、そこから後はササリッサ級に待機だ。

 ・・・暇だな?

 ルシャーサの部下の計らいでニュース画面は開きっぱなし、部下達は飲み物を飲んで休憩している、だがある時一斉に持ち場から立ち上がる。

 「・・・何事だ?」

 「ご飯の時間です!ファルマン様もこちらへ!」

 そう言えば腹が減った・・・しかし昆虫族が食べるご飯など具体的に何か聞いた事が無い、とっさにエルムスミエルの顔が浮かぶ、嫌な予感がするが、その正反対を行っていた。

 「・・・まるで、高級ホテルのような感じだな?」

 「ささ、冷めないうちに!」

 小麦的な穀物で出来た物や野菜だけ、肉は一切無い、美味しそうなベジタリアン料理が待っていた、しかも盛り付けにもこだわりが感じられる。

 ・・・うちとは大違いだな。

 カップラーメン、レーション、よくてコンビニ弁当、何かと貧相なフルジア王国の食事とは真逆の凄い料理、連れてきた海兵隊員も満足げのこの味、実に羨ましく感じた。食後には甘いジュースまである、花の蜜を集めた物だという、最高かよ。

 他に習って食器を返却後は再び艦橋へ、ニュースは絶対にあり得ない単独航行のササリッサ級の異常来訪から新薬の発表に変わっていた。

 それからまぁ暇をもてあます。ルシャーサの部下とゲームしたり、ズァパリ民国について色々聞いてみたり・・・しかしエルムンドドエルが再び姿を現わすのは2日後の事だった。そうなるなら一度上がって少しでも仕事をするべきだった。

 「またせたのー」

 「・・・待たせすぎだ!こうなるなら最初からそう言ってくれ!」

 「医学会のパーティーとか色々忙しかった!許せ!」

 「上でミヴェルマンを待たせてる!さっさと上がるぞ!」

 エルムンドドエルを乗せてラースを発つ。離陸を見届けた共和国のたぶん陸軍は撤収していくが、変わりに共和国軍の艦隊がササリッサ級を取り囲む、オデム=ササラの沖でミヴェルマンの船団と合流、そのまま共和国軍にも守ってもらいつつセルルド星系へ、しかしロックウッド星系へのジャンプゲートからちょっと行った先は戦場のど真ん中だ。

 「貴殿とはこの状況でよく出くわすな?新薬発表のニュースで貴殿が乗りつけた事は知っておるが・・・何故ジェリーガン船団運輸のササリッサ級に乗っている?」

 「・・・大気圏突入が出来る健全な船体の船はこれしかなかったんだ、特に新薬はズァパリ民国には革命的な薬、それの流通網とその護衛を約束する変わりになんとか貸して貰えた1隻だ・・・例え配下であっても王族の船なら共和国軍も出動せざる得ない、待遇も全てが優先される、これ以上に無い最適な船だったよ」

 ・・・本当は女王の許可すら貰っていなかったが・・・まぁ流通網を確保する意味では嘘を言っては無い。あくまでの道中も護衛、基本的にあっちが船を持ってくる話である。こちらが出す訳でも無い。

 「むう、確かに継ぎ接ぎだらけの海賊船では突入中に空中分解しかねんな?特にヴァルチャーは重力が高めの惑星である、我々の船もあまり大気圏突入は推奨されてなどいない惑星であるぞ?・・・それ以外となれば軍用艦であろうが・・・そんな物で大気圏突入など、そこの船が黙っておらんだろう?」

 「絶対に許すものか!ズァパリ民国の王族のササリッサ級が単独で大気圏突入と聞いただけでも尻尾が取れそうだったんだぞ!ネドリー運輸!貴様らはなぜいつもこう・・・こう・・・厄介な船を乗りつけてくる!?ここ最近ではアーバン船団商事もだ!あの美しきロゼンダ級はどうした?まだ直らんのか!?」

 共和国軍の重巡洋艦の艦隊指揮官に怒鳴られる、それにミヴェルマンと自分は・・・。

 「あははぁ・・・直してはぁ・・・」

 「壊されるんだ・・・」

 と、答える事しか出来ないのだ・・・。

 「海賊に・・・だな?最近良くない噂を耳にする、行き場の無い皇国軍と帝国軍の移民が海賊に多く転身していると聞く、気を付けると良いぞ?ネドリー運輸の者達よ」

 「ちょっとした護衛用の海賊船ならいくらでも提供しますよ?ズーデンド通商もいかがですか?増える難民に仕事も与えられますよ?」

 「だから我は雇われ船長だと言っておろう!?今日もサービス残業だ・・・手早く終わらせるぞ、今日は帝国の圧勝ではないか!少しは頼むぞ?アーバン船団商事は我が同胞側に回って貰えると助かる・・・同胞の船はこちら側には我々ズーデンド通商しかおらぬのだ・・・星系の反対側には居るのだが・・・」

 「向こうもぉ・・・大規模よねぇ・・・」

 「共和国軍にも協力してもらうぞ・・・」

 「何故我らもなのだ!!まあ、言われなくとも協力せざる得ないがな!?」

 「「「はぁ・・・」」」

 「くそーっ!!!!」

 流石に帝国は圧勝・・・だけあり、ササリッサ級だけで事が済んでしまう。しかし皇国の損害が酷い、40隻近く居ても限界だ、なにも言わなくともジェネレーター損傷のサラマンダー級航空母艦とデスファイター級巡洋艦、それも2隻ずつ引っ張る用意をしている。電源はサヴェージ級とストーム級フリーゲート、それに共和国軍の司令官は何も言わず、爪でコンソールをコンコン叩く音しか立てない・・・これらがまた何らかの理由で乗りつけられるのだな?と言った様子だ。だが空母も巡洋艦ももう見慣れたはず、回収が完了すればいつものように研究ステーションまで・・・流石に共和国軍も居れば海賊は全く手が出せないようだ、護衛を終えれば共和国軍は皇国軍兵を押し付けて帰ってしまった。

 ひとまず固定砲台が増えたのは良い、皇国軍兵士もトライアドへ送る手配もした。早速サラマンダー級航空母艦からエンジンを外しロゼンダ級に付け替える。外装の清掃もして元通り、今度は直ぐに大型交易ドックに入れる。

 「・・・修理には手がかかる、出来るものならここに飾っておきたい所だが」

 「船は大宇宙で走らせてこそ船だ」

 「ルーガちゃん!ファルマンちゃん!本当にありがとぉ!」

 「ひとまず、非番の時は大型交易ドックの入口をDG9型巡洋艦2隻で塞いでおけば良いだろ?」

 「警備も厳重・・・まるで盗難されやすい高級車だな・・・」

 オデム=ササラに美しいロゼンダ級が戻って来たのは翌日の事である、DG9型巡洋艦2隻、ZB8型フリーゲートが12隻、そして海賊船が10隻の大艦隊、道行く商人達が道を開ける光景はまさに女神の帰還、管制官もついウットリしてしまう状況・・・それを脇に寄った商人達と共にオーエンスから眺める。

 「オデム=ササラ国営貿易センター・・・あのぉ・・・ドッキング許可をぉ・・・?」

 「はっ!失礼しました!入港を許可します!」

 ロゼンダ級はササリッサ級9隻を率いてオデム=ササラの大型交易ドックへ、うちの護衛艦はその場で待機だ、アーバン船団商事だけになれば、どの商人も思わず声を漏らす。

 「・・・なぜあの船はあんなに美しいのかしらね?」

 「末代専用の花、そして子を抱きながら来世へ旅立つ為の箱舟・・・それがロゼンダ級だ、美しいに決まってるよ」

 リーサも溜息をつきながら敬礼、ヤシマ中尉もパルサー大尉も敬礼していた。

 ・・・女神に敬礼。

 ファルマンも敬礼、ロックウッド星系の恒星エヴァンスの光を受け、虹色の光をキラキラ輝かせる昆虫の羽をモチーフにしたソーラーセイルがとても神々しい、ロゼンダ級が大型交易ドックにドッキングするまでこの沈黙は続いた。


ー銀河の常識ー

・サイズァー薬品とシノノギ製薬

サイズァー薬品は爬虫類族最大手の製薬会社である。厚生省の研究所が、銀河中のあらゆる病気や風邪などに対して開発した新薬を量産する事を目的としている会社で厚生省と密接な関係を持つ。

一方でシノノギ製薬は人類の最大手製薬会社、人類も銀河のありとあらゆる薬の開発や研究に着手しており、サイズァー薬品と日々権利を争っているが、違法薬物の製造やクローン技術など、黒い噂も絶えない。

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