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この宇宙の片隅に  作者: verisuta
ビックカンパニー
10/11

強襲揚陸と遺物

人類の航空母艦は海洋から離れると弱点でもある飛行甲板を装甲で覆うようになっていった、そうして進化したAT3型航空母艦はいつしか揚陸艦としての機能も備えるようになり今日に至るのだ。


ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー

・B57重戦闘機

オヴィルツィッヒ帝国軍アルカディア社製の複座重戦闘機。小型クラスの機体の中では最大サイズの機体で跳ね上げ式のウエポンウイングを装備する、主な用途は雷撃や爆撃など、重火器運用を前提としており、攻撃隊の主要火力を担っている。大部分は実弾兵器なので手数が少ないのが欠点。

・FT14型戦艦

帝国軍津島造船社製の主力戦艦。艦隊旗艦としても採用される艦隊の中核と言える船で、主砲にHT-702主砲を採用しており、ロングレンジ砲撃を得意とする。攻守共にバランスの良い設計をしているが戦艦としては銀河のワースト10に入る低速艦である。この為迎撃艦隊や攻撃艦隊などはFT14型戦艦の速度に合わせて行動しなければならない為部隊の迅速な展開において最も懸念されるマイナス要素で帝国軍では部隊展開速度の基準として予測計算を立てる。

しかしながらネドリー運輸でセブンスターエンジンを搭載した所、銀河の平均以上の速度で航行出来るようになった。エンジン次第ではまだ伸びしろがある船でもある。


 研究ステーションの周りにはFT14型が4隻、固定砲台として置かれている。海賊はそれを突破したとしてもエデルゼウス26とAT3型航空母艦の艦載機で全く近寄れない、しかしその空母群、特にAT3型航空母艦は偉業を成し遂げる日がやって来てしまった。

 「ファルマン!お急ぎ便!」

 「・・・AT3は用意してある、3隻はロックウッド星系に送った、大型交易ドックに艦首だけ突っ込んで全面封鎖してあるぜ?今回に限り、トライアド民主共和国政府はエマンクリシット皇国を説得して商船登録無しでも領土に入れてくれる許可を取ったそうだ。護衛はズーデンド通商とノースソルドック商事、ラストリバー物流にエルガンド国際貨物とか10社近くがノア級やベーベル級大型貨物船を用意してくれた。・・・いや、もしかしなくても国の指示だな?まさか大型貨物船に護衛される日が来るとは思わなかったぞ?良いからとっとと積み込み指示して来い!ここに残ってるAT3担当のズーデンド通商とノースソルドック商事を待たせてるんだ!彼らの貨物船にも搭載予定なんだぞ?・・・さっさと積み込み指示してこい!」

 「分かっておる!」

 「こんな所でコーヒー飲んでる暇があるならさっさと行け!」

 「ひえー!!」

 エルムンドドエルに事務所の片隅に置いてあるビームライフルを突きつけると事務所をそそくさ出ていく。

 ・・・今日は臨時便の日、まさかの空母で強襲揚陸である。

 理由は大気圏突入に耐えられる大型貨物船が今手元にササリッサ級1隻しか無いからだ。最初はうちから船はほとんど出せない為、ER-3000Cでグリニッジステーションまで輸送と言うプランで当初は検討していた・・・とはいえ大気圏突入の課題は軍用艦には適応されない、船体はその辺のボロとは違い新造艦その物・・・いや、事実上の新造艦かつ、使い道も無くただの小型機保管庫として係留区域に浮いている奴らがうちには数隻居る。

 人の命が掛かっているとはいえ、自国の命も気にしなければいけないフルジア王国の物流情勢を考えるとそれに割り当てられる船はせいぜい大型貨物船4隻程度が限界、やはり割ける輸送力が根本的に足りないのでこれをドライアド民主共和国政府に船を用意してもらうネタとして提案したらAT3型航空母艦の領土侵入を特別に許可・・・いや、お願いされた。

 いや、人類の軍用艦がエマンクリシット皇国領を平然と航行して言い訳が無いだろう?そう思うのだが、実は大気圏突入もセットで深刻な船不足となっていた・・・と言うのも、ノア級は旧式なので大気圏突入も考慮した設計をしているのだが、その後継艦に当たるベーベル級は星間輸送専用設計、大気圏突入をすればまさかの燃え尽きる系のステーション間専用輸送船なのである。おまけにトライアド民主共和国の主力貨物船の大部分は経済的に優れるベーベル級、大気圏航行設計をしているのが姉妹艦のエルドーラ級だが、割高かつスペックもベーベル級に劣る為大気圏突入が必要な事業を展開している会社しか保有しておらず、これが数少ない・・・おまけに通常荷役で大気圏航行機能必要とするのは何処の国でも基本的に中型貨物船の仕事、地上からステーションへの貨物輸送は中型で事が足りてしまうのが銀河の常識である。

 唯一の例外がズァパリ民国、ズァパリ民国は銀河の農地、その物量も膨大なので大型貨物じゃなければとてもじゃないが足りないのだ。それ故にアーバン船団商事に頼もうとトライアド民主共和国政府は思っていたらしいがタイミングが合わなかった。他のズァパリ民国籍と言えばジェリーガン船団運輸だが、サルベージと外交が基本の王族艦隊なのでズァパリ民国が絡まなければ動かす事が出来ない、他のズァパリ民国籍の貨物船団もそうだ。

 お嬢様とお世話係はこのステーションには多いが、ササリッサ級は単独では星間航行が不可能、おまけに容量はあれど搭載重量は少ないという短所も持つ・・・そこでサラマンダー級航空母艦がまず候補に上がった。うちには3隻居るのだが、貨物船では無いので地上での荷下ろしが面倒極まり無い、どうせ空母を使うのなら・・・で浮上したのがAT3型航空母艦である。

 大型交易ドックは大きなAT3型航空母艦がオゾンシールドを突き破って艦首を突っ込んでいる。天井ギリギリ、しかもこの先にある艦橋が引っかかって全て入りきらない。これが収まるのはグリニッジステーションなどの超大型ステーションや、専用設計の軍事ステーションだけである。

 大型交易ドックからAT3型航空母艦へ、積載は海兵隊全員で運ぶ、前のスロープからは重力があるが、格納庫内は重力を切ってある、無重力でコンテナを地獄の手積みで敷き詰めるのだ、敷き詰め終われば即アンドッキング、ズーデンド通商とノースソルドック商事にドックを明け渡す、それが終われば出発だ。

 「・・・あれだけ積んでも全然問題ないとは・・・」

 ちょっと意外・・・他の薬の製造を一時的に止めてまで製造した巨人族で流行るM-25DROSウイルスの検査薬からワクチン、治療薬を天井ギリギリまで大量に抱える、それもほぼ液体製品中心なので当然過積載のはず、これだけ積めばサラマンダー級航空母艦と同じように牽引しなければならない状況、しかしそれも不要と言い張るAT3型航空母艦、難なく過積載のベーベル級に追従出来る。流石は爆速の軍用エンジンと言った所だろうか?在庫だけなら有り余っているセブンスターエンジンに換装し、サラマンダー級ほどとはいかないまでも高速化、それに今回使うAT3型航空母艦は元々損傷は外壁多少のほぼエンジンのみの為、たいした修繕もしていない、自走できるようになるまで1週間だった。

 しかし今格納庫に収められている貨物の総搭載重量はサラマンダー級より上なのにも関わらず同じエンジンでもなぜ違いが出てしまうのか、サラマンダー級より単純にスラスターの数が多いのとジェネレーターの性質が全く別物だからだ、人類のジェネレーターは大容量、高出力、巨人族のは小型、高速解放である。重い荷物を運ぶなら人間族のジェネレーターの方が適していると言う事なのである。

 そうして高速化したAT3型航空母艦、一隻当たり大型貨物23隻分の薬とワクチンを研究ステーションとシーモア共和国の惑星ヴァルチャーのサイズァー薬品その他の地上や衛星のありとあらゆる工場からトライアド民主共和国籍の商人が保有するベーベル級大型貨物船600隻近くと合同で運び出している。通常貨物船分の物資の大気圏突入はトライアド民主共和国軍が変わって行う予定だ。

 「ほう、これが人間族の正規空母・・・中々に強襲揚陸に適した船であるな・・・こんな非常時でなければ我々も武力行使せねばならんのだが、貴殿のその船は災厄の終わりを告げる聖なる箱舟・・・これっきりだぞ」

 「分かっています、私共も民主共和国軍のように保管宙域に普段は放置している船です・・・こんな船、どう貨物船として使えと言うのです?」

 「わが軍も貴殿の入れ知恵で商人達がセルルド星系から何隻も移民満載で持って来るようになって大変困っておる・・・最新鋭の船でもあるのだから是非とも直して使いたい所だがそのような予算も無い、ゴミとして浮かべていればタダだからそうしているだけなのだ、これより大気圏突入、我が艦隊に続け、地上では盛大な迎えが待っておる」

 「了解しました」

 AT3型航空母艦はトライアド民主共和国軍の主力空母艦隊に続いて首都惑星メルスナルに大気圏突入の準備にかかる、全員宇宙服装備、そうしろと言われている。AT3型航空母艦はフルジア王国軍のエルーラAB-6000型航空母艦とほぼ同じタイプの船、いや、AB-6000型航空母艦は元々AT1航空母艦の改良モデルである。元々帝国軍の設計の船で、今となっては当然古い設計にもなるのだが、主要部分の構成は大体同じである。AT3型航空母艦はオゾンシールドも改良され、航行しながら戦闘機の発進も可能になったが、格納庫を閉鎖する扉も健在、これが大気圏突入を可能にしつつ、在来の貨物機のように貨物ドローンの使用も可能にした・・・艦首の扉はスロープに出来るので、帝国軍はこれを使ってステーションから直接機体の補充を可能にしている。

メルスナルの貨物港に降り立てば沢山のメディアの取材ドローンに囲まれる。何処のニュースでも開けられた扉から天井ギリギリまで積み上げられた貨物コンテナで歓喜する様子が非常に多い・・・うちの空母は人気が大変出やすいようだ。他の居住惑星でも同様の様子である。

 ・・・とはいえ・・・。

 この人と一緒に行動するといつもセルルド星系の天気が大荒れなのである。

 「流石はズーデンド通商、奴隷商人と呼ばれるだけはある」

 「貴殿もそれなりに加担しているであろう?ノースソルドック商事」

 「・・・じゃあ、俺は何だ?警備部門がもう自国の兵力を超えてるんだが?」

 「「わからぬ」」

 エルムスミエルとログドランドッドが声を揃えて言う。今回は空荷なので帝国軍兵士はAT3型航空母艦で全員格納出来た。しかし皇国軍兵は不可、2社はヤケクソで皇国軍の主力戦艦、エンデラー級戦艦をニコイチで6隻押し付けてきた、いや、そのまま持って帰れ!

 研究ステーションまでは単独で戻れば中型交易ドックがざわついていた。

 「何があった?」

 「見ろよ、ジャンプゲートの残骸だぜ?」

 ルーガがジャンプゲートの一部を指さす。

 「なんでこんな物が?」

 「スクラップ回収船が間違えて拾ってきてたみたいだ。調べてみたら本体が海賊の食卓からさらに先にある、調べてみたら昔魚人族の星系へ飛ぶのに一番近いジャンプゲートだったが、遥か昔の独立戦争ので帝国がぶち抜いた物のようだ・・・そして、セルルド星系のドンパチの原因でもあるらしい、クソトカゲがそう言ってたぜ?」

 「そんな隣だったのか?」

 「そのようだな?今はかなりの大回りを強いてかなり遠い星系、そしてほぼ外との関係を経っているらしい・・・で、あのクソトカゲは直せと言っている・・・そして王国もだ、どうやら再建の為の技術者を失って独立戦争後に再建出来なかった物らしいんだ」

 「直して何になる?」

 「・・・知るか!人間族が銀河の資産を壊したのだから責任もって直せとな?だがジャンプゲート技術はその魚人族が開発したもの・・・何処まで直せるか・・・」

 「とはいえ、この辺のは帝国が作ったんだろ?」

 「・・・まぁ、そうだな?専門外だがやってやるよ・・・分からねぇ事は他のゲートのパネル開けてみればいいだけだしな?」

 「壊すなよ?」

 「開けるだけだ!そんな軟弱な代物な訳ねーだろ!」

 ルーガは頭をかきむしりながら、残骸をひとまずばらしてみようと動き始めた。

 ・・・しかしジャンプゲートが何故皇国と帝国の戦争に?

 宗教的押し付け、少なくとも生まれる前から・・・一世紀経ってもずっと続けられている戦争なのは間違えない、そのはずだ。

 「パパ!お本読んでください!」

 「・・・なんつー古い本を・・・これはどこから?」

 「整備ドックの色んな物が入っているお部屋!」

 「整備ドックの・・・あぁ・・・」

 ファルマンはサシリアが持ってきた本をよく見る・・・一世紀前の経済雑誌、読み聞かせる価値は無い。それを事務所の机の上に乗せてサシリアを持ち上げ、膝の上に座らせた・・・この部屋にある物、実は全部海賊船に乗っかっていた家具、中古だろうと一銭も出して居ない、ある程度の家具は中古家具として居住区に出回っているが、書籍・・・特にこの手の雑誌は本当にゴミ、整備ドックの色んな物が入っている部屋と言うのはゴミ集積場である。ある程度まとめて焼却処分しているのだ、この雑誌は海賊の食卓でずっと浮いていた貨物船などに乗っていた物だろう。

 ・・・しかしいつの時代の物だ?これは・・・?

 うちで運用する貨物船、最古参はG-1000シリーズ、貴重な大型船なので貨物型は無理矢理近代化改修を施して走らせており、動く資材系の型式はそのままスペースデプリ掃除に充ててもいる。それはさておき、G-1000シリーズも2世紀半も昔の船、不法投棄船もこの年式が多い、なにせ古すぎて捨てた物だからだ。船内のデータに残った船籍的にもリストーン星系の採掘業者、ほとんどが倒産しているが生き残っているのはもう大手、資源運搬船は劣化も早く、中古船としての価値はほとんど無い、基本的には新造船を使いつぶす、スクラップとして売却とはなるのだが、貨物船と違い、酷使する船なので使いまわせる部品も少なく、解体費用を逆に取られてしまう。大手はコーポレートイメージを良くする為に解体に出すが中小企業は出さない事も多い、そうして経費削減の為に捨てられた船がこの宙域にゴロゴロ居る。

 サシリアはワクワクしながら雑誌をめくるが教育的価値など無い、リストーン星系の独立戦争後のスペースデプリ帯に海賊が潜むようになり未配達の貨物が増え、経済が急速低下!フルジア王国軍も戦後の軍拡が不十分で対策をせず!落ちる株価、今後の対策は?・・・戦後の立て直しにどうやらしくじって今のクソ田舎がある訳だが、戦時中に魚人族との交易ルートが破壊されてしまった事もあり、各国の第二世代ジャンプゲート装置の開発も頓挫、今後は軍事関係の株価が大幅に上がるだろう・・・という文面もある。そう言えば魚人族は船には短距離ワープが可能とかそんなユニークな特性を持っていたっけ、それがこれなのだろうか?・・・という事はだ。

 ・・・2世紀以上続く戦争の原因は技術者との航路を断たれた事か?

 真相はよく分からないがエッチな広告のページを開いているサシリア・・・よく分かっていないようだ、そもそも種族が違う。

 「つまらない!」

 「・・・そりゃそうだろうよ?他の子達と遊んできな?」

 「パパ!かくれんぼしましょ?」

 「何で俺?ツェルナとは?」

 「ツェルナお姉ちゃん!他の子と遊ぶので忙しいんだもの!シリウスは理不尽に怒るし・・・」

 「・・・お世話係には内緒だぞ?」

 サシリアを連れてE-900Mへ、ジェリーガン船団運輸のササリッサ級にドッキング、普段は暇そうにしているササリッサ級の乗員達を使って船長ごっこ、サシリア王女の命令には答えつつも研究ステーションの周りをクルージングしてもらう。それに飽きたらドーベック艦隊をおもちゃに海賊の食卓の巡視業務の視察、色んな陣形と何もない宙域に向かって艦隊一斉射を披露した後、ご満足なされた王女様はお昼寝タイム、ササリッサ級は静かに大型交易ドックにドッキング、お世話係が迎えに来ていたが、女王様の持ち物の船でクルージングとなれば特に叱責も受けなかった。

 「・・・悪かったな」

 「いえ!王女様の為ならばいつでもお呼びください!」

 ルシャーサの部下はそう言ってササリッサ級に戻っていく・・・俺も戻ってE-900Mを小型ドッキングベイに戻さなくては・・・。

 それから数日、AT3型航空母艦はもうお役御免・・・と思いきや、あれから引っ切り無しにドライアド民主共和国の居住惑星に大気圏突入を繰り返している。ウイルスに感染してもワクチンの効果で致死には至らない風邪のようにはなった。しかし感染力が強い、早期に薬を飲めば他種族も死には至らないが、原因をどうにかしないと今後も需要が減らない・・・その原因とは居場所の無い皇国軍兵士達である。収入も無い、就職先も無い、ほとんど路頭に迷い、公衆衛生の悪化を招いているからである。サラマンダー級航空母艦に載せ替えでは非常に非効率極まりないのでトライアド民主共和国から正規の貨物船にするよう頼まれた。検査も登録もトライアド民主共和国が行った。特に厳しいと言われるトライアド民主共和国の商船登録審査をトライアド民主共和国の民間整備工場が通したのだと言う、そのままで・・・。

 扱いは武装貨物船、トライアド民主共和国籍ではかなり高額な税金が課せられるが、銀河では通常の貨物船扱いになってしまう。武装貨物船という規格が存在しないからだという。他国で貨物船登録されてしまえばそれは他の国でも有効、なのでフルジア王国籍なら普通の貨物船扱いというカラクリとなる。しかしながら武装貨物船の登録費用もかなり高額、貨物船に武装して登録すれば民間巡視船登録せずに済むという事にもならない、それをやるくらいなら民間巡視船登録の方が断然お得なのである。しかし、今回の場合はトライアド民主共和国政府が全額持ってくれたのでこれはかなり美味しい。オデム=ササラにも堂々と乗りつける事も可能にはなったのだが、荷役そのものに時間がかかるので地上とのやり取りやチャーターに限られる使い方しかできないのが残念な所、なお、貨物船としての税金は普通にかかる。

 しかし、言うならば逆も出来ると言う事だ。

 うちの整備部隊とエルーラ社の設計部門が雇用対策としてニコイチ大型貨物船の開発に着手、割と余らせているER-3000Cの貨物室部分の胴体、なぜ余るかについては積み荷に穴を開けてしまえば襲う意味が無い、通常はエンジンやジェネレーターなどを狙うのが鉄板、しかしそれ以外にも良心が痛まなければ艦橋破壊と言う手もある、そういう船は居住周りもズタズタなのでこういった理由で貨物室部分が余る訳だが、これをエンジン回りの部品を回収するのに割と余りがちな皇国軍のポライト級巡洋艦の船体後方部と付け替えると言う物、良い感じの所で切断し、ER-3000Cの貨物室と溶接した船を今回作るのだ。これをノースソルドック商事に海賊船も含めて皇国軍人付きで投げ売りする。うちの貨物船が増えないのは惜しい所だが、居住区画は巨人族の物なので内装品の交換も不要、継ぎ接ぎの弊害でもちろん大気圏突入は不可だが、ちゃっかり取り回しも良く速い為ベーベル級より優れた船に仕上がった。トライアド民主共和国は物流に困っては居ないがフルジア王国より酷い雇用問題の切り札としてノースソルドック商事に押し付けていこうと言う算段、勿論こんな船、トライアド民主共和国では登録すら出来ない、だから王国で取得する。今日はその名もポライト3000C型大型貨物船をノースソルドック商事に押し付ける日だ。

 「エルムスミエルさん」

 「なんだね?薬を本国に持ち帰るついでに乗せる皇国軍人のスペースはもう無いぞ?」

 「その事なんだが、船を5隻譲りたい」

 「船が欲しいのは貴殿のほうでは無いかね?」

 「この前の礼だ、登録はうちで済ませてある。大型貨物船1隻に海賊船が4隻、乗員は皇国軍人を乗せてある。どちらにせよトライアド民主共和国に連れて行って欲しい皇国軍人も抱えている、運び終えた後は廃船にするなりそのまま使うなり好きにして欲しい」

 「我も貴殿のようになれと?」

 「この前の事もあるし今回は船体の代金は取らない、エルーラ社の設計もちゃんと入っているから量産も可能だ、気に入ったらいくらでも作る・・・材料ならこのまわりとセルルド星系に沢山落ちているからな?少しは雇用問題の解決に充ててくれ、海賊船は民間巡視船登録でも貨物が積めて赤字が出ない、黒字も少ないが・・・ともかく大型貨物船は十分利益が出るはずだ」

 「分かった、譲り受けよう・・・性能次第では他の商人にも斡旋を考えてもよかろう」

 「各船長には命じておくよ、船体の詳細は彼らから聞いてくれ、大気圏突入はしない方が良い」

 「我が国ではそう言った貨物船の新規登録は出来ぬからな?」

 ・・・ひとまずは押し付けた。

 これで研究ステーション周りの在庫が少し片付く。フルジア王国でも続々と中型貨物船の数は増え、帝国軍人の雇用は確保出来ている・・・だが、船長だけは民間人を起用する事業者が大半、民間の雇用も地味に増える、各コロニーの貨物ヤードが限界から一杯になるようになってきた。それに釣られて経済も回り始める。リストーン星系への民間移住者も増えてきたのでクレジットが意味を成すようになってきたのだ。マスビダ星系側の物流コロニーには星間客船が止まるようになった。これまではこの星系で働く人達は小型機を使うか、会社の船に便乗してマスビダ星系に帰ったりをしていたのだ。

 外を見ればちょっと離れた先に大型艦整備ドックが浮いている。新設したのだが、それでもAT3型航空母艦の即席プラットフォームは現役だ。ポライト3000Cはこのプラットフォームで作られている。両脇に2隻、製作を開始した所だ。

 「よう、無事に試作品は渡ったか?」

 「一応な?・・・アンタらまで乗っかって来るとは思わなかったよ」

 「他国も雇用に悩まされています。それに一部だけでも他の国の商人に渡れば部品販売のシェアが広がると言う物です」

 キリッとエルーラ社の営業が眼鏡を光らせる。

 「とは言え、新造船が売れなければ商売上がったりだろ?」

 「部品販売も甘く見てはいけない状況にあります。それにポライト級巡洋艦の設計も把握出来ました、帝国軍の整備士の方はかなりのノウハウをお持ちで我が社の技術者達も大変勉強になったと言っています」

 「・・・そうか・・・あんな一つ壊れたら終わりな船でも何か得る物があったのか・・・」

 ルーガは何故か絶望した顔で頭を抱えた・・・そりゃそうだ、デザインくらいしか参考にしてはいけないブツなのだから・・・。

 「それで、例のジャンプゲートよ?他のジャンプゲートのパネル開けて似た部品を作ったらいとも簡単に直ったぜ?後は起動するだけなんだが・・・その先の調査は流石にフルジア王国軍がするそうだ」

 ポライト3000Cの事はひとまず端によせ、本題を切り出した・・・それにしてもいくらルーガの配下には元帝国軍整備兵が居るとはいえ、そんなにあっさり直せて良い物なのだろうか?

 「・・・まぁ、妥当だな?その先も俺らでやれと言われたらどうしようかと思った」

 「・・・なんだが、共和国軍が何故か一個艦隊を派遣すると言い出した、その迎えをやれと言われている」

 「・・・なんで?」

 「詳しい事は聞いていないが、元皇国軍の連中に聞けば、何故破壊されたかも覚えていないが軍のデータベースにたぶん記録があるからその辺の皇国軍の軍艦からアクセスして詳細を確認するとよかろうとか言われたぞ?」

 「・・・分かった、後で確認しよう」

 ルーガはエルーラ社の営業を連れて事務所の方へ、途中でリーサとヤシマ中尉を巻き込み、小型機ドッキングベイでE-900Mに乗り、沖に放置されているプリズムライオッド12に乗り込む。相変わらず誰も居ない、なぜなら余程の事が無い限り動かさないからだ。

 「データベース・・・ねぇ」

 リーサは腕を組んで色々調べて回る。もちろんこれは皇国軍の軍用艦だ、その気になればある程度の秘匿情報まで漁れる・・・後々スパイ船扱いで沈められそうな気もするが、セルルド星系で沈む船が多すぎる、権限を消す作業が間に合っていないのか、他の船に充てているだけなのか、どうやら船に記憶されたセキュリティパスが生きていたらしく、皇国軍の古い軍事作戦アーカイブに接続出来た。

 「・・・ふうん、軍用一般ライセンス扱い」

 「どの船でも過去の作戦データの閲覧は出来るようです」

 「帝国では大佐以上でしか閲覧できないアーカイブなのに、下っ端でも端末さえあればいくらでも閲覧出来るようね」

 「ところどころ抜けているのも巨人族の大きな特徴ですから・・・」

 膨大な量の作戦データから保存された年代でそれらしい物を手当たり次第に探していく、整理もロクにされていないようで時間がかかってようやく見つかった。

 「あった、流石短命なズァパリ民国、どんな些細な歴史文章も残ってる!」

 携帯端末から手あたり次第にギャラクシーネットワークで調べて引っ張って来る、出てきたのはズァパリ民国の国立中央図書館の電子アーカイブだ。

 「こっちも出てきた!200年くらい前に皇国の民間企業が計画したテラフォーム計画がある、マーズラ星系のA-45型惑星の植民地化計画、ドローンの設計が悪くて暴走、それを破壊する為にリストーン星系に大艦隊を送った。これらはフルジア王国・・・当時は植民地の侵略と勘違いされ帝国軍によって迎撃された。これが今の戦争の始まり、帝国軍との戦いでマーズラ星系へ大規模艦隊を送れない、そこで考えられたのが増殖型ドロイドによるA-45惑星のドローン殲滅作戦、ドロイドは自己増殖、船も現地生産、計画は成功したかのように思えた、だが帝国軍がこの作戦に気が付いてマーズラ星系へのジャンプゲートを破壊、ドロイドの全自爆信号を送る前に全てが終わった、ギャラクシーネットワークの接続が途切れれば30年くらいで機能を停止するだろうというらしい、作戦は完遂扱い」

 「・・・だが、この先にはフルジア王国と最も交流の多かった魚人族の住む星系がある。国交再開とドローンの早期破壊を帝国に訴えたものの、放置すれば止まる物に対して無用な戦力を割く気が無かった帝国と固着状態に、最終的に増えれば魚人族にも危害が加わると考えたフルジア王国領主は自力で修理する為に独立戦争を帝国に仕掛けた、最初は帝国軍は滅びる寸前までフルジア王国を滅多打ちにしたけれども、皇国軍との挟み撃ちで疲弊していた、だから帝国は独立を認めた」

 ・・・皇国軍目線ではこうだったらしい。そしてフルジア王国の独立戦争を眺めていた他国の記録で独立戦争がなぜ起きたのかも明確になって来る・・・実はフルジア王国には独立戦争後の記録しか残っていない、独立戦争でサーバーから書籍まで全て喪失しているから今の世代の歴史では曖昧な戦争となってしまっている、そんなレベルにまで国力をうしなったのだから結局は直す技術もドロイド艦隊に対抗する兵力も失ってしまい、帝国の思い通りになってしまった。

 「・・・だから共和国軍が一個艦隊を用意したのかっ!」

 「クソトカゲは何も言わなかったの?」

 「起動する前に軍拡は抜かりなくしとけ・・・だ、そう言えばズァパリ民国軍の艦隊もゲートを直していると言う話を聞いて直ぐに動いている、もうすぐこっちに来るそうだぞ・・・こりゃ余程の惨事になるな?」

 「えっ、でもフルジア王国軍の調査艦隊はもうジャンプゲートを越えてる・・・」

 「ヤシマ中尉!ドーベックの船をリストーン星系の共和国軍艦隊の迎えに走らせてくれ!」

 「了解しました」

 ・・・さぁ、どうする?

 うちも戦争する気で艦隊を組まなくてはいけない。艦橋の真ん中にある管制コンソールで近辺の星系マップを開く、民間トランスポンダーはギャラクシーネットワークで拾える、軍用艦は本来は無理だが、民間トランスポンダーを搭載していない船は原則リストーン星系から出していない、出していたとしても最低旗艦運用艦には必ず載せている、よって軍用艦はリストーン星系のIFF情報で見える物が全て、それ以外はギャラクシーネットワークで問題ない。

 ギャラクシーネットワーク上ではアインザック艦隊がマスビダ星系に居る・・・これはアーバン船団商事の護衛任務にあたっている通常業務便、海賊も喉から手が出るほど欲しいロゼンダ級の護衛に割いている護衛艦隊だ、これは外せない。

 ・・・他・・・他は・・・。

 それ以外を検索するも、大した武装を積んでいる船が無い、もちろんER-3000Cなどは一切使い物にはならない、そんな当たり前の事しか分からなかった・・・目の前の物は最近指示を出した運航状況とほとんど同じ状態にある。

 ・・・ならば、この宙域の人間だけで対処すべきだ。

 管制コンソールの他星系のマップのホログラムを何処かへ放り投げて、リストーン星系のギャラクシーマップを眺める・・・船の数だけならばこの宙域に元帝国軍の船を中心に100隻近くある、修 理待ちで固定砲台化しているのは300隻もあるようだ。

 ・・・何も戦場からサルベージしてくるのは俺だけじゃない。

 うちの貨物船達は勿論、ズァパリ民国、ドライアド民主共和国、シーモア共和国籍の貨物船がセルルド星系から引き連れてくるのだ。これを動かすには・・・。

 「何をするにもリユン少佐を呼び出すのが適任かと思われます」

 「・・・そうだよな?」

 確かにその通り、そもそも俺はただの商人であって軍人ではない、艦隊指揮は専門外、ここはヤシマ中尉の言う通り、俺より艦隊指揮を常日頃行っているリストーン星系の警備管制の総括のチェ・リユン少佐と一度連絡を取るべきだ、ヤシマ中尉は直ぐに繋げてくれる。

 「司令官殿、何かおありでしょうか?」

 「緊急事態だ、うちで直したジャンプゲート、あの先にもしかしたら皇国軍艦隊が潜んでいる可能性がある、今すぐ保管してある軍艦に人員を割り振って欲しい」

 「・・・皇国軍の艦隊・・・ですか?・・・少々不可解ですが・・・いえ、巡視中のスギヤマ艦隊より緊急通信!ゲートから出てきた皇国軍の艦隊が民間船を襲いつつマスビダ星系へ進行中との事!皇国軍の艦隊は呼びかけにも応答せず!直ちに用意します!」

 「・・・遅かったか」

 管制コンソールの土台を殴る。スギヤマ艦隊には発砲許可を出した。民間船に犠牲が出たとなれば武力行使も仕方ない・・・皇国にも言い訳が出来るはずだ。

 ・・・だが、その横でリーサが何かに気が付いた。

 「・・・おかしい」

 「何が?」

 「これよ、なんで敵勢力になってるの?」

 「・・・この船は民間トランスポンダーを積んでいるからIFFを普段は使っていないんだ、うちの船はほとんど敵勢力さ」

 「違う、こっち」

 リーサは航行コンソールからスギヤマ艦隊にいくつか居る皇国艦のレーダーマップを投げてきた、一緒に行動している敵艦隊はスギヤマ艦隊所属の帝国艦だろう。一方でマスビダ星系へ向かっている大艦隊、名称はメソポタニア級フリーゲート、皇国軍の艦隊なのにも関わらず敵勢力扱いになっている事である。

 「・・・何もしていないんだよな?」

 「当たり前よ!」

 ・・・そうだ、リーサがおかしいと言う理由、この船は皇国軍の船、このレーダーマップの送信元も皇国艦だからだ、味方識別するはずなのにわざわざ敵扱いしていると言う事は何か訳がある。

 ・・・皇国軍も何か隠している、アーカイブを漁ってもその理由は出てこない。

 その間にエデルゼウス26がギャラクシーファイター6とスーパーツァーリー8を直援機として放ちながらマスビダ星系へのジャンプゲートへ向かって動き出す。

 再び管制コンソールに戻れば皇国軍のアーカイブに目が行く、そもそも皇国軍は作戦終了後に自爆させる気だった・・・そうだ、これだ!

 「そう言えば、あいつらには自爆機能がある!皇国に頼んで自爆させて貰えば!」

 「残念ながらそれは無理、その権限を持っていたセルルド星系の皇国軍の要塞ステーションを20年くらい前に帝国が破壊してしまっているから・・・時が遅すぎたようね」

 リーサは前髪を持ち上げながら溜息をついた。

 「・・・嘘だろ?」

 「事実よ、この要塞を破壊した事により皇国軍が大幅に弱体化したわ、銀河の支配権の近郊が崩れた歴史的な出来事だもの・・・色んな宙域に点在していた自動対空システムが敵味方問わず攻撃を始めたりと、厄介事の原因はほとんどこの要塞にあったけれど、まさかこんな重要な鍵まで握っていたとは・・・まさに銀河のガン」

 「そうとなれば、全て破壊するしか方法は無いと」

 「そういう事になるわ、帝国軍も悪いけれど、前線のど真ん中に銀河中のいろんな設備の権限を持たせた要塞を建てた皇国も悪い、なによりバックアップを母星のある星系に用意していなかった事も・・・」

 ・・・巨人族はバックアップを基本的に用意しない、流石に生命維持系はバックアップがあるものの、一つ壊れれば全てが機能しなくなる設計も多くの船に見られる。惨事が起きてから対策する人種なのである。抜けが多いのも長命ゆえか、ある程度忘れないとやっていけないと言うのも大きな特徴である。

 「とはいえ、相手は旧式艦、ほぼ一方的に撃破は出来ていますが・・・数が多すぎて残骸の壁が出来ており、これ以上の撃破は望めないと・・・メソポタニア級などはこちらに攻撃出来ず、壁に沿ってマスビダ星系へ侵入しているとの事です!」

 ヤシマ中尉も目をつぶってこの悩ましい状況を打開すべき策を練っている。繋ぎっぱなしのリユン少佐が居る管制室もドタバタしている、あちらこちらに指示を出していてせわしない。

 「ジャンプゲート破壊は?」

 「残骸が邪魔で不可能です!それに・・・休眠状態だったとされるドロイド艦を起こしてしまった以上、殲滅しなければ魚人族の地も危なくなります!」

 ヤシマ中尉はジャンプゲート破壊が出来ない事を訴える。

 ・・・どうすれば!

 しばらくすればリユン少佐が席に戻って来る。

 「・・・ひとまずこちらでは荷室にジェネレーターの燃料棒を大量に積載した無人の海賊船を準備しています!近くの採掘場からご提供していただいた爆薬をセットして、これでひとまずは残骸を吹き飛ばせますが・・・」

 「焼石に水じゃないか!・・・いや、それをゲートの向こう側に送れないか?」

 「・・・なるほど、向こうで詰まらせると・・・?そうするよう伝えてみます!」

 「まぁ、向こうのゲートを吹き飛ばしても良いんだが・・・」

 「手段があるならば、最善を尽くすまでです」

 「どれくらいで出来上がる?」

 「1時間あれば出港可能との事です」

 「・・・歯がゆいな」

 「FT14型戦艦がやれるだけやっていますが・・・壁が分厚くなる一方と連絡が来ております」

 また、管制コンソールを見ればロックウッド星系からの帰りの船が研究ステーションへ一時退避してきている、フルジア王国軍も前線基地から船を出してきて来た。

 「これは酷い、皇国軍は知らないの一点張りだ、わが軍の損耗は甚大、まもなく政府が要請した共和国軍、帝国軍の艦隊がこちらに向かってくる・・・しかし王国軍より良い船を揃える貴殿の私兵がこうも苦戦するとは・・・なんだねこの壁は・・・ホースのようにマスビダ星系へのジャンプゲートまで伸びているではないか」

 「これはフルジア王国オロラ星系前線基地のオドルネスク・コッツエル提督、誠に申し訳ありません、私のせいです」

 「何故だね?修復もフルジア王国政府が命じた物、調査艦隊は王国軍が出している、それらはもう既に消息を絶っている。それに帝国軍並びにその他の国も皇国軍がこれだけの軍艦を動かしていた形跡を察知していない。それに共和国軍が教えてくれたぞ、あのゲートは独立戦争の中核、フルジア王国民はこれを直す為に独立したのだと、その先にある魚人族の地を守る為だと」

 「その手前には皇国の民間企業がかつてテラフォーミングしようとした惑星があったようです、そちらに皇国側の資料を送ります」

 リーサに送れと指示を出す、それは無事にオドルネスク提督のA-4000型戦艦に届いたようだ。

 「・・・全ては皇国軍の連絡の怠りと帝国軍の勘違いが招いた災厄と言う事か・・・これが全ての始まり、そして両者が何のために戦っているのかすら忘れている出来事か・・・それに爆破スイッチは約20年前に帝国軍が吹き飛ばしているでは無いか・・・地道に破壊していく他無いな、とは言え、フルジア王国軍の船も所詮旧型帝国艦の改良型、現状既に皇国軍籍の戦闘艦になすすべも無しだ、このままでは国民にも甚大な被害が出る」

 「ひとまずはもう間もなくゲートの向こう側を塞ぐ無人爆弾船が完成します・・・これでこの宙域への侵入を防ぎます」

 「これでは軍艦の主砲では歯が経たぬからな・・・帝国軍のやらかしが大きいが、もとより皇国軍が仕掛けた時限爆弾、王国が帝国軍に加担する約束で帝国軍はどの道動いてしまっている・・・皇国との戦争への参加は避けられんだろう・・・とは言え、このゲートは王国がいずれ再建すべき物だった、再度破壊すればその先の国が滅びてしまう・・・さて、意外な事に共和国軍の艦隊が先に来た」

 「また貴様か!ネドリー!!」

 「げっ・・・これは共和国軍オデム=ササラ宙域巡視艦隊司令官のエルブルドソリス提督殿」

 ひとまずホログラム通信に向かって敬礼する、エルブルドソリス提督は今回ばかりはお前のせいでは無いと言う顔で大きく溜息をついた・・・。

 「・・・とは言え、マーズラ星系へのジャンプゲート再建はフルジア領地が大勢の犠牲を出してまで独立に踏み切った目的・・・責めるつもりもない、我々も魚人族と再び交易出来るのを諦め半分で見守っていた節もある。本来あるべき銀河ネットワークが元に戻っただけに過ぎない、全ての責任の所在は皇国と帝国にある・・・手を貸そうではないか・・・実はこの件はエルムンドドエル博士から厚生省経由で聞いている、ゲートの先の調査結果を聞いてから動く事を考えていたが、どうやら間違えだった」

 「なんだ・・・」

 エルムンドドエルは本来医学研究者、軍隊との繋がりは無いが政府との繋がりはあるので政府経由で軍に話が行ったようだ。

 「しかし、何故かズァパリ民国の艦隊もこっちに向かっているぞ?約50万隻・・・あの国が抱える軍艦のおおよそ半数・・・やけに本気じゃないかね?」

 「エルムンドドエル博士の研究ステーションにはズァパリ民国時期女王が2人いる、それ以外にも在来種の子が7人くらい居るんだ」

 「なるほど・・・なら本気で守らねばならんな・・・帝国の艦隊も呼んだそうだな?セルルド星系で皇国軍とゴミの作り合いをしているぞ?」

 「おーぅ・・・まーじかぁ・・・」

 ・・・終わった、皆でそんな顔をするしかない。

 「避けて来るのに苦労したんだぞ!?オルドネスク提督よ!・・・しかしこれでは手が出せんでは無いか!」

 「・・・おっしゃる通りでございます、エルブルドソリス提督、フルジア王国軍の船は事実上、オヴィルツィッヒ帝国の旧式艦艇ですので」

 「チッ!戦力の弱さに漬け込んで・・・少しはアップグレードを検討せんか!それでは国土も守れんぞ!・・・さて、ネドリー!結局は貴様の私兵の戦艦だけが頼り・・・さっきは大口を叩いたが、我々の砲は貴様の国の艦艇よりかは優れている、だが銀河全体で言えば平均レベルだ、残骸を貫いてその先のアクティブな敵を撃破出来るのは高火力、長射程のオヴィルツィッヒ帝国艦が最も適任である、我々の船では残骸を撃ち抜けん!」

 「もう、それをもってしても残骸が邪魔で撃ち抜けません」

 「・・・はぁ?」

 エルブルドソリス提督は大きく口を開けて思考停止してしまった、だが事実である。

 「おそらく、全ての皇国ドロイド艦をこの場で処理する事は出来ない・・・と言う訳だな?しかしここで手を休めれば奴らはマスビダ星系に流れてしまう・・・いや、既に流れている」

 「・・・ならマスビダ星系側のゲートを残骸で封鎖、ひとまず出てくる奴らをこの宙域に留める!」

 「了解、雷撃機隊に指示します」

 リユン少佐経由でそれは雷撃機隊に伝達、マスビダ星系へのジャンプゲートを目指す船の破壊を優先して次第に詰まりだし、メソポタニア級フリーゲートは残骸をこじ開けこちらに出てきた。その間にマスビダ星系ジャンプゲートにほど近い工業地帯にスギヤマ艦隊が展開、工業地帯へ流れてくるのを防ぐ壁を残骸で形成していく、そして徐々に壁を王国軍、共和国軍とうちの主力となるドーベック艦隊、即席で編成したワトソン艦隊、カトロニコフ艦隊へ向けて誘導していく。上手い、上手すぎる!なんでも思い通りの戦局にしてくれる・・・本当に彼らは戦う戦場を間違えていたようだ。

 「海賊船爆弾は今走らせた!後30分耐えてくれ!」

 ルーガがそう連絡してくる。

 「・・・ひぃ・・・砲が焼きつく!リチャージが間に合わない!」

 「わらわの艦隊が代わる!そこを退け!」

 「これはズァパリ民国のルシャーサ女王陛下!真ん中を開けろ!我が共和国軍は後方へ移動し、しばし砲を冷ましつつ次の交換に備えよ!」

 共和国軍の艦隊は真っ二つに割れ、その間をロゼンダ級巡洋艦が率いる大艦隊が割って入って来た。それまでは元帝国軍と王国軍、共和国軍が入れ替わりで砲身冷却をしていたがサイクルが短すぎてまともにリチャージや冷却が出来ていない、うちの船は冷却、王国軍はリチャージ速度、共和国軍は両方に悩まされていた所だった。数こそ減っているが、残骸を避けて上の方向へ登っていく、物凄い勢いで残骸が増えていく。

 「おい共和国軍!わらわの船を壊すでない!」

 「元々砲身が限界だ!そもそも発砲する余裕が無い!それよりも我が艦隊も被害甚大だ!帝国軍とやりあってた皇国軍の流れ弾が飛んできてるぞ!帝国軍にもそんな瀕死の艦隊寄こしてくるなと伝えんか!オルドネスク提督!」

 「しかし、所詮我々も帝国の隷属国家、手が出せません」

 「ええい!我々が壁になる!損傷が激しい船は帝国のバックアップに回れ!」

 共和国軍は損傷している船を帝国軍の艦隊の盾に使う、どんどん被弾して沈んでいく。

 「共和国軍に次ぐ、これ以上沈められたくなければ我が艦隊の射線から速やかに離脱せよ」

 「わが軍、それに王国軍、ついには民国軍の船にまで傷を付けてどう落とし前をつけるつもりだ!」

 「わが軍にとって不敬なサルの艦隊が尻を向けている今がチャンス、射線上にいる貴軍らが悪い、事を素早く終わらせる為にも今すぐ退いてもらおう、でなければまとめて沈めさせてもらう」

 ・・・これは交渉は駄目そうだ。

 「各国指揮官に告ぐ、皇国艦隊の後ろに回れ・・・代わってくれるそうだ」

 「わらわと部下達の船を後ろから穴だらけにしおって・・・!そんなに戦争がしたいかっ!ならさせてやる!」

 「・・・従おう、帝国軍艦隊も、退いた方が良いぞ」

 「この状況で・・・なにをっ!」

 「・・・悪いが、ネドリーに賛成だ、そもそも皇国が仕掛けた爆弾だ・・・自分らで始末していただきたい物だな?」

 全艦が皇国軍の後ろに回る。

 「・・・な・・・なんだ!これは!」

 皇国軍が動揺した隙に帝国軍の艦隊も逃れるが、その頃にはメソポタニア級に目を付けれれている、バックアップは王国軍がしてくれるが、300隻くらいの皇国軍艦隊が即席だった連合艦隊の20倍の速さで溶けていく。

 「貴様ら!良くもハメてくれおったなァァァァ!」

 旗艦のエンデラー級戦艦が爆発する様子を眺める。爆発するなり皇国軍は撤退を開始しはじめた。

 「駄目だ、あいつら使い物にならん」

 「口先だけはいっちょ前、三つ目属とはそういう人種だからな?」

 「何故だ?他国の軍艦を平気で傷つけおって結果これとな?宣戦布告も考えて良いぞ?この程度なら滅ぼしてくれるわ!」

 ルシャーサはカリカリしている。実際、ルシャーサ、テティアのロゼンダ級はエンジンが3発のうちの2発は流れ弾によって破壊され、そして部下は流れ弾だけで34隻失っている。戦争するには十分過ぎる程だ。共和国軍なんか100隻居たのに30隻しか残っていない、40隻近くを流れ弾で失っている、王国軍は戦艦級が3隻のみ、壊滅だ。一方でうちは破損艦は在庫へ乗り換えが出来るので損失は10隻程度、24隻しか残っていない帝国軍の艦隊も一応は奮闘してくれる・・・帝国軍は明確な悪とさえ対峙すればめっぽう強い。

 「ファルマン、俺だ・・・海賊船は向こうに送ったんだが・・・」

 「失敗したか?」

 「いや、向こうに後500隻くらいしか残ってねぇ・・・悪いが意味無い!このまま押し切ってくれ!」

 「了解・・・全艦に通達、目標はこの宙域含めあと約30万隻程度」

 「終わりがあるのか・・・」

 オルドネスク提督は溜息をつく。

 「まて、奴ら、こっちに来ないぞ!?」

 「引き返しているのか?」

 「違う、残骸が多すぎてこっちを認識していない!マスビダ星系のジャンプゲートをこじ開けてしまったようだ!」

 「向こうは無防備・・・万策尽きたか・・・」

 「まさか・・・全滅か!?」

 「当然だ、見ただろう?王国軍の主砲は平凡、リチャージ速度が最新鋭の帝国艦とは比較にならない程遅い」

 「とは言え行かなければならんだろう!それでも王国軍の軍人か?」

 共和国軍が動き出す。マスビダ星系のジャンプゲートへ行けば破損の酷いスギヤマ艦隊のZB8型フリーゲートが4隻、旗艦が居ない。

 「司令官殿、最後の一団の通過を確認しています、道はこちらで確保いたしました!アーバン船団商事の護衛任務に従事していたアインザック艦隊の被害が甚大と伺っています!お急ぎください!」

 「ひとまず在庫に乗り換え、ワトソン艦隊に合流してくれ、この宙域を頼む」

 「はっ!」

 ZB8型フリーゲートが体当たりで作った一隻分の隙間にプリズムライオッド12をねじ込む、大きな図体でさらに通路を広げ、その後ろにドーベック艦隊とカトロニコフ艦隊、帝国軍艦隊と共和国軍、民国軍とオルドネスク提督のA-4000型戦艦が続く、他の2隻も損傷過大、研究ステーションの防衛として置いてくる他無かった。マスビダ星系へ飛べばスギヤマ艦隊の本隊が先行しており、アインザック艦隊は損傷過大、アインザックのDG9型巡洋艦はジェネレーターもエンジンも破壊されている・・・固定砲台にしかなりえていなかった。

 「ステージアコロニーに損傷が出ている」

 「・・・とはいえ、よく耐えたほうだぞ?この状況は・・・」

 巡洋艦以上は補助ジェネレーターを備えているゆえのしぶとさだろうか、王国軍は全滅だ。先にスギヤマ艦隊が後ろから攻撃をしているが、集中砲火を受けているDG9型巡洋艦まで到達出来ない。アインザックの船から通信が入った。

 「司令官殿、私は貴方に拾われて良かった、私の船はこれまでです、スギヤマ艦隊をよろしくお願いします・・・ご武運を」

 「もう少し耐えろ!」

 だが、DG9型巡洋艦の通信信号はロスト、アインザックの船が爆発したようだ。

 「・・・カトロニコフ艦隊はこのまま後方から、ドーベック艦隊は本艦と共に全力でステージアコロニーを目指せ、横から刺すんだ」

 「了解」

 「了解しました」

 「我が艦隊もドーベック艦隊と共に行こう」

 「そうしていただけると助かります」

 ドーベック艦隊と帝国軍艦隊がついてくる。

 「スギヤマ艦隊、無理はするな、カトロニコフ艦隊がしばらくすれば追いつく、これに合流しろ、スーパーツァーリー8を先行して送る」

 「ですがっ!・・・いえ、距離を保ちつつ待ちます」

 スギヤマ大佐にそう指示を出した後、甲板にランスロットの着陸を見守る。

 「研究ステーションで保管してた帝国軍の弾薬だ、これでプリズムライオッド12が受け入れたうちのF405戦闘機、B57重戦闘機に雷撃装備出来る、これ以上は帝国の空母から貰ってくれ」

 「ルーガ、助かる、今海兵を向かわせる・・・あっちはあっちで艦載機を失っている」

 「ついでに連れてきた人間も使ってくれ、艦載運用のプロフェッショナルだ」

 「了解」

 ランスロットは貨物室から兵装と人を降ろすなり直ぐに離脱していく、A-4000型戦艦が射程圏内に入り込む頃にはF405戦闘機、B57重戦闘機が発艦可能な状態になる。こちらはステージアコロニーが目の前だ。

 「戦闘機隊、発艦可能です」

 「スーパーツァーリー8と入れ替えろ」

 「了解、全機発艦準備」

 ヤシマ中尉が発艦指示を出す。サラマンダー級は異種族の戦闘機も発艦に対応しているとは驚きだが、50機近くの帝国製戦闘機が発艦、替わりにスーパーツァーリー8を受け入れる、損傷もそこそこがほとんどだが、格納庫では応急処置をして再出撃する準備をしているようだ。

 「・・・まずい、ロゼンダ級がステージアコロニーにドッキングしている!」

 「それ以前にステージアコロニーがもう耐えられません!管制によると総人口の半分が退避完了、未だ住民が残っているようです!」

 ・・・そりゃそうだよな。

 ステージアコロニー、他の国のコロニーより小規模とはいえ人口は1億人を超えている、おまけに大型を走らせているのはうちとアーバン船団商事だけ、中型程度では隣のコロニーへ移すだけでもたかが知れる。早期に惑星ランザールの裏側のコロニーへ退避を指示してもこの宙域にたまたまいたER-3000C4隻程度では無理、リストーン星系へのゲートに向いているコロニーは3つもある。

 「くそっ・・・ドーベック大佐!頼めるか!この船に残りを乗せる!帝国軍からも空母を貸して頂きたい!」

 「了解した、大型交易ドックに直接艦首を突っ込むよう指示しろ!」

 AT3型航空母艦4隻がステージアコロニーの大型交易ドックを目指し始める。プリズムライオッド12は桟橋からでないと駄目だ。

 「ステージアコロニー管制!大型交易ドックに帝国軍の空母が直接頭を突っ込む!プリズムライオッド12はC3ドッキングベイに付ける!誘導をしてくれ」

 「て・・・帝国軍だ!」

 「助かるぞっ!」

 管制は湧き上がる。その間に少し強引だがプリズムライオッド12はC3ドッキングベイにぶつけるように接岸する。

 「避難民は格納庫に誘導しろ!その間に出せるスーパーツァーリー8は上げてくれ!」

 「了解です」

 ヤシマ中尉はせわしなく各人員に命令していく。

 「アーバン船団商事のロゼンダ級が被弾!姿勢制御機能が故障!制御不能だそうです!このままでは!」

 「惑星ランザールに墜落するルートよ!」

 「軌道修正でぶつけられる船は!?」

 「ありません!」

 「くそっ!ミヴェルマンに繋げ!」

 「直ちに!」

 パルサー大尉は大急ぎでミヴェルマンにコンタクトを取る、通信系にブロックノイズが入る。

 「ミヴェルマンさん!大気圏突入は出来る状態か?」

 「うん・・・出来るよぉ・・・?ソーラーセイルは無事だから大気圏に入れば姿勢制御は出来る・・・けど、エンジンが全滅だから墜落地点は・・・選べないかなぁ?・・・人が住んでない所を選ぶよう、努力するぅ・・・」

 「悪いが軌道修正出来る船が無い・・・そっちは頼む」

 「頑張るぅ・・・」

 ロゼンダ級からの通信は切れた。慌てて地上管制に連絡、アーバン船団商事のロゼンダ級が損傷し、緊急大気圏突入すると・・・出来る限り墜落地点を観測するよう努力すると返事が帰って来た。

 「艦長、収容限界です、残っては居ますが離脱します!酸素濃度低下の許容限界まで30分です」

 「分かった・・・受け入れできる場所は!」

 「軌道外の工場しかありません!」

 「そこまで全速力で運ぶぞ!」

 ひとまずはエルーラ社の造船所が受け入れてくれる、しかし・・・。

 「司令官殿・・・ステーションが完全に破壊されました」

 カトロニコフ大佐からそう告げられた、艦橋の全員は溜息をつく。

 「・・・敵艦隊の数は?」

 「はっ!あと残り120隻前後、このまま押し切れます!」

 「続けてくれ」

 ・・・ステーションの総人口の4分の1が助けられなかった。

 「・・・クソッ!」

 艦橋が静まり返る。ステージアコロニーまで戻れば帝国軍艦隊の必死の抵抗の後が残っていた。

 「帝国軍艦隊は全艦航行不能・・・ですが、ドーベック艦隊と帝国軍艦隊総出でコロニーの職員含む全員は収容出来ているそうです、至急救援要請が来ています」

 「よくやった、戻ってきてる貨物船を牽引に充ててくれ、ルーガの工場までで良い」

 「ですが、既に受け入れ限界を迎えています」

 「リストーン星系から手の空いている船を呼んでくれ、貨物でも採掘船でもサルベージ担当でも何でもいい」

 「了解」

 パルサー大尉は研究ステーションへ連絡、その間にAT3型航空母艦も加わり、航行不能艦から民間人を引き受け、地上へ降ろす。大気圏突入に耐えうる船は空母しか無い、ロベルタ国際宇宙港に降り立てば、既にササリッサ級9隻が離陸を開始していた。ミヴェルマンの部下達だ、収容限界に到達次第、随時大気圏突入させる単艦運用が行われていたようだ、そのためロゼンダ級が無防備となっていたらしい。宇宙港の貨物区画にはソーラーセイルがもげた赤いロゼンダ級が置いてある。

 ・・・青い空、そして体が重く感じる・・・これがランザールの重力。

 ひとまず地面に立って空を見上げる。母星ランザールに降り立つのは初めてだ、コロニー生まれのコロニー育ち、スペースチルドレンと呼ばれる。その気になれば旅行で降り立つ事も出来るが、これと言って観光名所も無いランザール、データセンターも喪失する程なので地上の主要な人工物は独立戦争で焼野原、あって戦争遺産だけ、それにシャトル代も安くはない。

 王国軍の兵士の指示通りに乗客を降ろしていく、泣き叫ぶ子供、煤をかぶった民間人、かなり無理をして詰め込んだ、艦載機は全て上で待機を命じた、艦載機の駐機ラックにも押し込んだので相当な人数が乗っている。AT3型航空母艦は正面ハッチを開くだけなのだが、サラマンダー級はそうはいかないし、さらに言えば特大型級、シャトル用のボーディングブリッジなど使える訳が無く、ただでさえ人4人分しか無い船体下部の搭乗口に乗っている全ての人が集中している・・・非常に時間がかかる・・・それ故に事の発端が自分にある事に苦しむ時間がとても長い。

 しばらくすればササリッサ級が単独で降りてくる。アーバン船団商事のササリッサ級は上がったばかりなので、リストーン星系に居たジェリーガン船団運輸のササリッサ級だ、オルドネスク提督やルシャーサなどが降りてくる。主要な指揮官陣の中で大気圏突入が可能な損傷にとどまっている船はプリズムライオッド12しか無い。

 「引き続き、ステージアコロニー周囲のステーションに一時退避したステージアコロニーの一般市民の地上への移送のご協力願います」

 「承知いたしました」

 最後の一人を見届けると王国軍兵士にそう言われた。

 プリズムライオッド12に乗り込み、離陸、ササリッサ級9隻と入れ替わりで大気圏離脱、ルーガの工場で受け入れたステージアコロニーの一般市民はリストーン星系の各交易ステーションに余裕があるのでそこで受け入れる。人の移送は直ぐ終えたが、銀河情勢は良くは無い。

 「・・・悪い知らせだ」

 オレット巡査部長が中型交易ドックの事務所に入って来る。タブレット端末の画面にはフルジア王国政府から通達された未公開の情報だ、数時間後のニュースになる物でもある。それをルーガと一緒に眺める。

 「王国と共和国と民国軍の船を攻撃しているんだ、3国からの宣戦布告は避けられない・・・と思っていたが、この3国は多額の賠償金のみで事を納めようと努力した、その交渉を蹴るためなのか皇国軍は秒で落とせるフルジア王国のみに宣戦布告してきたと言う訳か・・・戦闘艦は手負いのA-4000型戦艦が3隻しか居ないからな?一瞬で王国軍とはケリが付けられる、おまけに全て帝国のお下がり兵器、最新兵器に叶うはずもない、占領も簡単だ」

 「ゲートを起こした事で起きたこの事件、事の発端は王国にあり・・・って奴だ、これに対抗する為どさくさに紛れて帝国と手も組んじまってる、おかげで未登録の帝国艦船は軒並み売り切れだ、ドーベック達の船を残すのに苦労したぞ?エルーラも軍艦建造で大慌てだし、非常徴兵法案が即可決して元帝国軍人も王国軍は引き込めるようになった・・・とはいえ、カトロニコフ、アインザックは特に名が知れた有名指揮官だったらしい、優秀な指揮官が多く在籍している民間警備会社かクソ田舎の軍隊かどちらか選ばせたら即決でうちを選ぶ者が大半だ・・・あの手この手で職場も増やさなければならないぜ?参ったな・・・」

 ルーガも事務所の天井を見上げながらただひたすらうめき声を上げている。

 「・・・ま、おかげでうちも堂々と旦那の所から軍人を雇えるようになってウハウハなんだがな?」

 「ドーベックはやらんぞ?うちの主力指揮官だ・・・だが星系警察も諜報員だけ増やしてるだけで良いのか?いい加減宙域自体の支配権をうちから取り戻す気にならんのか?宙域の巡視業務はただのボランティア活動で大赤字なんだ」

 「そもそも旦那の私兵が優秀過ぎるんだ、それに在庫の船を王国軍に船員付きで買われ、負債も大幅に無くなっただろ?」

 「・・・それは・・・そうなんだが・・・」

 事実、ワトソン艦隊はほぼ解体、王国軍に譲渡する船を確保する為にカトロニコフ艦隊配下は今回の戦闘で破損した船に乗り換えを余儀なくされた、ワトソン大佐にはFT14型戦艦からDG9型巡洋艦に戻ってもらい、10隻のZB8型フリーゲートを従えさせ、アインザック艦隊の補填に入って貰う事となる。

 護衛業務はオキタ艦隊とワトソン艦隊2つは無いと回らない為仕方がない、FT14型戦艦が少しでも多く欲しい王国軍、出来る限り全てを要求してきている。それでルーガは頭を抱えているのだ。

出来る限りは徴用に答えるつもりだが、スギヤマ艦隊はリストーン星系警備から外せない、王国軍でもそこそこ名の知れ渡っている隠れ名将のドーベック大佐をFT14型戦艦から引きずり降ろすなど流石に王国軍も出来ない、カトロニコフ艦隊はズァパリ民国の王女が住まう研究ステーションの護衛に必須なのでFT14型戦艦は最低一隻は必須、DG9型巡洋艦2隻にMA30型重巡洋艦2隻、ZB8型フリーゲートを30隻、サラマンダー級航空母艦を1隻編入させて残した、それ以外の帝国軍の軍艦は軒並み売れた、エンデラー級戦艦を筆頭とした皇国製の船だけが保管宙域に残る。これはドライアド民主共和国に移民と一緒に押し付ける船なのだが、かわりに向こうの押収保管庫から壊れた船を押し付けられる。大概は部品取り後にスクラップにするが、軽微な物は直してまたここに並ぶと言う訳だ、この物々交易でちゃっかりトライアド民主共和国は軍拡をしている・・・よく皇国軍は何とも思わないな?とも思う所もある。

 「所で、ゲートの先はどうなんだ?」

 「結局使い物にならなかった無人海賊船でその後も偵察はしているんだが、アイツらは無限沸きだ、工場をようやく一軒見つけた所、全部自動化していやがる・・・厄介だな・・・」

 「やるなら複数箇所見つけてからだよなぁ・・・」

 「あの災厄がまだまだ続くのか?どうにかしてくれ!旦那!」

 「本来正規軍の仕事だぞ!?民間警備会社ごときがやるべき事じゃない!」

 ルーガは持っていた端末で星系マップを表示とある座標のマークを指さす。勿論偵察に使った無人海賊船爆弾は行ったっきり、戻そう物ならマーズラ星系で増殖するメソポタニア級がリストーン星系へ飛んできてしまう。

 「・・・残骸の片付けもしては居るんだが、増える一方、出来た資材の使い道もねぇ、残骸で巨大なリサイクルプラントが出来ちまった所だ」

 ルーガは頭を抱える。研究ステーションの隣にはAT3型航空母艦が20隻ドッキング出来る超大型の交易ドックの建造が始まっている。大型交易ドックだけの規模で言えばグリニッジ交易ステーションと同等を誇る規模だ。これでどういった利益が生まれるかは試算すらしていないので分からないが、少なくとも研究ステーション既存の大型交易ドックの渋滞は解消される。貨物は内航船を作る必要があるが、ジェリーガン船団運輸に依頼した・・・ほとんど沖止め状態のササリッサ級が1隻ある、たいした距離でも無いので単独運航は可能だし、船員も久々の仕事の割り振りに喜んでもいた、いつも暇そうに沖停め宙域に浮いているからなのだろう。これで研究ステーションの大型交易ドックはロゼンダ級専用の駐機場に出来る。そしてこの交易ドックは大型艦の整備ベイを10基構える、大型交易ドックが横に10隻分、それが2段に同等面積の貨物保管倉庫やら船員向けの多少の娯楽施設類、これも2段、それの上に警備船などがドッキング出来る軍港や兵舎、難民の一時受け入れ施設などの軍事回り、必然的に長方形の箱型になってしまうのでその上を活用する形で設置する予定、下の方は中、小型機用のドックである。

 人の移動は無人シャトル、初めてエルーラ社から船を買う事となる。しかし、この大規模施設、本来は2~3年かかってしまう物、他の施設の建築で使ったドローンを総動員し、材料は引っ切り無しにどんどん運び込む事をして一カ月くらいに短縮、本来は国家予算3年分が溶けるのにも関わらず、まだ鋼材が余るとは余程の量・・・メソポタニア級は旧式過ぎてパーツの使いまわしが出来ない。生きているバトルドロイドも乗っかっていて危険、内装も省かれ実質ほぼ金属製、ある程度砲撃で粉々にしてそのまま溶鉱炉に放り込むしか無いのが現状、海賊の食卓の残骸よりも価値が無い残骸なのである。それが海賊の食卓に溢れ、通行の障害となっているのだ。海賊船に転用しようとした海賊がバトルドロイドの餌食になっているまであるのでほとんどの船は大回りを強いられている、迅速に片付けなければならないのだ。元海賊船と廃品回収船は今日も大忙しである。

ー銀河の常識ー

ジャンプゲート

銀河において星系と星系の間にある深宇宙を高速で移動する為の装置、超加速装置とも呼べる。主要航路用の大容量型と田舎航路用の低コスト型が存在する。

開発したのは魚人族で、このジャンプゲートの開発により銀河は大規模な物流革命と共同体の距離同士が近くなった事による戦争を招いた。

しかし、正しく利用すれば大変便利な施設である。なお、維持管理はその星系を領有する国家によって行われている。

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