表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この宇宙の片隅に  作者: verisuta
ビックカンパニー
11/19

海賊稼業

船を襲い物を奪う、それを他の星系で売りさばくのが一般的ではあるが、中にはターゲットの暗殺依頼など多種多様、どれも全て違法な犯罪行為である。


ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー

・ノア級大型貨物船

トライアド民主共和国 トライオッド社製の大型貨物船。曲線が大変美しく、熱狂的なマニアも居る程人気の高い巨人族の主力貨物船で基礎性能は大変バランスの良い設計をしているが、旋回性能を犠牲に高速性能が高い傾向にある。ノア級は大気圏突入も可能として設計されている為コストも高く、安全設備等もほぼ無いに等しい為、多種族が運用する場合、安全装置を取り付ける為船体を再構築する必要がある。

次世代型はベーベル級大型貨物船


・ベーベル級大型輸送艦/エルドーラ級大型輸送艦

トライアド民主共和国 トライオッド社製の大型貨物船、ノア級大型貨物船の後継機種として開発された。ライバル機種であるロゼンダ級の速力を圧倒する為に星間輸送艦型のベーベル級、ノア級の能力をそのまま引き継いだエルドーラ級を設定し、トライオッドの大型船では初めての姉妹艦構成となった。ベーベル級はノア級より各段に速力を向上させたものの、旋回性能の悪さが露骨に出るようになった為、運航速度は結局ノア級と大差なく、エルドーラ級も大型艦で大気圏突入をする必要は現在ほとんど無い為販売数も極端に少なく運用や導入コストも非常に高く付くようになってしまった。

このモデルから隔壁操作が艦橋と5か所ある警備室から行えるようになった。巨人族商人からはちがう、そうじゃない。と批判が殺到した。

 「くっ・・・わらわの船にあの忌々しい三つ目属のエンジンが付く事になるとはッ!」

 「とはいえ、ズァパリ民国製の船ならトータルバランスも相対的に向上する改造です、ルシャーサ女王陛下」

 キリキリしているルシャーサの横でルーガは施した応急処置について説明する。皇国軍の自称流れ弾はほとんどエンジン部分に直撃する位置関係だった為、大概の船はエンジンを在庫過剰なセブンスターエンジンに換装修理、しかしロゼンダ級同様、ズァパリ民国の船は船体部材が特殊、船体修理は本国で行わないといけない、穴も応急処置で埋めてあるものの、船体側の材質との相性が悪いので長持ちはしない。

 「知っておる!わらわはジェリーガン船団運輸としてそう言った改造がされている船をいくつも直してきた!だがわらわの船に付くとは何たる屈辱!」

 「しかし、我が国のB3、A5エンジンでは性能足らず・・・陛下の高貴なる船の性能を落とす事の無い応急処置はこれ以外無く・・・」

 「分かっておるわ!お主の努力、褒めてつかわすぅ!うぁぁぁぁん!」

 ・・・相当屈辱な様子・・・だが、ミヴェルマンのロゼンダ級の部品を持ってきてもらわなければならない。アズニーからはエンジン修理など、他種族の部品でどうにかなる修理をランザールの地上で行ったものの、もげてしまった両脇のソーラーセイル無しでは大気圏を離脱出来ない設計をしていた事を聞いてる、しかも厄介な事に建造年式や艦船ごとに大きさが違う、例えばササリッサ級のソーラーセイルをロゼンダ級に転用する事などは出来ないのだという・・・流石特注艦、修理が大変極まり無い。

 2隻のロゼンダ級巡洋艦を見上げる・・・美しいのだが小傷だらけ、直せないのがとても歯がゆい。

 泣きながらも女王陛下はロゼンダ級巡洋艦に乗り込んでいく、テティア女王陛下はシリウスとサシリアの為に残る・・・ズァパリ民国の女王陛下が居るとなれば簡単に手出しも出来ない、その為の盾も兼ねている。元々実質的な政権はルシャーサ女王陛下が握っているそうだ。

 ルシャーサ女王陛下のロゼンダ級のアンドッキングを見送ると大型交易ドックを後にする。

 ・・・しかし人が増えた物だ。

 鉄道は民間人でごった返している、半年くらい前のようなほぼ無人な状況が懐かしい、今では運賃も取るようになり、椅子にも簡単には座れない。

 ・・・そう言えば、ほぼ空地だったような・・・。

 今や高層建築だらけのステーション内、ネドリー運輸は傘下にステーション経営関係の会社を従える大企業になった。

 その成果が目の前の光景、民間人の従業員も1万人以上、ステーション経営が主な財源、居住区の管理業務で来年には倒産の予定もだいぶ薄れてきている。ステージアコロニーの企業もかなり移転してきている事もあり、居住区の空地もかなり減って来た、ここが埋まればまだまだ空きのあるオロラ星系側のステーションも埋まっていく事だろう。

 ・・・建築ドローンが空いたら居住ステーションかな。

 実はマスビダ星系へのジャンプゲートに近い工業地帯に資材置き場するつもりで作った工業用ステーションの土台がポンポン売れていく。主に買い付けている会社は食品工場や家具、雑貨などの工場を建てたい会社だ。ステージアコロニーの工業区画の会社が直ぐに欲しいと言ってきたので建築資材はうちから買う事を条件に提供したのである。もとより建築資材もタダに近い程の格安具合、少しでも売って、ネドリー運輸の負債を減らしたい所でもある。

 ・・・だが、負債は増える物だ。

 大型交易ステーションが完成すれば即入居者がやって来る、FT14型戦艦が12隻・・・相当だぞ・・・。

 ルーガはピカピカの無人シャトルに乗って大型交易ステーションへ、5分もかからない距離、交易ドックへ行けば色々な会社の大型船の船員がはしゃいで居る。少し歩いて壁際の商店区画へ、出店のような店からスーパーマーケット、コンビニエンスストア、カフェなど色々揃っている。その中でもど真ん中の一等地、そこの酒場に入る。見覚えのある店内、記憶よりかなり広いが、カウンターの中には見覚えのあるバーテンダーが居た。

 「どうだ?新居は?ヴェルグーリさんよ」

 「コロニーを追い出された時は全て諦めておったが、内装の雰囲気もステージアコロニーのあの店と同じ・・・完璧じゃ・・・こんな一等地でなくとも良かったんじゃがの?本当に建物の代金は良いのかね?」

 「半年前のツケの返済と言う事にしてくれ、これでまたあんたのカクテルが飲める」

 「いつでも来ておくれ、一杯飲んでくか?」

 「まだ仕事が残ってる、今度にしておくよ」

 ルーガは店を後にした、交易ドックの管理センターから軍事区画へ上がり、そして巨大な部屋に行く。

 「ドミットラー総督、お待ちしておりました」

 「どうだ?新居は?リユン少佐」

 「宙域管制業務も、非常時の指揮も完璧な指令所であります」

 「そうか、帝国の移民を降ろし終えたらいつも通り船は修理待ち区画に放り込んでくれ」

 「承知しました」

 リユン少佐に敬礼される・・・何故か総督扱いだが、この会社のトップはファルマン ネドリーである。俺が社長より上の立場で良いのだろうか?

 広い管制室で外部のモニター映像を見る。大中小の交易ドックの回り具合も研究ステーションとは比にならないくらい順調、現状は薬や食材が多いが、ステーションその物で消費される物資の輸送にもフルジア王国籍の中型船が頻繁に往来する。勿論うちの船もかなり多い、中型船もチャーター専用船が増えたからだろう、もう中型だけでも300隻くらいは運航している。

 管制室の視察を終えればさらに上へ、軍事区画の一つ上は部品保管庫、万が一の干渉区画も兼ねている、上にも下にも部品が動かせるのでここに部品を保管している。そこから上は大型整備ドックだ、中心部にはクレーン支持台などを兼ねた整備詰所棟がある。ここに俺の会社の本社機能は移転する訳だが、俺は研究ステーションに据え置き・・・何故かステーション管理者にされているからである。

 資材管理から何まで100人近くこのオフィスで働く、そして3万人くらいの作業員はこの整備詰所棟と現場を行ったり来たりしている。うちの事業は完全に黒字、整備士もいくらでも増やしても良いが、フルジア王国軍に取られるようになったので最近増える事は無くなった。

 周囲が一望出来る展望デッキに行けばER-3000Cが5隻、DG9型巡洋艦が4隻、AT3型航空母艦が1隻修理に入っている。

 ・・・だが。

 AT3型航空母艦の簡易プラットフォームはまだ健在、場所を整備詰所棟の延長線上に移してポライト3000Cを2隻建造している。修理待ちが捌けないのだ。簡易防衛プラットフォームに使っていた物も部品取り用の足場、牽引船改造した海賊船がエンジン単体を引っ張ってこちらに向かってくる様子も良く見える。元々改造船なだけあって躊躇なく切り刻んで様々な改造を施した後、こういった雑務で使えるのが海賊船のいい所なのだが基本的に余り散らかしているのでかなり状態が良い物を個人に売却もしている。これから始める人にも人気なようだ。

 「それでもゴミだらけ」

 かなり距離は離れているのにも関わらず見える海賊の食卓近辺のスペースデプリ群、交易ドックの真横には修理待ちの船が600隻以上縦に6段くらいに並べられている、初期の頃からある部品取りヤードは鉄の塊の壁が出来ている。ゴミだらけである。

 事務所に戻り、中型整備ドックに入れる次の船を指示する。

 いつも通りエンジン交換とか簡単な物で済む奴を優先にしておいた。ZB8型フリーゲートや海賊船が多い。今入っているZB8型フリーゲートにはリユン少佐から人を割り当てるよう要請しておく、そしてそのままフルジア王国軍に納品である。それを指示すれば工業地帯の近くに居住ステーションの建築発注、計画も大規模、ステージアコロニーの2倍もするサイズのコロニーを建設、普通に国家予算6年分は吹き飛ぶ建築計画だが、建築ドローンの数は通常の4倍、建築資材はタダなので2~3カ月くらいで建築完了する、これでしばらく建築資材が無駄遣い出来る。ステーション建築に時間がかかるのは材料運搬の時間が大部分なのである。帝国兵にも元々建築家やデザイナーを目指していた者が沢山いるので数の暴力でステーション建築事業は進めている節がある。

 「・・・俺は修理工なんだが?」

 ・・・いつの間にやら不動産業にも手を染めつつある顔をグラスの中の液体で見ながらぼやく。

 「それもネドリー君の為・・・彼の本業は採算が取れていない、おまけに採算が取れる貨物は他の業者に譲っておる、経営の才能が無いと言うか・・・」

 目の前にはヴェルグーリさん、元商人ゆえにネドリー運輸の経営事情を芳しくないと思っている。そう、ネドリー運輸グループで一番の大赤字を叩きだしているのが警備と物流事業である。その分の赤字をカバーするのがシルバーロッド整備工場やその配下にある細々とした事業、整備業や不動産その他の仕事である。

 「ただのお人よしだよ、神が味方しているだけだ。リーサが居なきゃフルジア王国の経済は完全終了してたし、たまたまサリマンの仕事を横取り出来たからズァパリ民国の商船がこんなクソ田舎に来るようになった。廃船起こしの船ばかり使うから旧型の新品部品使い尽くしてエルーラが泣き寝入りしてきた、そしてよく廃船引き上げしてるからたまたま持ってた空母でトライアド民主共和国のピンチヒッター、挙句の果てに自国より多い兵力で皇国の時限爆弾によるフルジア王国滅亡を阻止できた・・・半年前はオンボロ小型機の船長だったとは思えない出世っぷりだ」

 ルーガはカクテルを口に含む、久しぶりの味だ、美味い。

 「だが、来年が心配じゃな」

 「まぁ、そうだ、税金地獄で悲惨な事になる、資源の浪費の一環で量産している工業用プラットフォームは法律の特例措置がある仮設の資材置き場で通る、実際何も利益を生み出して居ないからな?リサイクルプラントは環境省の特例で免除だ、基本的に工業地帯の不動産はエルーラ持ち、軍用艦もほとんどが未登録船だ、だが人が住んでるコロニー型物流ステーションや民間警察ステーションは対象外、ここはエルムンドドエルのステーションの増築に入るかどうか・・・」

 「流石に入らんじゃろ?大きさが本体とほぼ同等、元がタダとはいえ、もう正規登録の船も500隻は保有しておる、税金対策は念入りにな?ただでさえ高騰しておる・・・若き大物を生かすのも、あんたにかかっとるぞ?」

 「・・・だから、俺は修理工・・・そう言えばジーナちゃんは?」

 「・・・孫は船乗りになってしまった」

 「へぇ、そりゃすげぇ・・・」

 「何が良い物か・・・海賊じゃよ」

 「・・・待て待て・・・相談してくれりゃポンコツの1隻くらい顔なじみの仲でタダでくれてやったのに」

 「・・・いう事を聞かんかった・・・ワシも元は海賊上がりの商人じゃ、しょっ引かれて引退した身じゃよ、中古の貨物船も2~3隻買える金もあったし、丁度良かった」

 「へぇ・・・なんていう船に乗っていたんだ?」

 「ランスロットと言う船じゃ、PC-500ベースの海賊船での?他の船より高い火力が自慢、色々な船も楽に襲えたものじゃ・・・」

 ・・・!!??

 海賊船、ランスロット、PC-500ベース・・・ルーガの思考回路は数秒止まったがそう言えばコイツはよく見る船だ、それはもう・・・登録記号を覚えてしまっている程に。

 「えーっと・・・もしかして・・・VPA-897?」

 ・・・それ以外に何がある?案の定ヴェルグーリは大きく目を開いた、ビンゴだ。

 「懐かしい登録記号じゃの?はて・・・昔の写真は前の店に飾ってたかな?」

 「・・・すまん、今それうちの雑用船だわ」

 「星系警察にジェネレーターを撃ち抜かれたんじゃ、よく直したの?」

 「返そうか?」

 「今更要らん、好きに使ってくれ・・・そうか、アイツも海賊稼業から足を洗い、人の役に立つ仕事をしてるのか・・・そのままカタギの世界で余生を過ごさせてやってくれ」

 「今度再会させてやるよ、ほとんどこのステーションの近辺でしか動いてない船だ、ちょっと窓の外見れば大概居る・・・だが、話を戻すが、なぜジーナちゃんがいきなり海賊なんかに・・・」

 「この不景気、そして全く利益の出ない貨物に価値を付けるには奪って他で売るのが一番手っ取り早く利益になるのも昔と変わらずって所かの?若い子達はほぼ貧困じゃ、ワシの店の手伝いだけでは税金も払いきれんようになってしまったのでの?スーパーでアルバイトもしていたんじゃが、スーパーは品薄の営業困難で首を切られてしまった、このままでは生活もままならんと言う事で、船を求めてデルビア星系のサルターンへ行きおった、ちと武勇伝を吹き込み過ぎたかの?」

 「・・・いや、海賊業で一攫千金は若者の間でも流行っている。この星系の星系警察本部は若者の囚人で溢れている、その女、正規の海賊船を買う金を持っているのか?」

 ルーガの隣に座って来た男がそう言った。

 「何処の汚職警官かと思えばオレット巡査部長じゃないか・・・暇そうだな」

 「簡単に人を汚職警官扱いしやがって・・・こっちも海賊の同行を監視する諜報活動で忙しいんだ、若者の海賊化もベルモア運輸が絡んでいる・・・で、どうなんだ?マスター」

 「ある訳無かろう、だが、女なら体を売って稼ぐ事も出来る・・・その手の商売もサルターンは活発じゃ、なにせ無法地帯じゃからの?で、星系警察のお役人がなんの用かの?ワシはとうの昔にしょっ引かれて刑期は消化しきっておるぞ?」

 「決まってる、諜報活動だ、流石はルーガのとっつぁん、その手に詳しい人物とも知り合いとは」

 「・・・ヴェルグーリさんが昔、海賊をしていた事は初耳だったんだが?で、ベルモア運輸ってなんだ?うちの元廃船を購入した顧客リストでも見た事は無いぞ?」

 「サリマン運輸の子会社だ、船自体もサリマン運輸のお古、色々なステーションで金に困った若者を美味い話で釣ってサルターンへ運んでる人身売買みたいな事をしている偽装運送会社だ。貨物の取り扱いは運んでくるだけしかしていない・・・とはいえ、もう今の現状では海賊船なんて海賊価格より安く手に入る、操船免許なんて持ってなくとも船員付き、海賊稼業を始めようとしようものならその船員が断固として拒否する実態、海賊船その物も利益幅は少ないが一カ月サボらず動かせば普通に食っていける、海賊に堕ちるメリットも早々ない、しばらく乗って中型貨物船にステップアップ出来ればもう勝ち組だぜ?その美味い貨物が多いステーションはもう無くなったが・・・」

 「まだまだ海賊を目指す若者は多い、そう言いたいんじゃろ?孫も言う事聞かずに出て行ってしまった」

 ヴェルグーリはお任せカクテルをオレット巡査部長に提供する。オレット巡査部長はそれを受け取って一口含んだ。

 「・・・そうだ、俺達星系警察はそれをしょっ引きたいんだが、実の所、貨物船で人を運ぶのは合法だ、手が出せん」

 そしてグラスを持ち上げて天井の灯に当てるように眺めた。きっと美味いのだろう。

 「違法なら前線から移民を一杯拾ってこれないからな?なら海賊船で襲っちまえよ、押収品に一杯あるんだろ?」

 「海賊の手口でやらなければ直ぐにバレて対策される」

 「海賊の手口ってどんな?」

 ルーガはヴェルグーリの顔を見る。

 「昔ながらならまず脅して貨物の投棄を催促、従わなければエンジンを破壊してカーゴベイをハッキングして開錠、強制投棄させて無理矢理奪う・・・じゃが、その話から察するに、貨物の投棄を行えば確実に押し込められた貨物が死ぬぞ?」

 「・・・そう言う事だ、何か特殊な手段で指揮権を奪う必要がある」

 「船に細工してこいと?」

 ・・・貨物室を開けずに指揮権を強奪するにはハッキングが必要だ。クルーザー立てこもり系の事件であれば星系警察もちょくちょくやっているはずである、勿論海賊も犯罪前によくやる。

 「ほほう、船を丸ごと頂戴するやり口じゃな?登記の都合で今更船を奪取するメリットも無いが・・・」

 「そうだ、一度廃船にしない限り意味が無い、所有者が廃船登録を行った、していなくとも死亡、もしくは逮捕された、5年以上未納で強制抹消とかにならない限りはその辺に浮かべるしか出来ない船になる、そうした船は海賊基地以外ではドッキングも認められない」

 「そしてそうした船は海賊船の材料になるんじゃよ・・・ま、穴を開けて使えなくしてから後で船体を貰っていく方がリスクも低くて金にもしやすい・・・指揮権を奪取するにはそれなりの知識が無いと駄目じゃよ?わしゃ無理じゃな?」

 「・・・まさかそれを俺に頼みに来たとか言わないよな?」

 「ご名答、違法でも無い船に穴を開ける事も出来ない、ついでに搭載貨物を細工してとある荷物を積ませる、それはうちでもう用意が出来ているからそれをまずサルターンへ運ぶ事からしてほしい、違法貨物だ、露見すれば検挙も出来る」

 「・・・それは俺じゃなくファルマンに頼め」

 「今旦那は空母で薬運び中だ、しばらく帰ってこない」

 「・・・そう言えばそうだったな」

 忘れてたわ、アイツは今クソトカゲ周りで忙しい。

 「ついでにマスターの孫も連れ戻す、いいだろ?だからちょっとは手伝ってくれ、金なら出す」

 「このおいぼれに今更国家の犬になれと?船から降りて久しいぞ?海賊をしていた頃なんかもう40年前の話じゃ」

 「だが、マスターの旧友は手元にあるんだろ?」

 気が付けばオレット巡査部長はカクテルを飲み干していた、それをカウンターに置いてルーガを見て来た。

 「・・・あるよ」

 ・・・そんな目で見られたらそう答えるしか無いじゃないか・・・。

 「じゃ、海賊の籍も辻褄が合う、しばらく他の星系で稼いでたと言えば元同業に対しても誤魔化しが聞く・・・これくらいは出そう」

 「・・・この店を軌道に乗せるには十分な額じゃな?どの道、開業資金が少なすぎて、あんたらみたいな顔見知りや偉い人にしか酒が出せん状況じゃ・・・仕方あるまい」

 「じゃ、船を用意してくれ、とっつぁん」

 「・・・分かったよ」

 ルーガは溜息をつきながらオレット巡査部長が支払いを終えて出ていく姿を見届けた。

 翌日、ランスロットを持ち出して大型交易ステーションに乗りつける。乗員はオーエンスから引っ張って来た。ランスロットも整備士達があれやこれを引っ張ったり運んだりするのに使う非常勤の雑用艦、元々固定の乗員を置いていない。

 「懐かしいのぅ」

 「えっ、何?この船の前の持ち主はあの酒場のマスターだった訳?うちじゃかなりの古参だけれど」

 「そうだったらしい、若かりし頃は海賊だったんだと」

 リーサは驚いた顔をする。

 「金もそこそこ稼いだ、子供も出来た、まともな貨物船を買ってカタギで生きる事を決意して拾いに行かなかったが、まさかこんな所で対面する事になるとは・・・」

 「で、積む貨物はこれ?中身は何?」

 「大麻に覚せい剤、幻覚剤だ」

 オレット巡査部長がMコンテナが乗っかった貨物ドローンに腕を乗っけて説明する、貨物ドローンが積ませろとピーピー言っている。

 「・・・押収品じゃないでしょうね?」

 「正解、お届け先は星系警察が抱える偽装企業、万が一届いてもこれらは押収品保管庫に行くだけだ、送り主は面倒だからシノノギ製薬にする、実際製造元もシノノギ製薬だ」

 「シノノギ製薬って帝国の大企業よ?」

 「実は奴らは違法薬物も作ってる、それにこの貨物の登録上は医療器具、これは特殊なコンテナで開けない限り中身の違法性が露見しない海賊コンテナ、よく海賊の貨物船が積んで運んでいる物だ、それにサリマンはこれらを運ばせる為の企業をいくつか抱えている・・・なんでマスビダ星系の物流が消し飛んだか分かるか?それを担っていた大部分の会社は既にサリマン運輸の傘下にあったからだ」

 「・・・うっわ、えぐっ」

 「ほとんど買収してたのか、それは初耳だ」

 「エルーラくらいなら知ってるだろ、あそこもサリマンにズブズブだった、まぁ王国軍の船も造船するから買収までは叶わなかったようだが・・・さて、積んでもらおう、出発だ」

 オレット巡査部長が貨物ドローンを解放する、サーッとランスロットの貨物ベイに向かって走っていった。リーサとルーガはランスロットに乗り込む。

 デルビア星系まではリーサの操縦で飛ばす、その間で作戦会議だ。

 「まずはサルターンで貨物を降ろす、ステーションとは異なり惑星の荒地だ、1週間停めておいても何も言われない。うちの工作班はその間にステーションの管理システムに侵入し、ベルモア運輸の貨物船の搭載予定に全てのコンテナを割り振る。対象は8隻、あとはリストーン星系なりで全ての船を立て続けに差し押さえてしまえば勝ちだ、厄介なのは海賊船を護衛として用意している事、それも一個艦隊、リストーン星系の小惑星帯に拠点がある。ここも造船業しかしていないから違法性も無くしょっ引けない、おまけに警備船では太刀打ち出来ない数の海賊船に守られている、星系警察が臨時検査しようものなら飛んできて星系警察の船をハチの巣にする、そこで発信系を破壊する細工と、船へのアクセスを星系警察の巡視船から出来る細工をしてもらいたい」

 「それが、このケースって訳か」

 ルーガは食堂のテーブルの上に積まれた8個のケースを眺める。

 「ワシはサルターンに潜入する鍵じゃな?」

 「マスターは着陸後は適当に遊んでいて構わない、とっつぁんも目標が来ない間は好きにしていて構わない、そしてあの中には遠隔爆弾と外部に繋げる小型バイパス機が入っている、装着までの時間は工作班が監視カメラをハッキングで稼ぐ」

 「・・・了解」

 偉く本格的な作戦、ケースの中身を見に行って、大体どうしろと言うのが分かる。目標はG-7000C、型落ちだ。基本的にレーダー回りは天井部、サービスパネルを開けて配線に組み込む、それだけ。3分あれば出来る。深夜帯が良いだろう、大概酒やギャンブル、女遊びで船員が外へ出て手薄になる時間、じゃんけんで負けた奴がコックピットに居残って船の番をするらしい、それはどの商船だろうと大概同じ、大きい所ならば規定のシフトが組まれるが、8隻しか中型貨物船を持っていない会社ならそんな物も無いだろう。主脚にある天井へのアクセス階段を伝って上まで登れば完了、なぜそんな所にあるかって?外に階段を付けたら大気圏を頻繁に出たり入ったりしているうちにすり減って無くなるからだ。かといっていちいち上まで登るのに船内を経由していたら偉く時間も掛かる、位置こそそれぞれだが、整備性を上げる為に大概の船はこういった非与圧内階段を持っている・・・そう、巨人族の船を除いては・・・。

 色々と仕様を確認していたらサルターンが見えてきた。比較的小さく荒廃した砂漠惑星、円形ドーム型コロニーでようやく居住が可能、大気には酸素があり地下にも水こそあるが、基本的に暑過ぎるか寒すぎるの極端、植物もそれに適した物がオアシスと共にちょくちょく点々としているだけ、極寒地帯には原生植物が生えているが、低重力気味なので生き物が住める星とは言えない。オヴェルツィッヒ帝国がかつてリゾートをここに建造する為に人力で軽くテラフォーミングを行ったが、カジノがきっかけで治安が手に終えなくなり、いつしか海賊の星となってしまった経緯がある。

 「とは言え、こんなボロでも大気圏突入が出来るのね・・・」

 「コツが居るんじゃ、速度を付けずにゆっくりと、船体温度が1500度を越えないように、減速その物は大気圏内で行うんじゃ、意識しないと空中分解は免れんな」

 ヴェルグーリは現役そのものの手付きで大気圏突入のプロセスをこなしていく、警告音がうるさい。

 「さぁさぁ、いい子じゃ、それ抜けた」

 「本当に大丈夫なのかしら?」

 「現役時代はもっと色々鳴りまくっておった、静かな方じゃろ?積み荷も少ないしの?」

 ランスロットは空中分解する事無く大気圏内へ、その後に速度を落としつつ、サルターン唯一の超大型コロニーへドッキングする。特に珍しい目で見られる事も無い、近辺の海賊船もオーエンスとおおよそ同型が多い。PC-500ベースはちょっと珍しいかなくらいである。

 「ひとまず滞在は一週間で申請しておいた、警察の仕事はその中で終わらせてくれ」

 「分かってるさ、とりあえず2隻に仕掛けてくる・・・その間にジーナちゃんを探さないとな」

 「とは言え、手がかりも無いのう・・・風俗店を探して回るしか無いか・・・」

 「ネドリー運輸が探れる範囲では2カ月前にリストーン星系にそれらしい船が走っていたのを確認しただけ、残念ですが、もう体を売ってて良い頃合いかと」

 ヤシマ中尉はリユン少佐が調べてくれた情報をルーガに見せる・・・これはリユン少佐から直接教えられている物だ、人探しは諜報部隊に頼る他無い。

 「とは言え、乗せてきた諜報部隊もそこに割ける人数じゃない・・・こればっかりは運だな」

 「・・・歯がゆいのう」

 ともあれ作戦開始だ、昼は人探し、夜は細工をしつつ6日目、細工の仕事も全て片付け、適当に風俗街をふらついて居たら見るからにしつこいキャッチが絡んできた。

 「おっさん!うちの店来ない?良い女一杯揃えてるよ!」

 「・・・俺はここを越えた先にあるバーに酒を飲みに来ただけだ・・・っておい!離せっ!」

 「うちは酒も飲みながら女と遊べるぜ!お客さん1名ご案内!」

 腕を掴まれる、簡単に引き剥がす事も可能だったが、仲間が4人くらい来やがった!強引に引きずり込まれ、適当な個室に押し込められた。ちなみに外鍵とは珍しい構造、窓は無く、大きなベッドとガラス張りのシャワールームしか無い、ドア横の料金表もとんでもない額、完全にぼったくり店である。

 ・・・マズったな。

 払えなくは無い、ただしこんな事の為にこんな大金使いたくない。何か手は無いか、部屋を見渡せば、スケスケのベビードールを着た女性が局部を隠しながら唖然とした顔をしていた。

 「・・・ジーナちゃん・・・じゃねーか・・・」

 「ど・・・どうして・・・こんな所に・・・?やだ、恥ずかしい!」

 「仕事ついでに君を探しに来ただけだ」

 「私の事は・・・ほっといて!海賊になろうとした私が馬鹿だったの!海賊を始めればお爺ちゃんに負担をかけなくて済むと思ってた!」

 「だが船を買う金が無かった・・・そうだな?」

 「あともう少し・・・あともう少しで海賊船が買える・・・だからする事して帰って!」

 「言ってくれりゃ船くらいいくらでも俺の所で用意出来たのに・・・貸しがあったんだ、今からでもタダで用意してやってもいい・・・だから、戻って来いよ」

 「どの道、する事しないとこの部屋からは出られないの、このお店はそう言う仕組み、慣れてるから」

 「監視カメラ・・・か・・・」

 ジーナが指をさした先には隠す気も無い監視カメラ、する事したんだから金寄こせという証拠映像を記録する物だろう。

 「船なら俺がいくらでも用意してやる」

 ひとまずその監視カメラにシーツを被せる。しばらくすれば従業員が飛んできた。

 「お客さん、ああいうのは困るんだけれどねぇ・・・?」

 「俺も勝手にぶち込まれて困ってるんだが?」

 「さっさと金だけ置いて帰りな!」

 「する事してないぜ?・・・やなこった」

 「良いから金置いてけ!」

 従業員らしきグラサンの男がビーム拳銃を向けて来る、それをスパナで殴って気絶させる・・・持ってて良かった・・・たまたまポケットに入っていた物だった。ジーナにシーツを被せ、手を引いて非常階段を目指す、その頃には大乱闘だ、とりあえず携帯端末を取り出す。

 「リーサ!悪い!今すぐ出港準備だ!」

 「えっでもジーナさん・・・」

 「見つけた!だがヤベーのにも追われてる!他に外に出てる奴らも戻してくれ」

 「分かった」

 電話を切った後、大通りに出て、適当なタクシーに飛び込む、無人タクシーは被弾しながら港へ向かっていく。

 「血が出てる・・・」

 「かすり傷だぜ・・・?」

 ・・・だが結構痛い、ジーナはシーツを破って止血に使う、その間は隠す気の無い下着があらわになる、目のやり場に非常に困る。

 港に付けばランスロットに飛び乗る。やはり追っ手は来ているようだが、ルーガ達が飛び乗った瞬間にに離陸開始だ。ランスロットはぺしぺし撃たれながらマニュアルでアンドッキング、自動アンドッキングの船スレスレを交わしながらサルターンを離脱する。ひとまず息を切らしながら搭乗口のエアロックを抜けた先の廊下で転がっていればヤシマ中尉が顔を真っ赤にして迎えに来ていた。

 「・・・そのー・・・ひとまず、ジーナさんには私の服、貸しますね?」

 「・・・ごめんなさい」

 ジーナはヤシマ中尉に連れて行かれる。その間に海兵隊が救急箱を持って来てくれた。艦橋に着いた頃にはもう宇宙だ。

 「・・・俺らが最後だったか?」

 「そうね、まさか風俗店にまで足を伸ばしていたとは」

 「違う!俺はその先の酒場区画に用があっただけだ!」

 「ほっほっほっ・・・久しぶりにハラハラしたものじゃ、若い頃、ワシもぼったくる店に引きずり込まれてよく宇宙まで逃げた事もあったのう・・・」

 「笑いごとで済ませる事か?」

 「とは言え、新しい店に孫まで見つけてくれる・・・ドミッドラー君には頭も上がらんな?・・・ワシの孫はどうじゃね?確か独身じゃろ?」

 「俺も良い歳だぜ?ジーナの気持ちも考えろよ」

 「ワシの孫に会う為にワシの店に通っていた癖に・・・ほっほっほっ」

 「くっ・・・別に良いだろ?会うくらいは!・・・帰ったら飲ませろ」

 「ワシの奢りで皆に飲ませたるわい・・・君は怪我を直してからだがね?」

 しばらくすれば艦橋の扉が開いた、ヤシマ中尉がジーナを連れてきたようだ。

 「ヤシマさんから大体聞いた・・・お爺ちゃん・・・ごめんなさい」

 「なに、過ぎた事じゃ・・・船ならドミッドラーさんの所から買えば良かろう、ワシや息子のように海賊になる必要は無い・・・そもそも船乗りになる必要も無いんじゃ・・・そう言えば、じいじの新しい店もウエイトレスが居なくて困っておっての?」

 「ステージアコロニーは皇国軍に破壊された!他のコロニーでまたお店を始めるだなんて、そんなお金・・・無いでしょ?仕入れのルートも!」

 「だが、この話をすると言う事は店が既に現実に存在するとは思わんかね?店が無ければそもそもウエイトレスに困らんよ」

 「どうやって?まさか多額の借金を?」

 「借金は今後の仕入れで発生する可能性はあるが、現状は無い、建物を用意してくれたのもドミッドラーさんじゃよ・・・仕入れはネドリー運輸や前の店の客の会社に頼る事になるかの?危ない橋など何一つ渡っとらんよ、問題ない」

 「・・・本当に?」

 「ま、土台は用意してはくれたが、その後の経営が成り立つかは別問題よ」

 ヴェルグーリは溜息をつく。まぁ、確かに店舗だけあっても店が回るかどうかは別問題、一等地に用意はしたが、そもそも資金が無ければ回りすらしない。

 「物価がのう・・・」

 輸送費・・・ここが原価の倍近くなる。この問題は宇宙で商売するには避けて通れない。輸送費と言ってもほとんどが陸揚げ費用と保管料だ。陸揚げ費用は物価上昇で高騰気味だがこれは微々たる物、問題が保管料、運び手が少ないので待ちが非常に長い期間発生する・・・その時間分だけ保管料が発生する訳である・・・これを回避するには自社便を作る事、エルーラ社はネドリー運輸に自社便契約をした事により延滞貨物と保管料問題を解決したが、それは大企業だから出来る話、一飲食店が星間運送会社と自社便契約を結ぶには現在では速達性と安定性の観点からも価値があるとは言え、少し規模が小さすぎる。せいぜいやるなら商店街の数十店舗が共同で丸々一隻契約が無難な所、もっと小規模となれば自家用船で陸揚げからのマージンを省く事である、普通なら船の諸費用で割高となるのだが、あいにく現状の物価高騰ではかなり有益な手段になりうる。

 ・・・この問題に対して最も役に立つ物があるではないか?

 ルーガは一度回りを見渡す、年式相応のボロい艦橋、ちゃんとオーバーホールはしてあるので穴や故障は今の所は無し、しかし部品も中古品なので塗装剥がれや多少の経年劣化はどうしようもない。

 そして、この船に愛着は無い。

 出発前にもリーサが口にしていたが、船籍的にネドリー運輸では古参の船ではある、ただし貨物船運用はした事が無く雑務専属だった・・・そんな雑務に使う船など今じゃ在庫しているくらいである。

 「・・・この船やろうか?元々あんたの船だったんだぜ?替わりなんて腐るほどある」

 持ち主が生きているんだったら引き取って欲しいくらいだ。だからヴェルグーリさんにそう提案してみた。

 「現役復帰しろとな?ワシはもう船を降りる年齢じゃ、海賊稼業も今回限りじゃよ」

 まぁ、元愛船とはいえ、流石に年式も年式、それにヴェルグーリさんも歳だ、後2~3年すれば病院で最後を待っていてもおかしくない年齢、動くスペースデプリを押し付けるにはちょっと弱かったか?だがネドリー運輸グループにもとある負債がある。

 「税金以外船体はタダ、船員に帝国美女を一杯付けると言ったら?」

 「・・・押し付けが美味いのう・・・それでは君の所が儲からんじゃないか?」

 「いや、ネドリー運輸の負債が減るだけだ」

 「貰い受けよう・・・どのみちステーション所有者が倒産されては叶わんからな?16人くらい欲しいかの?ちとあの店はジーナが居たとしても広すぎじゃ・・・」

 勝ちだ、ヴェルグーリさんも酒場を始めてから長い、商人としてのキャリアも長い、経験や経済状況的にも断る理由が無いと判断したようだ。

 「帰ったら用意するよ」

 「後で返せと言われても知らんぞ?」

 「言っただろ?代わりなんて腐るほどあると、その心配はないさ」

 交渉成立、ルーガはドミットラーと握手を交わした。

 「ドミッドラーさん、本当にありがとうございます」

 ジーナからもそう言われる。

 「いーさいーさ、そこでダンマリしている警官のヤボ用ついでだ・・・無事で良かったよ」

 「とは言え、ドミッドラーさんに大迷惑をかけてしまったの?罰としてジーナ、ドミットラーさんの傷が直るまで看病せい」

 「わかり・・・ました・・・」

 ジーナが顔を赤くしてこちらを見てくる。

 「そんな事したら、こっそり酒が飲めなくなるだろ!」

 「酒は傷に悪い、早く直してうちに飲みに来い、ほっほっほっ!」

 それから特に何も無く、リストーン星系にたどり着いた。ヴェルグーリのバーには美人で料理や接客も経験のある元帝国軍兵が働くようになった。ジーナは最初は包帯の交換だけだったがご飯も作ってくれるようになる。ほぼほぼカップラーメン中心の食生活が劇的に改善されたのはなによりで、ランスロットも正式にジーナの船となりネドリー運輸から船籍離脱、マスビダ星系へ食材や酒類の買い付けに使われるようになる。だが、たかだか1店舗の仕入れに使うには貨物容量が大きいのでほとんど沖停めが多い、本来はE-900Mが適正貨物量である。

 「・・・子供、欲しいなぁ?」

 ジーナは研究ステーションの事務所のソファーでお昼寝中のツェルナを抱きながらボソッとそう言う。

 「・・・欲しいなぁ?」

 再度通告だ。

 「・・・怪我が直ったらな」

 ・・・正直サルターンでのほぼ裸のジーナの姿が忘れられない、そしてジーナもサルターンでの快楽が忘れられない・・・包帯を替えられるたびにお互いの欲求が濃密な物となって距離がだんだん近くなる、いまとなっては爆発寸前・・・事務所のモニターでは違法貨物を運んでいたとしてベルモア運輸の中型貨物船8隻の船長らが次々に逮捕、若者の海賊化に加担していた事も暴露され、社会問題となっていた。当然ベルモア運輸は保有船全てを星系警察に差し押さえられ、他に稼ぎ口も無い為廃業、壊した発信機と細工の現状復帰をした後、押収された貨物船は獄中オークション、更生しやすい襲撃未遂に終わった若者を船員にして刑務所労働のごとく星系警察の荷物輸送や囚人移送などの雑用に使っているようだ。

ー銀河の常識ー

・ギャラクシーネットワーク

宇宙のどの星系に居ても別の星系とやり取りできる、人類で言う所のインターネットの次世代版、主に国営民間ステーションが基地局となっており、ジャンプゲートを通して生命体の居る全ての星系とメールや情報のやり取りが可能、星系マップなどもこのネットワークを通じて行われており、民間船の位置把握等にも使われる。特にジャンプゲート突入時は注視しておかなければジャンプ先で追突事故にもなりかねない。現在の宇宙において必要不可欠なインフラ設備である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ