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この宇宙の片隅に  作者: verisuta
ネドリー運輸
6/11

おねがい2

おねがい・・・それは知的生命体同士で(以下略)


ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー

・ロゼンダ級・ササリッサ級大型輸送船

ズァパリ民国国営造船省製の大型貨物船、船体色はロゼンダ級は赤固定、ササリッサ級は緑固定のほぼ特注艦で、恒星の光を受けて虹色に光るエネルギーセイルを左右に装備している大変美しい船、特にロゼンダ級は旗艦専用船な為ササリッサ級より一回り大きい、ササリッサ級を従える為の装備を多く搭載している。ササリッサ級は航行装置をロゼンダ級に依存している為非常に安価、ロゼンダ級無しでは長距離航行が出来ない。

ズァパリ民国の主要交易品の都合で大容量の高速交易船の設計をしており、大型貨物船としては銀河屈指の速力を誇るが、工業製品などの重量貨物輸送は不得意とする農業貨物船特化な船でもある。頻繁に大気圏突入を行う事から左右に備えるエネルギーセイルが大気圏内では翼となる、この事からも艦隊陣形を保ったまま大気圏突入と言った高度な運用も可能となっている。

貨物船としても優秀だが、あくまでもロゼンダ級は末代の最後の花とも呼ばれる棺桶である。ズァパリ民国人は基本的に土葬であるが次世代を宿せない末代となる国民だけは生を宿せなかった子と共にオレスト星系の恒星、ルミナスへ送られる為、ロゼンダ級には貨物船としては唯一無二の棺保管室や無精卵の冷凍保管室、艦橋を丸ごと冷凍保管庫にする為のシステムと言った棺桶としての機能が装備されており、ルミナス地表まで到達できるような耐熱性に優れる特殊な船体材質をしている。その為希少価値も極めて高く、銀河最高級の中古クルーザーとしても名高くなってしまっている。


・ギャラクシーファイター6

エマンクリシット皇国プリズムミリタリー社製の主力戦闘機、加速性に優れ、帝国軍主力戦闘機であるF405戦闘機に対して対面攻撃を最も得意とするが、旋回性能が著しく悪い為、原則として一撃離脱戦法による制空戦を推奨される機体特性を有する。

基本兵器はビーム兵器のみの為、兵装の補給は原則必要無いが、兵装の交換が難しい事やエネルギー管理に注意が必要となる。

ホログラムスイッチを採用している為、緊急時に緊急脱出スイッチが押せないと言う致命的な不具合がある。

現行型は6代目、初代を未だ運用している地方の防空隊もある。

 「・・・あー笑いが止まらねぇ」

 「なにあれ」

 「サラマンダー級航空母艦、エデルゼウス25」

 窓の外から見えるサラマンダー級航空母艦のような物、エマンクリシット皇国ではCDW-233エデルゼウス25と呼ばれていたが、商船登録するに伴いESS-025の船体番号が新たに割り振られた。

 何故簡単に商船登録が出来たのかも不思議でならないが、それ以前にこの船は元々艦首の甲板は露天、船体中央部から後部にかけて滑走甲板は天井に覆われている銀河でよくある一般的な構造だった・・・だが、この露天甲板に天井を貼り付け、前から貨物を流し込めるように改造がされている。ちなみに脱着式、あくまでもこの量を満載で動くか疑問があるからだ、動かなければ外して天井部にのみ貨物を敷き詰める作戦に変更する。

 ・・・でもまぁ・・・無理そうなんだよなぁ。

 確かに巨人族系の船は速い・・・速いのだが積載力が無い、おまけに直線番長とちょっと使いにくい傾向にある。ちなみに艦載機の格納自体は船体下部からだが、その艦載機の数は最大300機と銀河の空母の平均としてもやや少ない傾向なので高速空母もしくはギリギリ軽空母とも言えなくはないクラスの船でもある。この船はギャラクシーファイター6が13機とスーパーツァーリー8が18機格納されていた。ルドンドセル大佐が言うには初出撃時は満載にしていたと言う、無意味な戦いに送り出してしまったと悲しんでいた。つまりこの船に乗っていなかった機体は帰ってこなかった、あるいは別の船に回収されたようだ。しかし、商船である以上、艦載機など10機以上も要らないのでギャラクシーファイター6を3機だけ残して後はステーションの小型ドッキングベイに移してある。

 ジェネレーターは部品取りのER-2000Lから流用していざ出港はしてみるもののの・・・。

 「操縦はホログラムスティックだ、指先一つで船の向きから出力調整まで出来る、基本手放しだ」

 「・・・申し訳ありません、何分、皇国製の船は初めてでして」

 「巨人族の船は大抵この方式、慣れれば人間族の船より楽だ、巨人族系は基本手放しだからな・・・衝突事故も多いらしいが」

 ・・・操縦も独特、そして、何故か至る所に青いイルミネーションが施されているのも特徴だったりする。高級間接照明か?と言わんばかりの照度、壁と床の境目は廊下は勿論、トイレ、各種コンソールの足元まで全てが光る。トイレユニットは人間用に換装したので今は光っていないが、やたらめったら青白い・・・それは巨人族の船は全て共通している、そして電源喪失しても光り続ける・・・そういうコーキング剤らしい、巨人族の建造物が青白く光っているのもコーキング剤由来だと言う。

 船内は真新しい独特の匂いがする・・・ZB8型フリーゲートもそうだったが、やはり1カ月前に竣工したばかりの船、船体データがそれを全て証明していたが、直したら皇国軍は回収しに来るか?・・・来ない、基本的に軽微な損傷以外は直す事をしないと言う。これは皇国軍、帝国軍共に共通していた。

 修繕中に多少は探索したが改めて探索すれば、やはり異星人の船と感じる。よく見かける事が多いシーモア共和国製の船も操縦系は人間族と近しいものの、デザインからまったく異なる。うちにも数隻あるが、ベルドナカンパニー製のジャガー級や修理中のジュリエット級大型貨物船も爬虫類族の手に合わせて3つないし4つの指で操作出来るようになっているので根本的に作りが変わってくるのだ。

 ちなみにこの船は船としてそもそも大丈夫なのか?という場所がいくつも存在する。それはもうシーモア共和国製の船を知っていればほとんど駄目なのでは?と言うレベル・・・シーモア共和国の船は機能性と堅牢性に優れるのだから比較対象が鉄壁過ぎているのは十分分かっている・・・爬虫類族の作る船はあちこちに予備システムがある入念な設計だがその分船速が遅いのも難点、シーモア共和国の商船乗りは銀河でベストセラーを誇るトライオッド社製の爆速エンジン、大型クラスならシックススターエンジンか、安価で無難なエルーラ社のB3シリーズのエンジンに大概換装している。ちなみにうちの船は意外にもシックススターエンジンが乗っかっている事が多い・・・部品調達の難易度もお察しである。

 ・・・じゃあ、巨人族の船はどうか。

 ここまで来てもうお察しではあるのだが、シーモア共和国製の船とほぼ正反対の特徴がある。速さを重視する設計で色々と機能を削ったり肝心な予備システムすらなかったりするという、ちょっと船としてもどうなのかと言う設計が非常に多かったりする。例えば隔壁扉、一応存在しているが、まさかの艦橋で一括管理・・・普通は各セクションごとに操作パネルが設けられるのだが、逃げ遅れとか艦橋消失とか起きたらどうなるんだと色々不安な設計があちらこちらに見られる。

 流石にルーガもこれに対しては改造を施してあり、各隔壁ブロックに手動閉鎖装置が増設されているのがあちらこちらに確認出来る・・・これは青白く光らない代物だ。

 色々不安だらけのサラマンダー級の艦内を歩けばようやくメインの場所に着いた・・・そう、格納庫である。

 格納庫内は倉庫のように棚が並び、そこに戦闘機を格納していく方式、巨大な立体駐車場とも言えるが、この棚が上に上がっていき射出甲板へ、一度に12機射出出来るという物・・・ここまではまぁ良いだろう、問題は着艦である。着艦は船体の下からだがエレベーターは3つ、発艦できる量に対して着艦出来る量があまりにも少ないので、もうこれは格納渋滞は避けられない、補給はタイミングを工夫する必要があるようだ。普通この手の船は船体下部ないし側面に着艦エレベーターを少なくとも発艦機数の半分は確保してあるはずである。ちなみに例外もあり、我らが人類の空母は着艦エレベーターを一つも装備していない。フルジア王国軍の正規空母は全通式で、正面の空洞から発艦し、中央部のスロープから着艦する。甲板デッキはステーションの港湾で一般的なオゾンシールドで空気が満たされているが、これが中々エネルギー浪費の激しい設備なので閉鎖用のハッチも備えている、その為発着艦時はほとんど船が進まなくなる欠陥を抱えている、これがエルーラ製のAB-6000型航空母艦。一方で同一の仕様で発着艦デッキの与圧を切り捨てた空母を運用するのはズァパリ民国である。ただし従える艦載機が多すぎる他、エルーラ製とは異なり船体側部から着艦する仕組み、こちらも大渋滞する問題を持っている。他の国はサラマンダー級のような方式が多い傾向にある。

 そうこうしている間にステージアコロニーに到着、流石の皇国製、爆速にも程がある。鹵獲した時も思ったが、中型船とさほど変わらない速力を有している事だ。スピードだけならやはり巨人族のエンジンである。

 「こちらステージアコロニー、皇国製の空母か何かか知らないが大型ドックの入口に直接カーゴドアを向けてくれ」

 「・・・まさか1隻分すらも塞いだのか?」

 「・・・置き場がもう無いんだ、うちももう操業不能になる!さっさとER-3000Cを100隻エルーラから買え!ネドリー運輸!王国国民皆が困ってるぞ!」

 「うちだけのせいじゃないだろ!?お望み通りの超ド級大型貨物船だぜ!?職員総出、休憩無しで大型3隻くらい荷役が出来るスペースを確保するんだな!ちなみに搭降積は全て人力だ!」

 「普通の貨物船持ってこい!ドローンも使えないとは面倒だぞ!港湾職員全員回す・・・どの道開けないと他の荷役が出来ないからな・・・後、王国軍の対応はそっちでやれ!うちらは関係ないからな!!お前がこの宙域に居たらおかしい異星人の船持ってきたんだからな!」

 「・・・分かってる」

 丁度中型船すらドッキング出来なくなったタイミング、海賊船を引き連れて突如現れた皇国軍の正規空母に流石のフルジア王国軍も大慌てでW-8000型フリーゲートを派遣してきたようだ。

 「・・・チッ!何処の馬鹿かと思えばまたネドリーか!中身はお前が巨人族の同胞へ押し付けてこい!我が国は異星人を養える余裕が無い!」

 「もう押し付けてきましたよ!フルジア王国軍代007艦隊司令官、スヴィンガー大佐殿!」

 「田舎の民間人がどうやったら皇国軍の正規空母を手に入れられるんだ!」

 「事情報告は星系警察を通じてフルジア王国政府に上がっているはずですが!?欲しけりゃあげますよ!この船は!どうせ拾い物だ!うちも要らねぇ!民間も使い道に困るタイプの船だ!」

 「異星人の空母を運用する余裕はうちには無い!国が出している助成金で何故貨物船を買わない!」

 「人材が余剰過ぎて大赤字なんだ!それでも週1隻ペースで大型貨物を就航させている!中型なんか10隻越えだ!軍もうちの真似して手伝ったらどうだ!」

 「軍隊は国民を守るのが仕事!民間の荷物を輸送する組織ではない!」

 「じゃあ報告書さらっと仕上げてお家に帰ってくれ!」

 「そうもいかん!・・・クソっ!面倒な事をしおって!」

 報道のカメラと主砲に睨まれながらステージアコロニーの港湾の作業員は所狭しと並べていく、その間にコロニーのニュース番組でも見る、緊急特番だ。ステージアコロニーに民間籍の謎の皇国軍正規空母!ネドリー運輸の切り札か?・・・だとさ?

 ・・・搭載には丸一日を要した。久々に大型ドックの着陸スペースが全て空く、鈍重だがちょっと想定外な事に一応動いたのだ!流石は軍用エンジンと言った所だが所詮巨人族系のエンジン、ER-3000Cの半分の速度でステージアコロニーを旅立った。

 「・・・流石に・・・遅い」

 「いくら空母とて、甲板に貨物満載となれば過積載もいい所であります。これでは惑星の海洋コンテナ船ではありませんか!前時代過ぎます!」

 「・・・だよな・・・ヴァルカン船団とホーネット船団呼んでくれ、ちょっとこれは追加で引っ張るべきだ」

 「はっ!」

 流石に遅いので海賊船の牽引も加える。取り扱い貨物量は大型貨物船10隻分、勿論現在使われているコンテナは全て無重力に耐えられる物、気圧はコンテナ内で保たれている。

 ・・・帰りはせいぜいカーゴベイに収まる物しか乗せてくれないだろう。

 流石の貨物量なのでZB8型フリーゲートは8隻投入、皇国軍の空母を海賊船が補助しながら帝国軍のフリーゲートが守るシュールな絵は色々な種族からの笑い物、オデム=ササラ国営物流センターの管制官は全員失神、シーモア共和国軍緊急出動の大事件となった。

 ・・・だが、この騒動には盛大なオチが待っていた。

 「そうか、受け入れ容量キャパの壁があったか」

 「オデム=ササラも銀河中のあらゆる貨物を捌いている・・・一隻あたりの貨物容量にも上限があったようね、無限じゃないのね?」

 「1隻あたりの貨物を全部仕分けするのにそれなりの処理能力が必要、特に大型貨物船は色んな品目の貨物を混載して運んでくる、それを適切な場所に運ぶ制御も貨物が多ければ多い程必要になる・・・ついでに空母自体船体が大きくてそのまま入るステーションもそう多くは無い」

 「そう言えば、突っ込めたとしても荷役にはクレーンが必要ね」

 「それも忘れてたな・・・とは言え、海賊船の貨物室にも一応Lコンテナは入らない訳じゃない、規格外だから隙間が出来て勿体ないんだが、この距離ならそうでも無いか?」

 「持ってきちゃったんだからやるしかないでしょ」

 「そりゃそうだな・・・?」

 ・・・結果として物流システムがパンクするので海賊船でちまちま降ろすしか方法が無く、全ての貨物の入れ替えに2日も掛かった。

 ・・・これじゃあんまり意味が無い。

 空母貨物船作戦は大型10隻用意した方が早いので大失敗ともいえた。もちろん完全に無駄だったという訳でも無い、サラマンダー級、搭載貨物を10隻分から5隻分に減らせばER-3000Cより快速、海賊船との貨物のやり取りで海賊船を射出甲板上に置いた方が効率的だった為露天甲板の天井は不要だったので外した・・・だか露天甲板にも詰めようとするので天井の範囲まで積み終えたら勝手にアンドッキングする事にした。ステージアコロニーからはもっと積ませろと言われるが、オデム=ササラ国営物流センターからはもう来るなと言われる始末、でも稼ぎとしては超優秀、護衛兼荷役用の海賊船が2隻付いていれば大型貨物船と大差ない貨物交換を行える、3往復もすればオデム=ササラ国営ステーションの物流センターは諦めて荷役用の海賊船を優先的に入れてくれるようになった。物流センター側も貯めていたステージアコロニー行きの貨物を減らせているので割と文句も言えない状況、その間にER-3000CやER-2000C、ジュリエット級大型貨物船が次々就航していく。だいぶ赤字幅が減って来た。国内の物価もだいぶ下がってきてエデルゼウス25はフルジア王国民の救世主となったのだ。

 「ファルマン!お使いたのもー」

 「・・・小型機で済む範囲で頼む」

 「フリーゲートが良い!」

 「なら休憩で戻ってきてるのに勝手に指示してくれ」

 「君の友人だぞ?」

 「誰だか知らんがこんな田舎に来ると思うか?」

 「おねがいおねがい!」

 エルムンドドエルはまたつぶらな瞳でファルマンの周りを回りだす。

 「・・・誰が来るって?」

 「ズァパリ民国から薬の材料を仕入れた」

 「あぁ・・・ミヴェルマンさん・・・分かった、行こう」

 昆虫族となればあの人、ファルマンは端末の画面をオフにして立ち上がる。窓の外では無許可操業のER-1000B2隻が金属スクラップ回収ついでにジュリエット級大型貨物船を引っ張って来ていた。ER-2000Bは採掘ドローンを乗せて星系外側から氷を回収してきている、流石にこれは登録してある。資材系の船も動いている為窓の外は大型船の往来はそれなりに多い印象、しかし一方でこのステーション、交易ドックは交易ドックとして機能していない。受け入れはいつでもウェルカムなのだが、何処に住んでいるんだと言うレベルで海賊がうじゃうじゃいる為どこの国の商船も一切寄り付かない。物価が落ち着いてきたとはいえ、フルジア王国は依然として経済の外側に変わりは無いからだ。

 おまけに海賊が無限沸きする・・・。

 何処に住んでいるか分からないのもそうだが、確実に増えても居るのも確か、その原因は王国の物価にある。ピーク時よりかは下がっているとはいえ、現状は未だ非常に高く、犯罪率もうなぎのぼり、国民のほとんどが貧乏人と言うどうしようも無い状況、デモは毎日何処かで起こり、そして一攫千金を求めて海賊になる国民が倍増、うちにルーガさんが居るように、海賊にもルーガさんのような人が複数居るようだ。海賊の墓場のスペースデプリの量がかなり減っているようで、ルーガさんの工場は海賊の食卓から修理可能な船を調達している程でもある、中古部品はここから社内便で送っている。

 「休憩中悪いんだが、VIPの護衛依頼が入った」

 「何ぞとご命令ください!」

 ZB8型フリーゲートのドーベック艦隊の旗艦の艦橋に行けば敬礼される・・・俺、軍人じゃ無いんだけれど。

 「現在VIPはセルルド星系を航行中、合流次第、本艦隊は護衛を開始する。難所はリストーン星系からだ。護衛の対象はアーバン船団商事の・・・たぶんロゼンダ級大型貨物船1隻にササリッサ級大型貨物船が10籍の船団だろう。ズァパリ民国籍の船団だ」

 「ズァパリ民国・・・あまり聞かない国ですが・・・」

 「セルルド星系を突っ切ったその先、ここまでは20ゲートもくぐる必要がある秘境だからな、オデム=ササラ国営物流センターとは片道半月掛かる距離だ」

 「遠いですなぁ・・・早く迎えに行かねば失礼でございます、ただちに出港準備致します」

 「・・・頼む」

 ドーベック艦隊の艦長、ニコラス・ドーベック大佐に出発を命じた。幸いにもたまたま休憩中だったこのドーベック艦隊、旗艦はランスロットから格上げ・・・ランスロットを商船として使いたかったのもそうだが、目の前の元帝国軍大佐、実は星系警察に表彰もされた大物、そんな彼には最新の良い船を与えてしかるべき、だから乗り換えて貰った。そしてこの前のお使いにも付き合ってくれたのもドーベック大佐、頼りたい時に大体暇して居る素敵な人である。

 ドーベック大佐率いるZB8型フリーゲート8隻の艦隊はセルルド星系へ飛ぶ、ドンパチの真っ最中で、セルルド星系の反対側で足止めを食らっていた。

 「・・・不味いな」

 「ええ、我が艦隊だけでは・・・船籍偽装と疑われて皇国軍から攻撃を受けます」

 「流石は大佐、何か言い手は・・・」

 「事が済むまで遠方で待機が望ましいかと」

 「だよな・・・」

 ギャラクシーネットワークでアクティブなトランスポンダーの位置を表示するマップを見るもPMCと 見せかける手頃な護衛の船が・・・あった。

 「CMT-445、ノースソルドック商事のノア級大型貨物船、コイツの所まで行ってくれ!」

 「ドライアド民主共和国籍の船ですが?」

 「俺の知り合いだ、一緒に居るだけでそれっぽくなるだろう?」

 「確かに・・・了解しました」

 それから30分後、信号待ちのごとく停止しているノア級大型貨物船を取り囲むように並ぶ。別の会社のノア級の商人はZB8型フリーゲートを見て怯えているがCMT-445の船長は・・・そうでもなかった。

 「・・・な・・・何が目的かね?帝国軍よ?」

 「エルムスミエルさん!俺だ、ファルマンだ」

 「・・・なんだ、君か・・・帝国軍のフリーゲートまで持っているのか?」

 「成り行きでな・・・」

 「その船じゃ、我らの同胞のバカ共に撃たれかねんぞ?」

 「その為のエルムスミエルさんだ」

 「・・・我を盾にしようと言うのだな?」

 「いかにも民間警備会社でしょう?」

 「・・・むう・・・そうだな・・・しかし、我についていっても君の定期航路からだいぶ外れるぞ?」

 「アーバン船団商事の船を迎えに行く所だ、ちょうど反対側に居る」

 「ミヴェルマン殿、最近しばらく会っていないな・・・よくすれ違うのであるが・・・」

 「間借りしているステーションのトカゲが発注した材料を持ってきてくれているんだ」

 「ミヴェルマン殿はたまにチャーター業も引き受けるからな?・・・しかしファルマンよ、もう物流ステーションでも借りたのかね?ついこの前は小型機だけだったと言うのに・・・」

 「借りたと言うか、都合のいい駒にされていると言うか・・・エルムンドドエルと言う医学研究者を拾っちまったんだ」

 「エルムンドドエル殿だと!?銀河の医学革命を起こした、かの大物ともう専属契約出来るまでに成長したか!・・・いやはや驚きだ・・・君は面白い人間だな・・・そのうち一個艦隊を率いる総督にでもなるつもりか?」

 「・・・なりかねない・・・かも」

 「はっはっはっ・・・我も君を閣下と呼ぶべきかな?」

 「やめてくれ、閣下は貴方だ」

 「そうだったな・・・やれやれ」

 しばらくエルムスミエルと談笑しているとベーベル級大型輸送艦6隻が横で停船した。

 「・・・奇遇だな?あの時の船を修復して警備船にまでしてしまうとは」

 「ズーデンド通商の・・・そっちは無事に収容出来たんですか?」

 「問題ない・・・ちょっと多すぎてコロニーに無職が溢れかえっているがな?我はログドランドットだ、オデム=ササラの問題児よ」

 「うちがオデム=ササラで毎回起こしている問題、全てはサリマンとステージアコロニーの港湾が悪い、ファルマン・ネドリーだ、今日も皇国側はズーデンド通商に任せる」

 「言われなくともその予定である、貴殿は帝国側を優先したまえ・・・惨い戦いだとは思わぬかね?ここに居る同胞達よ」

 「ごもっともだな」

 「生存者確認をする我らの身にもなれ」

 「時間が掛かれば延滞ペナルティも付く」

 「「「「「はぁ・・・」」」」」

 エルムスミエル含む5つの会社の船の船長達が大きな溜息を付く、その間にも後ろに信号待ちのようにどんどん船が列を成して行く・・・しかし残念ながら人間族の船は無い・・・うちだけだ。

 「今回は・・・帝国側の方が有利と見たんだが」

 「いや、ノースソルドックの者よ、皇国は新型のフリーゲートを投入しておる、帝国の在来のZB8型フリーゲートはこの船速に叶わぬ、在来のサヴェージ級より旋回性を微妙に改善したそうだからな」

 「ほう?ズーデンドの同胞よ、どちらにせよ直線番長であろう?死角の無い帝国の船の方が有利では?」

 「結果はこれだ・・・翻弄されてしまったようだな?帝国は全滅とは・・・まったく、皇国も自国の人命救助すらも放置してさっさと基地に帰ってしまうとは・・・帝国の被害もそうだが帝国もだいぶ奮闘したな・・・ゴミまみれじゃないかね?」

 「資源の無駄である・・・さて、同胞達よ、サービス残業の時間であるぞ?」

 「はーーーーっ・・・」

 足止めを食らっていた商船120隻以上が大きな溜息を一斉に放った。

 双方の船が一斉に動き出す、合計で推定300隻くらい、大半がドライアド民主共和国籍、反対側のロックベルト星系行きの船は帝国側に加担してはくれたが帝国側は全滅、戦いが終わったばかりなので生存者も多数、ZB8型フリーゲートだからとポンポン押し付けられるが毎度のごとく許容限界だ。

 「司令官殿」

 「・・・やるのか?やる気なのか?」

 「おっしゃる通り、我が艦、そしてアーバン船団商事様のご協力があっても到底収容出来ません・・・そこで面積的にも膨大な収容人数を誇るDG9型巡洋艦のサルベージをご検討頂きたく思います」

 「・・・運よく他の船の残骸に囲まれてジェネレーター損傷程度で生き残った奴ね・・・はいはい、だがZB8型フリーゲートを少しは集めるぞ?」

 「かしこまりました」

 「横づけしてくれ・・・俺が鹵獲してくる」

 「海兵も用意します」

 「ミヴェルマンに繋げてくれ」

 「了解」

 「ミヴェルマンさん・・・悪い、DG9型巡洋艦に放り込めるようにする、少しの間受け入れをお願いしたい、受け入れ準備が整い次第、寄こしてくれると助かります」

 「いいわよぉ?ファルマンちゃんの海賊のお時間、ゆっくり見学させて貰うわぁ?」

 「負責が増えるだけなのでやりたくないんですけれどね」

 「ファルマンちゃんの部下も周りに居るんでしょう?聞いたら皆悲しんじゃうわよぉ?頑張ってねぇ?」

 通信を終えると一つ溜息。

 「・・・我々は気にしていません」

 ドーベック大佐は帝国軍の帽子を深く被り直してそう返事した。

 「・・・悪いな、作戦開始だ」

 ZB8型フリーゲートはDG9型巡洋艦に横づけ、いつものようにジャンプケーブルを繋いで海兵を連れて乗り込む。艦橋へ向かうも艦長は自殺、副艦長はもはや何もできず壁際で膝を抱えて泣いていた、他も意気消沈だ。

 「海賊だ、船貰うぞ」

 「・・・好きにしろ」

 航法コンソールに座っている兵士はそう言うだけだ、海兵達は同胞に一応ビームライフルは向ける、しかし完全無抵抗、通信コンソールへ行きドーベック大佐を呼び出す。

 「船の指揮権を奪取した、いつでもつけてくれ」

 「了解です、司令官、ミヴェルマン様にもそう伝えます」

 しばらくすればササリッサ級がどんどん横づけしてくる、その頃にはエンジン損傷の壊れたZB8型フリーゲートによるエネルギー供給に切り替わっていた。

 「ふむふむ、こうしてファルマンちゃんは会社を大きくしているのねぇ・・・お姉さんには真似できないなぁ・・・私達は働き手を卵を産んで作る種族、従える船の数も決まっているからねぇ?」

 「我の会社もスクラップから船を作れるようにならんとだな?」

 「また港に無職が増える・・・国は何もしてくれぬからな?これ以上余計な残業に遭遇しないようにさっさと退散するとしよう」

 サービス残業を終えた商船達は目的地へ飛んでいく、うちもさっさとこの宙域を逃げなければならない。ZB8型フリーゲートは4隻増えてアーバン商事の船団を囲む。なお、ニコイチなので実際はDG9型巡洋艦の電源も含めて10隻も増えている、まさに大艦隊だ。

 オロラ星系へ飛びリストーン星系へ、やはり予定通り来た、海賊が12隻だ。

 「ドーベック大佐、8隻でいけるか?」

 「余裕でございます、海賊など秒で片付けて見せましょう。ロゼンダ級の美しい船体に傷一つ付けさせません」

 「まぁ、頼もしい事」

 だがこの男、ドーベック大佐は有言実行する男だ。

 「何故民間商船ごときが帝国軍に守られていやがる!」

 「こいつはヤバすぎるヤマだ!撤退すr」

 ザーッ

 一瞬で無力化されていく。

 「ヤバすぎるって言ってもぉ、ちょっと良い薬草しか積んで居ないんだけれどねぇ?おっほっほっ!」

 あまりのあっけなさにミヴェルマンも笑ってしまう・・・流石は帝国軍の最新鋭フリーゲート艦、1隻で全部片付ける・・・なんでこんな化け物がうちの会社にあるんだろう?

 「帝国軍では無いんだが・・・ま、実質帝国軍か・・・流石ドーベック大佐だ、エデルゼウス25、悪い、オロラ星系までの護衛で随伴する予定のZB8型フリーゲートを貸してくれ、ちょっと待てばホーネット船団が追いつく、変わりに割り当てる」

 「こちらエデルゼウス25、了解」

 「うっそぉ・・・空母まで持ってるのぉ?ファルマンちゃん!」

 「一応、貨物船扱いだ、うちの船で一番の稼ぎ頭、一度に大型5隻分運ぶんだ、フルジア王国の救世主でありオデム=ササラの災厄でもある・・・元の船員はエルムスミエルさんの下で働く事になったんだ」

 「オデム=ササラの災厄はともかく、崇められてるなんて・・・そんなに酷いんだぁ・・・帰りはオデム=ササラまで空荷だし、お姉さんがちょっと手伝ってあげよう!」

 「きっと女神様になれるぞ?」

 「女神様なんてそんなぁ!」

 「ドーベック大佐はそいつらを星系警察に突き出しておいてくれ、後はこのガラクタ共でやる」

 「了解です」

 ドーベック艦隊を置いてよく分からない艦隊は再び動き出す、その頃にはホーネット船団が追いついた。海賊もちらちらしているが、DG9型巡洋艦を目にして皆逃げていく、さらに研究ステーションからギャラクシーファイターが10機救援に来た。もうこれで寄り付くバカは居ない、勝ちだ。

 DG9型巡洋艦はドッキングベイへ、ロゼンダ級大型輸送船とササリッサ級大型輸送船は紫がかった恒星の光で羽のようなソーラーセイルを紫色にキラキラ輝かせながら研究ステーションの大型貨物港にドッキング、元衛生兵がごった返す中、大型貨物港を目指す。あのトカゲは一目散で荷物の所へ行くはずだ、実質ステーション管理者扱いのルーガもそこへ行くしかない。流石に遠いので鉄道を使う。生意気にもこんなステーションにも公共インフラがある、ステーション居住区はもそれなりの都市が出来ていた、港湾に近い仮設宿舎は職のない帝国軍兵士用だが何らかで仕事をしている人達には最低賃金を遥かに下回る給料の補填として住居を与えた。病院や公安、消防などの公共面は勿論、バーや商店など、都市内の運営にも変わっていった人も居るので職の無い待機兵は500人にまで減った。しかし今日、また1万人くらい増えた・・・増やすつもりなんて一ミリも無かったのだ・・・定期的にドンパチする奴らが悪いのだ。

 「素敵な所じゃない!遠いけど!周りも廃船だらけ!まさに海賊基地!」

 「でも居るのは99%帝国軍人なんですよ」

 「・・・ホント、このステーションはなんなんだ?」

 「管理はルーガに任せている!私は知らない!」

 「・・・このトカゲ野郎!元々お前が建造したんだろ!?なのに管理まで全部俺にぶん投げて!尻尾ちょん切ってやろうか!っておいまて!」

 「わー!!」

 エルムンドドエルはルーガから逃げるように研究所まで戻っていく、貨物はドローンが全て貨物鉄道に載せ替えている、時期に研究区画まで運ばれる事だろう。ミヴェルマンはその様子を口を抑えて笑っていた。

 「・・・ま、せっかく来られたんです、案内します」

 「いいのぉ?」

 「どの道貨物の搬入には時間が掛かりますので」

 「分かったわぁ?・・・子供達?作業は続けておいてね?」

 「かしこまりました!お母様!」

 「・・・行きましょう?」

 「こちらです」

 ルーガは鉄道駅まで案内する。エルムンドドエルに車を乗っていかれてしまったのでまずは中腹部のドッキングベイと中型貨物ドックまで。

 「基本的に我々ネドリー運輸は中型機が多いのでこの辺を中核としています・・・丁度オーエンスが業務を終えて帰って来たようだ」

 「リーサちゃんに会うのも久しぶりねぇ」

 しばらくするとリーサが降りてきた、走って来る。

 「ミヴェルマン!なんでこんなクソ田舎に?」

 「ドエルちゃんのお使いよ?」

 「またあのトカゲ・・・」

 キッ・・・とリーサの目つきが変わる。

 「まーまー!ドエルちゃん、ああ見えて本当は凄い子なんだからぁ!」

 ミヴェルマンが4本の腕をぶんぶん振った。

 「・・・銀河の医療革命とやらを起こした奴・・・らしいからな?」

 ひとまずエルムンドドエルの正体をリーサに説明する。それで若干鋭い目つきは和らいだものの・・・。

 「あのトカゲが?」

 逆に信用ならないという顔をし始めた、まぁ無理もないだろう。

 「田舎者ほど知らないみたいだ、経済の中心に近い国ほどその偉大さを知っているらしい・・・田舎者だから俺らは知らないようだ」

 田舎なら医療関係者か外と繋がる機会が多い商人くらいしか知らない事だ。

 「ところでなんでDG9型巡洋艦があるの!ファルマン!また負債を増やすつもり!?」

 リーサはドッキングベイの方角を指さす。お怒りのご様子だ、俺だって怒りたい。

 「・・・トカゲのお使いのせいだ」

 「あのトカゲ・・・」

 またリーサの目つきが鋭くなる。

 「まーまー!どのみち私が拾ってくる事になってたのよぉ?一人でも多くの命、助けないとねぇ?」

 「でも!・・・うちはあんな戦闘艦を警備船として運用出来る余裕があるほどそこまで大きな企業じゃない、まだまだ弱小もいい所よ」

 「うーん・・・戦闘機隊にフリーゲート、空母に巡洋艦まで手に入れた会社は弱小と言えるのかしらぁ?お姉さん、いささか疑問だわぁ?」

 ミヴェルマンは考え込む、確かに弱小とは言い切れないラインナップだ。

 「見えっ面だけだな・・・資金的にはまだまだ弱小もいい所だぜ?所で外でも船作らなきゃならないのか?」

 同じ事はルーガも思っていた、苦い顔をさっきからずっとしている。

 「作るって事はぁ・・・貴方が腕の良い整備士さん?」

 ミヴェルマンが興味津々でルーガに近づく、ルーガも急に来られて頭を搔きながら驚いている様子だ。

 「えっとぉ・・・そういう事になりますかね?ルーガ・ドミッドラー、ネドリー運輸の前はサリマン運輸の整備をしてました」

 「サリマン・・・ねぇ・・・ズァパリ民国の薬草畑を刈り取る勢いで薬草を買い集めているけれどぉ・・・何かぁ・・・あまり良いうわさは聞かないわねぇ・・・」

 「まあ、末期は確かに何か怪しい動きはしていましたよ、子会社に譲渡した船は一切うちに入れてこない・・・ま、ネドリー運輸もまた変な組織、おかげで廃船修復はお手の物にされてるが、他に回す程手は空いていない・・・そもそもズァパリ民国は習慣的に他国の船を使えないですよね?業績拡大のお手伝いは出来なさそうだ、はっはっはっ」

 「そうよぉ?ズァパリ民国の女性は沢山の労働者を自分で産んで従えるのぉ、ロゼンダ級大型輸送船はその為の指揮官専用艦、子供の数でササリッサ級大型輸送船の数も決まるのよぉ?ちなみにズァパリ民国の貨物船は全て大型級しか無いからぁ・・・貴方に船を作って貰う事は出来ないのぉ・・・ごめんねぇ?もうお姉さん卵産める年齢過ぎちゃったからこれ以上増やせないかなぁ?」

 「ロゼンダ級はササリッサ級を従える為の装置を搭載している、ササリッサ級は航法装置を持たないがゆえに単艦での長距離航行が不可能、大変美しい船だが正規ルートじゃ他の民族も購入すら叶わない特別な船、この目で見られて光栄です」

 「うふふー嬉しいわぁ!さぁ、ドエルちゃんの所へ行きましょう?」

 「そうですね、こちらへ」

 また鉄道へ戻る、そして小型ドックへ、この辺の区画から研究区画、何をしているかなんて聞いた事は無い、そんな余裕は無いからだ。

 「結構増えたな?」

 「そりゃな?残骸やお土産にもオマケが乗ってる事がたまにあるんだ・・・使い道がありゃ良いんだが、こいつらはマジで使い物にならん・・・が、特に壊れてないし、なんなら最新鋭の軍用機、というか総飛行時間も50時間未満の新品がほとんどなんだぞ?捨てるのももったいねぇだろ?どうせここもあまり使ってないしな?」

 「むしろ捨てるべき物はアイツしか居ねぇだろ?」

 「あー・・・ごもっともではある」

 ピカピカの、たぶん実戦で一回も使われた事すらなそうな軍用機の中に混じって置いてある歴戦中の歴戦機、E-900Mを指さす、それに対してルーガも即答で頷いた・・・オーエンスがある今、正直ほとんど使わないポンコツは一応会社の代表取締役の持ち物と言う事で一番いい位置には停められている・・・それが余計に目立つ。

 小型ドックにはギャラクシーファイター6とスーパーツァーリー8、E-900M、それ以外にもZB8型フリーゲート12隻を修復する過程で拾ってきた残骸に取り残されていたES17型戦術偵察機が4機置いてある、エルーラ製の2機以外は完全にここに放置に等しいがたまに使う時もある、今日みたいに・・・。

 一向は研究区画へ、衛生兵の中でも医療大学を出て徴兵されている帝国軍軍人はエルムンドドエルの助手をしている。地味に倍率が高く、このコロニーで最も人気のある職業、色々な新薬の研究がされているのはよく分かった、なんだったら前線から拾ってきた負傷兵に未発表の新薬を投与までしていたらしい・・・これを知ったらストが起きそうだが、幸いそこまで後遺症が出る新薬では無い事と、経過観察もしっかりモニタリングしては居る事・・・上手くいけば銀河の医療に貢献できたと言う事で丸め込める・・・上手くいけばの話ではある。

 そんな事をかたや商人、元軍人、整備士には全く理解できない事をエルムンドドエルは長々ペラペラ・・・ドーベック大佐が海賊を引き渡して研究ステーションまで帰って来られる程に長かった。

 ロゼンダ級とササリッサ級から貨物の積み下ろしは全て終えたが、船乗りが標準としている銀河標準時間は夜だ、翌日研究ステーションを出発と言う事になった。

 その翌日、ドーベック大佐の提案で6隻編成のうちの大型貨物船団と一緒に出発、久々のオーエンスに乗った感想はやはり若干ヤニ臭い。護衛はZB8型フリーゲート12隻、海賊は怖くて近寄れない威圧感、それでも近づいてくるのはマスコミの小型機だけ・・・王国軍の軍用艦が一隻たりとも居ないのは想定外だったが。

 「あーあー・・・こりゃ壮観だねぇ」

 「あの人も分かってやっているんでしょう?」

 端末でマスコミのライブ中継を眺める、この大艦隊はドーベック大佐が指揮を取っている、うちの大型貨物船団はアーバン商事の船団の後ろに付けていた。勿論写真写りが良いように・・・分かってやがる。

 真っ赤な船体、恒星の光を受けてキラキラ輝く美しい船はステージアコロニーの大型貨物ドックに入港、ステーションは国賓待遇でミヴェルマンを出迎えた。

 「あーら、真っ赤な絨毯まで敷かれて・・・なんかセレモニー始めたし」

 「対してうちは11隻以上往復させてるのにもっと船用意しろとしか言われない」

 オーエンスはさっさと荷役を終えてステージアコロニーの停泊空域へ、タブレット端末でライブ中継を眺めていたら通信投影装置を用意してくれていた。

 今更知ったがこの船は通信投影装置でニュース映像も見られるようだ。その手の装置の運用に長けた帝国軍人が居なければ未だに携帯端末で見ていた事だろう・・・生中継だ、案の定女神様呼ばわりされている。ああ、羨ましい。

 その間にうちの大型貨物船団も一番近いラザーニャコロニーで荷物交換をする。この距離なら正直何処だっていい、どうせほとんどの荷物は大気圏へ突入するのだから・・・それに操船免許の要らない近距離シャトルでコロニー間の荷物は移動出来る。

 「さて、護衛は我が社、ネドリー運輸にお任せください、女神様?」

 「もう!ファルマンちゃんまでぇ!恥ずかしいわぁ!それに、私はチャーター業務のついでで寄っただけなのにぃ!フルジア王国の人達がいじめるぅ・・・お姉さん泣きそう!」

 「自国民ですら泣かされているので泣いていいですよ・・・本当にすみません」

 「本当にファルマンちゃん!苦労してるのねぇ!お姉さんあんなの耐えられないぃ!」

 メソメソ泣くミヴェルマン、土下座までされて定期航路便を頼まれたようだ・・・だが田舎の、しかも行政の現場をよく知らないけど何故か偉い人達、他の種族と同じように簡単に船を増やせると思っていたらしく、船を増やしてでも定期航路の開設を懇願してきたそうだ・・・それが余計に彼女を傷つけたのだ。

 ミヴェルマン達昆虫族には成人になる手前に人生に一度だけ卵を産める期間が存在する。その期間は一度過ぎれば二度と来ない。大概は300~400が平均値だが600人も産める人も居るという、記録に残る最大は1268人、ミヴェルマンはその平均値を遥かに下回る274人だった、しかも次の世代の女の子を宿せていないのである。それならば他の人も会社に引き込めば良いと思うのだが、ズァパリ民国の会社の事業体は一部行政を除き全て親族経営で、家業を継ぐのが基本とされており、その唯一の例外が行政関係、もしくは物流職なのである。行政はかなりの人数を必要とする他、政治的偏りを防ぐ為にも王家以外はある程度入れ替わりがある。だがなぜ物流職もその例外に組み込まれているのか、その答えとは、商船乗りは次の世代の子が居ない一族最後の花と呼ばれる職である事にある。国から最高に美しい船を与えられ、死した最後はズァパリ民国のオレスト星系の恒星、ルミナス向かって最後の航海をする・・・ロゼンダ級がどの種族の中でも最も美しい商船とされるのは棺桶でもあるからなのだ。真剣に言われる「もっと増やせ」は彼女にとってトラウマなのは当たり前の事である。

 ちなみにだが、寿命を全うせずに死した者は殺した相手を探して銀河を苦しみながらさまようとされる。勿論病気は例外である、要するに船を失う死の事を指すと言う。全てマドリニスゾリゾが教えてくれた話だ。昆虫族は寿命も短いから君も機会があったらオレスト星系に呼ばれるよとまで言われている。

 「船長!海賊船が320隻!突然姿を現わしました!囲まれてます!」

 「・・・え?」

 パルサー大尉の言葉を疑う、丁度海賊の食卓を航行中の出来事だった。

 「ずいぶんと俺達の仲間をもて遊んでくれたなぁ?ネドリー運輸!全艦一斉射ぁ!」

 膨大な数のビームが飛んでくる。

 「くそっ!スクラップじゃ無かったのかよ!うちの大型でアーバン船団商事の船団をカバーしろ!」

 「了解!」

 その命令でER-3000Cが次々に被弾して行く。勿論戦闘艦では無い、普通の貨物船、何だったら人類至上もっとも脆い紙船体で有名なモデルでもある。もちろんタダで済む訳無い、護衛のZB8型フリーゲートがさらに先行を始め、戦闘艦特有の厚い装甲で船団を守り出す・・・だが数が多すぎる、いくら装甲が硬くともZB8型フリーゲートも持たない。

 「ZB8型フリーゲートの各位!無理は承知で頼む!この際海賊の生死なんて気にするな!俺らも応戦する!」

 「了解!」

 とは言いつつも、既にやっている。

 ZB8型フリーゲートは全力で海賊船を攻撃していた。しかし足らない物は足らない、応援を呼ぼうにも間に合う距離かと言われれば微妙、少なくともアーバン船団商事にもダメージは確実に入って居る、その時、操縦席から引きずり下ろされた。

 「変わりなさい!」

 「リーサ?」

 「私も軍人よ?民間人の貴方よりは戦術機動に長けているわ?」

 「分かった、頼む!」

 リーサと操縦を変わる、オーエンスは今まで見せた事の無い機動をする。メキメキと船体が唸る、戦闘艦と貨物船の中間にあるこのクラスは万能だが所詮中間、どちらにおいてもイマイチな所がある、オマケに老体である、あまり振り回すと空中分解も十分あり得るレベルである。

 「クソっ!重い!」

 やはり荷物が邪魔だ、戦闘機動もかなり横滑りしている違和感がある。

 「ターゲットロックオン!」

 「今!」

 「M2軽主砲、ファイア!」

 ヤシマ少尉がトリガーを引く、命中、ジェネレーターを破壊し沈黙、その間に別の攻撃をローリングで避ける、だがかすった、船体が重すぎる!

 「指揮官!ロゼンダ級が被弾しています!ER-3000Cもかなり限界です!」

 ER-3000Cからそんな通信、警告音が鳴り響いている。

 「もう少し耐えてくれ!」

 レーダーを見る・・・何か手は・・・いや、ギャラクシーファイター6、スーパーツァーリー8も救援に来た。

 ・・・そうか、戦闘機なら!

 そういえばいくらか在庫していた小型機の存在を失念していたのである。しかし乗員も割り振っていなかった・・・と言う事は空いている戦闘機パイロット経験者が独自判断でスクランブルしてくれたのだろう。重雷撃機のスーパーツァーリー8は瞬く間に海賊船の数を減らしていく、戦闘機であるギャラクシーファイター6の武装も集中的に当てれば海賊船を無力化出来る。流石は訓練された軍人だ、恐らく皇国軍機は初めてだとは思うが、直ぐに乗りこなしてしまう辺り、やはり格が違う。

 「民間船団の癖に!」

 海賊船の残数は5分で53隻に・・・だがもうER-3000Cは撃沈寸前、その上をかなり遠くから巡洋艦主砲級のエネルギー弾飛んで来る、海賊船に見事着弾だ、オーバースペック過ぎて海賊船は一瞬で粉々になる。

 「あまり帝国軍を舐めないで頂きたい、攻撃の手を緩めるな!我々は無意味な戦いに疑問を抱きながら戦い、そして答えを導く事もせず負けた!しかし今は明確な悪と戦っている!遠慮など要らない!徹底的にやれ!」

 ノイズ混じりで女性の声がする。きっと元々居た副船長の大佐辺りだ。DG9型巡洋艦が主砲を撃ちながらこちらに全速で向かってきている。海賊達は戦闘を止め逃げ始める。だが、DG9型巡洋艦は容赦しない、一匹残らずスクラップにしていく。

 「噓でしょ?確かにHA-603主砲のギリギリ射程圏だけれども?」

 「えげつない精度だな・・・ドーベック大佐!もう少し耐えてくれ!リーサ!ロゼンダ級にドッキングだ!俺が行く!海兵隊も全員救助へ!」

 「了解!」

 かなり戦闘機隊が頑張ってくれて被害は軽微で済んだ。しかしアーバン船団商事にも被害が出てしまっている、ER-3000Cの乗員救助はDG9型巡洋艦の後ろに控えていたER-1000Bや牽引船改造してある海賊船などのスクラップ回収業務担当の船に任せる事とし、急いで艦橋を出ていく。 そして帝国軍の宇宙服を着る。海兵隊も医療品を背負ってドッキングベイまでやって来た。ドッキングベイが展開されるなりロゼンダ級へ駆け込んだ、内部はあちこちの天井パネルやらが崩れ落ちている、船内火災は消火し終えているようだ。

 「動ける者はオーエンスまで走れ!」

 動揺しているミヴェルマンの部下達はロゼンダ級に残ろうとする・・・そう、彼らにとってこの船は母と同じく大切な物、船が一大事な今、そう簡単に離艦など出来ないのだ。

 「我々が離艦する訳には!!」

 「強引にでも連れてけ!うちは廃船状態からでも修理出来るんだ!構うな!やれ!」

 「了解!・・・ほら、頼むから!な?うちの指揮官がそう言ってるんだ!」

 ズルズルと2人かかりでミヴェルマンの部下をオーエンスに引きずっていく海兵達を置いて艦橋へ走る、かなり電装系が深刻なダメージを受けている、天井が崩れ落ちてミヴェルマンはその下敷きになっていた。

 「今助ける!」

 天井を持ち上げてどかす、そしてミヴェルマンを担ぎ上げたその時・・・。

 ・・・卵?

 倒れた指揮官の椅子の座面から下、外から見えない所に大きな卵が挟まっているのを見つけた。何か冷凍されていたような形跡がある、キンキンに冷たい、しかし観察している暇も無い、後ろで天井がさらに崩れる音がする、急いでその卵を拾い上げてオーエンスを目指した。

 結局ロゼンダ級は一時放棄、怪我人を抱えているオーエンスは研究ステーションに早急に向かい、後始末はDG9型巡洋艦に一任する。ロゼンダ級はER-1000Bが回収作業に当たっているが、今日中に戻って来るかどうかは怪しい所、ササリッサ級は全てかすり傷程度、ER-3000Cは5隻ともほとんど大破に近い大損害、一応動くも、ササリッサ級に助けてもらわなければまともに動けない始末、オーエンスもかなり被弾、ミヴェルマンの命に別状は無いが気を失ったままだ。

 「ファルマン!それを貸せい!」

 「駄目だ!ミヴェルマンさんの大事な物だぞ?たぶん!」

 「貸して貸して!」

 エルムンドドエルはつぶらな瞳でいつものように回りだす。

 「食わないよな?」

 「私達は昆虫族の卵を今は食べる習慣が無い!おぬしら人間族が持ち込んだニワトリの卵が普及してから生産性も無く、味の薄いと言われる昆虫族の卵を食用とする文化は廃れた!それは遠い昔の事!」

 「・・・今は?本当だろうな?」

 「信じろ!」

 「・・・分かった」

 手先がキンキンに冷たいのでどの道一度手放したい、エルムンドドエルにミヴェルマンの卵を渡すと目を細めて、光に透かすように見る。

 「これは、無精卵かの?」

 「何故わかる?」

 「大事に持っていると言う事はそういう事でしょ?しかもこの大きさは女性卵だね!」

 「無精卵なら、当然生まれもしないよな?」

 「なに、今の科学なら有精卵にする事も出来る、と言う訳で今すぐ生殖器を出すがよい」

 エルムンドドエルは俺の股間を指さした、ひとまず自然と手がそこを隠すべく動く。

 「なんで俺なんだ?普通昆虫族の遺伝子だろ?」

 「メス同士では不可能だよ?科学的は作れないオスのオリジナル遺伝子情報が必要!獣人族と人間族のオスの遺伝子は採取しやすい、だがここには人間族しかおらん、だからよこせ」

 「どう考えても他種族の遺伝子じゃ駄目だろ!」

 「オスである遺伝子情報さえあればちょちょいといじくって昆虫族の遺伝子に仕立てる事も出来る」

 「ミヴェルマンの同意も必要だ!」

 「ちょうだいちょうだい!」

 「そんな目をされても今回ばかりは無理だ!」

 「ちっ、しょうがないの?」

 エルムンドドエルは急にその場で高速回転、顔面から床に叩きつけられたのまでは覚えている。その後はヤシマ少尉に顔を真っ赤にされながら起こされた。ズボンを降ろされ下半身丸出しで倒れていたそうだ・・・。

 「あのクソトカゲ!」

 ひとまず研究所へ走る・・・電車は止められている!そうだ、ここはアイツが作ったステーションだ!

 「車は何処だ!」

 「交易ドックにトラックが・・・」

 「行くぞ!」

 「ひいっ!?」

 理由は特に無いがヤシマ少尉を引っ張って交易ドックへ、大型トラックが6台あった、どうせ盗もうが100%身内しかいないので鍵はダッシュボードの上に置きっぱなし、ボタンを押せば電源が入り直ぐに走行可能状態になる。急いで研究区画へ・・・と言ってもハイウェイに乗らないと入れない、いっちょ前にセキュリティパスも必要、だが俺は上層に近い人間なはずだ!セキュリティは難なく突破・・・だが研究区画、端から端まで100km、それが横にぐるっと一周50km、施設は所狭し・・・これは詰んだ。全部のドアを開けるだけで半年掛かる。

 「・・・どうしようか?」

 「えーっと・・・まず、エルムンドドエル様をお探しで?」

 「そうだ」

 「それなら、鉄道貨物駅から出入りするトラックを追えば・・・大体使っている施設の検討は付くかと?」

 「だが数もあり過ぎる!自動操業プラントもほとんどだ・・・」

 「なら交通システムの監視カメラを・・・」

 「それだ!・・・だが何処で見られる?」

 「そこまでは存じ上げません」

 「まいった・・・」

 トラックの運転席で溜息を付く、ダメ元でトラックを追ってみるも、半日費やしてエルムンドドエルに行き着く事が出来なかった。

 「長い間、悪かった」

 「お役に立てず、申し訳ありません」

 トラックが充電切れを迎える為中型交易ドックに戻ってきてヤシマ少尉を解放、別のトラックで一番近い医療センターへ向かった。

 「あーら!ファルマンちゃん!助かっちゃった!ありがとぉ!」

 「ミヴェルマンさん、すまない」

 「船の事は気にしないでぇ!船を沈められるのもよくある話だからぁ!凄くお金掛かるけど新しいのを国に作ってもらえばいいだけだしぃ!」

 「被害はロゼンダ級が大破、ササリッサ級はかすり傷だ」

 「知っているわぁ?ドーベックちゃんが大泣きで謝って来たの・・・あんなの、普通は私兵を従えてても全滅よぉ?それにファルマンちゃんの所の被害の方が大損害じゃない!大丈夫ぅ?」

 「船ならいくらでも直せる・・・ただ、ロゼンダ級の部品はうちの在庫に一切無い、そもそも部品は出る船なのか?」

 「そんなぁ!ファルマンちゃんのお金で直すの!?部品は出るには出るけどぉ・・・自分で直すわぁ?ルーガちゃんも全力を尽くしたいって言っていたけれどお断りしたのぉ・・・それでも外装は無理だけれど、破壊されたエンジンを換装して最低限走らせるようにするってぇ・・・セブンススターエンジンなんて民間にもまだ出回ってない超お高い軍用エンジン、付けなくても良いのにぃ!なんでファルマンちゃんの所に皇国軍の最新鋭巡洋艦クラスのエンジンが複数在庫してあるのぉ?お姉さん、ネドリー運輸が怖いよぉ!」

 「それは恐らくサラマンダー級の予備部品だ・・・だが、その・・・椅子の下にあった卵・・・クソトカゲに取られた・・・実験に使うんだと」

 「・・・そう・・・私の希望も・・・ううん、元々希望なんて無かったの・・・私は繁殖用の殿方を必要とする在来種、繫殖用の殿方を皇国軍との戦争で多く失ってからは進化の過程で共存していた次世代種に繁殖は取って代わられた。在来種は滅びる運命なの。せめてもという事で国は私達在来種にロゼンダ級を与えてくれる・・・どうせあの卵も無精卵、ルミナスへ旅立つ時も一緒が良かったんだけれどもぉ・・・うえーん!」

 「本当に・・・すまない」

 「ファルマンちゃんは悪くないよぉ!ファルマンちゃんが船から持ち出してくれていた事が奇跡だよぉ!」

 「・・・ミヴェルマンさんの最後にも・・・参列出来ないな」

 「来て来てぇ!是非来てぇ!命の恩人だもの!その時が来たら銀河中に作ったお友達大勢に見送られたいのぉ!だから絶対に呼ぶからねぇ!」

 「こんな俺も・・・呼んでくれるのか、ミヴェルマンさんは優しいな・・・」

 その時、病室が開いた。

 「司令官殿!失礼致します」

 「パルサー大尉・・・何があった?」

 「当ステーションに在籍する元帝国軍兵のネットワークでエルムンドドエル殿の居場所を特定いたしました」

 「でかした!パルサー大尉!・・・でもなぜそれを?」

 「ヤシマ少尉より相談を受け、緊急の要件の用のようにお見受けしたので急ぎ、行動した次第であります!」

 「助かった、今からあのトカゲの尻尾をもぎ取ってやる!」

 「急ぎ、海兵隊を用意します!」

 「ちょっとちょっとぉ!何か話が物騒だよぉ!?ドエルちゃん殺しちゃダメぇ!」

 病室にミヴェルマンを置いて乗りつけたトラックに乗り込む、ハイウェイに上がるとトラックの車列に加わる、そして着いた施設、海兵隊200人くらいが完璧に包囲した。施設に侵入するなり研究員達に敬礼される、軍人上がりのクセだろう、そして一つの研究室のドアを蹴り開ける。

 「クソトカゲ!ミヴェルマンの卵を返してもらうぞ!」

 「おお、ファルマン!意外と早かったの?一週間もすれば孵化出来るぞ?ミヴェルマンに伝えておいてくれぬかのー?」

 「おいまて!ミヴェルマンさんの同意も無しにマジでやったのか?」

 「やらねば彼女の家系も途切れるぞい?本来は1,000兆クレジットも掛かってなお成功確率は1%以下の手術だよ?在来種の商船乗りでは一生かけても稼ぎ切れない額、それをこの医学研究者の最高峰の私が臨床試験ついでにタダでやってやったのだ、感謝せい!」

 「だからってだな!しくじったらどうするつもりだよ!」

 「なに、元々彼女もそのつもりで私に接触してきている。ズァパリ民国の商船船長はこの研究室目当てで薬草から何まで破格の赤字金額で売りつけ関係を築こうとしている、その願いを叶える為にこの建物は存在しているのだ!素晴らしいと思わない?それに同意も何も、あちらもその気なのだよ?気にしない!それにしてもファルマン!君の遺伝子構造はとても単純で堅牢だ!客が付いたらまた材料提供を頼む!もちろん次からは提供料を払おう!3,000万クレジットでどうかね?」

 「二度とするか!」

 「おねがいおねがい!」

 「それに関してのお願いは聞けん!」

 「ベースとなる遺伝子構造は単純かつ、堅牢でないと成功する可能性は極めて低い、クローンでも駄目なの!だからファルマンが適任!それにここの機械は銀河の中でもここにしか無い!今の所成功率は100%!この調子でズァパリ民国の悩める乙女達を救っちゃおう!もちろん手柄は私の物!だからおねがいおねがい!」

 「・・・もしや、司令官殿、精子ドナーを・・・?」

 「・・・帰るぞ、パルサー大尉!・・・このトカゲに付き合ってられん!」

 「この一連の事件を報告すべく、私が司令官殿を病院までお送りします!」

 研究所を後にする。外に出ればビームライフルを建物に向けていた海兵隊員達が一斉にライフルを降ろし敬礼する。

 「・・・まるで軍隊じゃないか」

 「いえ、元軍隊であります」

 「・・・くそっ、そうだった・・・」

 パルサー大尉の運転で再びミヴェルマンの所へ・・・どう謝罪すべきかずっと考えたが、病室の前まで来ても何も言えない。

 「ドエルちゃんの命は・・・無事?」

 「あのクソトカゲ・・・ミヴェルマンさんの卵を勝手に孵化させようとしてやがった・・・もう遅い、一週間後に孵化するそうだ・・・何から何まで申し訳なかった、賠償金でもなんでも払う!」

 ミヴェルマンに頭を下げる、ミヴェルマンの返事は帰ってこない、少し顔をあげてみれば、泣いていた、ミヴェルマンは見られている事を察したのか、顔を隠す。

 「ううん?怒っている訳じゃ・・・ないのぉ・・・旧世代の私が・・・今の時代に子孫を残せた事が・・・嬉しくてたまらないのぉ・・・もうお船も要らない!でもファルマンちゃんにはとてつもない借りを作ってしまったわねぇ?お姉さん、君の為にも船を乗り続ける!王国の物も頑張って運ぶ!それくらい・・・させてぇ?」

 「良いのか?ここは危険だぞ?」

 「ドエルちゃんの下働きもしなきゃだし、ドーベックちゃんにももう一度チャンスがあっても良いと思うのぉ・・・それに子供は成人を迎えるまではこのステーションで育てなきゃいけない、お姉さんも、このステーション、借りて良いかなぁ?」

 「歓迎しますよ・・・本来、その為にシーモア共和国の税金も投資されているんです・・・ここは・・・今まで税金泥棒だったんですよ、これでシーモア共和国の国民に恨まれずに済む」

 「シーモア共和国の子達はそんな事思う子達じゃないわよぉ?人間族じゃあるまいしぃ!」

 「ともあれ、ミヴェルマンさんがどう言おうとロゼンダ級はうちが責任持って修理させて貰う、時間は掛かると思うが、替えが務まるのならそれまでDG9型巡洋艦を旗艦に使ってくれても構わない、火力と防御力と威圧感は保障する」

 「私がぁ・・・巡洋艦の船長だなんてぇ・・・ファルマンちゃんは何でもしてくれるのねぇ?」

 「ルーガに優先で直させるよう伝えておく、それまではゆっくり怪我を直しててくれ」

 「乗れる日を楽しみに待っているわぁ!」


 それからミヴェルマンさんが動けるようになるまでほぼ大破のER-3000Cの替わりはササリッサ級、エデルゼウス25を旗艦として務めてくれたが、女神様が海賊に襲われたニュースはフルジア王国全土を震撼させた。王国軍の信用度と星系警察の無能さ、ネドリー運輸の警備体制を不必要に叩かれたが、エデルゼウス25がササリッサ級10隻を引き連れてくる姿で多少のネドリー運輸叩きは収束を迎えた。しかし特に無関係だった王国軍はそれでもなお護衛をしようとしない、いや、正確には付く事が出来ない、なぜならフルジア王国軍の艦隊は30隻くらいの編成の7個艦隊しか存在しないからだ。独断であってもせいぜい巡視ついでや訓練ついでという名目でマスビダ星系内までしか護衛してくれない。リストーン星系から先は完全に元帝国軍頼み、ドーベックも雪辱を晴らす為にセルルド星系から帝国軍の大型艦の残骸を引っ張って来るようになった、おかげで生きてさえ居れば帝国軍索敵艦隊が完成する勢いになっている。

 外にはDG9型巡洋艦の残骸が3隻もある、ミヴェルマンは療養中はよくドッキングベイの廊下の休憩スペースに居る事が多い。自分の部下達であるササリッサ級の心配とドーベック艦隊の兵器集めをひたすら眺める為、この窓から外を見ている事が多かった。

 そして迎えたミヴェルマンの復帰式典・・・と言っても大型交易ドックでDG9型巡洋艦の艦長、オキタ・ミナ大佐と顔合わせ、その実態は帝国軍式の正規の指揮官任命式、ここで軽く行われる。

 DG9型巡洋艦の船員が綺麗に整列して敬礼、ミヴェルマンがいそいそと全員と握手してDG9型巡洋艦に搭乗するのを見届けた・・・さて、俺はER-3000Cの未納貨物をオーエンスでここからオデム=ササラまで運ばないといけない。電車に乗りオーエンスへ、リーサが腕を抱えて待っていた。

 「ミヴェルマンさんがうちの艦隊の司令官・・・ねぇ・・・まぁ、習性的にもまさに女王にふさわしい椅子かしら?」

 「あくまでも、DG9型巡洋艦は代用船だからな?だがロゼンダ級の船員を割り当てる訳にはいかない」

 「あの船の火器担当は並外れた天才だもの、巡洋艦クラスともなれば訓練学校でそこそこちゃんと軍人を目指していた人が割り当てられる、私より上の実力者よ・・・実力だけは・・・だけれども」

 「・・・ズバリそれが理由だ、正当な理由さえあれば元帝国軍軍人は本当に強い、貨物船に乗せるのが勿体なさすぎた、だからそのままオキタ大佐は艦長に繰り上げした、乗員もそのまま残した・・・そう、残した」

 オーエンスは出港・・・ちょっと出ればもう海賊を消し炭にしている。スーパーツァーリー8もスクランブル、無誘導かつ、かなり接近を強いられるデメリットはさておきエネルギー魚雷なので弾薬不足で苦しむ事は無いのが唯一の救い、リーサが操縦コンソールに座らなくとも海賊船団は返り討ちにあう・・・しかもササリッサ級を従える帝国軍の巡洋艦、当たり前だが軍用艦である、しかもリストーン星系専用の無断運用仕様なので未登録のフル装備、当然火力が容赦ない・・・もちろん民間が持つには違法レベルである。違法がゆえにER-1000Bから取り下ろした民間トランスポンダーをポン付けしてあるだけの偽装船でもある。当然他の国のステーションへはドッキング不可の代物、目をつぶってくれるのはシーモア共和国だけだろう、他の国だったら即押収されてしまう。

 「・・・またネドリーか!巡洋艦なんか拾ってきおって!我々の尻尾が無くならないうちにさっさと荷役を済ませやがれ!」

 「ごめんなさいねぇ?この船はアーバン船団商事がネドリー運輸から借りている船なのぉ・・・」

ドサドサドサドサッ・・・管制官達が失神して倒れる音がする。

 「もう運用が可能とは余程良い整備工場を抱えているようだな?」

 「あぁ、同胞よ、そう言えばこれはあの時のアレだったな?」

 「不動船をサルベージしてまで負傷者収容をするとは素晴らしい商人ではあるんだが・・・」

 「ズァパリ民国人が通勤と買い物と旅行以外でロゼンダ級では無い船に乗るなんて聞いた事が無いぞ?」

 管制機能が死んだ宙域で他の商船の船長達がそう会話する、あの時の当事者も居るようだ。 オーエンスは阿吽の呼吸で中型交易ドックを出入りする列に並ぶ。1隻出れば1隻入れる、ここ最近はよく管制官が職務放棄をする、だからもう他も慣れっこ、誰かのせいで・・・そう、俺のせいだ。オーエンスをドッキングすれば居た、マドリニスゾリゾだ。

 「ゾリゾー!」

 「おーうリーサ!今日も元気そうだねぇ」

 ムギュウ・・・まずはハグする。

 「・・・で、ミヴェルマンがあんたの所の巡洋艦を乗り回しているのは一体どういう風の吹き回しだい?」

 「リストーン星系でロゼンダ級が大破の話は?」

 「知ってるよ!大ニュースさ!まさかその代替えとでも言うのかい?エデルゼウス25で良いだろう?今日も管制官は病院送りだ・・・いくらササリッサ級は旗艦が必要とはいえ・・・ちゃんと直して居るんだよねぇ?」

 「勿論だ・・・部品が流石に無くて、うちの海賊船が買いつけに走ってはいるけれども・・・そもそも異星人が部品を買えるかどうかも怪しい」

 「本来、他の種族の整備工場が買い付ける必要は無いからねぇ?でもあの船を直さなきゃミヴェルマンが船を破壊した不届き者を殺すまで銀河を苦しみながらさまよう事になるよ?傷は残るのは多少は仕方ないが最低限動くようにしてやんな!噂じゃ生まれてこなかった次の女王の卵も抱えているそうだからね?しかし、君の軍隊でも歯が立たなかった海賊が居たとは・・・あの星系は怖くて近寄れないね!全く!」

 「それなんだが・・・ミヴェルマンさんの卵はもうしばらくすれば孵化する」

 「卵を抱えていると言う噂は本当だったのかい?でも一体全体何が?」

 「エルムンドドエルが勝手に孵化させようとした」

 「ほう・・・もしかしなくても、遺伝子操作をした交配と特殊な装置で有精卵にでもしたと言うのかね?特に冷凍保存された物に対しては非常に難しい研究とまで言われているが、まぁ・・・彼女なら確かにやってやれなくない、なぜならその研究の第一人者でもあるからだ。彼女は本当に色々手を付けている、新薬の研究とか些細なもんさ・・・それじゃ、ミヴェルマンもロゼンダ級にこだわる必要も無いのか・・・私ら商船友達も一安心だよ」

 マドリニスゾリゾは一安心したかのように胸を撫でおろす。

 「まぁ、巡洋艦を入れて目をつぶってくれるのは共和国だけなんだけれどな」

 「・・・君の所だけなんだぞ?エルムンドドエル博士の身辺警護も本来共和国と王国軍が共同で軍を派遣すべきだが君の私兵に一任している・・・と言うか帝国軍にかね?君の私兵は強すぎる・・・新生帝国軍にでもなるつもりかね?」

 「うーん・・・否定は出来ない」

 「軍拡もほどほどにな?」

 「勝手に増えていくんだ・・・助けて!ゾリゾさん!」

 「うちはまだ私兵を従える規模じゃないよ!他を当たりな!」

 マドリニスゾリゾは逃げるように帝国軍人に囲まれてやってくるミヴェルマンの所まで走っていった、貨物ドローンがサインしろと膝の裏をつついてくる、ER-3000Cの貨物は延滞ペナルティもついて赤字だった。


・ズァパリ民国

居住可能惑星:ズァパリ

昆虫族の大アリ属のズァパリ民国の首都星系、銀河の農場と言われる惑星ズァパリの地表はズァパリ民国人は主に地下に都市を築く為地上に建造物はほぼ無い事から海面を除く地上の60%以上が耕作地となっている。主要な交易品も農産物がほとんどを占める為交易船は大型艦しか無く、日持ちしない貨物でもある為高速性能に優れる。

ズァパリ民国の社会形態は少々特殊で、女性9割男性1割とほぼ女性だけで構成される国で、商船乗りを除くほとんどの仕事は親族経営で成り立つ。労働者も自分で産んで従える他、家の家業は原則必ず継ぐ事となっている。さらに男性の遺伝子を必要とする在来種と突然変異で単独繁殖できるようになった次世代種が共存しており、在来種は数を減らしつつある。シロアリ属とも共存はしているが遺伝子的にもほぼ別の種族である。

人類との交易品のやり取りはシーモア共和国を仲介する為直接的な貿易が無いが、ファランス領で地産地消されていた高原紅茶とティーカップは人類の間でブランド品の地位を築き上げた。

主なコロニー

衛星軌道修理ドックなど小規模な工業プラットフォームが複数

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