されど銀河は広大なり
銀河は果てしなく広い、そして様々な生命体が今も何処かで暮らしている。
ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー
・コッペリアⅥ戦艦、トキオⅣ巡洋艦 、レオノーラⅦ駆逐艦
エステナ帝国アマリ工業製の主力戦闘艦、運用するエステナ帝国人によって様々なサブタイプが存在する。
オヴィルツィッヒ帝国時代は消耗の激しい遊撃用の戦闘艦で、アズランド新生帝国軍における皇国艦のような運用を前提とした設計をしており、装甲を薄くする事で高速性能に特化させていた。
人類の軍用艦としてはもっとも被弾に弱い傾向にある。
・スカニアⅧ多目的支援艦
エステナ帝国アマリ工業製の大型輸送艦、オヴィルツィッヒ帝国時代はスペースクルーザー製のC070装甲輸送艦ベースの強襲揚陸艦だった。
強襲揚陸作戦用ではあったが輸送艦ベースの為、様々な貨物を搭載する事が可能な事や運用はクローンを用いた物であった為、囮として使用する場面や危険度の高い補給作戦にも用いられた。
「・・・悪いな、定年退職は無さそうだ」
「何をおっしゃいましょう、戦場こそ軍人の生きる場所でございます・・・それより陛下もバーボン星系にお戻りになられては?」
「元はと言えばマーズラ星系へのジャンプゲートを直すよう指示したのはこの俺だ、ドロイド艦隊を起こした件についてはフルジア王国が責任を持ってくれたが、そもそも責任と言う責任すら発生しなかった・・・だが、後始末は必要だ」
「全く不本意でありますが・・・そして十分後始末にも尽くして来たつもりではありましたが・・・」
「まぁ、実際問題アズランド新生帝国は俺の国じゃない、エルゼが統治する実質アグランダー王国だ・・・別に俺が居なくたって国は回る、何事も無く・・・それにマーズラ星系へのジャンプゲートを落とした所で人類は永久孤立する訳でもない、遠くはなったが最も一番近い種族が爬虫類族から昆虫族と獣人族に変わるだけ・・・いや、最も近いのは魚人族か・・・忘れてた」
「・・・エルゼ殿はどのように?」
「サシリアに預けてある・・・と言うよりそもそも今の戦局すら知らない・・・さて、そろそろ始めよう、マーズラ星系へのジャンプゲートは予定通り今すぐ遮断する、リストーン星系の民間人はネドリー運輸がフルジア王国まで輸送するよう手配してあるんだが、現時点でリストーン星系に居る艦船数では勿論数も足りない、そこでメソポタニア級フリーゲートと司令船改造を施してあるエンデラー級戦艦をネドリー運輸に貸し出す。フルジア王国には難民受け入れ要請をしていないが、ダリアになんとかしてもらうよう頼んであるからたぶん対応してくれるだろう」
「多少、戦力が減るのは仕方がない事ではありますが、損傷を受けてもひと月は耐えられる程の在庫品はございます」
「そうだな?ひとまず我が国の造船業者がリストーン星系にこれでもかと大量の帝国向け艦艇を保管してくれている・・・まあ、受け取り拒否されていた在庫品でもある・・・ここからは籠城戦だ、リストーン星系で全てを終わらせる」
カトロニコフ元帥が腕を組ながらジャンプゲートを飛んできた通常型のロゼンダ級貨物船を横目に見る・・・これらには新生帝国軍が2カ月は籠城戦が出来るだけの食料医療品が搭載されている。ツェルナには申し訳ないがこの貨物をこの時の為に建築している防衛要塞とエルーラの造船工場に運んでもらった後、一般人をフルジア王国まで引き上げて貰う。長距離を高速で飛ぶにはやはりロゼンダ級、ササリッサ級が適任、勿論皇帝陛下コレクション籍の約600隻、急にかなりの数を動かし過ぎている為、船員不足で大気圏突入をするには一旦船員の移動をしないと出来ない始末・・・だが緊急事態だ、やってもらう。
大量のズァパリ民国艦が飛んできた後にヴァルカンが飛んでくる。
「よう、俺だ、ジャンプゲートの電源落としに来たぜ?・・・もう後戻りは出来ないが良いか?」
「やってくれ」
「了解・・・ビックになった奴は大体星系を出ていくってもんだ」
「アンタは向こうに残っても良かったんだぞ?」
「俺だって後方支援の責任者だ・・・それに、コイツを直しちまったのも俺だぜ?忘れたとは言わせないぞ?」
ヴァルカンはそう言う通信を放ちながらジャンプゲートの横に移動していく、整備士達がジャンプゲートの電源を落とした、エンジンのアフターファイヤのような亜空間エネルギーを派手に放ちながらジャンプゲートは機能を停止していく・・・もう後戻りは出来ないと言う事だ。
その後ロゼンダ級の護衛をしながら建設終盤の防衛要塞にドッキングする・・・今回はRB26迫撃戦艦等も全部用意してある・・・と言うより大きすぎて通れる場所が無かったのでリストーン星系にずっと保管していた物・・・この時の為にここに置いていたと言っても過言では無い・・・しかし今回RB26迫撃戦艦はあまり役に立たないかもしれない。
・・・と言うのも・・・。
この防衛要塞、LRB超新星砲を30基も備えるアホ要塞なのだ・・・エネルギー問題?ステーションはジャンプゲートを通る事を考えなくても良い。いかに規格に収まるようにジェネレーターを配置するかすら考える必要も無い、よって中古ジェネレーターをこれでもかと無駄使いし、30分のリチャージを3分まで短縮するという正気の無さを実現している。
・・・だが、我々が相手にすべき敵はこれをもってしてもどうにもできない事だろう。
作りかけの司令部に行けば、既に新生帝国軍は大損害状態、セルルド星系は数の暴力により一瞬でドロイド艦隊の手に落ちた。オロラ星系に結構昔からあるメソポタニア級爆弾が時間稼ぎをしているもののもう間もなく突破される・・・ひとまず出てきてもやる事は星系内で塵尻にならないようにする事・・・そこから一週間の地獄が始まった。
一応、やろうと思えば半年以上は籠城出来る。
マスビダ星系側の工場群は完全体、なんならオロラ星系側のステーションも一旦退避しておいてあり、リストーン星系の工業力は未だ完全体でもある。おまけにリストーン星系に住んでいる人口のほとんどは元オヴィルツィッヒ帝国軍人か元フルジア王国民、戦時徴兵をしたつもりは無いが玉砕覚悟でこれらの工場をフル稼働させてくれているとかいう素晴らしき愛国心・・・元帝国軍人の戦線復帰も多く、想定以上に前線の火力は安定している・・・が、せっかく綺麗にした海賊の食卓が元通りだ、しかもほとんど皇国軍の最新鋭フリーゲート・・・まぁフリーゲートであれば巡洋艦以上の敵では無いのだが相変わらずの数・・・そして最新鋭にしてしまった張本人も損傷艦の修理でヒーヒー言っている始末・・・これが落とし前と言う訳だ。
正直リストーン星系に残った指揮官勢もいつものベテラン揃い、若い指揮官は実はオキタ大将とリーサしか居ない。リユン元帥はそもそも艦隊を持っていないのでここに来る事が無いし、スギヤマ大将にはゲート遮断後の混乱鎮圧任務を一応任せてある。とは言っても向こう側は対して混乱も起きないだろう。そもそもアズランド新生帝国の経済はほぼ自己完結型、輸出入も無い訳では無いが、最近はほぼ輸出入が出来ない上に、最悪無くなっても良い様に今までインフラ整備を進めてきてある。エルゼには何も頼んでいないが、サシリアやダリアなどの異星人にフォローを頼んである・・・ファーレンヒやカルデナにもルーガ経由で話が行った事だろう・・・最悪ローラとL87を置いてきているのでこの2人がなんとかしてくれるはずでもある。
・・・しかし、終わりの無い戦いは辛すぎる。
もとより玉砕覚悟のこの戦闘、当たり前だが終わりが無い、一旦の終わりとして防衛要塞までの直通トンネルを作る事・・・トンネルが出来てしまえば後はRB26迫撃戦艦300隻分の大火力が待っている・・・だが問題がまだある・・・圧倒的な火力で攻撃してしまえば残骸が壁になってしまう事だ。一応解決策は用意してあるが正直上手くいく気もしない。その解決策と言うのはアウロラ星系以降で使用しているメソポタニア級残骸排除艦である。勿論向こうから持ち込んだ訳じゃない、同じ物をリストーン星系で作った。後はこれでコインプッシャーのように横から残骸清掃を入れつつ高火力をぶつけていくしかない・・・しかも向こうでの使い方と比べても極めてハード、被弾して残骸になり得る可能性もある。
「そういやボス、なんかおかしくね?」
「・・・何がだ?」
「昨日に比べて明らかにドロイド艦隊の流入量が減っている」
「・・・減っている・・・のか?」
相変わらず司令部の中央管制卓に座って居るU-6が言っている事に疑問を持つが、レーダーの表示量は正直アテになっていない、だが体感で若干少ないようにも感じる。
「言われてみれば、確かに今日は少ない気もします」
ドーベックがそう言いながら中央管制卓にもたれかかる。
「・・・そういえば、この辺のゲート、そこまで物量裁けないゲートじゃなかったかしら?」
リーサにそう言われてみれば確かに・・・ジャンプゲートにも種類があり、幹線航路用のダブルゲートとそうでない用シングルゲートがある、違いと言えば一度に転送出来る船舶の数が倍以上違う事と施工費用、後は建造年代にも由来するが特にこの辺のゲートはノーメンテナンスに近いくらい設置されてほぼ放置のゲートが多い、こういったジャンプゲートは損耗もそこまで高くは無いのでロングライフ設計のジャンプゲートが設置される。対して幹線航路用は物量に特化している分寿命が短め、その為機能を維持しつつ部品交換を行えるような二重設計になっている。この事から幹線航路用はダブルゲートとも呼ばれる。施工費用も勿論シングルゲートの2倍以上、幹線航路上の交通量の多い国の経済レベルでないと維持も出来ない代物である。
「・・・つまり、ゲートのセーフティが効いてると」
「可能性は・・・こうなって来ると余裕はある程度・・・でも全て片付けるのに掛かる月日もそれなりに・・・」
「それも悩ましい・・・」
結局いくら話し合った所で終わりを来るのをただひたすらに待つのみ、そこからさらに2週間も経てば司令部もほぼ全員無言、淡々とドロイド艦隊を残骸にする・・・だが状況が変わったのだ。
「・・・おっ、ついに来たじゃん、親玉」
U-6はセルルド星系での定時偵察結果を渡してくる・・・これを壊せば終わりと言う訳である。
「・・・ようやくカーディナルとご対面・・・ってか?」
もう皆疲れている。特に疲れた様子を見せていないのはU-6やCAF姉妹などのエステナ帝国人である。
「・・・これが・・・しかし、偵察結果の直径・・・少し間違っているような気がしますな?」
どれどれ?とカトロニコフとワトソン元帥がU-6からタブレット端末を受け取る。直径約160km・・・確かにコロニーより遥かに小さいが、これがジャンプゲートを潜れる最大サイズより10kmも超過している・・・そこまで誤差が出るなど考えにくいが、定期的に観測していてもオロラ星系へのジャンプゲート付近まで来た後、ロックベルト星系へのジャンプゲートを空潜りしている。勿論電源が切れている為飛ぶ事は無いのだが、その後もロックベルト星系へのジャンプゲート付近を漂ってもいる・・・そして変な所でここまで大損害を叩き出せた優秀さを発揮する事となる。
「・・・チッ・・・なるほどねぇ・・・あえて止めておいたジャンプゲートの先の国まで食いつぶされた理由はこれか」
U-6が今日の報告を片手にボソボソ何か言っている、CAF姉妹も、あっ、そういうこと?と言っている。
「どういう事だ?」
「ジャンプゲートを止める作戦、実はボスの国が初めてじゃない、獣人族連合で幾度となく実施された、これ以上被害が拡大しない為にも・・・」
「でもさー?あーしら、ツメが甘かったんだよね・・・後で復旧出来るようにケーブル抜いたり、電源オフにしただけだったり、電源だけ破壊してみたり・・・でも全部突破されているし、どうして突破されたか偵察する頃にはもう前線の国は滅亡しちゃってたり・・・」
「今詳細が分かった・・・アイツらゲート復旧プロセスも持っていやがる」
U-6がしてやられたと言う顔でツメを噛む。
「待て待て・・・?なんでゲート直せるんだ?直せるならアウロラ星系・・・あっ・・・」
・・・そう言えば、アウロラ星系のジャンプゲートが開いたのはいつ頃だ?確かドロイド艦隊の建築ドローンをアップデートした辺りからである・・・だが時系列的にもおかしい、アップデート前に既に漏れている。
「カトロニコフ!至急ルーガにドロイド艦隊の建築ドローンのプログラム更新の配布履歴について調べさせろ!」
「かしこまりました」
カトロニコフはそう言って指令部から出ていく、その間にロックベルト星系へ飛んでしまったカーディナルを撃破する方法を考える事にする。
「ひとまずは・・・いつものごとくRB26迫撃戦艦は使えない・・・まぁ、カーディナル相手なら過剰過ぎる火力だ、使わなくても良いだろう」
「・・・そもそもあの巨体がセルルド星系まで飛べる状況じゃないもの」
「少々・・・残骸が多すぎますねぇ・・・」
リーサとワトソンもそう言いながらまたか・・・と言う顔をする。人類が誇る最後の希望、今回も使わずじまいと言う訳だ。
「・・・では、戦闘艦のみで近づく他ありませんが・・・速くて硬い船はステラー王国製の船に限られます」
「セレストスピアー級のみだな?オキタ、リーサ艦隊の分合わせても約300隻、そのうち動けるのが僅か30隻・・・使い勝手が良いからその分被弾も多い・・・ほとんど修理だったはず・・・」
「そうね、私の配下で10隻、オキタ艦隊はまだほとんど許容範囲で済んでいるはず」
「我々は出来る限り道中の敵を排除いたしましょう」
「あのさ、ボス、出来ればそのカーディナル、生かしておきたい」
そこでU-6がそんな事を言い出す。
「U-6!・・・貴様!もう帝国滅亡とかそんなのに付き合ってる余裕は無い!人間族だけなら別に良いけど爬虫類族も滅亡の危機なのよ!」
そこでリーサがU-6の胸倉を掴む・・・だがU-6は全く動じない。
「・・・ここに、ゾイテック共和国、ベルンマガン連邦国、エリラ首長国連邦が用意したウイルスがある」
辺りが静まり返る・・・U-6はUSBメモリを投げつけてきた・・・相変わらずの骨董品、使うにはエステナ帝国製品が必須だが、U-6が言っているこの3カ国は全て巨人族を挟んだ向こう側の国々であり、エズ・儀・Bレ帝国と隣接する国家である・・・主に寄生生命体や粒子生命体などと言った、人間的に見ればちょっと近寄りがたいイメージの種族だが肩書きに縛られる無かれ、意外と普通に対話出来る種族である。
「・・・これはどうした・・・?」
「確かにポンコツからのデータ抽出には失敗した・・・でも母艦が持ってた、それだけ」
「それだけって・・・・何処にどうすれば良いのよ!?」
「カーディナルとやらにインストールすれば良い」
「たぶん、止まるか・・・権限掌握出来る・・・もしくは自爆させられるって事だな?」
「恐らくそうだ・・・そしてたぶん、あのポンコツは外交官じゃない、カーディナルにこれをインストールさせる為の工作艦だったのかもしれない・・・途中で壊れたのかもな?」
「・・・つまり・・・私がやらかしたって?」
「・・・それはどうだか・・・でも私ならこれをインストールさせられる」
「・・・U-6・・・お前一人でか?」
「ボスぅー?私らそもそもなんだっけ?」
「・・・分かった分かった・・・カーディナルに突っ込めば良いんだろ?」
とりあえずU-6をリーサから解放する。CAF姉妹は自動的についてきた、リーサもついてくる。
「皆で、落とし前を付けに行くぞ・・・」
「全く不本意だけど」
気が付けばオーエンスと同じ構成メンバー、ヤシマ大佐とパルサー大佐も居るユリアスの艦橋・・・別に一般量産艦でも良いのでは?とは言うが、実はユリアス、試作システムや兵器、そしてエンジンテストベッド用の試験艦にされている事も多いのでセレストスピアー級の中で最も魔改造の多い高機動かつ、高速な船となっている。
・・・これであればドロイド艦隊まみれのオロラ星系、セルルド星系を単艦でなら突っ切れる、そして極めつけにズァパリ民国由来の硬さ、確かにロゼンダ級ほど硬くは無いがそれ相応の耐久力があるはずだ。カトロニコフとドーベックにも揺動をしてもらうのでリストーン星系から出るのはそこまで難では無いはず・・・ワトソンは居残りでリストーン星系でひたすらドロイド艦隊を迎え撃ってもらう。
「リーサ、出してくれ」
「了解」
ユリアスはリーサの操縦でロックベルト星系を目指した。
・・・あー・・・結局ルーガに責任は無かった訳か。
セルルド星系に入った後、ルーガに調べさせた件の回答が来た・・・どうやら自動でギャラクシーネットワークに再接続されていたらしく、自動更新がある程度勝手に行われていたようだ。おおよそ50年前の累積更新プログラムにゲート関連の修復プロセスの機能実装が含まれていたらしく、その後ルーガが最新の更新プログラムを入れてしまったようだ・・・つまり遅かれ早かれ、ドロイド艦隊の艦艇はいずれにせよ最新型に切り替わってしまうという事だった。
「カンザキ、セルーナ隊からの近接偵察結果が届きました、今そちらに送ります。確認した所、側面の造船ドックなど接岸可能な箇所は多くございます・・・そしておそらくオゾンシールド付きかと思われます、なぜ酸素供給機能があるのかは不明確ですが、接岸可能な箇所を選べば生身での行動も可能かと」
「ワトソン、助かる・・・」
流石元帝国軍パイロットと言うべきか、偵察機隊は艦船に肉薄して偵察を強行する最もリスクの高い偵察任務をこなして見せたが、カンザキ機が犠牲になった・・・この情報は無駄に出来ない。
「やはり造船ドックが一番って訳だな、全部中身があるが・・・もうこの船はどうなっても良い、派手にぶち込んでくれ」
「でも新生帝国軍で最も最上位の軍艦・・・」
「リーサ?俺らの船はどうやって出来ているんだっけ?」
「・・・そうだった、じゃあ派手にやらせてもらうわよ、後で文句言っても知らないから」
「俺からは何もいう事は無いさ、ルーガがなんていうか次第かな?」
船なんて作ればいくらでもある・・・新参者のぺーぺー国家が銀河指折りの大国レベルの軍事力を有している背景にはいつだってスクラップがある・・・全てはスクラップに始まりスクラップに尽きるのだ・・・このスクラップと言う名の資源はエマンクリシット皇国が抱える資源星系の40倍の資源量に相当する・・・そしてなおも増加中と言う訳だ。この戦いに勝とうが負けようが、アズランド新生帝国はこの膨大なスクラップ資源だけでも膨大な外貨を稼げる・・・正真正銘の大国にもなれるのだ。
リーサはハイパードライブ航行のままユリアスを強引にロックベルト星系のジャンプゲートに投げ込む、もう船体をドロイド艦隊に擦ろうがお構いなし・・・何故ならフルジア王国はスペースデプリに擦っても操船免許を取得できるからだ・・・それは関係ないか。
ロックベルト星系ではオデム=ササラ国営ステーションがハチの巣になっている。惑星ヴァルチャーも衛星爆撃に晒されている最中だ。
「・・・あんまりチンタラやっていられない・・・じゃない!」
リーサはスロットルレバーを殴る・・・しかし既に全力運転、もうエンジンが温度がオーバーヒートしていてヤバイ・・・だってオロラ星系からずっとフルブーストハイパードライブ航行だ、何でこのままでロックベルト星系まで来れちゃったのか不思議でならない程に酷使している、だがもう限界だ。一発死んだ音がした。3番エンジンだ、船体のバランスが崩れ右に曲がり始める・・・続けざまに2番・・・カーディナルは目の前だがあと一発で持つか?
「1番エンジン停止!ユリアス航行不能!」
ヤシマ大佐がそう叫ぶ。
「このまま行く!全員耐衝撃態勢用意!」
ユリアスは崩れたバランスを立て直ししきれずバレルロールを描きながら建造中のストーム級フリーゲート目掛けて突っ込む。タダでは済んでないような音と共に強烈な衝撃が全員を襲った。
「・・・ててて、流石はリーサ・・・と言いたい所だが・・・」
「流石ボス」
U-6に引き起こされる。CAF姉妹も無事だがリーサ、ヤシマ大佐、パルサー大佐など、あらゆる人間は問答無用で気絶している。
「なんでアンタらはあれで平気なんだ・・・」
「あーしら、何だっけ?」
CAF-78はニヤニヤしながら自身を指さしている・・・そんな二人、大鎌を既に装備していた。何処に隠し持っていた?と言いたいが、この大きさで実は折り畳み式、普段は腰に装備してある。CAF-79は片足ナノドローンボックス未装着・・・と言う事はクソトカゲにばらされて直せなくなったのはCAF-79のナノドローンボックスという事だ。そんなナノドローンボックスの替わりにローラがいつも太ももに付けているビーム拳銃用のホルスターが装備されていた。
「ほれ、ボス」
「銃撃は得意じゃないんだが?」
U-6は何故か火器管制卓の下に落ちていた帝国軍のビームライフルを押し付けてきた・・・このビームライフルは新生帝国なら基本机の周りに置いてる物だ、別に驚く事も無い・・・何故あるのかも相変わらず不明なのであるが・・・。
「心配するな、我々が守る」
U-6はそう言った、それでCAF姉妹にもスイッチが入ったか、目が赤く光っているようにも見えてくる。
搭乗口に向かえば外はバトルドロイドでひしめいている。
「ねぇ~♡ボスぅ~?全部ヤッていい?」
「・・・お好きにどうぞ・・・?」
CAF-79は大鎌に足を絡めて顔を真っ赤にしている。CAF-78もよだれをダラダラ垂らしてなんともみっともない・・・せっかくの美人顔が台無しだ。良しと言ったので二人は目にも止まらぬ速さで飛びあがり盛大な一撃を食らわす、そして金属部品がどんどん散らかっていく・・・これがCAFシリーズの真骨頂・・・一騎当千の血しぶきの女王・・・ゴスロリ系の衣装がこの上なく似合う、全てに置いて完璧な作品とも言える・・・あいにく飛び散っているのは部品と機械油なのだがこれがエステナ帝国人の真の実力だ。戦場でこそ彼らはまばゆく光る・・・決して机の上で飼うペットや実験動物では無いのだ。
対してU-6、性能は控えめと言えばそうでもない。基本はシールダーだがCAF姉妹とは異なりいつもは基本外している腰の装備、U-6も今回は装備している。U-6の場合、タクティカルSMGが収まっているのだが弾薬が入手困難である事やバトルドロイド相手では豆鉄砲と言う諸問題があった。そこで元帝国軍の物だったはずの人間族のベストセラー、いつものビームライフルと言う訳である。U-6はそれを2丁持ちして防御を固めつつも火力を出していく、バッテリーパックの装填もいちいちかっこいい・・・どんな任務にも柔軟に対応出来るU-6もまた作品としてかなりの完成度・・・だが、空気を読まないバトルドロイド・・・あまりにも多すぎでは?
最初は威勢の良かったCAF姉妹も、U-6も・・・そしてビームライフルのバッテリーパックもどんどん押し戻されていく。新生帝国軍の海兵隊も加勢してはくれるがこれは攻略が厳しい・・・もう戦いを始めて30分も経過している・・・事実上の失敗である。
「このままじゃ誰もたどり着けないじゃない!」
「・・・あぁ、CAF姉妹の損耗が激しすぎる」
・・・だが、何が出来る?代替えルートはユリアスを伝って一度宇宙に出る他無い・・・だが出た所でどうする?ドロイド艦隊が作り過ぎてしまったバトルドロイドを結局始末しなきゃいけない・・・じゃあユリアスの艦砲射撃・・・この場で撃ったらカーディナルごと吹き飛ぶから没だ・・・さぁ・・・どうする?CAF姉妹も流石にこのままじゃ死ぬ!
そんな時、ユリアスが突っ込んだ造船設備の隣に一隻の貨物船が突っ込んできた。カーディナル全体が大きく揺れる。
「・・・は・・・あぁ?ロゼンダ級!?なんでこんな所に?」
流石にリーサも、ヤシマ大佐もパルサー大佐も口を大きく開ける事しかできない・・・だがロゼンダ級が突っ込んで来る事自体おかしい、そもそもズァパリ民国籍の商船はアズランド新生帝国に全て引き上げてしまっている、シーモア共和国周辺で活動している可能性も無い訳では無いが、いくら強烈な硬さのズァパリ民国艦とて、ステーションその物を体当たりで破壊するのは無理にも程がある・・・何処の馬鹿娘かと思えば、どうせ医学的に繋がりの無い我が娘である。
「海兵!お届けぇ!」
「ツェルナ!ピザの宅配のごとく銀河最高級の貨物船で突っ込んで来るな!」
バカ娘にそう怒鳴った瞬間、さらにカーディナルが揺れる・・・1発、2発・・・ユリアスのさらに隣には白い船体のロゼンダ級巡洋艦・・・ちょっとまて・・・これはバーボン星系にあるはずだろう?
ロゼンダ級巡洋艦からはエステナ帝国軍人と元帝国軍クローン兵が一斉に降りてくる。戦局が大逆転した。盛大に吹き飛びまくるバトルドロイド、映画のワンシーンかのように華麗に爆発するバトルドロイドの間から現れた白髪ロン毛の右腕怪物のイケメンがCAF-78を担ぎ、CAF-79を引きずって優雅に歩いてきた。その隣には片手をポケットに突っ込みながらビームライフルを乱射しているXF-38、どっしどっし重そうな足取りで人間には到底不可能な弾幕火力を叩き出すPF-678が後に控える・・・コイツらは何処の国のイケメンか?そして何処の国の指金か?
「・・・陸戦であれば我々を呼んでいただければ秒で蹴散らしてやれますのに」
L87が溜息をつきながらCAF-78をべチャッとその場に放り投げる、右腕損失で意識は無い。
「これはどういう事だ?」
「まず、我々はあくまでもステラー王国、ズァパリ民国軍が用意した増援部隊となります。フルジア王国軍はワトソン元帥と共にリストーン星系の増援部隊として引き続きドロイド艦隊の掃討に当たっております」
「・・・バーボン星系からどうやって来た?」
「フルジア王国軍にマーズラ星系へのジャンプゲートを復旧して貰ったまでです・・・ひとまずU-6はまだ使えそうなのでこのまま作戦続行を・・・護衛は旧エステナ帝国軍第一師団をお使いください」
「・・・やってくれたな・・・まあいい・・・この場は任せる!リーサ、ヤシマ大佐、パルサー大佐も来い!」
丁度攻撃手段を失って舌打ちしながらビームライフルを放り投げたU-6の腕を掴み、エステナ帝国軍と帝国クローン兵の手によるバトルドロイドの残骸の雨を突き進む、後はヤシマ大佐がタブレット端末片手にカーディナルのコアを探す、一応既存のステーションを魔改造したような物なので内部構造は既に解読されている・・・後は候補ポイントにコアがあるかどうか・・・一番怪しいのは現状かなり改造の手が施されているセンターシャフトである。U-6の元部下もユリアスの海兵とは比にならない戦闘力・・・バトルドロイドが紙風船のように粉々になっていく。
「あった!」
「でもこれはコレでどうなってるんでしょうか?」
コードだらけのサーバールームのような何か、だがかなり広い・・・そしてこういうのは大概真ん中にコアがあると言うのがセオリーである・・・やはりあった。
「ほらよ」
U-6にここまで背負ってきた基盤むき出しの電子戦装備のナノドローンボックスを渡す。今まで付けていた戦闘支援装備のナノドローンボックスを一度外してここで付け替えだ。相変わらず下着丸見えで付け替えするが、もう慣れた。
「準備完了・・・壊れても居ない」
U-6は電子戦ホログラムを展開させる。そして足のナノドローンボックスにUSBメモリーを挿してウイルスをインストールしていく、ナノドローンは中央の古びて埃だらけのドローン艦隊のコアモジュールに強引にアクセスして遂にはインストールが終わる・・・で、何が変わったか・・・戻れば分かる・・・ひとまずバトルドロイドは停止、ドロイド艦隊は惑星ヴァルチャーへの衛星爆撃を辞めていた。
「いっちょ上がり」
その光景を見てU-6は無表情でそうぼやいた。
ユリアスまで戻ればエステナ帝国軍と帝国クローン兵はさっさとロゼンダ級へ撤収、ユリアスはロゼンダ級に引っ張り出されてリストーン星系まで牽引された。
とりあえずリストーン星系まで戻れば、俺はルーガ、シルヴァ、リーリア、そしてエルゼにこっぴどく叱られ、ヤシマ、リーサ、カトロニコフ、ワトソン、ドーベックはバーボン星系で終戦パレード・・・これは今回戦場に出なかった若い指揮官やバーボン星系などに残された新生帝国軍人達の希望だった。
新生帝国は戦争勝利で何処のステーションも大騒ぎ・・・今回の戦闘で全員勲章を与えられた。
セントラルプロムナード型ステーションは気候変化も当たり前、窓の外を見れば、花火が上がっている所もちらほら見受けられる・・・だがここは穏やかな風が窓から入って来るだけ。
「・・・ここは・・・何処だ?」
「よう、英雄、バーボン星系のセントラルプロムナード、カーディナルに突っ込んでたアンタは皇帝旗艦、ユリアスの海兵に運よく救助された・・・これがまず知りたい情報だろ?」
「・・・英雄?」
「そうさ、あの戦いで生き残った者は全員そう言われる・・・だが、アンタは私の英雄でもある」
「・・・そっちも無事で良かったぜ?相棒」
セルーナはベッドに横たわる男にキスをする・・・そして勲章の入った箱を渡した。
ー銀河の常識ー
・ゾイテック共和国
寄生生命体国家で主に有機生命体の体に寄生して経済活動を行っているが、体自体は培養技術により生産している物を使用しており、現時点では余程の緊急時でない限り他種族の体を使う事が無い。
銀河で最も培養技術が発達している国家
・ベルンマガン連邦国
粒子生命体国家、寿命は理論上ほぼ無限と言われる種族であり、惑星ルヴァの自然現象下でのみ稀に生まれる生命体。
電気的な意味でエズ・儀・Bレ帝国人とは相性が良く、ハッキングが最も得意な種族、ゾイテック共和国同様、外装シャシとしてエズ・儀・Bレ帝国人を利用している。
・エリラ首長国連邦
ネバネバネチャネチャしたエイリアン種族、見た目はこの上なく近寄りがたいものの人柄はとても穏やかな種族、統率力に長けておりエマンクリシット皇国が最大のライバルである。




