落とし前
自身が犯した罪にはいずれ必ず責任を取らなければならない。
ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー
・キャリバー型戦艦
ベルドナカンパニー製のシーモア共和国軍主力艦、防御全振りと言える船でエンジンが中腹部にあるのが特徴、とにかく被弾に強く、銀河で最も生存確率の高い戦艦と名高い。
半面、同等クラスの戦艦では重量がとても重く、航行速度ですらFT14型戦艦等の鈍足戦艦に劣るほど、主砲自体も銀河標準レベルの為お世辞と言っても決して強い戦艦とは言えない。
同級は国は国土が守れればそれでよい・・・そう言うコンセプトで生まれた船である。
・ペデルリペオ アヴァルッタ偵察機
リビューイ帝国ペデルリペオ公社製の偵察機、加速力と旋回性能が極端に良い半面、最高速度があまり出ない欠点を持つコーナリングマシン。
超過密人口星系でしか本領を発揮出来ないが唯一の例外として全銀河スペースレーサー選手権では上位を占める筆頭マシンでもある。民間人でも購入可能。
「陛下!大変です!」
「小型機で済む範囲で頼む」
執務室・・・は修理中なので格納庫の適当な部屋、チープな会議テーブルと折り畳みの椅子しか無い何ともアズランド新生帝国皇帝が居るべきでは無いような部屋にリユン元帥がいつものごとく駆け込んで来る。
「未知の生命体の船が・・・ロックベルト星系に現れました!」
「・・・どんな?」
「はっ!詳細を申し上げますと、巨大生物のような船と岩のような船、少々気味の悪い船など・・・」
「あー・・・たぶん巨人族の向こう側の国々なんじゃ・・・でもまたなんで・・・?」
「それと、しばらく機能を停止していたドロイド艦隊が軒並みエマンクリシット皇国領に向かって再び動き始めました!」
「むしろそっちがヤベーじゃねーか!」
慌てて立ち上がった・・・所でパイプ椅子が安っぽい音を立てながら転がるだけ、正直新生帝国軍、ドロイド艦隊を止めはしたが、ほぼ壊滅状態、動ける艦艇は元ドロイド艦隊のメソポタニア級やストーム級・・・ドロイド艦隊にそれをぶつけた所でもう結果は見えてる・・・数で負ける。
・・・じゃあ一緒にまた戦ってくれる国はあるか?
答えは無理・・・何故なら知り合いの国の軍隊も虫の息だからだ。それだったらまだ新生帝国軍の方が使える艦艇を多く保有している・・・結局シーモア共和国は宇宙軍全滅、使える軍艦は補給艦くらいしか無い始末、フルジア王国軍とステラー王国軍も同様・・・動きはするが修理ドックで修理待ちの大渋滞、これらの船は新生帝国の修理ドックも使っているのでもうどうしようもない・・・ズァパリ民国とラクトパレト王国も向こう側で大損害を出している・・・大損害を出してまでカーディナルの動向偵察をしてくれてもいた。
じゃあ我らが人類の親玉国家、オヴィルツィッヒ帝国は?
こっちはこっちで船だけ余り散らかしており、肝心の軍人が全滅・・・もう残す所太陽系のみ、しかし完全に落ちる事は無いだろう、残党皇国軍も虫の息だからだ・・・ギリギリ勝てはするはずだがそこから新生帝国に流れ込んでいる難民を引き取る事まで出来るのだろうか?恐らく国としてももう成り立っていないはず・・・であれば、もう新生帝国がある程度侵略された星系を奪還しなければならないだろう・・・正直皇国軍がトドメを刺しに来ればもれなくこの辺の近隣国家は全部掌握出来る・・・。
ひとまずは動向偵察と言う訳だが、その前に実質終日通行止め状態のオロラ星系のジャンプゲートからなんと民間船が3隻入って来たらしい、しかもシーモア共和国軍と言い張っている・・・ひとまずは出迎えなきゃいけないので使える船をまず探しに行かなければいけない・・・プリズムライオット12でも良いがもっとマシな船は無いかルーガに電話した所、ローズプリンセスかラペル・プリムナードを適当にもってけよと言われた。ちなみにこの2隻はシンのデモンストレーション艦扱いになっていたり、ユーリアスその他の試験部品のテストベットになっていたり、シルバーロッドの競売場のポスターに使われてたり、登記上の持ち主は受付嬢と酒場の店員だったりとイマイチ何処の持ち物かパッとしない2隻であるし、一応特別仕様だし、そもそも固定乗員が居ないしで戦闘面において一切使われない船であるが、これならそれなりのメンツを確保しつつ対等な外交が出来ると言う物・・・登録から国籍マークまで未だに帝国籍だけれどな?
そうこうしていたら全体的に煤だらけでオヴィルツィッヒ帝国旗艦特有の金装飾はくすみ過ぎて鈍く輝いてすら居ない・・・そんなだいぶ汚いラペル・プリムナードとローズプリンセスが入港してきた。なんでこんなに汚いかって?・・・だって基本民間の停泊区域に係留しっぱなしだもの、宇宙に漂う塵もそりゃ積る・・・船は走らせてこそ船である。
「・・・ねぇ?私酒場の店員なんだけど?」
「・・・と、言いつつわたくしのお願いを聞いてくださるではありませんか?全く、可愛い妹です事」
ラペル・プリムナードからは急に船の操縦をさせられたカルデナ、ローズプリンセスからはファーレンヒとユーノドア元帥が降りてきた、ファーレンヒとユーノドア元帥はラペル・プリムナードに乗り移っていく・・・要するにローズプリンセスを使えと言う事だろう・・・流石のシルバーロッドもあまりの物量に整備場が崩壊しきっている為配達に割ける人員すら居ないと言う人手不足と言う訳だ、だから受付嬢ともはやシルバーロッドとは関係ない酒場のウエイトレスがこうして公共の係留区域から船を持ってくると言う訳である。
・・・当然、そうだよなぁ?
中も埃っぽい空気、どうやらエステナ帝国人もくしゃみをするらしい、U-6がくしゅっとくしゃみをする。本当に久しく動かしてない感満載の船だが、乗せるべき要人は既に民間の受付嬢に成り下がってしまった・・・流石に外交となればアズランド新生帝国の顔であるエルゼも乗る必要がある。
「ボスは単身で運転手も無しなのにボスの嫁はすげーな?」
U-6と同じく腕を組ながら待っていれば警察特殊部隊の黒いSUVに囲まれた防弾仕様のリムジンがやって来た。そう言えば確かにU-6の言う通り、俺はエルーラの三流ミニバンを基本一人で乗り回している・・・まあそれが出来る程政治の表に居ないと言う事だ。
・・・で、乗員と言えば海兵くらいしかいないローズプリンセス、一応外にはラペル・プリムナードも待機して居る、ヴィゼルバード級戦艦はたぶんサシリア・・・いくらズァパリ民国製の船は硬いとは言え、ステーションへの正面衝突では流石にタダで済む訳が無い、その上道中も被弾ししてもいる。同様に海兵をダイナミック宅配したロゼンダ級やササリッサ級貨物船にも同じ事が言える。そしてこれら、実は全てアーバン船団商事の物・・・確かにバーボン星系にある数ある船の中でサシリアとツェルナの独断で動かせる船はサシリアの護衛扱いのズァパリ民国軍の分隊とロゼンダ級巡洋艦、そしてファランス領府が買収したアーバン船団商事である・・・そもそも特攻もヴィゼルバード級戦艦で良かったのでは?と思う所があるが、なぜ貨物船が使われたのかは強襲揚陸は戦艦よりも巨大な荷室空間と荷役用の大きな貨物ドアを備える貨物船の方が向いていると言う、まぁごもっともな理由だったらしい・・・ミヴェルマンのロゼンダ級は流石に今度こそ無理なのではとも思うのだが、ミヴェルマンのロゼンダ級がその後どうなったかについてサシリアに尋ねたら、「用途を失った棺桶はただの船なのです、ただの船であればいくらでも作れば良いのです」と、意味の分からない事を言われた・・・とはいえズァパリ民国の船はそう簡単に作れる代物でもない、ミヴェルマンは特に何も気にしていなかったっけ・・・まあ替わりも確かにいくらでもあるのだが・・・。
「・・・まぁ、揃いも揃って何処もそれっぽく見えるようにかき集めただけか・・・」
「皇帝陛下!!私も必要な訳!?勝戦ムードで今店が忙しいんですけど!!」
「カルデナ?たまには船の操縦も必要ですよ?ジーナさんも子育てが忙しいのですからお店の仕入れもしなければなりません・・・ねぇ?ユーノドア元帥?」
「おねぇさまぁー!!どうせ張りぼて軍隊でしょ?つかこの男に操縦させなさいよ!」
「一応、こちらの船はあなたの旗艦だった船ですのよ?それに今回は戦いに行く訳でもございませんので造作もない事でしょう?・・・まぁ、オヴィルツィッヒ帝国代表扱いはされるかも知れませんのでそれ相応の対応も心がける事です」
「・・・えっ・・・この服装で外交しなきゃならないの!?クソ親父の国の為に?てかもうくたばってるでしょ!!」
ラペル・プリムナードは姉妹ケンカで大盛り上がり、アズランド新生帝国軍はそれなりに綺麗な艦を揃えたが砲が変な方向に向きっぱなしだったり、1発実はエンジンが死んでいたりと何処かしらが壊れてる船しか居なさそうな感じではある。
マーズラ星系へ飛べばステラー王国も合流してくる。こちらはもう現状そのまま、一応動く損傷艦を揃えたようだ。フルジア王国軍は流石に本国まで時間が掛かる為救援部隊がそのまま対応・・・よってステラー王国同様損傷艦まみれ・・・そんなこんなでリストーン星系に行けば意外にも本物のシーモア共和国軍が居た・・・ジャガー級貨物船が3隻、もう戦闘艦ですらないし、年式や塗装はバラバラ・・・明らかに民間徴用である。
「来たか、ネドリー・・・今回は大手柄・・・シーモア共和国もギリギリ生き延びたが、地上は瓦礫の山なのには変わりない・・・くそう・・・まだ良い船を隠し持っているとは・・・」
「エルブルドソリス提督、ご無事で何よりです」
「・・・玉砕覚悟で人間族で迎え撃つつもりだったな?しかし元田舎故に低コストのシングルゲートに悩まされでもしただろう・・・あのポンコツどももダブルゲートのロックベルト星系を目指すしか無かったようだな?あのデカブツはダブルゲートしか通れない・・・所でいつアレは片付けてくれるのだ?」
「・・・その件につきましては・・・と言うか、そもそもロックベルト星系はシーモア共和国領なのでそちらで片付けて頂けないかなと・・・」
「・・・チッ・・・くそう・・・」
エルブルドソリス提督は舌打ちする・・・カーディナルの片付けまで丸投げするつもりだったな?
「・・・さて、ひとまず、この件について落とし前を付けてもらおう」
「カーディナルの停止じゃ駄目ですかね?」
「お前じゃない、エマンクリシット皇国がだ!と言うかお前の努力は皇国の遥か向こう側まで知れ渡っていたようだな?何をしでかした?」
「・・・エズ・儀・Bレ帝国の船を誤って攻撃・・・それくらいしか・・・」
「アホか?その程度でワシらの星系に向こう側の外交船団が来るわけなかろう!!」
「えっ・・・じゃあどうして・・・?」
「聞いて驚け!もう戦力が尽きた我々に代わってエマンクリシット皇国にお灸をすえに来たそうだ・・・もうドロイド艦隊はレブロ銀河同盟の手の内にある・・・本来はエズ・儀・Bレ帝国の工作船があのデカブツをハッキングする予定だったようだが、エステナ帝国の生き残りが代行したようだな?・・・まあいい、結果的に作戦通りにドロイド艦隊の支配権を掌握して無力化に成功した、後はこれをそのままエマンクリシット皇国領に解き放てば良いだけだ・・・無関係の民間人には申し訳ないが多少は犠牲になってもらわねばならん・・・深く反省してもらうためにもな?」
「確かにエマンクリシット皇国に落とし前を取ってもらいたい所でしたが・・・やり過ぎでは?」
「そのやり過ぎにどれだけの国と民が犠牲なったと思っておる!!お前らも滅びかけだろう!!シャーッ!!」
「あーあ、トカゲのおやっさん、だいぶ感情的になってやがる」
流石にU-6も呆れる・・・とはいえ、たぶんドロイド艦隊はエマンクリシット皇国滅亡に向けてもう動いている・・・エマンクリシット皇国有数の資源星系を食いつぶした艦艇量はマーズラ星系接続時並みの量に回復しきってしまった・・・結局新生帝国軍が処理した分はリストーン星系に流れ込んだ分・・・目安としては事の元凶であるゲート接続時にリストーン星系に流れ込んだ総量とバーボン星系掌握までの艦艇数の合計くらい・・・数としてはもう数えてられない物であるのは間違えないのだが、現状のドロイド艦隊の規模の割合と比較するとたった3%にも満たなかったそうだ・・・あれだけ努力したのにも関わらずあまり減らせていなかったのだ・・・このままではエマンクリシット皇国は10回くらい滅ぼせる事になる・・・あまりにも過剰が過ぎるがその後はどうするつもりだろう?
「とりあえず提督、ジャンプゲート前で立ち話も何ですのでひとまずは我が軍の前線基地にお越しください」
「こんな所で文句ばかり垂れ流していている場合でも無いな?」
・・・そう言ってひとまず案内はしたが、作りかけだった要塞ステーション、装甲と固定武装設置が最優先だった為、無駄に広いだけの何もない部屋しか無い、そこに折り畳みの長テーブルとパイプ椅子、そしてテーブルライト、慌てて用意されたケータリング食のカップラーメンとお茶が用意されていた・・・何処の署の取調室かな?
「とりあえずこんなスクラップヤード星系に来た目的は?」
エルブルドソリス提督のお茶を回収してエナジードリンク系の炭酸飲料を置く、やはり爬虫類族はこういうジャンキーな物を渡すと大体好印象を示してくる・・・コレは格納庫区画の近くにあった自販機から入手してきた物だ。
「まずは、ドロイド艦隊に今後は関わるなと言う事を伝えに来た・・・と言っても、動かせる兵などもうなかろう?」
「それは確かに・・・」
もうドロイド艦隊など眼中に無いソデス国王は早速カップラーメンを作り始めている、エルブルドソリス提督も鋭いツメで梱包のビニールを破り、蓋を剥がしてお湯を注いだ後、プラスチックのフォークを重りにしてお湯の入ったケトルをこちらに回して来た・・・作るしかないじゃないか?同じくカップラーメンにお湯を注いだ後、俺はそれをカルデナに回す、カルデナも既に一般庶民の女、何の躊躇も無くカップラーメンにお湯を注ぐ。
「レブロ銀河同盟やそれに属していない数カ国、ドライアド民主共和国などの皇国の動向に賛同しない巨人族国家連合が後を引き継いでくれるそうだ・・・よもや銀河大戦勃発と言う訳だが見かけ上はエマンクリシット皇国の内戦に過ぎない・・・知っての通り、元を辿ればエマンクリシット皇国の所有物だからだ。銀河ぐるみで行われるこの盛大な落とし前作戦は全部ドローン艦隊に行わせる、だいぶ民間人に犠牲は出るとは思うが、攻撃は都市部中心、衛星爆撃で惑星粉砕まで行わない程度には加減するつもりらしい・・・そもそも受け入れ地の数的にも民間人を引き上げられないからな?」
「他の国はそれでも良いとして、同族国家はそれに対して反発は?」
「無い」
エルブルドソリス提督は即答しながら2分くらい経ったカップラーメンの蓋を開け、カップラーメンをズーッとすすりだす。
「あのドライアドですら、今までも銀河中に迷惑をかけている、二度とこのような事が起きぬよう一度石器時代に戻した方が良かろうと言いだす始末だ・・・敵を作り過ぎちまったんだ、あの国は・・・」
「エルムズデブラ首相は?」
「今回はもう面倒を見ない方針だ、なにより我々シーモア共和国も民間人の総死者数が約30億とされている・・・これだけ無差別に殺された者が居る中で仲介を望むアホが居ると思うか?これはシーモア共和国の民意でもある・・・ちなみに我々にとってアズランド新生帝国軍は我が国では英雄扱いだ、これからも良い外交を進めていきたい・・・所だが、ちょっと医療品などの物資の支援が欲しい」
「なるほど・・・支援に関して言えばこれで良ければいくらでも」
一応カップラーメンであれば備蓄はあるにはある。
「・・・であれば、我々ステラー王国からは捜索隊を派遣いたしましょう」
「それはありがたい、是非とも協力を求む」
ステラー王国自体、艦艇は壊滅だが海兵は一部人間の域を越えた怪力が多い・・・どうして分かるって?グーパンチでバトルドロイドを粉々にする姿をこの前見たばかりだからだ・・・彼らに頼れば瓦礫撤去も重機要らずな事だろう。
「ズァパリ民国は輸送面で尽力いたしましょう、我が国の艦艇は大気圏突入を常用するのに長けておりますし、民間船もズァパリ民国の半数以上がアズランド新生帝国領におりますので」
「いやはや、遠い所申し訳ありません」
エルブルドソリス提督はサシリアに頭を下げる。
「・・・所で、オヴィルツィッヒ帝国はどうなのかね?」
「たぶん、何もご支援出来ないかと思います」
「後数日もすれば消えて無くなりますのでご心配に及びません」
ファーレンヒとカルデナは渾身の笑みでニッコリ答える。
「いや・・・皇国軍残党とどのような戦局かを聞きたかったのだが・・・だいぶ追い詰められていそうだな?そしてあなた方はそれでも皇女か?」
「中古船舶の販売営業ですので!」
「ただの飲食店のウエイトレスですが、なにか?」
ただただ笑顔が眩しい元皇女の2人、それにエルブルドソリス提督は頭を抱える。
「・・・おいネドリー!!どうすればこうなる!?外交官にでも任命すれば良かったであろう?」
「そう言われても、自分も名ばかりの皇帝と言うか、ただのネドリー運輸の会長と言うか・・・」
「貴様ら・・・もういい、なんとかしてやれんのか?と言った所でそこのエステナのお嬢さん的にも滅びろ一択であろう?」
「ああ、勿論だ、とっとと滅びてしまえ、我々エステナ帝国人の悲願も無事に叶う事だ、何故わざわざ助けねばならない」
U-6はカップラーメンの汁を飲み干しながらそう言う・・・人間族も人間族で団結力はありそうに無いな?と言う顔でエルブルドソリス提督は溜息をついた・・・エステナ帝国人にそんな事を求めても駄目な物は駄目・・・と言うか新生帝国も助けられるだけの軍事力が無かった。
・・・それから一年が過ぎた。
あれから1カ月も持たずにオヴィルツィッヒ帝国はギャラクシーマップから姿を消した。その後皇国軍の残党はアズランド新生帝国軍がほとんど生け捕りに、捕獲した皇国軍軍人も正直今の惨状の皇国領に戻りたくは無く、大部分がドライアド民主共和国籍の貨物船船員になった。実際問題ほぼ僅差でオヴィルツィッヒ帝国が負けている。皇国軍残党も残すところ64隻の軍艦だけ、そこにRB26迫撃戦艦で迫ってみろ、もう泣いて許しを請う事しか出来ないであろう・・・ようやく人類が銀河に誇る最終兵器が役に立ったのだが、全てが終わった後にようやく活躍すると言う何とも皮肉な現実でもあった。その後、RB26迫撃戦艦は旧オヴィルツィッヒ帝国領を巡り、ただただ巨大な船体の威圧感だけで各星系の無血開城を行った。
避難してきた帝国難民も元の星系に戻れる者は戻り、新生帝国経済で生きる事を決めた者は残る・・・だがほとんどが後者を選ぶ、実質戻されるのは難民状態の者だけで、新生帝国はオヴィルツィッヒ帝国が抱えていた領土をほぼ拾い物同然のごとく入手出来てしまい、見かけだけの大国家となってしまった・・・おかげでインフラ整備が全く行き届かない状態が未だに継続されている。
・・・で、ここは何処か?
真下に見えるのはリストーン星系のエリナス級廃棄物惑星の地表である・・・一応環境調整中ではあるが住もうと思えば住めてしまう段階、真後ろには何処かで見た事のある邸宅・・・ここは旧セントラルプロムナード、エルムンドドエルの元研究ステーションである・・・厳密に言えば研究区画と居住区が新造され使えそうな一部が再利用されたと言う訳である。その大きさもバーボン星系のセントラルプロムナード以上、勿論人類最大サイズの超大型ステーション、これが脅威の3連で強固な支柱とシャフトでそれぞれ接続されている。他にも大型30万隻もそのまま乗り入れる事が出来る人類最大規模の港湾ステーションも併設・・・こんな物が出来れば首都星系もリストーン星系にならざる得ない・・・第一、アズランド新生帝国は元々リストーン星系に事実上の首都機能があったので、こうなって来ると元に戻ったとも言える。
・・・で、この屋敷に通じる道路、何処へ行くかと思えばいつも通り格納庫、この辺は漂っていた物をそのまま再利用している、外殻の高速道路は廃止され、直接宮殿に繋がる経路に切り替えられた、その為宮殿はステーションの中心には無いと言う変わった作りともなっている。
勿論こんなデカブツ、ただの資源の無駄遣いが一番の理由だが、もう一つ重要な役割を持たせる為に建造している。それはオデム=ササラの代替えと新生帝国、旧帝国領並びにステラー王国、フルジア王国の交易ハブだ・・・と言うのもバーボン星系に集中されるとマーズラ星系にあるジャンプゲート全ての転送キャパシティが超過してしまう為である、これらを裁く為には各国への分帰路であるリストーン星系に輸出入を集中するのがベストだった・・・そしてそのついでとなるのが真下のエリナス級廃棄物処理惑星と言う訳である・・・これは航路清掃で出来た産物である、なんの偶然か旧セントラルプロムナードのあった宙域は生物生存に最も適した場所である事から建設が始まった・・・と言うよりサイズァー薬品も最も研究に適した環境である事を既に数年かけて環境測定やら各種計算してエルムンドドエルの研究ステーションを建築していたらしく、その計測結果の転用でたった1カ月足らずで建設候補地が決まってしまったのである・・・もとより投げやりでもあった・・・そのせいで居住可能に出来るかは当初50%未満だったが、今では80%に上がっている・・・相変わらずの成功率だ。
・・・だが、まだまだ残骸は航路を塞いでいる。
外を良く見ればレミア星系行きの元ドロイド艦隊の船舶とそれに引っ張られるゴミの列も確認出来る、あれは惑星スライパー再建計画に使われる物だ。スライパーと同等の軌道に惑星を建築すると言う物・・・将来的に元スライパーと接触事故を起こしそうだが、現状惑星に戻ろうともしない旧スライパーは本当にただの小惑星帯・・・大きくても数百キロの塊に過ぎないのでもう人工的に惑星を再構成しようとこれまたアホみたいな事をしようとしている、別に失敗した所でただの資源惑星が出来るだけという事でなんか勝手に進んでいる。
「おや?ファルマンじゃないかい?」
「ゾリゾか、ヴァルチャーは今どんな感じだ?」
「もう地上は石器時代さ、何も残ってないねぇ・・・しかしリサイクルプラントをヴァルチャー衛星軌道上に20基も不法投棄したんだって?流石新生帝国様、ずいぶん余裕だねぇ?」
新築の港湾ステーションに行けばいつもの店がある・・・勿論首都機能がリストーン星系に戻ればヴェルグーリさんもここに来る・・・この辺の区画も床は古めである、一部分だけそのまま再利用されたのだ。なのでエルーラのディーラーや元々旧セントラルプロムナードにあった店はほとんどそのまま営業再開と言う事になった。
「少しはシーモア共和国にも銀河清掃をしてもらわないと困る・・・と言うかカーディナルを処理したいと言っているのは向こうの方だが、アレが無いと皇国が逝った後止められなくなるからな?それ以外の残骸も復興資材に出来るだろ、その為に置いてきた」
「今じゃ尻尾飛ばす宙域管制官も居ないからねぇ・・・」
マドリニスゾリゾはそう言いながら出てきた激辛担々麺に目を輝かせる・・・そう言えば新生帝国領で立往生していた爬虫類属系の商船会社は母星がほぼ吹き飛んでしまった為、本社機能を失っている会社も非常に多く、新生帝国領に支店を持っている会社が一旦預かる運びとなった、そのおかげで今やマドリニスゾリゾも総勢2万隻を従えるビックカンパニーの社長となった・・・が、母国経済が消し飛んでしまった為ほとんどタダ働きで支援物資を全力で運ばされている、それはちゃっかりドライアド民主共和国籍に紛れていた皇国籍の巨人族船団にも言える・・・とは言え、彼らも会社の籍が皇国籍なだけで人柄としてはドライアド民主共和国籍の商人達と大体変わらない、なんなら帝国難民の引き上げにボランティアで参加してくれたり、元皇国軍人難民の受け入れだって多少はしてくれてもいる、最近じゃ自国のやらかした事の尻ぬぐいに躍起にもなっている・・・一応彼らにも罪悪感と言う物が存在しているのだ。
「はいおまち」
カルデナがそう言いながらハンバーガーセットを置いていく。相変わらずこっちも忙しそうで何よりだ。大きかったお腹も今はすっきりしている。
「そういや、ようやくエルガバ神殿要塞までドロイド艦隊が到着したんだってねぇ・・・意外と粘るじゃないか?」
「まぁ、向こうにはハンマーオブゴットがあるからな?一体何百隻もってるんだか」
「一発放って超新星爆発でドロイド艦隊を一掃する・・・でも二次災害で民間ステーションや居住惑星も巻き添え・・・おかげで向こう側の国々も想定以上に民間人に被害が出ていて困惑している所だってね?」
マドリニスゾリゾは真っ赤な担々麺を美味しそうに食べる。
「まぁ、皇国傘下の国はほとんど泣き寝入り状態だが、白旗を上げた所で誰も助けてはくれない・・・そうやって滅びて行った国の感情を味わう事しかできないのもまた面白い所ではあるねぇ・・・今商人や海賊になって星系から逃げ出すのがトレンドらしい・・・船が品薄なのを良い事に海賊共が海賊船を売りつけるビジネスを展開しているようだ、今後はまた海賊だらけになるから覚悟しておくんだね」
「・・・マジ?」
「そういやアンタはもうネドリー運輸の社長じゃなかったか・・・でも軍拡はそれなりにしておくんだね?」
「そりゃ今や主要な人間族国家だからな?」
「そんなに統治出来るのかってくらいの星系を抱えてるからねぇ・・・」
「アンタらの種族の博士に新しい種族を生み出してもらってそいつらに押し付けたいくらいだ」
「へー?だがそれはアンタら人間族の分野じゃなかったかね?」
「・・・クソっ・・・そう言えばそうだった」
「ま、どの道ゴミだらけだしどの派閥も欲しがらないだろうね?」
「・・・星系丸々一つ要りません?」
「あたしゃただの商人だよ!星系なんて商店街のくじ引きで当たったとしても要らないからね!」
「俺も一応商人だったんだけどなぁ・・・」
担々麺の汁をゴクゴク飲み干すマドリニスゾリゾを見ながらハンバーガーを頬張る、そしてグラスに入ったコーラを一口含んだ時、何か後ろが盛り上がる。
「・・・なんだ?」
「さぁね?」
マドリニスゾリゾはとりあえず携帯端末を取り出した、そうすれば答えが乗っていた。
エルガバ神殿要塞陥落。
これによりドロイド艦隊は惑星エルガバに総攻撃を開始、ギャラクシーマップからエマンクリシット皇国が消滅するのも時間の問題となった・・・少し早いが一応これで落とし前がついたと言う事になる。
エマンクリシット皇国滅亡から初の銀河議会、もう議席のほとんどが空となった。その後のドロイド艦隊はカーディナル爆破を持って全てが収束する事となる。
旗艦を失ったドロイド艦は機能を停止し、軍艦として使いたい国はそのまま横領する、勿論残骸に関しても星系を掌握している国が自由にする事となる・・・で、広大なエマンクリシット皇国跡地はドライアド民主共和国などのエマンクリシット皇国の行動を良く思っていない国々で均等に分割された事によりドライアド民主共和国とは隣の国となった・・・セルルド星系は?アズランド新生帝国に押し付け・・・譲渡される事となった。何だかんだ残骸も多い上に、これも残骸と化しているがアズランド新生帝国軍の防衛要塞の一部区画はまだ機能していると言う強引な理由でシーモア共和国はアズランド新生帝国領にする事を強く主張したのだった。
そこからようやく銀河は平和を取り戻すのだがやはりどの国も復興・・・そしてアズランド新生帝国は銀河一の金属資源を元の形に戻すなり有効活用するなど、今後数世代にも渡って銀河中を掃除しなければいけない責務を担がされてしまった・・・協力してくれるのは今の所ズァパリ民国だけである・・・しかも血の繋がりのない愛娘の領地のファランス領・・・そろそろルシャーサ女王陛下に怒られそうなレベルでステーションを増やしに増やし、ズァパリ民国ではまず作らない金属製の船舶を建設、相変わらず部品はアズランド新生帝国製に頼る事になるが、ファランス領はズァパリ民国の国家予算並みの莫大な利益をたった一カ月で稼ぎ切る為局所的なバブル状態に陥っている・・・のにも関わらずいつもの執務室でのんきにCAF姉妹と一緒にカップラーメンを食べている・・・もうお前はそれを毎日食べるような年収じゃないだろう!!
・・・で、相変わらず執務室の机の上にはU-6、使用人としてローラとC-T7が控える、エルゼは右手の薬指を眺めてニヤニヤしており、シルヴァとリーリアはそれを不満そうに眺める・・・それを全く気にしないL87はいつものように紅茶を・・・そしていつものようにリユン元帥が駆け込んで来る。
「皇帝陛下!緊急要請です!」
「・・・小型機で済む範囲で頼む」
「ラクトパレトでパンデミックが発生したとの事です!」
「クソトカゲに頼んでおいてくれ・・・と言うかそれってシーモア共和国政府に依頼するべき案件では?」
「そうおっしゃられましても、サイズァー薬品関連の全残存施設は全てアズランド新生帝国領にあります故に実質我が国の製薬会社になっておりまして・・・」
「チキショウ!!そうだった・・・とりあえず検体サンプルの回収を手配してくれ」
「かしこまりました!」
・・・まだまだ銀河には面倒な事が山ほどありそうだ・・・。
急いで出ていくリユン元帥を眺めながら溜息をついた。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。
誤字脱字や表現が浅かったりしていると思いますがこれにて完結となります。
書き溜めてからアップロードしている為、しばらくは活動停止のような形になりますが、書き溜めが完結したらまた新作を公開出来ればと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
verisuta(measerea)




