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この宇宙の片隅に  作者: verisuta
アズランド新生帝国
23/27

カーディナル

システムのコアや、機械種族の中枢などを指す。機械種族は全て人口的に作られた存在であり、ほとんどは巨人族が作り出した種族でもある。


ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー

・アルザス級多目的輸送艦

ステラー王国系の大型輸送船、民間貨物船として設計されてはいるもののまとまって運用しているのはステラー王国軍のみである。それ以外は大半がネドリー運輸から運用離脱した中古貨物船を使用している為民間での運用率は非常に少ない。

性能は人類では最も優れた貨物船であり、ロゼンダ級より積載能力が高く、耐久力において劣ると言う典型的なステラー王国艦でもある。


・ヴァイオレット級修理艦

ステラー王国の修理艦、事実上アズランド新生帝国に隷属しているだけあり、ステラー王国軍の戦力は未だ国を守れる規模ではない為、アズランド新生帝国の支援を主とせざる得ない。

アズランド新生帝国で製造こそされている物の、新生帝国軍での運用は無く全てがステラー王国軍に納品されている。

後方待機のステラー王国艦隊に6隻配備されている。


・デルラ・レヴァタ級戦艦

魚人族にかつて存在したコベルキエリ王国(ヴェリーティア共和国に統合後廃国)が製造した銀河最大級の戦艦。動く戦闘要塞と言う異名を持つが通行出来るゲートが限られる事や、ゲートその物が通行止めになる為ほとんど運用される事は無い。もっとも魚人族は戦争を好まない種族の為そもそも装備された武装20万基が全て正常に動作するかすらも分からない程にメンテナンスを怠って来てもいた。それだけ長く平和を維持してきたとも言えるが、果たしてそれでいいのかと言う疑問もある。

なお、現在の銀河最大級の座はハンマー・オブ・ゴッドⅡ級に奪われてしまっている。


 U-6の足癖の悪さに流石の新生帝国男子も慣れてきたは良い物の、新生帝国軍と皇国軍の戦局はほぼ膠着状態、皇国軍と帝国軍の戦争が激化するだけ、これに関してエステナ帝国人は良いぞもっとやれ状態だが、正直皇国軍が戦果を上げるたびに新生帝国は難民受け入れに翻弄されるのである。

 ・・・とは言えエルデナン星系より手前のワーグナー星系やアルバマス星系のゴミの捌け口になってもいるから一応は助かってもいる。

 実際問題、これらの星系は大量の金属資材の移送先問題が深刻化している。分かりきっている事ではあるがこれらを片付ける為にはあるべき姿に戻すか消費しなければならない。そこでアルバマス星系の元大ネズミ属のファラット人民国の首都惑星バラードに最大4万kmもの超巨大コロニーステーションを建造する予定となった。これは帝国のリコリスⅡ国際ステーションと同等規模で人類が考え得る限界サイズの宇宙ステーションとなる。これ以上は流石に特殊な金属資源による基礎構造の強化が必要となる上、これを使ってしまっては無駄に資源を食うステーションを建築する意味が無い・・・ちなみにバラードその物に居住が可能かと言われても食中植物が非常に多く自生しており、毒では無いものの陸地は基本的に下水道のような悪臭が漂い、害虫に近しいフォルムの生物も非常に多め、気候その物も人間的には不快を覚えるほどに高温多湿が過ぎるので住むのには適していないし、なんなら銀河でまん延する未知のウイルスもここが発祥だったりもする事が多い・・・クソトカゲなら喜んで飛び込んでいきそうな、ちょっと近寄りがたい惑星であるが現状も調査しないといけない。

 ひとまずこの超巨大コロニー建設によりアルバマス星系もめでたくアズランド新生帝国領になる訳であり、この巨大コロニー建設に伴い、使われるスクラップ資源の更地にさらなる工場を建設する事が出来、これらの工場で補給物資を生産する事も出来るようになる。工場建設にもスクラップ資源を使えるのでようやく星系内で資源の循環が出来るようになるのだ。

一方でメルト星系についてはエルデナン星系に防衛要塞を建設する計画があるが、ハンマーオブゴット2の爆発でスモック帯が全て消し飛んでしまった為現在のエルデナン星系はスモック帯に隠れて行動が出来なくなってしまっている・・・こうなってくればもう他の宙域と変わらない、スモック帯を調査するシステムを組み込む予定もあったが全てキャンセル、ひとまずメルト星系で出てきてしまった建築資材を投入して防衛要塞を複数棟建設する案に切り替える。ここに防衛要塞が出来れば一旦長くなった補給線をリセット出来る。アルバマス星系とも合わせればここからさらに獣人族連合の宙域に足を伸ばす事が出来るのだ。

 「おっ!U-6じゃねぇか!」

 「なんだXF-38?オメーも異星人に拉致られたんか?」

 「そりゃな、年長者のありがたーい話を永遠ときかされちゃーな?」

 ヴェルグーリさんの店に行けば両腕怪物のXF-38と言う、丸いサングラスとハチマキが特徴のたぶん若い男が牛丼を食べていた。年長者のありがたーい話をした張本人はその隣でアブダブバスの魚介スープ的な何かを食べている。

 「なんだ、エルムスミエルさんは手元に残したのか・・・」

 「うむ、引き留めるつもりもなかったが、丁度護衛の船も足りなくなってきた所だ。今では海賊船6隻の指揮を取ってもらっておる」

 「ちなみにゾリゾの所は?」

 「アイツはキッチリとステラー王国に引き渡した・・・ステラー王国の軍事に介入出来ればオヴィルツィッヒ帝国に復讐出来るであろうと大概は考えておる」

 「ま、大概はボスの言う通りだ、だが俺様的にはここで優雅に飯食ってるだけで帝国は勝手に滅亡を迎えると思っている、滅亡してしまえば我がエステナ帝国の悲願は達成される・・・だが達成したらエステナ帝国はその後何をするべきなのだろうか、その答えこそ他国との共存と言う訳だぜぃ?それを学ぶ為に俺達第三師団はボスについていく事にしたって寸法よ」

 ・・・牛丼自体はカップラーメン程では無いがファーストフードに近い物・・・それでもご馳走扱いしているXF-38は何処か微笑ましい・・・当然だ、彼らの食事は高カロリービスケットかエネルギー溶媒、もしくは電池などである。種類こそ沢山あったそうだが一品一品が世紀末と言うか、食べ物ですら無いような物がかなり多かったようだ。流石戦闘用兵器である。

 「ふん、相変わらず第三師団はひねくれている」

 「どちらかと言えば、その第三師団の方がマトモな気がするのは俺だけか?」

 「あ?ボス!こいつらはいつもエステナ帝国の足を引っ張ってた連中!こいつらが居たから蟻ん子やトカゲやねずみと無駄に戯れるようになった!」

 「U-6、エルデナンに資源は少ねぇんだぞ?帝国を潰す上で必要な資源は外国に頼る他ねぇって何度も説明したよなぁ?」

 見た目大人のXF-38は赤子のようなスプーンの持ち方で口の周りを米粒まみれにしながらU-6に反論するも・・・これは長く続きそうな気がしてならない。

 「あんたらうるさい!改造人間共!」

 そこでカルデナがローストチキンをU-6の前に叩きつける。俺の目の前にはハンバーグ定食が優しく置かれた。

 「あ?何処の誰かと思えばカルデナ・オヴィルツィッヒじゃねーか?」

 「そうよ?文句ある?」

 「なんで第4皇女がこんな所に居やがる?だが丁度良い!まずはお前から消し炭にしてやる!」

 「人造人間の分際で私とやるってーの?表に出なさい!二度とこの店に来られない体にしてやるわ!出禁よ出禁!」

 仕事熱心なのは良い事だが相手は兵器だぞ?元皇女様が力で勝てる相手ではないはずだ。ヴェルグーリさんを見れば彼も色々察していた。止めなければならない。

 「カルデナ!よせ!腹の子がどうなっても良いんかの?」

 「U-6!コイツは今オヴィルツィッヒ帝国の皇女じゃない!普通の民間人だ!」

 とりあえずU-6の背後から抑え込む。ヴェルグーリさんはカウンターの向こう側に居るので抑え込む事は出来ない・・・代わりにジーナが駆けつけてくれた。

 「「放せ!」」

 ・・・U-6が戦闘支援型でよかった・・・化け物じみた筋力は無い。だが、もう一人の兵器はある事に興味を示した。

 「・・・ほう、民間人?どういったぁ経緯だ?店主」

 「帝国自ら切り捨てたんじゃ。たしかカリルの防衛作戦の失敗か何かだったが・・・それ以前にオヴィルツィッヒ帝国皇帝は何を考えているかもわからん。とにかく今は本当に民間人じゃぞ?・・・そのうちカルデナ・オヴィルツィッヒでも無くなるじゃろう」

 ヴェルグーリはジーナに抑え込まれるカルデナとファルマンに抑え込まれるU-6を眺めながらXF-38の質問に答える。

 「はっ・・・昔からそうさ、帝国は裏で莫大な汚れた金が動いている。その汚れた金の目的は厳重に隠匿され、表面から何も分からない、それの方針も変われば本当に何考えてるかも分からなくなる・・・俺達も、その汚れた金で生まれた存在さ・・・いやー人間の飯も悪くは無いな?」

 「そうだな、我々も出禁になる前にここを離れよう・・・これが作れる人間が死なれても困る」

 「えっ・・・ボス?・・・それマジ?」

 「うむ」

 XF-38はカルデナを見る、その間にエルムスミエルはヴェルグーリと直接会計をする。

 「・・・この店にこうなるような調味料は置いてないんじゃがの?」

 ヴェルグーリはそう言いながら会計端末をひっこめた。

 ・・・とりあえずU-6はなんとか抑え込んだ・・・。

 U-6は片足を椅子の上に乗っけながらローストチキンをむさぼる。人類だけは元から存在意義も無いスカートの先に広がる光景に釘付けだがそれ以外の種族はどうでも良いと言った感じである。俺の隣には疲れ切って水を飲んでいるジーナ、さらに隣にそっぽ向くカルデナが座っている。

 「そのー・・・U-6ちゃんの足癖・・・どうにかならないの?」

 「人間属じゃなく、異星人として扱ってくれ、本人は見えてる事に関して何も気にしちゃ居ないんだ・・・人間とは似て異なる種族だからな?」

 「はー・・・チェルちゃんもそう・・・KAFちゃん姉妹も基本的に浮いているから良く見えがち・・・それにあの二人、日に日に包帯が増えてる気がするんだけど大丈夫?」

 「それに対しての苦情はクソトカゲに言ってくれ・・・本人達も痛みの快楽に目覚めて幸せそうだしな?」

 「・・・えっ・・・それってやばくないの?」

 「・・・正直良くは無い」

 「あ?そもそも戦闘用だぞ?傷がついてナンボだろ?気にするだけ無駄無駄」

 「・・・もうやだ、さすが異種族」

 ジーナはカウンターに頭をガスンと打ち付ける。

 「KAFシリーズは傷を負うと戦闘力が上がる自傷タイプのアタッカーだぞ?L87からスペック聞いてないのか?」

 「あ?そんなの初めて聞いたぞ?と言うかそれ大丈夫か?暴走したりしない?」

 「あん?私らを何だと思ってる?自制くらいできる。これでもクソ帝国が実戦投入した兵器の末裔だぞ?ましてやたかが実験程度でつけられた傷なんてつまずいて転んだレベルの小傷に過ぎん」

 「それに、戦闘型は部位喪失を伴わない限りは1日で傷が直る。部位喪失したとしても専用の修復機で3日すれば元通り・・・その修復機は勿論失われているが、その手に従事していた生産型は引き上げてきている・・・最悪切り落としても再生は可能だ」

 「ジーナ、飯食いに来たぜ・・・やけに疲れてんな?昼忙しかったか?」

 「ルーガ!L君!もう大変よ!」

 「・・・本当に異星人ときたら・・・」

 「元皇女もどうした?・・・あぁ、さてはU-6絡みだな?」

 「U-6!少しはボスを困らせるような行動を控えんか!」

 L87は椅子に乗っけているU-6の片足を掴んで椅子の下に降ろす。だがU-6はまた椅子の上に足を乗っける。

 「毎日見せつけられてると慣れてくるってもんだが・・・たまにしか来ない、しかも若造相手にならインパクトも相当だ、あのU-6の足癖は・・・一生頭に残るぜ?」

 「でもあなたは控えなさい!私が居るでしょう?」

 「・・・で、それに影響された男に襲われたのがこの私って訳・・・アイツの頭の中は私じゃなく異星人のオムツで一杯だったのよ!まったくふざけてる!」

 ・・・とか文句を言っておきながらもユーノドア元帥とは毎晩イチャイチャ・・・バーボン星系に居る時は毎日車で迎えに行く程なのだからもうそろそろである。

 「分かってるさ、ジーナ・・・そう言う訳だし、ユーノドア元帥のスケジュールは極力空けてやれ、皇帝陛下?」

 「ああ、分かってるが・・・それは馬鹿な帝国軍とポンコツ皇国軍、そして限度を知らない機械軍団次第だな?」

 「新生帝国の命運が掛かっているんでしょう?気にせずこき使っときなさい!アホ皇帝!」

 「そうは言ってもだな・・・最近は皇国軍と帝国軍がお盛ん過ぎて平和と言うか、国民の急激な増加に対処する方が忙しいと言うかだな・・・?」

 「だからってクソ帝国を滅びるのを笑って眺めてるつもり?人の命掛かってるのよ?」

 ハンバーグ定食の最後の一切れを食べ終わると速攻でカルデナが空になった皿を引き上げる。

 「笑ってるつもりは無いさ!」

 「ですが、帝国ごときに恩を売る以前に、我々もアルバマス星系で失った軍備を回復しなければならない・・・そうではありませんか?ルーガ殿?」

 「え?・・・まぁ、そうだ・・・確かに現状損傷艦の修理スケジュールがかなり詰まっては居る・・・整備側としても、少しは軍を動かすのは控えてもらいたい所ではある」

 「そう言う訳だ、ひと時の平和を悔いの無い様味わっておくと良い、没落皇女」

 「・・・つー・・・改造人間どもはどうしてこう毎回敵意丸出しな訳!?」

 基本まともな事を言っているはずのL87だが、それは関節をペキポキ鳴らしながらいう事か?

 ひとまずカルデナは逃げるように洗い場に向かって歩いて行った。

 「・・・と、先ほどは言いましたが、新生帝国軍にはまだまだ破壊すべき目標が残っている」

 L87は棒状の記録媒体をポケットから取り出して、先ほどまでハンバーグ定食があった所に置いた。

 「何これ?」

 「・・・恐らく、新生帝国軍が探してる船はこれではないかと」

 「ほう、旧規格のUSBメモリじゃな?まだこの時代にあったとは・・・」

 「まあ、携帯型の記憶媒体自体もう使わないからな?エステナ帝国艦なら再生できんじゃねーの?」

 ルーガも珍しそうな顔をする。

 「当初はわが軍も獣人族連合の一員として艦隊を派遣していた。わが軍の艦艇はとても有効打を与えてはいたが数その物が少なかった」

 「ボスも見たでしょ?船なんか半年に1隻建造出来る程度の土地しか無い」

 「数の暴力には勝てなかった、最終的にエステナ帝国はハードックに引きこもる事を選択したまではこの前話した通り、しかし敵の調査は引き続き継続していた」

 「流れてくる船は駆逐艦のみ、それ以上の大型艦が全く無い・・・でも一隻だけ大きな奴が居た所までは偵察師団が確認した」

 「カーディナルとやらはどういった船かは知らないが我々が知っているそれらしき船としてもこれが一番条件が近いと思っている、参考になれば本望だ」

 「ちなみにソイツはリビューイ帝国の首都ペスタ星系で目撃された所までしか知らない、そこから先は獣人族連合軍と共にしていたエステナ帝国残党艦隊は消息を断っている、これ以上の情報は無い」

 L87とU-6はエステナ帝国軍が握っていた情報を説明してくれた・・・そう言う話をしている間にL87の前には唐揚げ定食が出てくる・・・U-6が素手で一個つまみ食いするがL87は気にしない・・・ちなみに彼らの会議形式は完全フリーダム、適当な場所に適当に集まって重要な話をする・・・人間属のように会議室に集まるなんて事はしない・・・彼らにとって今の状況はいたって普通のようだった・・・想定以上に世紀末のような国のようだ。

 ・・・そしてこの情報もエステナ帝国人が体内に埋め込んでいるナノドローンチップに保存されていた断片的な情報・・・もちろんハードックに情報ターミナルがあった、予備として宇宙にもバックアップ衛星があったようだが、それは軒並みハンマーオブゴット2の爆発で壊れたか、爆発の余波で星系外へ飛ばされて深宇宙の何処か彼方へ行ってしまっている・・・その為彼らでも情報伝達に重大な支障が出ており、それを知ったステラー王国がつい最近、彼ら用のターミナルサーバーをようやく再構築したばかり・・・この情報もそれが出来たからこそ出てきたと言う物らしい。

 「一見、ハンマーオブゴットのような気もするが・・・」

 「新旧どちらでも無い、なんなら砲身も短い・・・」

 とりあえずシドニアⅢの艦橋でデータを確認する・・・今まで見た事が無いシルエットで、ほぼジャンプゲートギリギリサイズの直径の丸い筒のような物体である事は分かる。

 諜報部隊が色々な方面を調べているが同一の物は出てこない・・・しかし原型は見つかった。

 「・・・どうやら、巨人族が200年前くらい前に使用していたモジュール組み立て式の衛星軌道設置型の採掘基地のようです。なぜエンジンが付いたかの経緯は不明ですが、軌道エレベーターシャフトも兼ねた遠心式重力生成用の中央シャフトに何らかの改造が施されているのかと思います」

 「はぁ・・・まさかの自走式に改造された採掘基地」

 ルーガととりあえず顔を見合わせる。諜報部隊の人間はさらに構造解析を進めていく、もし採掘基地がベースであれば当初はこれでドロイド艦隊を自己生産していたはず・・・であればフリーゲートしかラインナップが無いのも納得がいく。この採掘基地はどう考えてもフリーゲート以上を建造出来る余地が無いからだ。

 「おそらく船体強度その物は苦戦すらしないレベルでしょう・・・問題は従えている数・・・ハンマーオブゴット級の自爆プロセスでも無い限り到底相手に出来る数では無いのは明確かと思います」

 「結局チマチマ削るしか無さそうだな」

 「結論、それでしょう」

 「だーよな?知ってた」

 「ひとまず位置は大体絞れて来ました・・・そのうちセルルド星系に現れてもおかしくは無いかと思います・・・問題はぺスタ星系から金属資源の豊富な猛禽属のメルビーン星系へ向かったか、それとも大ウサギ属のシェルシャイ星系へ向かったか、それともナーリス星系からオレスト星系、マルモ星系へ向かうつもりか・・・ポライト星系も比較的金属資源が多い為、ポライト星系が我々としては好都合ではあるのですが、ポライト星系をドロイド艦隊が占拠してしまうとズァパリ民国並びにラクトパレト王国とは一旦断交せざる得なくなります」

 「その代替えルートが新生帝国軍が掘ってるルートと言う訳か・・・結局このまま進み続ける他無いと・・・」

 「防衛要塞が完成するまではもう既存のルートでは補給が追いつかない状況です・・・今はどの道体力をつけるしか選択肢が無いかと思います」

 ・・・結局しばらく平和を満喫するしか無い・・・そう言う訳だな。

 ルーガもまぁそうなるよなぁ・・・とぼやきながら艦橋を出ていく・・・この情報は電子化されて各艦隊の大将に共有された。


 それから半年が過ぎてしまった。

 まず帝国はこの半年のうちに居住惑星を25個も失った。その惑星に居住していた難民は全て新生帝国に流れ込み、それらは環境調整途中のエリナス級廃棄物処理惑星で引き受けた。

エリナス級廃棄物処理惑星建築計画を進めている天文学者もどこぞのクソトカゲ並みの天才だったらしく、エリナス級廃棄物処理惑星は正真正銘居住可能人口惑星となる確立がいずれも90%以上と、消えゆく惑星や国が多い今の銀河情勢で超新星爆発並みにまばゆい明るいニュースとなっている・・・流石の皇国も、神になったつもりか、いい気になるな、直ぐに破壊して見せようと捨て台詞を銀河議会で披露してみせた。環境破壊?どちらかと言えば環境再構築で、元々あった惑星をちょっと住みやすい軌道に再構築しただけ、それでも処理しきれないゴミを少しでも処理する為についでに衛星も追加しちゃっただけ、ゴミだらけの星系よりかはマシという事で皇国以外の国家は賞賛の声を上げている。

 ・・・しかし、居住地が足りない。

 完成までもう少しとはいえ、まだ未完成の大地をもってしても溢れる帝国難民・・・エリナス級惑星の軌道に早くもコロニー建設が始まっており、交易ステーションとしてバラード星に建造しているゼタ級特型コロニー、後はリストーン星系にもあるラザーニャコロニーと同規模の居住専用コロニーと工業プラットフォームをひたすらに・・・環境構築がまだ不十分なので地上で作物を育てる事が厳しい・・・その為しばらくは宇宙で食べ物を作るしかないのだ。

 「あー参った」

 「小型機で済む範囲で頼む」

 「ついにリストーン星系で引き上げた民間貨物船のスクラップの山が無くなった!」

 「それは良い事じゃないか?後は溶かすしか用途が無い物だけだろ?つかよく片付けたな?」

 「それは、雇用の確保で整備場や野戦修理に力を入れすぎたからだ」

 ルーガが部屋の真ん中でトレーを持って立っているローラの周りをくるくる回っている。

 「・・・とは言え、リストーン星系分は捌いたんだろ?他の星系にも残骸は途方もない数があるんだが?」

 「いや、全部無くなった訳でも無いんだ。まだパーツとしては貨物室部分など、スクラップヤードの宙域に浮いてはいる物の、直す物が無くなった事で遂にシンやユーリアスが中、大型貨物船のシャシのみを作り始めたんだ!」

 「遂に貨物船が国産化か・・・いや、事実上国産と言っていい貨物船はいくらでもあるんだが・・・」

 「そうさ!ようやく純粋な民間貨物船を作り始めたんだぜ?それにシルバーロッドで中古部品組付ける事で生まれたSH01中型貨物船とBH01大型貨物船、大部分は中古部品な事もそうなのだが、中古船扱いにする必要があるんだ」

 「何で中古にする必要が・・・あっ、ギャラクシースペック・・・」

 「あぁそうだ、俺達は何処と戦争している?そのギャラクシースペックを発行している理事国とだぜ?新造艦では売れねぇんだ」

 ルーガが凄く面倒な顔をする。ではどうやって中古にするのか・・・一度アズランド新生帝国軍に納入する必要がある。新生帝国軍はそれを帝国難民引き上げに使用され、そののちに軍用払い下げとしてシルバーロットに払い下げる・・・そして展示場に並び始める訳なのだが、その後にルーガの口から聞いている限りでは普通にエルーラの新品より性能が良いようだ。ついでに言えばたかだか1回大気圏突入を経験しただけの事実上新品でもある。それが一般的な中古の中型、大型貨物船それぞれの一番程度の悪い価格帯に迫る値段とこれまたエルーラ殺しの価格設定となった。それ故に需要が非常に高く、これらが品薄となっている。

 ・・・だったら新生帝国軍を通す必要も無いだろう・・・?

 だが、これらの船、軍用払い下げこそがミソなのである。

 そもそも何故軍用払い下げと言うステータスが欲しいのか、ズバリ軍艦は民間のルールに縛られない事にある。

 一般的に民間貨物船は銀河船舶検査認証、別名ギャラクシー・スペックを銀河交通局へ申請しなければならない。いわゆる船としての安全性を銀河交通局が承認する資格証でこれがあって初めてER-3000Cなどが輸出販売できるようになる。勿論申請しなくても所有者が製造した国の人間であれば国内基準の検査資格証で事足りる。しかしアズランド新生帝国は銀河船舶検査認証を銀河交通局へ申請する為の省庁が未だに無い、あったとしても向こうが絶対に難癖を付けて承認を通す事は無いだろう・・・そこで軍用払い下げと言う訳である。

 軍用払い下げ・・・具体例で言えばやはりE-900M、E-1000M、ロゼンダ級、ササリッサ級・・・これらがそれに該当する。ちなみに元軍用機だけあり銀河船舶検査認証の認可は無い船で、これらは経済性重視の民間より耐久性を求める船体設計の基準で建造される為、一般的に民間船より強固な作りをしている事が多い。その為銀河船舶検査認証を取得したのと同じ扱いになると言う例外が適応されるのだ・・・だから一度新生帝国軍が使わなきゃいけないのである。全く公私混同もいい所だが、早々難民引き上げもあってはたまらない・・・でもそうしなければならない理由がもう一つある。

 実は銀河船舶検査認証が発行されるまで最短半年掛かるのである。

 勿論非の打ちどころが無く、運よく他社のモデルチェンジと次期がズレていた場合で半年、大抵一年以上かけて検査される・・・それも理事国であるエマンクリシット皇国で・・・。もちろん巨人族の明らかに駄目だろ的な欠陥の多さの理由も自分達には甘くしている所がある。

 ちなみにロゼンダ級とササリッサ級がなぜ軍用払い下げカテゴリにあるのか・・・まずササリッサ級は単独航行出来ない事、そしてズァパリ民国政府が補給艦として建造されている所にある。実際にチャーターと言えどもズァパリ民国軍の後方支援に使われる為、民間か軍用かの線引きが困難という理由でとりあえず軍艦扱いとする判決が下された経緯があるのだ。エマンクリシット皇国の検査を受けたくなかったのも理由の一つの理由としてあるらしい。同様に線引きが難しいのが警察船である。フルジア王国の星系警察の巡視船で定番のPCシリーズも、実は完全に警察専用であれば銀河船舶検査認証は必要無い、だが民間警備会社も使う為これは銀河船舶検査認証を持っている。

 SH01中型貨物船とBH01大型貨物船はいずれも現状販売方式だが、見込まれる需要は400万隻、船を中古にする作業が追いついて居ないのが現状、しかも搭載している部品はその時在庫過剰だった部品の為、海賊船並みに性能にばらつきがある。もちろん良い部品は優先的に使われる為、最低限使えはする性能の部品を付けた低グレード帯が売れ残りもする・・・売れ残りの在庫だけが過剰なのだ。これらの在庫の船、一応難民引き上げ等に使ったのだから船としては機能する・・・でもグレードの高い船の方がその分稼ぎも出しやすいのは当然の事・・・後はもう小型機に迫る値段で投げ売りするしかないだろう。

 しかし、ルーガがローラの周りを周回している理由はこれだけじゃない。新生帝国領もその場しのぎの開発のボロが出始めてきているのである。

 ・・・。

 手に取ったのは事故報告書、死者20人、重軽傷者200人規模のプラント爆発である。

 ・・・原因は発電用に使っていた中古の船舶用ジェネレーターの臨界爆発、これは直ぐにニュースにもなっている。専門家を自称する帝国難民はステーション用の発電ジェネレーターを使わずに用途外の中古品を使っていた事で帝国系メディアと一緒になってエルゼ政権を強く批判して居るが、当確プラントはネドリー運輸時代に建造された物であり、現エルゼ政権には関係ない物である事と、船舶用ジェネレーターは状況に応じて出力変更を行う事が多い為、制御面や安全面などでは実はステーション用ジェネレーターより高度な代物でなのである。確かに中古品ではあったのだが常に臨界点ギリギリで稼働させていればたとえ新品であろうといずれは迎える結末だったのだ。

 点検は常にしているものの、生産プラントの絶対数が圧倒的に足りないので予備設備があろうが無かろうが関係ない、何なら予備設備も怪しくなるくらいに全力で動かしている状況に陥っているのである。ジェネレーターの耐久年数を大幅に削るこの運用によって生じているリサイクルプラントの寿命が短い問題は今に始まった事では無かったが、同様の事がそれ以外のプラントでも起き始めていると言っても良い。・・・ルーガの悩みは数を増やして既存設備の負荷を減らすか、既存設備の拡張メンテナンスを行い負荷を減らすかどちらを選ぶべきかである・・・どちらにせよ、建国初期の非常食工場などは稼働率の低下が著しく、プラントの更新が必要になって来ているのもたしかだった。

 そしてさらにややこしい問題がある。食料最優先だった為、それ以外の工場は食料工場の脇に点々としている事が多い、なんなら増設と言う形で食料工場の設備を間借りしている。これらが食料工場の物流区画の貨物に紛れ込む為、仕分けなどの効率も悪く貨物渋滞の原因ともなっている・・・その場しのぎで建てた工場の立て直しが必要となった訳であるのだが、建て替えるにも既存の物を壊さなくてはいけない・・・これも大きな作業となっている。

 「・・・両方出来ないか?」

 「・・・そうしても良いが、移転先とかを探すのが間に合っていないのさ・・・とはいえ、その場しのぎの現状は早急にどうにかしないといけない」

 「・・・詳しくは知らないがどうなってるんだ?」

 「・・・ほらよ、今回爆発した105プラットフォームの見取り図だ・・・とは言ってもこれは現行の仕様じゃ無い、3つ前の仕様だ」

 「・・・何故最新のが無い?」

 「・・・1カ月に1回のペースで拡張した区画が稼働開始するからだ」

 ルーガからタブレットを受け取る。

 「・・・うわぁ」

 ・・・そんな声しか出ない・・・これは酷い、まだドロイド艦隊の兵器工場の方がマシだ・・・どうなっているのか分からないがこれに耐えてる物流システムと貨物区画もまた凄い・・・奇跡的なバランスで維持されているステーションのようだ。

 「・・・ま、ここはまだ綺麗な方だぜ?物流システムがたまにコケるステーションもゴロゴロある」

 「・・・は?これで・・・綺麗な方だと・・・?」

 「そうだが?」

 ルーガにそんなに驚く事か?と言う顔をされる・・・物流業界にとって、物流システムが爆死すると言う事は近隣星系やステーションが周回している惑星でかなりの大規模な災害が発生している事を意味する・・・物流に深刻なダメージが出ている指標でもあるのだ。

 「・・・とりあえず、これは今すぐにでも整備しなきゃいけない問題だ」

 「・・・どうすんだ?」

 「・・・どうする・・・?うーん・・・」

 105プラットフォームの見取り図を眺めながら悩む・・・とは言いつつ何が何処に運ばれているのか分からない・・・だがある事に気が付いた。

 ・・・これ、効率悪くないか?

 と言うのも、原材料生産ラインと加工ラインが点々としている・・・少なくとも105プラットフォームは小麦生産区画と加工ラインが少し離れている・・・ここに製品を運ぶには一度物流システムの輸送ラインに載せる必要がある・・・例えばこれが隣接していれば物流システムの負荷を減らす事も出来る・・・はずだ。

 「・・・大体わかった、とりあえず計画としては食料生産は原材料から全て一つのステーションで行う方式に切り替えよう」

 「・・・だがこの区画は隣接してた方が良いぞ?外部からの流入の都合もある」

 「いや、内部で出来る限り完結させるべきだ・・・と言うのも、ズァパリ民国、ラクトパレト王国とは完全に断交する事態に陥ってしまっている・・・カーディナルがナーリス星系へ近づいたか、それとも侵入したのか不明だがドロイド艦隊の数が大幅に増加、民間船はもう走らせられた物ではなくなり、ズァパリ民国とラクトパレト王国はかつて作り上げた残骸トンネルでジャンプゲートを直結させて他星系からの船の出入りを出来なくしてしまったてるからだ」

 「・・・とは言ってもどこかしらの星系で繋がりはしてぜ?数カ月から一年くらいかければ一応それぞれの国には行けない訳でも無い」

 「とは言え、流石にズァパリ民国艦もそこまでの長距離には対応出来ないだろう?それくらい掛かれば流石の貨物も腐る。新生帝国に子供が居る商船は新生帝国に留まってるんだ・・・ズァパリ民国からの交易も消し飛んでしまってる。原材料は自力で生産しなければならなくなってるんだ・・・それを考慮して極力始まりから終わりまでまとめるべき・・・いざ輸入が必要なら近い区画に物流区画を増設すれば良いだろう?」

 「はぁ・・・今そこまでヒデェんだな?」

 「あぁ・・・どこぞのアホ国家が全く対処しないせいでな?・・・そしてそろそろそのアホ国家領内で開催される会議に参加しなきゃいけない・・・しかも面倒な事に対面だ」

 「・・・リモートで良いんじゃねーのか?」

 「しょうがねぇだろ?年一回の重要な会議なんだから」

 そう言いながらルーガをユリアスから追い出す、ルーガがユリアスから降りれば直ぐに出航の準備が始まった。

 ・・・それと銀河議会に出席、ズァパリ民国に関しては完全にサシリアの仕事となった。


 ・・・議会への出席もいちいち戦争をしなければならない・・・。

 道中もドロイド艦隊を相手にしなければならない、しかも近隣諸国も今やアズランド新生帝国軍頼み、必然と大艦隊になってしまいドロイド艦隊の注意も引き付ける。確かにルーガの言う通り、もうリモートで良いのでは?とも思っているが、年一回の議会役員選抜会議は銀河でも最重要な会議、各国出向かなければならない。

 「・・・もう、やる必要性はあるのかね?」

 なんとかしてたどり着いた銀河議会ステーション、エルムズデブラ首相はほぼ全滅の獣人族連合の席を見つめる。エステナ帝国は厳密に言えば消失した国だが一応L87がポツンと座っているのが伺える。そして皇国陣営は言いたい放題、新生帝国軍が12万隻の大艦隊を引き連れてきている事に対し各種色々な条約に違反しているとグダグダつべこべ言っている・・・それだけ連れてこないと帝国陣営とステラー王国、フルジア王国、シーモア共和国、ズァパリ民国の代表はここまでたどり着く事が出来ないからである・・・そうせざる得ない銀河情勢であると理解している国は何言ってるんだ?こいつらと言う顔をしている。

 ・・・正直もうこの議会に出席している国の半数以上は巨人族国家、誰がどの役員に立候補しようとも結局は組織票で負ける・・・議会とは何か、もうこれは公平な議会の場では無い。

 「・・・やる必要性・・・あったのでしょうか?」

 無意味だった会議終了後、サシリアもそうぼやく・・・あちらこちらでもわざとらしくあんなのやる必要あったのか?とぼやきながら自国に戻る首脳で行きかう・・・ユリアスに戻れば相変わらず行儀の悪いU-6がL87にどんな様子だったか聞いている・・・やはり無意味な時間だったと言うだけだ。

 ・・・幸い死人は出ていないが・・・。

 連れてきた12万隻も損傷が多い。トライアド民主共和国軍がエマンクリシット皇国領にアビーザ級補給艦を勝手に持ち込んで応急処置をしてくれている。修理プラットフォームのような船で主に自走不能艦の引き上げ及び野戦修理を行う目的で設計された船らしい。大破は流石に無理だが中破の艦艇を引き上げる目的で共和国軍は運用しており、巨人族の中でこの手の艦艇は比較的腐っていない共和国軍しか保有していない代物でもある・・・そもそも巨人族国家大半が保有していたとすればセルルド星系でセブンスターエンジンが簡単に入手出来ないはずでもある。ちなみにもうセブンスターエンジンは国産化が完了しており、それはセレストスピアー級の旗艦クラスに搭載されている・・・もちろんユリアスのエンジンも知らないうちにそれに交換されている。

 目の前の光景はトライアド民主共和国的に不利益しか生まない状況ではある・・・そして皇国軍も主砲こそ向けているがほぼ隣り合わせの超至近距離にも関わらず発砲しない光景もまた珍しい・・・なぜならここは敵対国の船が居ようとも如何なる攻撃は一切してはいけない銀河議会の係留区画・・・新生帝国軍は今回艦艇数が多すぎる為実はほとんどはここに入れてはいないがだいぶはみ出していても多めに見てくれる・・・いや、多めに見ようとしているのだろう。現場に近い程、状況がよく分かっている。皇国軍も運が悪ければ餌食にもなる共通の敵による攻撃を受けた事は良く理解している様子、目の前の艦隊は上からの攻撃指示を難癖付けて拒否している最中なので、損傷軽微な船から先に出発し、少しでも目の前の艦隊が時間稼ぎ出来るよう、ネタ作りに貢献して欲しいと民主共和国軍からそう言われた・・・会議に参加した国の船も早々に動き始めており、民主共和国軍はそこに新生帝国軍の損傷艦を誘導している・・・後日、民主共和国軍の行動は巨人族の間で強く批難されたがそれ以外の種族からは賞賛された。新生帝国としても感謝状は送付はするのだが、行きも一筋縄ではいかないのだから帰りもそう。

 「・・・もう・・・嫌だ」

 エルブルドソリス提督が泣き崩れる・・・相変わらず共和国軍の砲は直ぐに使い物にならなくなる。

 「ここに壁さえ築き上げればしばらくはシーモア共和国も時間稼ぎが出来るのですから何としてでもやってください」

 リーサがエルブルドソリス提督にそう言う。ロックベルト星系のジャンプゲート付近まではドロイド艦隊にひたすら追われていたが、ジャンプゲートより少し離れた所に損傷軽微な艦隊を先行させて配置している・・・これに合流した後、新生帝国軍による防護壁の構築が始まった。

 「帝国連中は我先にオロラ星系に逃げ込んだ・・・オロラ星系方面の国家はそれに便乗すれば良かったのだが何故人間族の国家が残る?」

 「L87・・・フルジア王国はアズランド新生帝国の隷属国家らしい」

 「建国してから10年も経っていない国がそれなりに長い国を隷属国家にしていると・・・ステラー王国すらも残るか・・・」

 「あそこの軍事はエステナと帝国のハーフ、戦闘あってこその連中でひしめき合ってるんだ。残らない訳が無い、そしてボスが指導して出来た国・・・当然隷属国家」

 L87は管制卓に寄りかかり、U-6は管制卓のど真ん中に胡坐をかいて座っている・・・おかげであの管制卓は使い物にならないが、目の前の状況は火力のバーゲンセール、作戦なんてあったもんじゃない・・・作戦を練らなくたって、リーサ達ならなんとかしてくれる・・・事実、ユリアスも闇雲に攻撃しているだけだ・・・適当に撃っても必ず当たる戦場なんだ。

 ・・・だが、砲身が耐えられない。

 新生帝国艦は持久戦に向かない・・・これは長射程故の欠点である。射程が長くなれば長くなるほどエネルギーも多く使う、たとえメソポタニア級無人爆弾船と言う外部電源付きだろうとそんな物をずっと連射し続けて良い物では無い。やはり、良くも悪くも昔からの付き合いの帝国軍のお下がりの方がバランスが良く、FT14型やMA30型、ZB8型等のネドリー運輸時代から運用されていた新生帝国軍の旧式艦が最終的に残る。後は砲が限界を迎えている・・・旧式艦と言っても就航からトータル1~2年程度のほぼ新造艦だけれどな?

 「ボスだろうとやっぱこれだけの数じゃこうなるか」

 「どの国だろうと、こうなる事は必然、むしろここまで長時間戦闘を継続出来る方が難しい・・・流石は我らがボスである」

 管制卓の上はゴミが散乱している・・・正直数だけが多く1隻単体で見ればそこまで苦戦する相手ではない為、大半の船員はする事が無い。戦闘開始から4時間経過、戦闘糧食では無く普通に艦内食が配られる。L87は管制卓の隅に食べ終えた空箱を置いているがU-6は結構散らかしている。管制卓が表示しているホログラムスクリーンはU-6によって隠れている為、どれだけの損害が出ているのかまでは分からないが、オロラ星系から引っ切り無しに交代要員や物資がやって来る為切羽詰まって居る様子ではない。数は順調に減っている為恐らく1時間もすればドロイド艦隊は一旦途切れるはずである。後はハイパードライブ航行で逃げ切ってしまえば良い・・・そして恐らくシーモア共和国はオロラ星系方面の国としか今後交易出来なくなるだろう。

 しかしなぜセルルド星系に残骸トンネルが作れる程のドロイド艦隊が流入してきているのだろうか・・・それは2カ月経ったある時、サシリア経由でズァパリ民国軍から報告があった。

 「ドロイド艦隊はオレスト星系かポライト星系、どちらに美味しいご飯が多いかを天秤にかけた結果、ポライト星系を選んだと・・・確かに現行皇国屈指の資源星系だ・・・ざまぁ見ろと言いたい所だが、下手すりゃ一周回って帰って来る事も想定されるってか・・・」

 「ポライト星系のお隣メソポタニア星系も、セルルド星系も資源が豊富ですからね。セルルド星系からはロックベルト星系かリストーン星系・・・仮にロックベルト星系を選んだ場合、爬虫類属が全滅、リストーン星系を選べば人間族が全滅・・・両陣営とも最終的に行き止まりがあるので追い詰めたのを見計らって銀河各国総出で殲滅作戦を計画すれば、この騒動は終わりを迎えます」

 「極端な話、そうだな?」

 「・・・ですが、どっちに流れても、結局は三つ目属連合の一人勝ちになります・・・むしろ帝国側に流れてくれる事を今後望むでしょう」

 「・・・ここは・・・もう滅びかけの人間側で引き受けるのが確実・・・確かにこのポンコツを起こしたのも人間、しかも俺だ・・・落とし前はいずれ付けなければならない・・・だが凄く・・・凄く納得いかない・・・」

 「もう、お父様も、新生帝国軍の皆様も十分過ぎる程にご尽力されました。ズァパリ含む昆虫族国家としても、獣人族連合の生き残りのラクトパレト王国以降に栄える国々としても、三つ目族の先に栄える国々としても、三つ目族が起こしたこの騒動を人間族や爬虫類属を犠牲に収める事にはとても納得がいっていません」

 ンミミッ・・・。

 サシリアは背中を丸めて指先をつんつん合わせて悩みこむ。

 「・・・チッ・・・とりあえずトカゲん所行くゲートの電源ケーブル引っこ抜いて帝国にそのまま流し込んどけよ、どうせほっといても虫の息だ、トカゲどもに比べれば犠牲なんてほぼ無いに等しい」

 「相変わらずUちゃんは極端ですねぇ・・・」

 サシリアはそう言いながらああいう大人になっちゃ駄目ですよーとA30に言い聞かせる。A30も言葉は普通に話せる。ズァパリ式の英才教育を受けている為、もう既にエステナ帝国人とは言えない準ズァパリ民国人になりつつある。

 「確かにU-6の作戦も一理ある・・・俺らはどうするんだって話だが、それもバーボン星系以降のゲートも同じ状態にすれば一応新生帝国も助かると言えば助かる・・・フルジア王国へのジャンプゲートは無いからあそこも無傷で済んじまうだろう・・・ステラー王国はうちで全員引き上げる事になるかもな・・・だがそうじゃない」

 「えぇ、そもそもドロイド艦隊はオヴィルツィッヒ帝国が作った兵器ではございません。エマンクリシット皇国の創造物・・・ここは創造主が責任を取って後処理をしてもらわなければなりません」

 「皇国にぶつけろってか?面白くねぇな?」

 エステナ帝国人は瀕死のオヴィルツィッヒ帝国滅亡が若干遠のいた事に舌打ちをするが、オヴィルツィッヒ帝国自体も残すところあと12星系、人間族の他の国家もアズランド新生帝国とフルジア王国を含めたとしても残り8カ国、人類は確実に滅亡への未来を突き進んでいる事となる・・・だが、アズランド新生帝国はエマンクリシット皇国から宣戦布告は受けているが、セルルド星系でアズランド新生帝国軍の船と鉢合わせしても戦闘にすらならない・・・こちらとしても基本的に向こうから攻撃してこない限りは巡視程度で鉢合わせしても攻撃はしないスタンスでいる・・・と言うよりドロイド艦隊の押し付け合いをしているだけなのでドロイド艦隊以外とは双方戦う余裕が無いと言った状況である。

 ちなみに言えば新生帝国軍はナバート星系を掌握した為、現状帝国領に追加の皇国軍が流れ込む事は無くなった。しかし既に相当数の皇国軍が流れ込み、基地を構築してしまっているので帝国軍の手腕しだいでは籠城戦を強いられている皇国軍だけでも帝国の掌握は割と現実的でもある。その点についてもエステナ帝国人的には何してんの?ボスぅ?という感じ、心の底から彼らはオヴィルツィッヒ帝国の滅亡を願っているようだ・・・本当に帝国は昔、彼らにどれだけ酷い仕打ちをしたのだろう・・・新生帝国はそう言う国にならないよう今後とも努力はしていきたい・・・今後があれば。

 「エマンクリシット皇国もそろそろ責任を取ってしかるべきと思います。その為の準備が必要ですが、巨人族陣営でも滅びてはいけない国がいくつかあります」

 「トライアド民主共和国には本当に世話になっているからな?あとルチア王国、スイェレデス人民国・・・トライアド民主共和国経由とはいえ、皇国軍の難民受け入れでだいぶ傾いた上に流行り病のダブルパンチで大迷惑をかけた・・・ネドリー運輸籍の貨物船はクソトカゲのお使いで何隻か行った事もある」

 「トライアド民主共和国近隣国は巨人族陣営でも比較的寛容な国家が多いです。そしてこの度の騒動に援軍を送る準備をされているようです・・・しかし敵対する相手と同型艦同士では損害も過大・・・出来れば帝国軍の中古兵器でも良いので主砲と船舶ジェネレータをトライアド民主共和国に1万セットほど送っていただけませんでしょうか?」

 「1万でいいのか?たぶん10万くらいあるぞ?」

 「向こうも搭載艦をそこまで短期間に作る余力はありません。それにキャバリー連合国に隣接するドルフィン族の戦闘人形は50mの大剣で戦うと言う、我々とは違った戦闘手法を取る国です。単純な接近物理攻撃は砲火力を遥かに凌駕します。向こうも向こうでさらに強力な兵器を携える国が後に控えております」

 若干サシリアはワクワクしながらドルフィン族の兵器の話を持ち出す・・・ドルフィン族とは、いわゆる人間的に言えばイルカやクジラ、サメやシャチと言った、海洋大型哺乳類に近しい容姿の集まりのような種族である、彼らが運用する戦闘人形と言うのが一般的な採掘で使われるパワースーツのような人型大型工作機械がもっとも近しいたとえとも言える珍しい兵器である・・・もっと分かりやすく言えば、ロボットアニメのロボット兵器その物だろう。サシリアもその手の人類のSFアニメを見て育ってもいる。

 ・・・で、夢を壊して悪いが、そのSFアニメがまさに今の現実ではあるのだが、何故人型ロボット兵器が普及していないのか、やっぱりエネルギー効率と耐久性、機動力その他・・・全て戦闘機に劣るからである・・・なので大体何処の種族でも採掘や建設などの大型重機として普及しているだけとなっている・・・が、ドルフィン属の戦闘人形は別格な存在・・・そもそも魚人族同様に2本脚の種族では無いのでデザインにも2本脚と言う概念が無い、よってそこに激しい動きに対応できるだけの大型ジェネレーターを搭載出来る為、エネルギー問題を解決出来ているのである。単純に銀河で主流なビーム兵器の技術が遅れている事から物理で殴る事を極めた結果でもある為、主にこの2つで唯一無二の戦闘兵器と言う存在となっているのだ・・・確かに強いのだが接近戦に持ち込まなければいけない為、結局の所は敵の懐に入り込む為の支援兵器は必須・・・とは言え、どこぞの生物兵器さん達の国みたいな交戦的な種族では無い為、戦争にさえならなければ一応気にしなくても良いとは言える・・・諸刃の剣極まりない兵器なのも確かである。

 U-6の顔を見れば、ボスぅー?うちらはどこぞの海産物の国とは違って生身で宇宙に出られねぇぞ?となんか言ってくる・・・やっぱりU-6は人の心を読む機能でもありそうだ。

 「トライアドの後ろは良いんだが、巨人族の領域を越えた先の国々はどうする?」

 「機械生命体国家のエズ・儀・Bレ帝国は最悪数でゴリ押すでしょう、彼らは話の通じるドロイド艦隊ですから・・・バリント族領の主要兵器は真空電圧砲、船体ダメージは期待出来ませんがEMP攻撃性能はどの国よりも群を抜いていますのでドロイド艦隊相手ならば人間族の船のよりも有効打を与えられると思います、それからー・・・」

 そこからサシリアは24カ国の特徴と軍事事情を並べる・・・巨人族の背後にはドロイド艦隊に対して自分達よりも有効打を与えられる種族が多いようだ。ちなみに全部知らない種族であり、何ともたとえが思いつかないザ・エイリアン系種族が多い・・・なんならバリント族領民の一部超大型種は生身で宇宙を移動出来る化け物級の種族である。

 ちなみに機械生命体種族もそこそこ居るのは皇国のやらかし由来であり、運よくAIが変にバクり散らかして他種族と共存出来た、あるいは近隣国がハッキングに成功して上手く無力化した等で安全になった種族である。いわゆる皇国版エステナ帝国がそこそこあるようだ。特にポンコツ代表格のエズ・儀・Bレ帝国民は元々バグり散らかしている上に簡単にハッキング出来てしまう事から数千年前から近隣諸国が民間のいざこざから皇国のやらかしなど良いようにこき使われてきた歴史があるらしい。それでも国として滅んでいないのは驚異的な自己生産力と、近隣諸国から愛されているポンコツという点・・・と言うか豊富な利用価値からあえてそのまま生かされているまでありそうだ・・・しかし皇国のやらかしに対しては銀河一のベテラン国が向こう側に相当数あるのは違いない・・悲しい事にここは巨人族領を挟んで反対側なので今まで手を貸してくれなかった・・・当たり前だろう。遠すぎる。

 「・・・そうか、皇国のやらかしって今に始まった事では無かったのか・・・」

 「テラフォーミングをやって半々の確率で失敗されているようですから・・・ですが、銀河三大派閥のうちの2派閥が壊滅になるほどの大規模な影響は銀河至上初と思われます」

 「・・・そっか・・・で、向こう側としては?」

 「大多数の国々は迎撃の用意があるとの事です・・・最も、支援要請があれば直ぐに行動を移せる用意をされていたようです」

 「そうならもっと早く頼るべきだったかな?」

 「そうでしたねぇ・・・」

 サシリアも失敗したと言う顔をしながら紅茶を飲む・・・そりゃ王女とはいえサシリアだって何でも知っている訳じゃない、なんならサシリアは人間族の領域で育った帰国子女だし、そもそもズァパリ民国は巨人族の向こう側の国とは爬虫類族を経由してさらに巨人族を挟んで間接的なやり取りしかした事が無い。分かりやすく言えばミヴェルマンが運んできた貨物をマドリニスゾリゾが加工で地上とやり取りして、エルムスミエルがその加工品を向こうに持っていくのだ。誰が持ってきて誰が運ぶかは完全にランダムだが、年に数十回は今まで実際に行われている事だろう・・・俺だって巨人族国家のその先からの国々は貨物の送り主としてしか見た事が無い、なんなら銀河共同体の別派閥の国々でもあり、船舶用ジェネレーターやシステムの規格自体が別規格で定義されているらしい。

しかしドロイド艦隊の自己増殖力は想像以上に凄まじかったようだ。それが分かり始めた頃にはカーディナルはメソポタニア星系すらも食いつくしていた。

人類の滅びの時間はもう目の前まで迫っていたようだった。

ー銀河の常識ー

・エステナ帝国

オヴィルツィッヒ帝国にかつて存在したアマリ工業によるテラフォーミング計画の失敗の産物によって生まれた国で、人造人間国家である。

エルデナン星系の主要個体惑星であるハードックは人類が先に実施していたが同時期にファラット人民国も領土拡大に動いており、領有権を巡ってファラット人民国と戦争になった。この時投入されたのが人造兵器であるエステナ型含む強化クローンだった。

強化クローン産業はアマリ工業に絶大な利益をもたらし、アマリ工業は一躍有名企業となったが一方でシノノギ製薬とも企業戦争を起こしており、汚職の噂も絶えなくなっていた。

その後発生したエステナ型の暴走事件はオヴィルツィッヒ帝国軍に大損害をもたらしオヴィルツィッヒ帝国はエルデナン星系の放棄を下し、暴走状態のエステナ型をファラット人民国に押し付ける形を取った。

しかしエステナ型は単に力を暴走させた訳では無い、作られた生命が自然に生まれた生命の命を奪って良いのか?アマリ工業の研究員の残した問いに対する答えを模索し、帝国から独立した後は獣人族連合と和平を持ち掛けた。その後獣人族連合首脳国であるリビューイ帝国に国として認められ現在に至る。

エステナ型の暴走はシノノギ製薬の工作と言う噂もある。

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