ファランス ツェルナ
スミオル ミヴェルマンの娘、ファランス領の607代目領主。クローンを除いては初の他星系生まれで特に財源の無いファランス領の大改革をもたらしている。ズァパリ民国人は親の家業を継ぐ事が絶対とされているが、運輸業についてはそれに囚われない為、地方領主家系であるスミオル家の家業が優先される。
血液型はNW50型、検体番号はTY6325。
ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー
・シーラスLZ級戦艦
リビューイ帝国リージェン社製の主力戦艦。種族的に大型種族の為船体はジャンプゲートギリギリの巨体となる。
大きさにしては機動性能はかなり機敏ではあるが、砲の射程が短い傾向にあり、接近戦などの格闘戦を得意とする。
アズランド新生帝国では回収してきたものの、置き場に困る事からLRB超新星砲のテストベットとして修理のついでに改修された。
・シドニアⅢ型航空母艦
エステナ帝国製の航空母艦。銀河で最も優れた航空母艦として評価が高い。外観デザインは大きく異なるものの、主設計はAT1航空母艦をベースとしておりAB-6000型航空母艦と同じバリアントタイプとも言える。
性能はとても良いが居住性能は艦内はグレー一色、椅子と言う椅子にクッションは無く、船員室は何もない部屋のみ、食堂に調理器具は無く糧食提供のカウンターだけとかなり世紀末な物である為居住性など無いに等しい。アズランド新生帝国ではAT-3型航空母艦の内装部品が一部流用された。
アマリ工業は人造人間を作っていた企業ではあったが武装し、思想が反社会的な面も強かった為地球連邦軍により解体されている。エステナ帝国はアマリ工業の末裔でもある。
アズランド新生帝国の最優先事項、それはドロイド艦隊の発生源を絶つ事にある。
既に補給線は伸びまくり、これ以上は伸ばせない。入植が進んでいない星系にロジスティックステーションを無駄に建築してもいる。将来的にネドリー運輸の負債になる気しかしない。
貨物船は無尽蔵だが人は有限、セルルド星系の物流情勢の都合で本来行き場を失って余るはずだったネドリー運輸の大型貨物船はまさかのフル稼働しているし、資材系不法投棄船もとい、バルク船がまさかの足りない事態となっている。その背景には補給基地がある。補給基地、とりあえず資材が置ければそれでよいので工業プラットフォームや元ドロイド艦隊のステーション、工業プラントの土台をひとまずは使う、そしてそれが不要になるまでの期間も短い為、要塞ステーションに建て替えては星系開拓を進めて居るのだ。コロニーと言う名の資材置き場ステーションもかなり多く、星系開拓をしているうちに住めなくも無い惑星もちらほら見つかった。だが居住できる人口が無いので現状は見て見ぬふりをしなければならない、将来的には植民地化しても良いだろう。
しかし補給線の整備でかなりの期間を使ってしまった・・・その期間中にやけにとある目的で訪れる帝国の王族や、地方当主が増えた、狙いは・・・エルゼである。
「わたくしは、ファルマン エルゼでございますが?」
「エルゼ シュニッツェル皇帝陛下、是非とも我が息子ガーランド王国第一王子、ラル ガーランドとご婚約頂きたく・・・」
「既に、既婚の身ですが、何か?」
足を組んで威圧的なエルゼ、最近は辺境の王子王女その他が毎日のように縁談にやってくる・・・王女や地方行政の娘も来ると言うので俺にも縁談に来るのかと思いきや全てエルゼ シュニッツェル目当てである。意外と需要がありそうなファーレンヒ元皇女でもない。
エルゼは赤ワインが入ったグラスを縁談に来た王子その他に投げつける・・・ちなみにエルゼは未成年、当然飲酒をしている訳では無い、格安スーパーのよく分からない一本500クレジットの激マズ激安ワインとプラスチック製のグラスである。グラスがカンカラとお粗末な安っぽい音を立てて転がった。
そんな対応をすればどうなるか、縁談に来た王子らは確実に舌打ち、大概は殴りかかるまでは通例、そこまで来れば全方位からビームライフルの銃口が向けられる・・・外交としては敵意むき出しもいい所だが正直新生帝国としても帝国領内の田舎と外交関係を構築してもメリットと呼べるメリットが無い・・・強いていうなら向こうにしか利点が無いのである。まぁ当たり前だろう、もはや帝国より強大な軍事力と経済力、帝国よりも多種族との国交もある。そんな第二の帝国と婚姻で関係を構築すれば優先的に国土を守って貰えると言う物と言う訳である。その関係構築にもはや男女関係無い。その場しのぎの関係構築が行われている。その対象地域がナバート星系周辺の国々、魚人族の状況を察した国々が自分たちのプライドを保ちつつも関係構築に必死になっていた。しかしこれらの国、先ほど田舎と称したようにアズランド新生帝国とは帝国を挟んで反対側の国々である。実は帝国領自体も地味に入り組んでおり行き来には時間がかかる、おまけに通行料や貨物検査をする国も複数経由しなければならないので最短ルートを使う場合は大型貨物でも赤字になる可能性がある程、それを回避するとなればリストーン星系からオレスト星系まで行くより時間と労力が掛かる・・・よって外交相手にはかなり向いていない国々、もちろん民間船でこのザマなのだから軍艦をそんな奥地に配備するのはさらに不可能とも言える。帝国が自力でなんとかしてもらう他無いし、その為にその方面に回せる以上の軍艦建造はずっと続けて居るのだが、うちの国には馬鹿が多い・・・帝国に認められる為だの、帝国の後ろ盾が無ければ新生帝国は戦に負けるなどと色々なこじつけを付けて属国主義派の大臣達がエルゼに縁談を強要させていた。だからエルゼは毎日のように縁談の面会スケジュールで多忙なのである。そこをついて俺を狙うのも若干名居るが、これらは完全に身内とも言っていい。ひとまずはダリアのお陰でだいぶエルゼの補佐官としての負担が減った複数人が俺を狙うのだが、エルゼ自身も隙を作らない。エルゼに対して強引な夜這い外交とやらも発生したので宮殿はローラ達が日々警備と中々に物騒、普通ならここまで面倒な事になるはずが無いのだがこれを口実にエルゼはユリアスに寝泊まりするようになったのだ。確かに生半可な攻撃では穴も開かない厳重警備の鉄壁の要塞なのだがこれはいかに?
この問題をどうにかするには向こう側の脅威を断つ必要がある。それにはやはりメルト星系の掌握が最優先、ひとまずは眼の前でリユン元帥が子供を抱えてクルクルしているが、現状この人は戦線離脱状態、前線を仕切って居るのはユーノドア元帥、その補佐でフランクリン大将やドーベック将軍など・・・いつものユリアス艦橋に主要なメンバーが集まって居た。
「アルバマス星系、想定はしていましたが残骸だらけで艦隊運用が出来ません」
「・・・その残骸は民間やコロニー問わずだよな?よくジャンプゲートが詰まらなかったのかが不思議だ」
・・・そう、獣人族連合の軍艦とドロイド艦隊の戦闘で出来た残骸、そしてそれに巻き込まれた民間船、コロニー類・・・アルバマス星系 にある物全てが残骸と化した、しかもアルバマス星系は典型的なウルトラ人口超過密星系・・・普段から貨物船すらも身動きが取れない程物が多すぎる星系である。そんな星系にドロイド艦隊の超大艦隊が流れ込んでみろ、当たり前だが100隻流れ込んだだけでも身動きが取れなくなる。そしてジャンプゲートで詰まりが発生してしまうのである。
「ドロイド艦隊に生命維持システムは必要ありませんからなぁ?」
「えぇ、船体に穴が開こうとも関係無く動く物全てを破壊して回ったのでしょう」
カトロニコフ元帥とワトソン元帥がそう言い出した・・・ドロイド兵器に生命維持が必要無いから船体に穴が空いた所で酸欠にならなければ痛みすら感じないのである。
「ドロイド艦隊にとっては正直スペースデプリによる損傷は大した物ではない・・・言われてみれば確かにその通り・・・問題は皇国艦隊がどうやって艦隊を持ち込んで来たかだ・・・勿論船籍偽装はしているだろう」
「それにつきましては無人偵察艦よりあらかた経路を算出いたしました。当たり前ですが残骸はステーション付近に集中しています、そこを避けるように通れば艦隊を持ち込む事も可能でしょう・・・いくら空間不足でステーションが乱立しているとはいえ、幹線航路があります、幹線航路をかなりバイパスして来たようです」
「これは、まぁ面倒な・・・」
ユーノドア元帥が持っていた星系図、星系の端から端まで、かなり迂回を重ねていた。そもそも星系丸々が大きな都市と言っても過言では無い、ハイウェイと呼ばれる大きな航路もあるが、ER-3000Cでもフル加速しきれない程度に航路がかなり曲がっている。平常時でもさぞかし大変だろう、下手したらエンジンが焼きつくレベルである。
「コロニー1基を家一件換算したとしても推定数千京棟・・・これが全てスペースデプリと化しているのだから規模感が全く分からない」
「さように御座います、ここまでゴミだらけな星系、補給の事も考えればやはり宙域清掃は必須、サルベージ部隊を動かさざる得ませんでしょう」
「進軍をするにもやはり残骸が邪魔で仕方がないでしょう・・・これはかなり時間を費やします」
指揮官達は悩み込む・・・一刻も早くメルト星系の掌握を進めるべきだが残骸除去をある程度行わない事にはメルト星系に艦隊すら送り込めない・・・ここは時間が掛かってもやるべきである。
「・・・とりあえず、サルベージ艦隊は送り込むとして・・・出来た金属資源はどうするんだ?」
「それはもう・・・途方も無い金属資源は脳死で要塞ステーション建設に費やす他無いでしょう?」
「・・・まぁ、そうなるよな?どれくらいで片付きそうなんだ?」
「どんなに早くても半年は掛かる事でしょう、ですが、今までのサルベージ品目に無い物が数点御座います」
ドーベック将軍は目を光らせる・・・あぁ、そう言えばもっと厄介な物があった。
「・・・コロニー・・・だな?」
「えぇ、それと遺体です」
アルバマス星系にはセルルド星系などの残骸には無い巨大構造物その他がある。処理に時間がかかるステーションが代表格だろう・・・コロニーはただの金属の塊ではないのである。その他にも獣人族の艦船の処理、また、犠牲者の対処など問題はかなり、実際にサルベージ艦隊を派兵してみれば真っ先に遺体処理問題にぶち当たった。結局は火葬する以外に方法が無いが、やはり面倒な馬鹿共がいる、属国主義派である。割とエルゼを外交道具扱いしており、何ならファーレンヒすら利用を考えて居るほど・・・アイツらの不思議な帝国愛は非常に不可解だが獣人族の文化を重んじて火葬を認めないだのかなり面倒な事を喚いては日々のデモを煽るネタにしている。もちろん新生帝国皇族としてはフル無視を決め込む方針、工場プラットフォームは大変便利な物で一日10億人処理出来るという、銀河一不謹慎な火葬場が直ぐに組み上がる。
なお、ソルが言うには土葬の方が少数派だそう。理由なんて埋める土地がそもそも無いから・・・適当な事を言うアホがこの国には多いな、いや、帝国人だからか、とか呆れてもいた。
「で、なんで直した?」
「リージェン シーラスLZ級戦艦、マルバ スベリアCC級戦艦、アマリ シドニアⅢ型航空母艦その他、戦闘艦から貨物船まで24種類、まぁ大半はズンドラ王国外の隣国製が多いが全部珍しいだろ?」
「・・・他にする事があるだろ?」
「若造大将が優秀過ぎて損失はおろか損傷艦すらほぼ出ないんだ、計画してたドックと人ががら空きでもったいないだろ?」
「だがうちの艦隊に機動性を求める艦隊は必要か?」
「あ?要らないだろ?とりあえずコレクションにしておけよ」
「いらねぇよ!」
戦艦やら、確かに機動性は良いと聞くが高速低火力と鈍足高火力がある時点で特に必要性が無い、貨物類はどうかと言われてもソルの体格にはあまり合わない種族の船、人間的にも少し窮屈に感じるくらいのサイズ感である。本当にリズの産業博物館のコレクションに加えるしか使い道が無い。もちろん昆虫族は毛嫌いするモデルも多々ある。
・・・しかし意外な事にリビューイ帝国艦が中々多い事・・・何故だろう?
外のシーラスLZ級戦艦を眺める・・・とても大きい為どうしても目が行ってしまう代物である。
リビューイ帝国はドラゴン系の種族の国、獣人族でももっとも寿命が長い種族であり、獣人族を代表する種族とも言える。巨人族の次に寿命が長い種族である。人間的には爬虫類族だとは思うが、あくまでも獣人連合は近隣諸国の集まりなので一概に全てが獣人とも言い切れない。しかし昆虫族は居ないのは確かである。理由は食用とする国が多いからである。
リビューイ帝国艦の特長は種族的にも大柄なので艦内が広い事、だが使い道があるかと言えば無いのも確か、シーラスLZ級戦艦は格納庫に収まらず浮いて居る。ルーガの案内で内覧はしたが、必要性はやはりイマイチな所が多くて運用しようと思えない。サイズ的にも人間族には少し大きい、流石にRB26迫撃戦艦よりかは小さいが、それでも似たりよったりなサイズ感、まぁもちろんルーガの事だ、余計な事をしてある。
艦首には何処かで見たことのある固定式主砲が装備されている。LRB超新星砲だ、もちろん未搭載艦もある。
シーラス級の優れる所、部品供給は無いがこんな物を搭載出来るスペースとそれに釣り合う船体があると言う所、もちろん超新星砲も量産品ではないので搭載しない艦もある。速力は毎度おなじみセブンスターエンジン換装により多少改善、元がこの巨大に対して高速な部類なので艦隊旗艦として投入が最適解か?武装は射程が短い傾向なので、銀河目線で言えば貧弱極まりない物だったが、これはやっぱり帝国兵器に換装する事で改善出来る、良い船かと言われればじゃじゃ馬だが、艦隊の中核に置くのに丁度良いサイズだったから運が良ければそこに収まる事となる。
もちろん他の船も負けず劣らずのバランス補正を施した、しかしある種族は毛嫌いする船なのである。
その種族の労働者達はとある心配をそろそろしていた。
「小型機・・・のせいか?」
「いえ、宇宙に出た事が無い子にも一部、同じ症状が・・・」
「・・・多分、カップラーメンじゃね?」
「・・・そのような事も、無いようですが」
ツェルナのお世話係はションボリする。育て方が間違っていたか?そんな心配をしていた。その理由はシリウスの姿にある。
あのわがまま駄々っ子も既にルシャーサと同じ背丈、どちらかと言えばスキャンダルで一面を飾る事が多いようだが、おかげで成長具合が良く分かると言う物・・・しかしツェルナ、おまけに言えばサシリアの身長は未だに170cmくらいで伸び悩んでしまっている。これは確かにお世話係も心配するレベルで発育が悪い。だが幼少期に宇宙に出したからとか、毎日カップラーメン三昧・・・とか色々理由を付けたとしてもこのステーションにはそれ以外にこの推測に当てはまる子と当てはまらない子が沢山居る。ではステーションの重力設定が悪さしたか?これも違う、半数以上が既にツェルナの身長を超えているのだ。とりあえずはクソトカゲを呼び出すしか無い。
しばらくすれば星系警察の巡査クラスがエルムンドドエルを連行してきた。
「ステーションの管理者の扱いを改めんか!」
「悪いな、このステーションは国営なんだ。ツェルナ達一部の成長が止まっている気がする理由を知りたい」
「なんじゃ、そんな事かのー?」
「場合によっては結構大事だぞ?」
「初期ロッドは孵化すれば成功!成育にトラブルが起きやすい問題に気が付いたのはごく最近!」
「この野郎!」
「この世に生を成すだけでも大成功じゃろ?!マテ!早まるでない!」
とりあえず何となく置いてあるビームライフルをエルムンドドエルに突きつける。いつもと違う所は退路を完全に抑えてある所である。
「安心せい!産卵に若干影響があるだけ!他は至って問題とならない!」
「本当にそれだけだろうな?」
「多分!」
そう言いながらエルムンドドエルはその場で高速回転、だが僅差でエルムンドドエルが負けた。今にも折れそうなビームライフル、それで真っ赤に腫れ上がった尻尾を抱えてエルムンドドエルは涙目でドタバタ騒がしく走り回る。
「・・・で、実際は?」
「産卵数の低下に次世代の子に何らかの影響が発生するかと思います」
ついてきた科学者がタブレット端末で研究資料を見せて来る。背の低い子には全てが同じと言う訳でも無いがある程度共通点があるらしい。脈拍が既定値以下の低心拍数、それでいて血圧は若干高め、血液型は決まってNW50マイナス型である事にある。血液型は勿論親由来だが、もちろん個体差はある、同じ条件でも大きくなる子は居るのだから。
それを聞いていたツェルナは大泣きする・・・訳が無く、何故か目をキラキラさせていた。
「それ本当!?」
「実際に検査してみなければ分かりませんが、確かツェルナ様の血液型もNW50マイナス・・・ちなみにサシリア様も同じくですので可能性は非常に高いと思われます」
「やったぁ!」
「なんで喜ぶんだよ!?」
「えー?だって大人になってもスーパーカー乗り放題!洋服はママみたいに特注しなくても良い!ドアに頭もぶつけない!このステーションで暮らすには都合がいいじゃん!」
やけに上機嫌なツェルナ、言われてみればそう。ミヴェルマンもたまに事務所のドアに頭をぶつける・・・人間族の建築物は他種族には少し窮屈な物・・・それは車や船にも言える・・・昆虫族の子は成体になったらもうスーパーカーなんて背の低い車は乗れた物ではなくなり、エルーラモータースの三流高級ミニバンデビューを余儀なくされる。
ツェルナは精密検査の為に科学者についていった。戻って来たらサシリアも居る。もちろん彼女も大泣きした・・・痕跡すら無い。ツェルナと同じく非常に上機嫌・・・それも背丈を代償にとんでもない副産物ももたらした・・・寿命である。
「・・・失敗も悪くは無いな?」
「推定寿命はおおよそ100歳前後・・・勿論薬未使用での数値です・・・かなり人間族の遺伝子の影響を受けてしまっているようです」
「その遺伝子情報は跡形も無く書き換えられたはずなんじゃ?」
「おぬしの遺伝子は単純で使いやすかったんだがの?割と堅牢でもあったようじゃのー?遺伝子レベルで寿命を伸ばす研究が少し難航気味ではあったが、もう既に一部は伸びていたとは予想外じゃのー?じゃが運次第なのは成功とは言えない・・・この線でもう少し研究を続ける必要がある」
エルムンドドエルがコーヒーを飲みながら溜息・・・寿命が短い昆虫族的には魅力的な失敗なようだが、これが差別を招く・・・とは言え、ツェルナはアズランド新生帝国に住む昆虫族の子供の中で最も年長者、サシリアなんか敵に回せばビザ更新をしてもらえなくなる事が幸いしてか、そこまで大きな問題にもならなそう・・・だが、明確にズァパリ民国の国政に影響をもたらす問題でもある。それはシリウスにある。実は王族でもルシャーサとテティアの血液型が異なる。ルシャーサ女王陛下はズァパリ民国古代種の血とも言われるDF00型、事実上のズァパリ民国王家特有の血液型に対して、テティア女王陛下はNW50マイナスと比較的ズァパリ民国一般国民の2割を占めるちょっぴり珍しい血液型と言う点である。その為サシリアは遺伝的にもNW50マイナスとなる訳だが、当然シリウスはDF00、同時期に受精卵になっていても古代種の血はそう簡単に外来遺伝子に負けるはずも無く、身長はルシャーサ女王陛下と同じと来た・・・ここまで来れば、寿命はもはやサシリアの推定寿命の半分、エルムンドドエルがまたテコ入れしなければズァパリ民国古代種の血が途切れる事となる、他にもサシリアがシリウスに取って代わり、国家運営もあって不思議では無い状況、そうでなくとも王位継承関連でばらつきが生じる、様々な国政問題に発展する事はもう回避出来ない。
そんな事は全く考えていないサシリア、目の前でツェルナとネットショッピングに夢中・・・タイムセールで新しい服を探していた・・・勿論加工は必要だろうが、それに関して言えば屋敷の使用人に頼めばいくらでもと言う様子・・・事実、作られた方の獣人族はかなり手先が器用である。
ちなみに目の前の二人はそれなりにイマドキの女の子に育っているが、ズァパリ民国にネットショッピングの概念が無い事も忘れてはならない・・・だって本来は身の回りの世話も生涯にわたって自分で産んだお世話係に任せる種族なのだから・・・。
とりあえずは難しい医学用語を呟きながらコーヒーをフリードリンクかのごとく無限におかわりするエルムンドドエルを追い出して仕事に取り組む事とする。エルムンドドエルを連行していった海兵隊は頼んでも居ないはずなのにもかかわらず新古品のビームライフルを置いていった・・・アズランド新生帝国には執務室には必ずビームライフルを置かなければならない決まりでもあるのだろうか?折れそうなビームライフルは新古品に変わってしまった。処分に困る粗大ごみを無料で引き取ってもらったととりあえず考えておこう。
メルト星系を目指して4カ月も経った・・・目の前には修理を終えてしまった様々な貨物船群がおおよそ3億隻、軍艦も4万隻くらい・・・売れる種族も昆虫族の小柄な種類に限るのだが、大部分の昆虫族は毛嫌いする艦種・・・おとなしく全てスクラップが妥当ではある・・・リビューイ帝国製に限ってはラクトパレトの商人に丁度良いのでこの辺は良く売れる。リストーン星系の元粗大ごみ群は使い道があるから許そう、皇国艦は新生帝国的には産廃扱いだがトライアドの人達に需要があるから一応まだ許せる範囲である。あのドロイド艦隊の船でも使い道があると言うのに獣人族系の船舶は本当に行き場が無くて困る。
・・・元ドロイド艦隊のメソポタニア級などは特殊な改造を施して前線送り、この産廃は新生帝国軍を4カ月でようやくメルト星系まであと1星系のジャンプゲートまで進める事が出来た・・・しかしあくまでも一応開通しただけであり、本格的な宙域清掃は未だアルバマス星系のおおよそ真ん中・・・正面にスノープラウのような船体より大きいドーザーを取り付けたメソポタニア級はあくまでも調査坑を掘っただけに等しい。その調査坑はサラマンダー級がギリギリ通れるほどしか無く、大艦隊をメルト星系まで派遣するのはまだまだ厳しいと言う状態・・・しかもステーションを避けつつなので直角カーブも多い迷路・・・だが、本坑も広いかと言われればRB26迫撃戦艦がギリギリサイズ、おまけにリサイクルプラント一万基が作り出した建材が投棄されている。それらの回収もメソポタニア級が行っており、とりあえず空間があるアウロラ星系に集積所を作ってそこに放置している・・・これを使うか使わないかは数百年後のアズランド新生帝国か、魚人族しだいと言った所ではある。しかしこれは金属資源だけに限った話・・・獣人族連合と言えばコロニーを作る為だけに惑星を数百億個を丸々消し去った歴史のある種族である・・・コロニー解体で出る産業廃棄物をどうしているか、いい加減気になって来たのでイヴィーラ交通大臣を呼び出した。
「それでしたらバーボン星系の人工惑星に投棄しております」
「へぇ・・・?」
「元々は小惑星でしたが、アズランド新生帝国国内の産業廃棄物の最終処分場として利用しておりました・・・しかし、我々は人類が建国してきたどの国家よりも比べ物にならない程の短期間で人類最大とも言える国家に成長しつつあります・・・その代償として出た産業廃棄物の量も凄まじく、いまでは重力を持ち、初期に投棄していた核廃棄物系の産業廃棄物の溶解が確認されています」
「・・・へぇ」
「地殻構造は金属関連の産業廃棄物ですが、近隣の小惑星も引き寄せるようになり土砂や氷と言った個体惑星を構成する主要な成分を引き寄せながら更に体積を拡大中・・・まあ、人工的にも投下しておりますが・・・このまま行けば居住可能惑星になるのに5年程でしょうか?」
「・・・5年で星が作れる・・・のか?」
「それだけ産業廃棄物が多いのです・・・処理しきれない金属ゴミ、膨大な数の核融合炉、ドロイド艦隊が食い散らかした惑星の残骸・・・単純に我々が出した産業廃棄物など惑星の体積の3%にも及びません、ちなみに同様の惑星はあと4惑星あります・・・いずれも将来的には居住可能惑星になるように天文学者が計算した上で制作しております」
「・・・そうか、土木や医学に詳しい奴もいれば、天文学者くらい居るか・・・」
「・・・ひとまずエリナスⅠ産業廃棄物処理惑星が成功すれば、カルラ星系等にも惑星再構築計画を実行予定との事ですが、成功するかは別として、直ぐにでも動くべきだとは思います・・・でなければ、ゴミの行き場が無くなります」
イヴィーラ交通大臣はそう言いながらエリナスⅠ産業廃棄物処理惑星計画を渡してくる、元々はバーボン星系のセントラルプロムナード型ステーションが出来た頃から存在している最終処分場らしく、当初はメソポタニア級フリーゲートに雑多なゴミを詰め込んで小惑星に積み重ねていたが、処理しきれないメソポタニア級フリーゲートの残骸をそのまま重ねるようになり、体積があっという間に増え、今となっては直径1万9千kmを越えている。一般的な個体惑星の主要構成である金属でほぼ構成される人口惑星で、圧縮の為に小惑星をぶつけており、直径は減少傾向、最終的には1万3千kmを目指している、自転もしており、候補宙域も理論上は居住に適した位置関係、現在ではメソポタニア級フリーゲートを圧縮熱で溶かして液体外殻にするフェーズに入っており、不足しがちな岩石の成分を小惑星で補っている状況、天然から人工的な衝突も含めてポンポン小惑星を突入させている。メソポタニア級フリーゲートに限らず船舶は根本的な材料は一般的な惑星を構成するおおよそ全ての金属資源を使用している為、上手くいけば居住惑星の地殻を再現できる可能性があるとの事。この工程で獣人族のステーション解体で出た土砂や、航路上の小惑星処理でターゲットになった小惑星もメソポタニア級フリーゲートに押し込んだり、引っ張らせたりして10分に1回のペースで土砂が惑星に落とされていると言う相変わらずのパワープレイ、これにより今までの資源の無駄使いの1億倍以上の無駄使いを実現、しかも失敗した所でただの資源惑星が出来るだけと言う状況は旨味しかない。それにこの計画自体は元々無人艦であるドロイド艦隊を使っているだけあり、使う船は多少の修繕だけであとは走らせっぱなし、ほぼ無人で惑星を作っている為費用がほぼ掛かっていない様子だ・・・それをもってしてもドロイド艦隊の残骸は中々減らないのだからドロイド艦隊は増殖の為にかなりの星を粉砕し続けたのだろう。しかもドロイド艦隊のAIは厄介極まりなく、領域を拡大しようとする機能があるらしい。天文学者が居るんだから当然プログラマーやハッカーも居るのだ・・・そう言えば諜報部隊は元々そう言うのが得意な集団だったか。
新生帝国軍の諜報部隊は現在ある物を探している、リユン元帥から聞いた話だがドロイド艦隊にはマザーシステムが存在する事が分かっている。ハッキングを仕掛けようとしてもズァパリ民国人よりも複雑怪奇なコロニー形成で艦隊が運用されており、マザーシステムに到達出来ないのが現状、マザーシステムがステーション搭載であればとっくのとうに発見されているはず、発見されていないと言う事はマザーシステムが艦船搭載型である可能性が高いと言う可能性が現実味を帯びてきた。このマザーシステムが生きている限り、ドロイド艦隊のステーションは無限に増え続けるし、資源採掘プロセスも止まらない・・・新生帝国軍ではこの存在をカーディナルと名付けて追っている所なのだ。
「一応、カルラ星系の開拓計画はこちらになります」
「元々あった天体の再構築と追加で居住可能惑星の構築・・・星を作るなんて銀河中どこの種族だってやった事ないんじゃないか?」
「恐らくはそうでしょう・・・ですが、銀河を埋め尽くす産業廃棄物の処理にはもう惑星レベルの地殻エネルギーの力に頼る他ありません・・・そもそも全て元々は惑星だったのです、住めるか住めないかなんて元々そこまで気にしてはいけないのです・・・何故か上手くいっているだけです」
「・・・我々は神になったつもりになるしかないと言う事か」
「つまりはそのようです、アルバマス星系の惨状を見ればカルラ星系開拓計画も直ぐに進めるべきとは思いますがいかがいたしましょう?」
「・・・やってくれ」
「かしこまりました」
イヴィーラ交通大臣はこれで少しは銀河のゴミ問題をしばらく先延ばしに出来るような顔をしながらユリアスを下船していった。
「・・・俺、確か商人だったよな?」
タブレット端末を見ながらそう思う・・・惑星を作るとなればどれぐらいの国家予算が消し飛ぶのだろう?残念ながらメソポタニア級フリーゲートの選別要員から運航管理の約7千人の給料だけ、1億クレジット程度と規模に釣り合わないレベルの予算で済んでいる・・・こんなにお安く惑星を創成して良い物なのだろうか?
「・・・そう言えば、あの人交通大臣だよな?」
人工惑星の建築など、交通大臣の仕事では無いはずなのも確かだった・・・やはり彼女はアズランド新生帝国の何でも大臣である・・・どう考えても彼女の仕事では無いはずだ。
あれから半年過ぎた・・・過ぎてしまった。
エリナス級惑星は順調に数を増やし、今やエリナスⅧまである・・・のんきに惑星を創成している時間は無いはずなのだが、半年も過ぎればナバート星系である問題が発生してしまう・・・皇国は完成させてしまったのだ・・・ハイパージャンプ装置を・・・。
だが、MA40型重巡洋艦やZB9型フリーゲート、AT4航空母艦、FT14戦艦等、帝国軍も欲しがるであろう新鋭艦がシン造船社やユーリアス社の造船ドックの保管宙域から溢れてステーションの沖止め宙域の係留スペースを圧迫し始めている・・・それはもう、1隻2隻盗んでもバレないレベルにだ・・・だが海賊船として使おうにもオーバースペック、軍用艦なんて貨物スペースも無いので商船会社も欲しがらない・・・一応言っておくが、AT3型航空母艦、確かに大量に貨物を運べるが、非常時では無い限りは何処のステーションでも毛嫌いされる代物なので、ハイパーキャリアー輸送対応の専用港があるマスビダ星系とバーボン星系間に限られる・・・そのシステムを主に運用する物流会社もネドリー運輸しか無いので他ではまず使いこなせない船である・・・なんで毛嫌いされるって?物流システムをぶち壊せるからだ。
「これ以上ステーションの沖止め宙域を圧迫しないでください!」
「確かに作り過ぎましたが、交通大臣もスペースデプリにお困りでしょう?そう言われましても・・・」
「もう帝国にはあの量の軍艦を運用する人手すら居ないようですから・・・これでもセルルド星系で運用されていた十字遠征軍の3分の1なのですけれども・・・」
「確かにこの数は十字遠征軍で編成される総艦数の3分の1です!確かにスペースデプリにも我々は悩まされています!ですが民間の宙域をこれ以上圧迫しないで頂きたい!」
・・・そもそもここは会議室でも無いはずだ。
いつもの休憩スペース・・・ここからは沖止め宙域も見える。最近はすっかり自販機も置かれるようになり、リストーン星系とほとんど違いは見られなくなっている。違いと言えば品揃えか・・・少し高級なドリンクや弁当などに変わっている・・・だがここは休憩スペース、なんなら廊下の一部でもある・・・ここにシンとユーリアスの社長が交通大臣に怒鳴られながら紅茶を片手に漆黒の宇宙を眺めている。紅茶は自販機では作れない、ここは給湯室も併設している、ローラがいつものように淹れた物である。給湯室が無ければ自販機のカップラーメンをどう調理すれば良いと言うのだね?そう言う訳で給湯室は併設されている・・・勿論カップラーメンが理由では無いし、リストーン星系のセントラルプロムナード型ステーションの休憩スペースにも元から存在している。ここの基本設計は変わらないはずだ、実際変わってない。
「少なくとも、行きだけは帝国行きの旅客船なんですから良いでしょう?」
「ユーリアス君のいう事にも一理ある・・・まぁ、行った所で元帝国民なら即徴兵なので一人も乗らないが・・・おかしい、帝国経済に戻りたいと騒ぐ奴はわんさか居るのに・・・」
「それはただ単に帝国経済の恩恵だけを受けたい自分勝手な奴らが毎日毎日暴動を起こしているだけよ!いいから片付けて来なさい!ここは宇宙よ!置ける場所なんて未開拓の宙域にも沢山あるわ!」
「へーい」
二人の造船会社の社長は渋々休憩スペースを立ち去る・・・これらの艦隊は翌日には全て居なくなっていた・・・何処に行ったかって?おおよそ30万隻は全て火星の衛星軌道上に捨ててきたそうだ・・・これにより対話すらする事が無かった帝国軍より修理の受け入れや艦隊運用の障害になると直接苦情が来ている・・・修理の受け入れなんか辞めて乗り換えてしまえば良いとルーガが言い返したそうだ・・・どうしても直したいのならうちで変わりにやるとも言ったらそれ以降不法投棄の件について帝国軍は何も言わなくなったらしい。
その代わり、火星に不法投棄に行った新生帝国軍籍のAT3航空母艦6隻の即席艦隊は60隻のアスベド級輸送艦を引き連れて帰って来ていた。珍しくサリマン籍じゃないしほとんど見覚えの無い会社ばかりでもある・・・勿論それ以外にもER-3000CやC78多目的輸送艦の民間型、LE78型大型輸送船まで多種多様、アスベド級輸送船を引いたら2千隻近い貨物船が帰って来た・・・これならば火星の衛星軌道上に不法投棄しない方が民間宙域を圧迫せずに済んだかもしれない。
「・・・また難民?」
「まぁ、仕返しと言う訳だ。実の所、帝国領内に即時受け入れ可能なステーションがもう無い、銀河3大ビックステーションのリコリスⅡ国際ステーションはもう既に残骸だしな?あれくらいデカければ星一個分の帝国市民は収容出来たんだが・・・ちなみにセントラルプロムナード型ステーションは3大ビックステーションに格上げしたぞ?獣人族系の主要ステーションはラクトパレト方面以外は音信不通になってだいぶ立つ・・・丁度その辺が巨大ステーションを多く抱えていたんだ、ちなみに現状の仕様で元々は銀河第16位だった」
「そんな事はどうでも良い、目の前のクソデカ貨物船は一体なんだ?」
「どう見たってアスベド級輸送艦じゃねーか?」
「そうじゃない」
「ナバード星系アペスⅥが衛星爆撃を受けて壊滅だそうだ・・・正直、ここより地上に降ろして欲しい所だが・・・この巨体だ、惑星には絶対に降ろせないだろうしな?さあどうする?皇帝陛下さんよ」
「どうしろって・・・ねぇ・・・?」
ルーガに問われて考える・・・が、外周高速道路を一杯にしてなおかつ溢れる。推定36億人を収容出来るステーションなんてルーガのいう通り、今は無き人類が銀河に誇った人類最大のビッグステーションのリコリスⅡ国際ステーションしか無い。それ以外となればステーションでは無いが、人類が銀河に誇る禁忌、天地創成の結晶でもあるエリナス級惑星がある・・・しかしこれら、順調に行けばエリナスⅠが来年テラフォーミング開始、現在大気の調整中でこれが終わればようやく居住可能惑星への環境調整が出来るようになる・・・つまりまだ準備中である。そうなるのであればもう正真正銘の神が作りし天然惑星のリズしか無い・・・が、神はそんなに都合よく居住惑星を作ろうともしない。一番発達している赤道より少し離れた所に難民キャンプを作る他ならない。作っても良いのだがあまり環境が良くない、少々極寒である。寒冷地に対する対策としては使用していない在庫の貨物船や処理しきれない船舶用ジェネレーターでどうにでも出来る・・・ただ、それらを地上に降ろす手間を考えれば、もう目の前のスクラップヤードで受け入れれば事が足りる気がしてならない・・・勿論アスベド級輸送艦も一時避難所として不動艦になってもらう必要がある。
これに対してアズランド新生帝国はアスベド級輸送艦の所有会社に協力要請を出した。しかしながらこれらの所有者は全て会社としては消滅してしまっている・・・ナバート星系自体は帝国の主要経済星系の一つ、端にあるとは言いつつも様々な星系にジャンプする為の航路が非常に多い、太陽系などと行ったオヴェルツィッヒ帝国が直接統治する星系と属国として統治の恩恵を受ける田舎セクターを結ぶ中継星系とも言える。ちなみにこの手の星系はまだ帝国には存在する為、田舎セクターも迂回すればまだまだ何とでもなるのだが、皇国の進行は机の上にこぼしたコーヒーのように早く、たまたま机の上にあったティッシュペーパーごときで広がるのを防ぐのはかなり難しい事だろう・・・雑巾は用意したつもりだがそれを取りに行く人手も居ない、せいぜい机の上に置かれたタブレット端末までコーヒーが届かないように攻防を続けるのみ・・・コーヒーを事前に飲み干していればよかったが間に合わなかった・・・そもそも帝国がセルルド星系のジャンプゲートを破壊しなければ、皇国軍も魚人族の地から長距離ジャンプ技術を盗もうと言う考えにもならなかっただろう・・・とはいえ破壊しなかったとしても帝国は跡形も無くなる・・・そう、タブレット端末に直接コーヒーをこぼしたような物だ。
机の上にあるタブレット端末とコーヒーを眺めながら腕を組む、そして溜息をつく。
・・・このままメルト星系掌握作戦を続けるべきか、それともセルルド星系から皇国軍を迎え撃つ方針に切り替えるか・・・どのみちセルルド星系を経由する事は皇国も避けて通れない。その根拠が机の上にあるタブレット端末、そしてダリアのメールである。まずは魚人族唯一だった国、ルヴェリーテェア共和国で開発された短距離ジャンプ装置がどういった物かまで遡る事になる。
ヴェリーテェア共和国ではドロイド艦隊の猛攻や魚人族各国が発令した外洋航行禁止による鎖国がもたらした人口減少に伴い、国家の廃統合が発生しほとんどの国は滅亡した。特に廃統合時はどうしても宇宙に出る必要がある・・・しかし活動を停止したドロイド艦隊は通常の船舶では身動きすら出来ないほどに真空に漂っている・・・そこで開発されたのが短距離ジャンプ装置である。これのおかげでおおよそ惑星から出る事無く物資や民の大量輸送を可能にしたのである。
しかしこの装置、元々短距離ジャンプを目的として開発された訳では無かった。本来は宇宙に置く事を前提として銀河共同体全体で開発していた物で、いわゆる既存のジャンプゲートに取って代わる次世代型のジャンプゲートだったという。計画上でジャンプできる距離は従来の4倍、言うならばマスビダ星系とロックベルト星系を直接繋げる事が出来る代物だったらしい。それが今から約百年前、リストーン星系のジャンプゲートの事件で銀河共同体の大部分の研究者との疎通が取りにくくなった事により開発は停滞、そしてドロイド艦隊問題は次第に魚人族の領土を蝕んでいく、ドロイド艦隊問題は魚人族と獣人族連合が対処していたが、銀河系の主な膨大な軍事力を保有する人間族と巨人族は全く加担しなかった。獣人族連合の船はドロイド艦隊の物量に完敗し、それこそ毎年のように開催されていたセルルド星系の大武術大会の4倍近い犠牲者を出していた、この事から魚人族はジャンプゲート遮断と言う奥の手を取ったのだという。勿論魚人族側もある程度算段があってジャンプゲート遮断に踏み切ったので完全に想定していた状況に持ち込む事が出来た。その算段とは何か・・・。
・・・電波の混線によるドロイド艦隊活動停止である。
勿論ある程度の期間を有した、その年数おおよそ50年程である。この間に資源が乏しい惑星の国は緩やかな死を迎える事が計算されていた為、次世代型のジャンプゲート計画を短距離ジャンプゲート装置開発に転用したのである。それを開発したのち、在来ジャンプゲートを使わない方法で早期に銀河共同体に復帰する事をジャンプゲート遮断前に獣人族連合に宣言していた。その当時、獣人族連合はどう解釈したのかは分からないが、この宣言自体がすくなくとも自分達が知る魚人族の船には短距離ジャンプ技術を備えていると言う伝承に繋がるのだとも思われる。
今にして思えば短距離ジャンプ装置を備えた船で必ず戻って来ると言う意味だったのだろうか?勿論その獣人族連合の期待通りの物を実際には開発しており、嘘では無い事をルーガも確認している。
勿論計画そのままならドロイド艦隊だらけの宇宙に置く事が出来ない事や、地上設置にすれば重力により自然崩壊してしまう恐れ、環境的影響等問題がかなり多かった等の問題が発生する。これらを解決する為にジャンプ性能を半分まで犠牲にする変わりに小型化を目指す方針に変えられたようだ。だが魚人族の船は水生生物の枷がある都合、どうしても巨大化しがちなのでジャンプリングを小さくする事は出来ない・・・必然的に艦載する事を目指した・・・そしてこれは致命的な問題を抱えていた、それがタブレット端末に記載されている。
再ジャンプのリチャージに1週間掛かる上に距離に応じて大量の水を必要とする。
これはシルバーロッド整備工場がダリアが乗りつけたFT14戦艦に匹敵する巨大クルーザーを分解して調査した結果である。そして運用もダリアが熟知していた。
ハイパージャンプを実施するには艦内の水を全て重水素アルケナーとか言う訳の分からん物質に変換する必要がある。今となっては戦闘機は除く大抵の大型艦に標準装備しているシステムらしく、魚人族領内の惑星間移動程度であれば専用のタンクで事が足りるそうだが、艦内の水を全て消費するとなれば自分達で言う艦内全ての酸素を消費する事と同じ事が艦内では起きる。水が無くなった所で魚人族も一応4日くらいは生きられるらしいがその間に艦内に再び水を入れなければならなくなるのでかなり命がけのシステムとも言える。しかしながら実際は1時間から半日くらい艦内でピチピチするだけで済む運用を前提としているのでさほど問題視されなかったようだ・・・つまり一旦海洋から出たのちに目標の惑星衛星軌道上までジャンプ、後は大気圏突入をこなして着水と言う運用がされていたと言う事である。
リチャージに一週間掛かるのは生成装置がそれくらいの時間をかけて変換するという物、なんなら惑星海洋内で常に装置を動かしていれば良いだけの話で、ジャンプが1回だけなら艦内の水を抜く事すらないと言う結果になる、最大のデメリットは1週間に1回しかその船を使えないと言う事、その間は海洋内で使うか電源を入れたまま1週間放置かの2択となる。もちろんその気になれば他種族の船同様、宇宙空間を通常航行も出来るという訳だが、定期便等で直ぐ使いたければ複数隻をローテーションするだけでも事が済む。事実として定期便の長距離シャトルクルーザーはそのように複数隻を使いまわして運航するそうだが、大都市の宇宙港なら生成装置も置いている。かなり高額らしいのだがこれがあれば一週間から2日で済むそうだ・・・補給にも膨大な時間が掛かるそうな。
・・・で、これが皇国軍にとってどれだけ致命的な欠陥であるかと言えばもう答えは明確、長距離ジャンプが一回しか行えないと言う事になる。
なぜその結論に至ったか、重水素アルケナーは割と不安定な物質、生成からせいぜい2週間が使用期限、過ぎればタンク爆発を起こしかねない超危険なヤツらしい。その為生成装置も頻繁に物質の出し入れが行われる大都市の空港にしか置けないし、生成その物も空港などの船に近い場所でしか行えないまである。そして巨人族は陸上生物であるので艦内を水で一杯に・・・出来なくもないが、それを行うには基礎設計から大きく見直す必要も出てくる・・・おまけに言えば、銀河中で艦内に水を充填したまま大気圏を離脱出来る船を持つ種族は似た種族は存在しても魚人族くらいしか居ない。魚人族のエンジンはかなりのハイパワー、少なくても1隻につき10基は搭載している、燃費もお察しなのでエンジン1基につきパワージェネレーターを1基搭載している。それ以外に艦内電源用ジェネレーター、戦闘艦なら兵装用ジェネレーターも搭載する為おのずと船体も巨大化し、さらには船体のほとんどが航行装置の割合となってしまう。おのずと居住空間も少なく、比率で言えば、ユリアスの見た目で実際はオーエンス一隻分くらいの居住スペースしかないがおおよそたとえとして合っているだろうレベル。ダリアが乗りつけたエルデ・レ・ラピーヌ級星間クルーザーもFT14戦艦と同等の巨体を有しておきながら40人しか乗れないといった比率となる・・・そうなってしまうほど水という物質は重い。重水素アルケナーとやらは水に比べればそんなに重くは無いものの、やはり居住空間に保管出来る物でもない為別途タンクが必要、2回分となればER-3000Lのようなほぼガスタンクのような設計にもなってしまう。ただの液体ガス船と化した船で帝国軍を相手にも出来ないのは明白なので1回分の重水素アルケナーを携帯するのがやっとと言う結論がおのずと出てくる。つまり片道キップで一度飛んできてしまえばそこから先は通常の戦闘艦と変わりは無いと言う事、ジャンプゲートが無ければ何も出来ないと言う事になる・・・となれば2回目のジャンプの心配はしなくていい。一番の懸念は皇国の支配下に入ってしまったアペスⅥで補給がされなければの話であるが、勿論補給装置を持ち込むだろう。帝国軍は短期でエルデナントⅥを奪還する必要がある・・・その為の船は置いてきた。
悩んでいる間にもメルト星系掌握作戦はメルト星系一個手前のエルデナン星系までたどり着いている。それがさらに悩ましい所で、エルデナン星系を統治していた国家はエステナ帝国・・・人類の負の遺産でもあった。
知らない間にサルベージされ、皇帝の船舶コレクションの中に勝手に入れられたアマリ社製のシドニアⅢ航空母艦、これがエステナ帝国製の軍用艦である。未改造でフルカスタムのAT3航空母艦より僅差で劣る性能をしているのだが、人間族の作る船と非常に酷似している点である。勿論命名法則もそうだ。シドニアと言えば人類が命名した太陽系の小惑星から取られている。銀河の他種族が同様の言語で命名する事は早々無い事で、仮に偶然だったとしても偶然とは言い切れない物がまだ保管宙域に一杯ある。
コッペリアⅥ戦艦、トキオⅣ巡洋艦、レオノーラⅦ駆逐艦、スカニアⅧ多目的支援艦他多数・・・全て太陽系の小惑星に命名された物が由来である。これら全てエステナ帝国製であり、銀河で最も優秀な軍艦と呼ばれている代物である。
・・・で、これが何故人類の負の遺産か・・・やはりエステナ帝国人も作られた人間である。そして一度、エルムンドドエルが作り出した物でもある。
ひとまずは外交・・・道中の残骸の片付けは終えたのでこれからエステナ帝国とこれから接触を試みる段階まで来た。
鹵獲艦であるシドニアⅢ航空母艦いわく、獣人連合艦隊全てに通達された命令の中でエルデナン星系放棄が決定されたのが約半年前、そしてエステナ帝国人は獣人属連合の中でも爆発的に増えない種族どころか人工繁殖により増える為、今まで突き進んできた星系を統治していた種族より圧倒的に少ないはずである。よってある程度は生存者がいてもおかしくない。
別に侵略戦争を仕掛けたいわけでもない。銀河共同体が数百年かけても処理しきれない金属ゴミだらけの星系をかなり抱えているのだ。なんだったら押し付けたいレベルで、処理も手伝って貰いたいくらい。現状スクラップ処理を手伝ってくれている国はズァパリ民国だけである。
歴史的な観点からやはりオヴィルツィッヒ帝国とは仲が悪い、最初に接触させる船は慎重に選ぶ必要があった。帝国艦はダメ、皇国艦もだ、ここはユリアスの他にない。しかし最初に接触する艦隊にはロゼンダ級巡洋艦がいる。比較的ズァパリ民国と国交がある為、サシリアが間に入ってくれるようだ。
「まぁ、出迎えはいるよな?」
「LZ-54R7シドニアⅢ航空母艦含め、エステナ帝国艦複数隻がバーボン星系で再び電源が入ったとなれば、瀕死の艦隊でもジャンプゲート前に派遣いたしますでしょう・・・もとより出迎えを用意させる為、エデルゼウス26をシドニアⅢ航空母艦へ置き換えしたのですから・・・戦闘機隊からは非常に好評との事・・・着艦渋滞は運用上かなり致命的な問題でしたので」
「正直アレは武器商人専用クルーザーが性に合っていると思うぞ?空母として使う方が難しかったんだ」
「・・・空母とはなんとやら・・・でしょうな?」
ゲートを抜ければコッペリア級とトキオ級に囲まれる。どれも好戦的で砲塔は一番先頭のロゼンダ級巡洋艦を捉えている。
「ロゼンダ級が被弾!」
「いきなり攻撃とは・・・ふむ、射線を逸らし始めたな・・・だが、発砲は止める気はないと・・・」
カトロニコフが唸る。しかしながらズァパリ民国と国交があるとするなら目の前のロゼンダ級が一体何者かは十分理解しているはずである・・・ロゼンダ級には数発当ててから別の目標に向けて動き出していた。
「ロゼンダ級巡洋艦そのものがどういう船かは認識している様ですな?」
「だから砲塔が皆こっち向くんだ・・・通信は取れないのか?」
「応答はしないようです、新生帝国も極力船は選んだつもりですが、このまま民間船を盾にし続けられないでしょう」
「ひとまず、ファーストコンタクトは失敗・・・民間船は後退させる」
「01機動艦隊よりES17戦術偵察機の発艦を確認、情報収集を開始します」
「今更遅いが・・・ジャンプ直後にコレでは情報が足りなさすぎるから仕方ないか」
あくまでも外交目的の艦隊編成、しかしながら後方支援艦はどうしても帝国艦が含まれる。何なら輸送艦、特に病院船は追加はあれど、ネドリー運輸時代から入れ替えをせずに現役運用されている。これらは医療品や食料を抱えている、緊急物資で用意したが、少なからずこれらも不信感を与える原因になっているようだ・・・とりあえず控えの戦闘艦隊と輸送艦は入れ替わってもらう。
ズァパリ民国艦はサシリア王女護衛のヴィゼルバード級とヴァレンティア級を残して後退を始める、入れ替えで帝国艦が次々にジャンプ、最前線にMA40型重巡洋艦が並ぶ。シールド装甲艦の真価がここで発揮される。その間に皇国艦が持前の速力を生かしてエステナ帝国艦のジェネレーターを強制シャットダウンさせる為に側面に展開、繋ぎの盾になるのはステラー王国艦・・・別に鹵獲をしたい訳では無いが、被害を最小限にする為には止む終えない事・・・いくら作られた種族とはいえ死人も最小限になるように配慮すべきである。
・・・だがここから外交が出来るのか・・・だいぶ雲行きが怪しくなりつつある。
・・・何でエンデラー級が・・・?
エルデナン星系はほとんどが濃いスモックで覆われている星系、航路としては使われる事もあるが居住には向かないタイプの星系である。メルト星系のジャンプゲート付近に何が居るかを調査しようとするも、道中主要航路上は皇国艦が我が物顔で堂々と航行している・・・しかしドロイド艦隊にしては艦隊構成がおかしい。そもそもドロイド艦隊は戦艦級を運用していない、何故なら元々戦艦運用を想定していないからだ。
唯一の可能性といえば、カーディナルか?いや、艦隊の指揮官クラス?しかし見た事が無い。
だがどう見ても現行型、そもそも我々は当時のエンデラー級戦艦に相当する船を見た事がない、アップデートでラインナップに追加されたのか?その可能性も十分あり得るが、取り巻きの艦隊も最新鋭過ぎるのも引っかかる所・・・今まで最新鋭艦が居たとしても艦隊には必ずメソポタニア級が割り当てられる。ランダムで割り当ててるが故だろう・・・メソポタニア級が無い事自体がまずおかしいのだ。
黒か・・・黒か・・・そもそも黒しかないか。
ドロイド艦隊だろうと、皇国軍だろうと、どのみち敵対勢力なのは確か、後ろではターゲティング作業が行なわれていた、それが終わり次第帰投である。
偵察は終えた。セルーナ隊一番機、帰投する。
ES17戦術偵察機はスモックの中に姿を隠した。
「偵察機が帰投、エステナ帝国軍後方に所属不明の皇国艦隊ありとのことです」
「うーん、何で?」
「艦艇から察するに、皇国軍の方でしょう」
「でもここになぜ艦隊を?」
「確かにこの宙域はドロイド艦隊の通り道、散々食い散らかした跡地とも言えましょう、ドロイド艦隊は既に資源豊富な星系に展開しているはず、となれば目標は我々であると」
「こっちも一応は後ろに居るよな?」
「それはもう、一本道で大渋滞でございます」
「エステナ帝国艦隊は放置出来そうか?」
「大多数は行動不能状態にあります、無視も十分可能であると」
「なら、皇国軍を撃破する」
「かしこまりました」
カトロニコフの命令で高速艦隊が回り込む形で展開を開始、次第に接敵するが、考える事は同じ、皇国軍は艦隊を三つに分けて回り込む作戦を取っていた。皇国艦相手であれば改造皇国艦の敵ではない。
・・・そのはずだった。
一方的な撃ち合いに持ち込めない?
カトロニコフは管制コンソールを眺めながら沈黙している。幸いセレスとスピアー級が居るおかげで優位には立ってはいるが、報告によれば皇国艦にしては異常に長射程であること、つまり改造皇国艦と性能がほとんど変わらないということである。
これは、耐久性勝負になっているという事だ。
勿論うちは艦種が豊富、いざとなれば帝国艦を融通すればいい話なのでなんとでもなるのだがいつも以上に損失が多い。皇国軍も馬鹿ではないということだが、カトロニコフが何を気にしている、それは撃ち合いを始めた距離である。
多少の誤差はあるが、帝国艦の武装に換装してある自軍の皇国艦と変わらない事である。
新生帝国軍は遠距離から一方的に攻撃できるアドバンテージがあるのでわざわざ純正皇国艦の射程に入ることはまずしないはずである。
・・・なら、皇国軍の新兵器か?
だが、その可能性も低い。そもそも船体が既存の物との事、ついでに言えば改造皇国艦と射程が同じと思われる事である。勿論国外に流しているスクラップ艦は全て純正状態の物である為、トライアド民主共和国やラクトパレト王国が横流しした可能性もない。
後で残骸をルーガに見せるべきだな。
ひとまずは戦闘が終わるのを待つしか出来なさそうだ・・・一方的な撃ち合いに持ち込めてこそいないが、3艦隊の武将はそれぞれ別動隊を上手く使いこなしていた。
「LB-237C中破、MA40型ならまだまだ余裕ですが下がらせますか?これ以上下がらせると前線が維持できなくなります」
「これだけ押されれば、十分でしょう、一応LB-237Cにはスモック突入前に最新のレーダー状況を持たせて後は一方的にやられるのみ・・・最前線の無人化は?」
「ほぼ完了です」
「そうですか・・・」
ワトソン元帥は部隊が壊滅状態だというのにコーヒーを一口飲む。
「スモックからES17戦術偵察機の出現を確認」
「ようやく観測者が来ましたか・・・さぁ、始まりますよ」
ワトソン元帥はカップを皿に置く、エンデラー級戦艦の横にエネルギー弾が着弾する。
「流石の精度・・・目隠しで当ててくるなんて」
「まあ、彼女の部隊なら朝飯前でしょう・・・このスモックは確かに濃い、レーダー照射も通らない・・・だがそこまでスモック帯は広くない・・・旗艦のエンデラー級は大損害、この隙に距離を詰めて反撃と行きましょう。直ぐに終わらせて見せましょう・・・くれぐれも彼女の部隊がもう既に次に行っている事を悟られないように」
ワトソン艦隊は不意打ちに対して急いでスモック内の敵艦に戦力を割こうとする皇国軍艦隊の本体に一斉射を加える、スモックに突入しようとする艦隊は放置だ、それはそのうち分かる。
「来ました」
「よろしい」
皇国軍の臨時索敵艦隊がスモックに突入しようとしたその時、スモックから出てきたのはMA40型重巡洋艦、索敵艦隊の主力はフリーゲート、MA40型であれば単純な体当たりでも勝てる・・・何故ならこの艦種はシールダー、普通の帝国艦より硬いのだ・・・もちろんズァパリ民国艦には劣る。
MA40型重巡洋艦はストーム級フリーゲートを物理的に蹴散らしながら砲撃を加えていく。これらの出所は何処か、さっきまで時間稼ぎで撤退させていた損傷軽微な艦艇である。確かにスモックの先にはオキタ艦隊が控えていた。しかしもうそれはフランクリン艦隊を目指してスモックの中を航行中である。
「素早く片付けてカトロニコフ艦隊に合流しましょう」
「まもなく決着がつきます・・・我々の作戦勝ちです」
「偵察機を用意しろ」
「はっ」
ワトソン元帥はカップのコーヒーをすする。
「・・・おや、もう飲み干してしまっておりましたか」
カップの中身は既に空だった。
「・・・うーん、なんだこれは」
後ろの取り合いをしている・・・双方一定数の船を逃がしつつ円を書くように周回している、逃がした船をどう使うか、双方で機会を伺っている様子。フランクリン、スギヤマ混成艦隊でも速力が無い船は離脱させている。その為皇国艦が多いフランクリン艦隊所属艦がどうしても残ってしまう。
RB26迫撃戦艦は航行に難がある船体サイズなので旗艦はスギヤマ元帥のFT14型戦艦を借りている。勿論旗艦だけは潤沢な改造を施してある。それはアズランド新生帝国軍ならどの艦隊でも同じなのでFT14型戦艦であろうともストーム級に追従する事は容易だが量産性に難がある為改造は旗艦級にとどまる。
今やるべき事は双方離脱した船の捜索および撃破である、それは皇国軍も同じ、皇国軍側はそれに今翻弄されていると思われる。
「来た!レーダーにES17!」
「予想より早い・・・回転方向を変える!」
「了解、全艦進路変更!」
「ついてこい・・・ついてこい・・・?」
皇国軍は急な回転方向に疑問を抱く事無くついてきた。味方のES17戦術偵察機が現れた場所をかすめるようにフランクリン艦隊は逆旋回を開始する・・・チェックメイトだ。
スモックの中から逃がしたスギヤマ艦隊が姿を現わした。その頃にはES17戦術偵察機の現れた場所は皇国軍艦隊の真横になっている。
「よっしゃ!掛かった!」
艦橋内は拍手で湧き上がる。
「喜ぶのはまだ早い、全艦180度回頭、残りの戦力で皇国軍を叩く!」
「皇国軍が残した連絡艦がスモック内に入りました。いかがいたしましょう」
「放置で良い、奴らもスモックが無い場所を事前に抑えているはずだ・・・そこには皇国艦の残骸しか残っていない、それを観察した後、戻ってきてもここに居た皇国艦が既に残骸になっている」
「そしてたった一隻が生き残ると・・・」
「戻って来る頃には我々はこの場に居る事は無い、その頃にはカトロニコフ艦隊の援護に回っている・・・ワトソン艦隊と挟み撃ちと言う訳だ、ここまでやれば我々の勝ちだ」
・・・ドッキングは楽なんだが・・・。
格納庫の中にはいつものごとくローパワーで充電待ちをしている機体で溢れかえっている。だがもう出撃は無いそうだ・・・理由は今しがた格納庫に入って来たES17戦術偵察機である。
「上手くいったってか?普段はズァパリの商船護衛専属部隊とは思えないぜ?」
「この手の奇襲作戦ならオキタ艦隊一択でしょうに・・・ツェルナお嬢様の護衛で付いて来ていたのは非常に運が良かったって所でしょうね」
「一応、アーバン船団商事のササリッサ級をほとんどチャーターしていたからな?道理には叶っているが、カトロニコフ元帥もヒットアンドラン作戦を良く思いついたな?」
「コイツが手元にあったのが一番デカい」
セルーナは床をコンコン叩く。背中にはES17戦術偵察機の前脚、もう一回出ろと言われたらもうコイツしか残っていない状態だがここまで格納庫が溢れかえるのもシドニアⅢ航空母艦がいかに優れた船かと言う事を証明していた・・・サラマンダー級では格納渋滞に悩まされ航空隊にもっと犠牲が出ていた。航空隊の数が減ればオキタ艦隊を遊撃隊に回せる状況では無かっただろう。これが一つ目で、2つ目がこの船には色々な種族の戦闘機や偵察機が無駄に搭載されているだった。元々皇帝コレクションの簡易博物館だったよう・・・その為用途不明の戦闘機コレクションがそのまま搭載されていた。貴重な物なら何故降ろさなかったのだろうと言う疑問もあるのだが、これら戦闘機群は確かに製造していないものの全てが量産機、希少価値など無い。おかげで偵察機の使い分けで情報伝達が出来た・・・ES17戦術偵察機はたまたま作戦開始の合図を担当していただけである。
普通はそんなに沢山の種類の機体を使いまわすパイロットは居ないだろう・・・勿論ベテラン揃いの航空隊、そしてネドリー運輸時代からのたたき上げ揃い、それはもう色んな機体に乗せられたメンツ揃い、どんな作戦でも如何なる機体で対応出来る。回収も早いから迅速に情報交換をした後、信号旗のように事前に決めた種族の機体を放つ事が出来たと言う訳だ。
オゾンシールドから先に広がる宇宙では皇国艦隊本隊における総攻撃が始まった・・・決着が付くのも時間の問題だろう。
・・・やっぱすげぇな。
ファルマンは艦橋でそう思う。ツェルナとサシリアからの情報提供もあったものの指揮官陣の作戦勝ち。ロゼンダ級などの民間船は危険な宙域を記録し、事前に回避する為にも星系マップに注釈を記録している船がいくつかある。ツェルナが引き連れてきていたロゼンダ級にいくつかここまで来た事のある船が居たらしく、それに真っ先に気が付いたのがツェルナのお世話係、なら現地の船ならもっと詳細なデータを抱えているのでは?と言う事でサシリアはシドニアⅢを疑った。答えは大正解で、ガスの薄い宙域と濃い宙域を細かく記録していたのだ。
もっとも、主要航路は船の往来がかつては多かった為、トンネルのようなガスの無い宙域が形成されてしまう・・・いわば獣道とも言える状態で、ここさえ通るのであれば特に危険を気にする必要もも無い為、民間船はここさえ通れば安全が保障されていた。ただし、有事ともなればここが戦場になる為、常日頃からエステナ帝国はスモック帯の散布状況を記録しているはずである。そして、通信を一切取らなかったエステナ帝国軍の旗艦はLZ-54R7シドニアⅢ航空母艦のみに何故か直近1日前のスモック帯の偵察衛星のデータを反映した30TBの電子データを黙って送り付けて来ていた。若い指揮官勢はスモック帯は通信が出来ない事に頭を抱えたが、それは経験不足によるもの、大ベテランが超アナログな打開策を編み出した。シドニアⅢの抱える偵察機の在庫状況からまず皇国軍が運用しない機体であるリビューイ帝国ペデルリペオ アヴァルッタ偵察機を連絡機として、ES17戦術偵察機を作戦開始の合図として使い分けるようオキタ艦隊に通達、オキタ艦隊は遊撃隊として各宙域を点々としたのである。
一方で黙ってそんなデータを送り付けておきながらエステナ帝国はアズランド新生帝国とは一切対話しない方針・・・しかしズァパリ民国とは国交があった関係、さらには周りの国々は人口が尋常に多く、全てにおいて資源が枯渇しがち、全てに置いて輸入に頼らなければいけない為資源が豊富な国との国交は最優先事項、ズァパリ民国の王族艦隊との対話を無視する事など出来た物では無く、サシリアの呼びかけに渋々了承したのだ。
「もう少し国力があったら直ぐにでも人間に対して戦争仕掛けそうだった」
ミヒミヒ・・・ツェルナが4つの腕を上げてとりあえず貨物を降ろして来た事を報告してくる。最前線に戻って来た理由は負傷者回収が理由、今回の戦闘で相当数の有人艦艇を失った。勿論引き上げは軍艦が行っては居る為ツェルナ達民間船団が出来る事と言えばその船から負傷者を引き上げバーボン星系まで戻る事である。
こちらが用意した緊急物資もサシリアが譲渡の交渉にだいぶ難航、最終的には成立したものの、ER-3000Cなどネドリー運輸の民間船やC78多目的輸送艦などはズァパリ民国艦に載せ替えを余儀なくされ、それもあってか、面倒な事をさせられたとツェルナは少しご機嫌斜めと言う訳である。
それだけではない、ツェルナが持って帰って来たエステナ帝国との対話の途中経過、人類が関連する事はことごとく拒絶状態と言う事である。現状、星系内の軍用艦航行は許すが人類との一切の国交を結ぶつもりは無いの一点張り・・・ズァパリ民国が仲介しなければまともに国交も出来なさそう。一方で彼らは領土拡大に消極的である事も分かった。
エルデナン星系以前の星系統治権譲渡も拒否、もとより資源と言う資源は無い。スペースデプリで身動きすら取れない星系に価値など無いと言われれば確かにそう、リサイクルプラントで資源生成をする事で多少揺らぎはしたものの、人間族の施しをどうしても受けたくはないのか、ゴミ処理を押し付ける事はほぼ無理とも言える。
「・・・駄目でした」
ツェルナはもうとっくのとうにバーボン星系まで引き返した。サシリアがほとんど何も出来なかったと言う顔で帰って来た・・・進んだ話と言えばズァパリ民国や魚人族のルヴェリーテェア共和国との国交再開とかその辺のみだったと言う。アズランド新生帝国は別にエステナ帝国の貨物船に対して無差別に攻撃をするつもりも無いので国交その物は今まで開拓してきたルートを使って大回りするだろうと言う事が大体予想される。
流石にズァパリ民国人でも対話にかなり難儀する相手だった・・・遠隔でエルゼとダリアにも頼ったが、エルゼはともかくあのダリアですらだいぶ難儀したのでまずアズランド新生帝国ではどうしようもならない相手であったのは明白、意外な事にステラー王国とは国交を築いても良い態度は示したらしい、生い立ちが一緒だからなのだろうか?
「ひとまずは現状エステナ帝国が置かれている状況はあらかた把握は出来ました。ひとまずエステナ帝国は銀河議会に復帰されるのは明白でしょう・・・お父様が用意された航路で現状他国との交易が可能になります・・・獣人族連合が切り捨てた事によりやはり物資不足に陥っていた事は明白かと。エステナ帝国の総人口およそ7千億人のうち8割が仮死状態で保管されております・・・恐らくこの宙域に皇国軍が居たのは何かしらの援助を受けていたのでしょう」
「おそらくその可能性は高いと思われますな・・・確かに皇国軍であれば偽装してドロイド艦隊をやり過ごす事が可能、それに上手く使えば帝国の遺産で帝国すら滅ぼせる戦力が追加で手に入る・・・ただの慈善活動をする奴らではないはずだ」
カトロニコフ元帥はやっぱりなと言う顔をする。
「そもそも慈善活動が出来ていれば、皇国軍はとっくのとうにドロイド艦隊に手を出しています。そうなっていればここまで銀河情勢も悪化しなかった・・・出来る事ならばエマンクリシット皇国にツケを清算して頂きたい物です・・・なんとかなりませんでしょうか?カトロニコフ様」
「・・・そうですなぁ・・・カーディナルを見つけ出し、エマンクリシット皇国領まで追い詰める事でしょうか・・・多大な犠牲が出そうなので出来る限り、わが軍が早期にカーディナルを殲滅するのが最善とも言えましょう」
「・・・そうですか」
サシリアはシュンとする・・・ドロイド艦隊問題は銀河でアズランド新生帝国だけが躍起になっている訳では無い、前線の国々は日々攻防戦に明け暮れ、後ろの国は前線の国家に対して物資や軍の派遣など様々な手を尽くしている。いわば銀河の全種族の存亡をかけた戦いに発展しているのだ。
「ともあれ・・・現状は今すぐ進軍出来る体力がこの艦隊にはございません」
「言われなくとも・・・ここまで大損害が出たのは久しぶりだろ・・・とりあえずは少しは体力を回復させなければならない・・・帝国には悪いが、もうしばらく自力で防衛してもらわなければならない」
「歯がゆい所でありますな・・・」
「違う、そもそも俺らは元々帝国と皇国の争いに首を突っ込むつもりは無かった!元はと言えばクソ田舎星系の弱小物流業者だぞ!?・・・帝国の方が国として長いんだから多種多様な外交経験も帝国の方が上、新生帝国が出来る事なら帝国だって出来るはずだ」
「・・・そう言えば、元々民間の物流会社でしたな」
「ひとまず哨戒艦隊を残して本隊はバーボン星系まで戻る・・・さて、この惨状、ルーガがキレるか・・・喜ぶか・・・」
「あのお方ならきっとお喜びになられるかと・・・」
「仕事が無いからって無駄に船を量産していたしな・・・」
バーボン星系に戻れば珍しくシルバーロッドのドックが大繁盛している。民間船の往来も激しい、別に規制もしていないので帝国籍の商船の往来がかなり増えている・・・サリマン運輸の船などその辺にゴロゴロ浮いている、厄介事を持ち込んでいないと良いが・・・だが、持ち込んでいた。
・・・これは?
格納庫の一応会議室に置かれた6個の段ボール、この部屋はユリアスやロゼンダ級巡洋艦が外洋に出ている時に宅配ボックスになりがちな部屋・・・主にツェルナやサシリアがロゼンダ級巡洋艦宛てに荷物の受け取りを指定している為である・・・サリマン運輸の伝票シールが貼られており、差出人は不明、受取人的にシリウス・サシリア宛ての荷物のようだ。
「あっ!届いてる!」
「この前のお洋服ですね!」
気が付けば爆速で飛んでくる娘二人・・・だがよく考えて欲しい、ステーション内の宅配業務はほとんどネドリー運輸が独占している、確かに専門業者も国内で活躍している、大手ともなればサリマン運輸でもステーション内で荷物を配達する部署が存在するだろう。しかしこのステーションには支店が存在しないはずだ・・・誰が持ってきたのだろうか?そう言えばここの荷物は上さえ通らなければ割と一般家庭にほど近い形で荷物が入って来る。
「・・・ちょっとまて、二人とも」
だが遅い、サシリアは何故自分宛てなのかを不思議がってはいたが、ツェルナは気にせず段ボールを開けていた。そして謎の白い塊を持ち上げて頭を傾げていた。
「なんだろ?これ・・・開けてみる?」
「ツェルナ!ストップ!」
プスッ・・・。
だが昆虫族のツメ・・・梱包物の開封には大変便利な物で、ビニールにあっさり穴を開けてしまう、相当パンパンに詰められていたか、白い粉がツェルナの顔にかかった。
「大丈夫でしょうか?」
サシリアは慌ててハンカチでツェルナの顔を拭く・・・しかしツェルナの様子がおかしい。
「あはぁ・・・どっちが地面だっけ?宇宙なら関係ない・・・カップラーメンのお船ぇ・・・」
「ツェルナお姉様!?」
「サシリア!一旦離れろ!」
サシリアに携帯端末を投げつけてとりあえずサシリアを廊下に追い出す。その後直ぐに病院船が直接格納庫に入って来た。この会議室はリーサが封鎖した。
「・・・で、コイツはなんだ?」
「あれ?旦那はご存じ無い?覚せい剤の一つ、LR-33B、銀河では違法薬物の一つだがこの国じゃ違法じゃない物でもある。人類的には中毒性がある厄介な代物だが更生出来る余地のある物質だ、昆虫族に対してどうなるかは知らない」
オレット巡査部長は別に珍しいもんじゃないだろ?と言う顔でそう答えた。
「LR-33B!?どうしよう!!ファルマンちゃん!常用したら一年も持たない劇薬だよぉ!!」
ミヴェルマンは泣きながらファルマンを揺する。
「・・・違法じゃないと言うのは・・・薬物とかの規制の法整備が全くされていないって意味だよな・・・?」
「ああ、規制出来る法が無い・・・で専門家的には?」
「たった一回、それも少量なら命に関わるもんではなかろう?それに火を付けて吸わない限り期待通りの幻覚効果は出ないはず・・・ちなみに昆虫族に対してLR-33Bが劇薬になる理由は殺虫効果があるからじゃのー?一般的には主に昆虫系統の対大型クリーチャー用のバイオ兵器の原材料として利用されておる」
クソトカゲはコーヒーをすすりながらその手のプロみたいな発言をする・・・そう言えばその手のプロだった、忘れてたわ。
「ひとまずは・・・一応安心ではあるが・・・このステーションでLR-33Bを押収したのは今回が初めてだ・・・まさかサシリア王女が仕入れた物じゃ無いよな?」
「おそらくは・・・」
「まぁそうだろうよ、シリウス王女宛ての段ボールが2つもあったんだ、残りのツェルナ嬢宛ての2箱は普通に洋服が入っていた・・・おそらくズァパリ王族を狙った物だろう・・・シリウス王女がここに住んでいないのは幸いだな・・・あの性格なら黙って手を出して居ただろう・・・しかしまず王族宛てに薬物を送り付けるとは・・・サリマン・・・いや、シノノギ製薬か?それとも海賊どもか?まあ根本はシノノギ製薬で間違えないだろう」
「そもそも、この手の荷物の受け入れってどうなっているのかしらぁ?」
ミヴェルマンはミィ?っと頭を傾げる。それについてはオレット巡査部長が答えた。
「そもそもこの国の税関的な機能はネドリー運輸が物流サービスの一環として内部的に担っている。貨物コンテナこそ物流商社はステーション間を運ぶだけだが、リストーン星系の旧セントラルプロムナードに一般人が居住を始めた頃から貨物コンテナを開けてステーション内に配送する必要が出てきた。ここで法的に問題ない貨物が含まれていないか確認するようになった・・・で、何度か薬物が見つかって自主的に届け出があった・・・なぁ?先生?」
「シーモア共和国の特別輸出許可証があったじゃろう!?」
「一応、何処の国でもその手の貨物はなんだろうと税関に報告しなければならない・・・その税関はリストーン星系に無かったからな?星系警察がその代理窓口だったという訳だ、勿論その流れは今も変わらない・・・姉さんもネドリー運輸に後処理を依頼しているはずだ、そうでしょう?」
「そう言えばそうだったぁ!」
「アズランド新生帝国の4大国際商社も例外なくステーションに貨物を引き渡す先はネドリー運輸と決まっている・・・つまりネドリー運輸内部が腐っていなければ厳格な貨物の検閲業務が今も行われているはずだ・・・なにせそれを実施している連中は元帝国軍の補給部隊だ」
「物資管理って大変よねぇ・・・特に軍隊はぁ・・・そう言えば民間で用意する救援物資も全部ネドリー運輸が用意してくれたような?」
「一応帝国軍もある程度能力を考慮した配置命令をしていたようで、オヴィルツィッヒ帝国税関職員や物流倉庫職員や一般企業の購買部門に居た人材が比較的多く採用されていたらしい・・・が、そんな話はどうでもいい、問題なのは最近帝国系勢力がステーション内に卸すようになった」
「サリマン運輸じゃない船も増えたよねぇ?」
「あぁ、帝国連中は基本的にネドリー運輸を通さない、何故か・・・そもそもネドリー運輸は税関じゃないからだ」
「なんだったらここも帝国領みたいな扱いを受けていそうじゃのー?ステーション内のトラックをよく観察してみると良い、田舎の安物トラックとは比べ物にならん高級トラックが最近渋滞の種になっておる」
「そこの大先生がおっしゃる通り、税関が存在しないから船から降ろした荷物は直接トラックに乗る、誰も検閲をしないからこうして違法荷物が簡単に流通してしまうと言う訳だ・・・そもそもどう対策しようとも、小惑星の陰で取引されれば個人所有の小型機でどうしてもステーション内に入り込んでしまうんだが、この国は大型貨物船丸々そのままステーションに突っ込める。あまり堂々とやり過ぎればステーション住人からの信用を無くすから多くてもLコンテナ数個に留める所がきっと大半だろう。事実、難民に中毒者が異様に多くて困っているが、沖止め係留の難民キャンプには居ない点を考えると帝国の業者が持ち込んで配っているのが現状として正しいだろう。たとえ税関があったとしても著名人が手を出しているのは昔からだ」
「とは言え、この国の政治家の半数は帝国系じゃないかのー?彼らからすれば帝国の物が自由に出入り出来る現状を変えたくない、なんなら帝国領と考えればそもそもの税関と言うシステムが必要ない、そしてステーション内の物流を政府に癒着した一社で独占状態と言う状況も変えたいとでも考えておろう?」
「・・・ま、どちらにせよ帝国にとっての貿易港になるから税関は必要な訳なんだが・・・とりあえずスマートに解決する方法がある、勝率は良くて40%かな?」
「俺が直々に手を下そう」
「いや、そうしてもいいんだが、それではただの独裁国家だ・・・これくらいの強制執行ならば独裁のうちにも入らないが、そもそも税関設立は女皇殿下が整えようとしている政策だ、可決しないのは帝国派連中のせい、これを黙らせるには外国の公文書と制裁、これに限る」
「わたくしの出番という訳ですね?」
サシリアは穏やかな表情で何をすれば良いかを理解する。
「王族宛てに薬物が届いたのは事実だ、ズァパリ王室はこれでアズランド新生帝国の税関システムに異議申し立てが出来るはずだ・・・ズァパリ民国を敵に回せば今まで銀河情勢改善に尽くして来た人類の見方が銀河全体で変わる・・・新生帝国はまだしも、この影響は帝国にも響いてくるだろう、帝国派も慎重になるはずだ」
「では、女王陛下に相談いたします」
「・・・ま、駄目だった時の最終手段に皇帝権限を行使だな・・・あんまり皇帝権限を使い過ぎるのは色々な観点からも良くは無い」
「・・・外国に頼るのはちょっと申し訳無いが・・・」
そんな事を言っている間にサシリアはルシャーサに早速電話しに行った。
・・・翌日の事である。
「・・・お姉様ッ!!」
ミキィ・・・。
珍しくサシリアがブチ切れている・・・お姉様とはツェルナに対してでは無い・・・。
・・・シリウス王女殿下がLR-33Bを乱用か?
時は既に遅かったとも言える。シリウス王女殿下がズァパリ民国のクラブで意識不明で搬送されたニュースが上がっていた。警察の調べによると現場にはLR-33Bの痕跡が多数あったとの事、警察官が複数人幻覚症状を訴える大事件となっていた。
・・・つまり、あの箱、意図的に外部が送って来た物では無い・・・シリウス王女自ら密輸しようとしていた物のようだ。
「・・・これはチャンスです」
エルゼは俺の横で何か勝利を確信した様子・・・即座にイヴィーラ交通大臣に電話を始める。
・・・皇帝権限行使しなくともなんとかなりそうだな・・・?
一応、ズァパリ民国政府からの抗議文が届く事にはなるが、エルゼはシリウスのビックスキャンダルを利用し、ようやく税関設立法案を通す事が出来たのである。
・・・いやー・・・サリマンの船が減った。
税関職員は警察、港湾、ネドリー運輸の3つから選出され、ネドリー運輸が使っていた仕分け場がそのまま税関となった途端に帝国籍の船が大幅に激減した。
・・・その割合は今までの90%以上、しかも残りの10%からもLR-33Bが見つかっており、事実上の強制執行に近い税関整備だった為ステーション内では大規模なデモが起きた。
「人間って本当に仲間割れが多い事・・・」
「ワシの研究施設は関係無かろう!!シャーッ!!」
「しかしファルマンよ・・・このまま放置していれば目の前のステーションが崩壊せぬか?」
「部分的な内部火災程度でステーションは崩壊しないよ!エルムスミエル!」
「でも、ファルマンちゃんの所にロゼンダ級が一杯あってよかったぁ・・・ズァパリの子達は直ぐ避難出来たし、ついでに罪の無いフルジア育ちの子達まである程度は助けられたから・・・ひとまずは内部洗浄が終わるまで待つしか無いかなぁ?」
セントラルプロムナードを囲むように展開するリーサ艦隊の外側で知り合いが内部自動洗浄についてぼやく。外国籍の船も一旦立ち入り禁止、リーサ艦隊の主砲は全てセントラルプロムナードを向いている。大臣の中でもちゃんと仕事する系の人達は優先的に宇宙へ逃がし、警察機関については暴動鎮圧より無関係市民を外縁部の高速へ逃がす事に注力している。消防は出来る限り放火の鎮火に務めては居るが、やる気は無い・・・医療機関は外縁部で活動しており中心部で死傷者が出ようともお構いなし、もっぱら避難民の手当に専念している状況である。
一方でセントラルプロムナード以外のステーションはどうなっているか・・・特に何も起きていない。
新生帝国軍は的外れな行政機関庁舎を中心に展開しており、議会庁舎はほぼノーマーク、意図的にノーマークにする事により何が起きるか・・・それは一週間後にニュースの一面を飾る事となる。
議員15名の暗殺及び68名の行方不明、これにより今まで検討に検討を重ねているだけだった法案がとんでもない速さで高速可決していく。メディアは議会議員の死者を弔わないのかと信認を揺さぶろうとしているがやはり帝国育ちからにしか共感は得られない。ネットニュースの一面はエルゼを独裁者扱いしているが、この一週間で可決した法案・・・大概どの国にも存在する当たり前の法律ばかりなのである。
「・・・カップ・・・ラーメン・・・・!!」
「・・・アイツは何をしているんだ?」
「それがー・・・LR-33Bの幻覚作用でカップラーメンの惑星で溺れる悪夢を見たそうで・・・」
執務室でカップラーメンを投げては拾ってを繰り返すツェルナ、それをサシリアは微笑ましい目で眺めている。
「カップラーメンの惑星ってなんだよ!?」
「スープの海に麺の陸地、四角い人口肉やかまぼこ等の具材が生息する惑星で・・・お姉様はその悪夢のせいでカップラーメンが食べられなくなってしまいまして・・・でも馴染みのある味を嫌になれるはずも無く・・・なんとか克服しようと努力なされているようです」
ミヘーッ・・・。
サシリアはあきれ顔で紅茶をすすりながら未開封のカップラーメンと格闘するツェルナを特に止めようともせずに居る。
「・・・そのままカップラーメン離れしてくれれば良いんだが?」
そうぼやきながらカップラーメンの成分表を見る。この中に昆虫族が中毒症状を引き起こす原材料は一切含まれていない・・・確かに昆虫族にとって刺激的な味とも言えるが、やっぱり栄養に偏りがあるのでお世話係もおススメはしない料理・・・だが、低コスト大量生産のその場しのぎで整備した非常食工場が作っていた物でもあるので国内普及率が最も高い国民的料理でもある。アズランド新生帝国に住む昆虫族はおおかたほぼ全てが毎週最低1回は口にする一品・・・中毒症状が出で居るかと言えば中毒者とも言えるレベルに達しているのはツェルナだけなのである。
「忙しい時にはとても便利な食べ物なのですけれどねぇ・・・」
「・・・ああはなるなよ?」
「分かっております」
そう言いながらサシリアは自分が今まで手にしていたカップラーメンを持って部屋を出ていく・・・一回だけLR-33Bを吸い込んだ程度では後遺症は出ていないのだが、それでも一時的な精神的後遺症が出る。数日すれば元に戻るが、・・・もっとも深刻なのはシリウスの方、ステージ的にはレベル4、つまり重度の精神障害が発生している。
ステージ6まで行っていないのは幸いなのだが、だいぶ進行している・・・4まで行くと手足の機能が不自由になりほぼ寝たきりの生活になる、ここで止めれば回復こそしないがとりあえず一命は取り留められる。5まで行ってしまえば理性は消えてなくなり、後は自動的にレベル6、中毒死に到達するのを待つのみとなる。
シリウスがこうなるとなればどうなるか、もう時期ズァパリ民国女王はサシリアが変わりに務める事となる。やはりズァパリ民国も古代種の血にこだわりがあるようでズァパリ民国の議会は大荒れである。
そもそもズァパリ民国王家にNW50マイナスが生まれる原因は堅牢な古代種の血が稀にそれ以外の血液型に負ける事によるある種の事故、ズァパリ民国王家の歴史では度々起こる事で、数百年前は悪魔の子として殺されてしまっていたようだが、現在はとっくのとうにそう言う時代では無く、女王として王族に属する事を認められている。しかし王位継承権は基本的に2番以降と決まっており、NW50マイナスの女王はDF00の女王の補佐を行うのが絶対の慣例であった・・・今回の場合、代わりにサシリアに王位を継承させるか、無理にシリウスに王位継承させ、実質上サシリアに統治させるか、国内から古代種の血を探すか・・・作るか・・・聞いているだけでも頭が痛い状況となっている。
しかし、アズランド新生帝国としても、そう簡単にサシリアを返す訳には行かない状況となっている。
「・・・また来ることになるとは」
再び降り立ったマピタス、魚人族の連中はコロニーの生け簀・・・いや、先進的な暮らしに慣れ切ってしまったか、母星に戻される事にかなり不満があるようで、たかだか100人程度の人口にも関わらず、もうコロニー建設を所望している。
・・・誰の金でって?勿論アズランド新生帝国の国民の金でだ。
確かに1億人クラスの居住コロニーなんてタダ同然ではあるのだが、我が国のゼネコンも馬鹿しか居ないのか、マピタスの衛星軌道上に魚人族用の物流コロニーなどの建設計画を・・・もう完成させているらしい。
・・・だがそれはついでに過ぎない。
「難破船探しなんて何年振りか・・・」
「そうか?良く使う新古品のセブンスターエンジンは未だにセルルド星系から調達しているぞ?」
「あんなドロイド艦隊と皇国軍がウヨウヨいる星系で良く調達出来てるな!?」
「新生帝国艦はほとんど超電導アンカーを装備してるんだぜ?一瞬で確保出来る」
「は?またよく分かんねぇ物つけやがって!!」
「一般的な非常用アンカーなんていちいち船外活動しなきゃいけないんだぞ?非効率過ぎるだろ?迅速な撤退戦にも有効だったじゃないか?」
「そんなもん使ってたか?」
「使ってたぜ?じゃなきゃ新生帝国軍は今頃半分くらいまで兵力を減らしてる・・・あの程度の損害で済んだ要因の一つでもある、俺らだってただ船を直してるだけじゃないんだぞ?」
ルーガは腕を組ながらユリアスのスラスターフレームを見上げる。その目線の先には明らかに後付けされたであろう超電導アンカー射出装置が2基ある。スムージングのカウリングはあるもののかなり出っ張っていた・・・いつの間にかユリアスにも改修が入っていたようだ。
「さて、話を戻すが、今回探す難破船はロゼンダ級より希少性の高い船・・・しかもマジで水中に沈んでると言う、ザ・難破船だ」
「・・・今回の資源の無駄遣いは少し特殊だしな?ステーション内を水で満たす必要がある・・・実に厄介だ」
「・・・そう思うだろ?水なら目の前にたんまりある・・・今回探す難破船はこれを宇宙にぶちあげられるバケモンだぜ?」
「・・・それに、上手く生き延びた大型艦であれば、セルルド星系の状況を打破出来るロストテクノロジーが手に入るかもしれません」
いつからここに居たのか・・・エルーラの営業が眼鏡を光らせる・・・異星人の船となればエルーラもセットだ。
「ER-3000Lは水を満載にして大気圏を離脱出来る程優秀な船じゃねぇからな?」
「当然です、そのような船であれば我が社の船は今頃銀河のベストセラーです」
「そもそも帝国艦にもそこまでのハイパワー艦は存在しない」
「エンジンも多ければ多い程良い訳ではありませんからねぇ」
やれやれ・・・と後ろでアズランド新生帝国お抱えの造船業者の顔見知りが両手を上げている・・・こいつらは何で居るか、お目当てはマピタス海底に眠る難破船のサルベージ、人口は少ない上に衛星爆撃を受けている為ほとんどが破壊されているとは思うが、宇宙船である・・・衛星爆撃の影響で過度にかかる水圧程度で圧壊するようなヤワな設計はしていないはずだ。
ひとまず不満タラタラな魚人族を放流・・・いや、送り出してしばらくすればエルデ・レ・ラピーヌ級星間クルーザーやデルラ・レヴァタ級戦艦など20隻ほど海面に上がって来た。
「都市は壊滅・・・でも宇宙船はほぼ全数無傷!」
とりあえず目の前に降り立ったデルラ・レヴァタ級戦艦から降りてきたダリアはそう言った。
「噂には聞いてたが・・・でけぇ・・・」
「主機は脅威の230発、全長14km、主砲から対空砲まで含め総武装数20万基・・・銀河最大の戦艦と一応伺っていますが・・・設計は一世紀前と少々時代を感じざる得ない一品でございます」
エルーラの営業が眼鏡を光らせながら降って来る海藻を浴びる。一見空飛ぶ岩礁にしか見えないが一応金属製のボディらしく下回りはそれなりに金属パーツが見え隠れしている。水中保管なら貝類が付着しやすいはずだが、どちらかと言えば堆積物がメイン、その堆積物がどんどん崩れ落ちてきてきており、船の下に居るのは凄く危険・・・魚人族の生成する金属は特殊で貝類が付着しないと言う、海洋船憧れの特殊金属製、一時期は銀河中で必要不可欠ともされたマテリアルで作られているのだから長年ロクに動かしもしていなさそうな宇宙船でも貝類の付着が一切無さそう、堆積物が上にかなり盛られている具合からもおおよそ船体の半数は海底に埋没でもしていたのだろう・・・それは軍事兵器はほぼ無傷なはずである。
それからもどんどん陸揚げされる艦船達・・・人間にも使えるかと言われれば正直答えは微妙・・・彼らは宇宙服が無いと陸に上がれないが、こっちも宇宙服が無ければ船に乗れないと言う訳である。ダリアの言い訳を聞いている限りでは完全に成すすべなく一方的に攻撃を受けただけらしいのでこれらの船は戦線復帰・・・いや、スクランブルする事すらも無かったようだ。なんなら国防機能も完全に消滅していたに近い程国防をおろそかにしていた為か、国防軍もほとんど用意していなかったと言うなんたる慢心具合・・・そりゃ一日で絶滅危惧種になる訳である。
「ひとまずこれを整備と言いたいが・・・」
「これはもう、専門のドックが無いと手の出し様がありませんね」
流石のルーガもお手上げ、一応手を入れなくとも動きはしそうなのでとりあえず洗えばそれでいいだろうか?くらいの感覚で後ろの造船業者達は話を進めていく・・・当然この大きさとなれば構造把握に相当な時間を有する。もはや工業用プラットフォームとほぼ同等とも言えなくもない大きさだからだ・・・むしろこれをコロニーと言い張っては駄目だろうか?しかし残念ながら今回作ってやる生け簀・・・いや、コロニーは貨物ハブ、戦艦を改造する手間を考えると一から作った方が早いと言う物で、一応この生け簀・・・いや、居住区画は作るつもりだがあくまでもネドリー運輸の所有物件と言う位置づけ、マイラも正直採算は大赤字になるだろうと踏んでいるのだが作る物は大規模クラス、当然未使用区画がほとんどを占める事となる為維持費を最大限減らす作りとなっているのが最大の特徴か・・・。
建設が決まればマピタスの衛星軌道上に即座に資材や加工工場が一瞬で揃う、貨物ハブともなれば大体工期は一カ月か・・・普通なら1年くらいかけるのだが、相変わらずのパワープレイである。
そんなパワープレイをすれば戦闘艦や目の前のサルベージした船の整備などはどうなる?当然一切影響を受けずに現状そのままの稼働率を維持するようだ・・・決まっているだろ?アズランド新生帝国の技術者共はパワープレイが大好きなんだ。だからマピタスから戻った後直ぐにうちの主要造船会社の奴らは全員交通大臣から説教を受ける羽目になる。
・・・確かに軍用艦はこの前かなりの損失を出したんだがな?
いつもの休憩スペースの窓の外を眺めれば、直した損傷艦と今回出た損傷艦の穴埋め、今回失った無人艦の補充、エルデナン星系までの各種星系から引き上げられた難破船上がりの中古船や天地創生で使う無人産業廃棄物運搬船その他色々・・・美しい星々とかそんなの見れた物じゃない状況・・・明らかにアクティブな民間船がセントラルプロムナードへのドッキングに難儀している様子が見受けられる・・・そりゃ交通大臣もお怒りだろうよ。ルーガやエルーラの営業まで全員正座で説教を受けている。
それから一カ月過ぎても休憩スペースからの景色は変わる事は無い。確かに停泊している船はほとんど全て2~3日で入れ替わっている。気が付けばエルデナン星系手前までの星系にリサイクルプラント兼防衛ステーションの整備が完了し、なんとなく領土になってしまっている各星系にも移住者が住むようになり、その周りに各種工場が立つようになった。そんなに考えなしに領土を拡大し続ければ経済は大きく傾く事だろう・・・意外な事に経済はド安定で回ってしまっている。そう言えば小型機を乗り回していた奴らも今となっては普通にエルーラから新造艦を買いそろえるまでに成長していたしネドリー運輸で雇った民間人も独立して起業している者だっている。
・・・そして、皇国軍も1月あれば報復攻撃を用意出来る。
「・・・いつものこのパターン」
「えぇ、いつもの・・・このパターンですな?」
カトロニコフ元帥がどうせ人間相手ならオーバースペックでも用意するじゃろうという全てを分かりきった顔でES17戦術偵察機の偵察情報を眺める。既に手は用意してある・・・しかしこれに対抗出来る頼みの綱のRB26迫撃戦艦、相変わらず途中でスペースデプリに引っかかる為今回も使えない。だから外国籍の民間貨物船をありったけ用意した。理由?帝国の言う事なんて聞く相手じゃないからだ。
「・・・馬鹿なのか・・・馬鹿なのだな?」
「・・・かたや星を創成する国があれば、粉砕する国もある・・・実に銀河は多種多様だな」
「一体あいつらはマジでこのカオスな銀河情勢をどう落とし前つけるつもりだい!?」
「でも、助けられるならぁ・・・助けないとねぇ?」
アズランド新生帝国の主要外資系運送会社4社、それ以外にもアズランド新生帝国に就航している全外国籍船舶が協力してくれた今回の救出作戦、お相手はエステナ帝国首都惑星ハードックで、対する今回の戦犯はエマンクリシット皇国の新型艦、ハンマーオブゴット2・・・弱点と言う弱点は無く、前回もほぼ傷が付けられずに内部構造の欠陥か何かで自爆してしまっている。
「・・・民間の無線も、不満タラタラの様子ですな?」
「当たり前だ、全員ボランティアだ。一応報酬としてセントラルプロムナード周辺に浮かべてる中古民間船舶を好きなだけもっていっていいとは言ってあるが何処の会社も船など要らんが人命が掛かっているなら参加させろの一言だ・・・ホント良い奴らばかりで涙出ちゃうね・・・と言うか当初はツェルナにロゼンダ級を任せただけだったんだ・・・」
「まぁ、ミヴェルマン様のお耳に入れば自然とこうなる事でしょう・・・少々過剰な量ともお見受けしますが・・・」
「いや、そうでも無い。聞いている限りではほぼ全国民が休眠状態、専用の保存容器に入れられている。シドニアⅢの医務室にある治療ポットのサイズと同じ物と仮定しても妥当な数が揃っている。おまけに搬出にどれだけ人手が必要か、通常船舶の電源でそのポットが稼働するかも不明確、サシリアが詳細を聞こうとしたが人間からの施しと言う事を察したか、どうも玉砕する気満々だ。一向に吐きそうに無い。だから強行手段で今から民間船はハードックへの揚陸作戦を開始する・・・ロゼンダ級以外は全艦中型船用ジェネレーターをもう一基荷物として乗せてるんだ。もしかしたら足りない可能性だってある・・・それも一応想定してマイラにも応援は頼んであるんだ」
「もう少し、素直になってくれれば良いのですが・・・こちらも通常戦力で出来る限り応戦いたしましょう」
・・・今度こそやれるか・・・またやられるのか・・・。
正直LRB超新星法砲無しに勝てる気がしない・・・やれてエンジン破壊だが、ハードックを射程に捉えられてしまっていればもう手のうちようが無い。後は隣の星系に転がっている破壊されたコロニーの一部の中でジャンプゲートを潜れそうな大きさの物を見繕ってエンジン破壊後に横からぶつけて射線でもずらすか・・・いくら生存者が居ないコロニーの残骸とはいえ批難は出そうではある。
民間と新生帝国軍はそれぞれ作戦を開始したがやはり双方難航している・・・地上では新生帝国軍海兵隊と商船の船員達がエステナ帝国軍から攻撃を受けている・・・不本意だが手負いにして連行する他無い状況・・・だがエステナ帝国人がいったいどういう種族かを考えると手負いどころか本気で殺す気でやりあったとしてもそう簡単には死なない種族である。そんな種族相手に手加減も出来る訳も無く、戦闘型の救出は完全に無理と報告が相次いでいる。せいぜい生産型の民間人を強引に誘拐がやっと・・・なんなら海兵隊が足らないのでユリアスも緊急大気圏突入・・・幸いエステナ帝国は都市が集中しているので惑星全土で救援活動をしなくても良い・・・なんならハードック自体あまり居住に向かない惑星でもある・・・海洋は放射線まみれ、陸地はおおよそ7割が溶岩だらけ、活火山だらけの過酷な環境と言えるのでほぼ居住可能地域が限られている。
ロゼンダ級巡洋艦の横に降り立ったは良いが何処かで見覚えのある人型の化け・・・エステナ帝国人に包囲される・・・実はサシリアもロゼンダ級から降りられないのだ。
「こりゃ・・・交渉は無理だな?」
「議会とはコンタクトを取っていますが・・・人間の施しを受けるつもりは無いと・・・」
「・・・相変わらずだな」
ロゼンダ級にはズァパリ民国軍の海兵が搭乗してはいる。彼らは船外に居るものの、エステナ帝国軍とにらめっこのまま一切進展が無い・・・ここで人間属が出てきたらどうなるか・・・彼らにも犠牲が出かねない・・・そんな状態だ。
・・・だが、このままにらめっこはしていられない。
救出限界まであと2時間・・・これは惑星崩壊の爆発まで安全に逃れる事を想定してこの時間なのでもう少し粘れるとはいえリスクも伴う。
「とりあえず、サシリアと合流する・・・海兵はいい」
「しかし・・・危険過ぎます」
「武器を向けてる時点でほぼ交渉は無理だろうからな」
「・・・ひとまずは有事に備えます」
海兵達はそう言ってユリアスの搭乗口付近にのみ展開する。サシリアも降りてきてはいた。
・・・しかし、暑い土地だ・・・。
溶岩の海が真横を流れている、そりゃ暑いに決まってる。
サシリアと合流して建物の入口へ向かって歩いていけば、戦闘型のエステナ帝国軍がさらに警戒を強めていく。
「これ以上近づけば攻撃をする!」
エステナ帝国軍の要求は無視する・・・後ろのズァパリ民国軍、アズランド新生帝国軍も緊迫した状況で武器を直ぐに構えられるような姿勢を取っている・・・そして遂に俺達はボーダーラインを越えたようだ。
「・・・貴様ら・・・どうしても死にたいか・・・全員!侵入者を撃退せよ!」
「お父様!」
「・・・大丈夫だ」
エステナ帝国軍の兵士は一斉に武器を構えだして攻撃を開始する・・・だが攻撃は当たらない。
「チッ・・・愚かな人間どもめ、我々失敗作などほおっておけばよかろうに」
「・・・だが、国を築き上げ、銀河に種族として認められている、そして何度も説明しているように、これは銀河全体での緊急退避作戦である」
「とはいえ、立案はどうせアンタだろう?」
空からエステナ帝国人にしては最も人間に等しい体をしている女性がゆっくり降りてくる。そしてエステナ帝国兵の攻撃は全て彼女の魔法か何かのテクノロジーで精製された半透明の白いシールドのドームが防いでいた。
「・・・まぁ、正直を言えばそうだが、エステナ帝国と国交のある国はこの計画に賛同し、即座に用意出来る民間貨物船を手配した」
・・・本当はズァパリ民国以外はエステナ帝国と国交のある国の商人がボランティアで名乗りを上げただけだがな?
「ふん、面白い嘘を付く・・・だがおおよそは嘘でもないようだ」
・・・人の心を読むタイプだったか。
「だが、諦めろ」
「なぜだ?」
「見てわからんのか・・・もう貴様らとは戦争状態にある」
「仕掛けた覚えは無いんだが?」
「我々が仕掛けた・・・せいぜい生産型を誘拐する程度で諦めろ」
「アンタの力でどうにかならんか?」
「これはエステナ帝国が決めた事だ・・・もう誰にも止められない」
・・・そこで上から通信が入った・・・ハンマーオブゴット2は補助ロケットブースターを搭載しており、もう間もなくハードックを射程に捉えると。
「・・・よって、これ以上我々に加担するのであれば・・・」
「サシリア!急いで離陸準備だ!周りの奴ら!死にたくなければ10分以内に俺らの船に乗れ!」
とりあえず、一旦背中を見せたエステナ帝国の部隊指揮官かもしれない女性の襟を掴んで急いでユリアスに走る。女性自体は浮いているので重さも無く運びやすい・・・そしてたぶん指揮官なのか・・・部下と思わしきエステナ帝国兵が彼女を追ってユリアスに殺到する。ロゼンダ級には誰一人として行かない。ユリアス艦内では物騒な鬼ごっこが始まり、おおよそ10分で船の周りに展開していたエステナ帝国兵は収容完了、隙をついてズァパリ民国兵は城内の生産型を数百人ささっと拉致し、ハードックを離れる・・・最終的に俺は小型機の格納庫でエステナ帝国兵に囲まれた。
「・・・貴様・・・もういい、全員、戦闘解除」
エステナ帝国第一師団総司令、サリ・U-6・エーノはふてくされながらES-17の前であぐらをかいて座り込む。彼女に貞操概念は無いのか、短いスカートから下着は丸見えなのだが、やはり総司令なだけあり、あっさりエステナ帝国軍戦闘兵400人くらいの武装解除が完了してしまう・・・ちなみに同じような事をして部隊の総司令を拉致って成功した所がいくつかある・・・ツェルナ、ミヴェルマン、エルムスミエル、マドリニスゾリゾの船団だ。昆虫族は演説中に背後からささっと仕留めるパワープレイ、言葉でねじ伏せたのはエルムスミエルとマドリニスゾリゾ、やはり人生経験と頭の回転の良さに勝る物は無い・・・しかしエステナ帝国、現状アクティブな人口は戦闘型が圧倒的に多く、生産型はおおよそ総人口の半分の18万人、戦闘型は総人口の1割未満の2千人・・・休眠状態のポッドは60基とほぼ救出が出来なかった結果に終わる・・・後はハードックの惑星崩壊を眺める事しか出来なかった。案の定、その後ハンマーオブゴット2は自爆、自爆の理由は新生帝国軍は停止させようとエンジンにダメージまで与えられたからである・・・新生帝国軍の損害は死傷者はゼロだが無人艦を中心に1億隻大破、負傷者も300万人、なおも増加・・・今回も大敗という結果だった。
ンミィィィィ・・・。
サシリアは面倒くさそうな顔をしながら紅茶を目の前で飲んでいる。そしてエルゼの笑顔もなんとなく怖い。その目の前には白髪ロン毛、右腕だけ怪物のイケメンが紅茶を飲んでいる・・・彼はエステナ帝国議会最判官、エルレッキー・L87、そしてサシリアに絡みついている手足が怪物の少女はエステナ・A30・・・エステナ帝国が保管していた休眠状態の皇女である。そして俺の机の上に行儀悪く座っているのがU-6、たぶん向こう側から見たら下着が丸見えだろう・・・そんなU-6の左腕には絆創膏・・・どうせこれはクソトカゲが血を抜いた後・・・そう、ここに居る御3方は例のごとくクソトカゲの実験サンプルとしてここに居る。他のエステナ帝国人は、さてこれからどうしようかと考える間も無くステラー王国が引き取っていった。基本的にエステナ帝国人はほぼ戦闘狂と言っても良いので彼らはオヴィルツィッヒ帝国製のクローン兵と相性が良いらしい。今後もステラー王国の軍事に関わっていく事となるだろう。
とりあえずL87とA30はサシリア配下に一応は居る。まずL87はサシリア配下のズァパリ民国兵がささっと拉致ってきた都合、ズァパリ民国の捕虜扱いの認識でサシリアの配下に居るらしい。
A30に関しても元はズァパリ民国兵がささっと拾ってきた休眠ポッドである。A30を起こしたのがサシリアという訳で、図体に反して幼いA30はサシリアを親と認識して今に至る。ちなみにL87に聞けば実年齢148歳、身体年齢5歳らしい・・・つまり143年休眠ポッドで保管していた5歳児と言う訳である・・・そして長らくそうされてきた理由、彼女を含むエステナ・Aシリーズその物がエステナ帝国人にとって一番オリジナルに近い存在、つまりオヴィルツィッヒ帝国が作り出した改造人間兵器であり、エステナ帝国人生産時に使われる遺伝子の劣化崩壊が発生した時にリセットに使われる遺伝子バックアップでもある・・・本来ならば休眠ポッドから出たら遺伝子修正に使われた後に処分される個体だったらしい・・・そして純粋な兵器としても未成熟段階の個体、いわゆる作りかけなので見た目以外は兵器らしさのかけらもない。
そして下着を見せびらかす痴女と言わんばかりの行儀の悪さを誇るU-6はL87と同じくアズランド新生帝国の捕虜と言う認識でこうして股を大きく開いて退屈そうに座っている。向こう側に座っている唯一の男性であるL87はこの辺気にしないあたり、基本的にエステナ帝国人は人間族特有の貞操概念が完全に無いように伺える・・・事実、生殖器が無いらしい。
この中で最も人間に近いU-6は戦闘支援型として生み出された戦闘指揮官型、腕の装甲版のような所からナノドローンを放出して前線にパルスバリアを展開するシールダー、そのほかにも足も各種広範囲攻撃用のナノドローンを装備しており、彼女が最も人間に近しい理由がこのアタッチメントの着脱において都合の良いフレームだからという理由らしい。そして生産職は一部を除いては大概戦闘型の失敗作だったり仕損じのフレーム、L87がそれに該当するらしく、議会最判官としてチューニングされた経緯を持つ。
さぁ、この痴女をどうしようか・・・そう考えていたらツェルナが2体も追加で連れてきた・・・シルエットだけ見ればほぼ人間、両足化け物のこれまたキャラの濃そうな2人のツインテール少女、戦闘型のマーリ・KAF-78とマーリ・KAF-79である。連番なだけありやはり製造年月日やロッドも同一、そして2人セットで運用される設計がされている。違いは番手の若い方が右利きに設定されている以外は完全に共通、銀河全体でも今やビームライフルの時代だと言うのに大鎌と実弾拳銃を主武器とする・・・両足が化け物なのだから運動性能も抜群で、装甲車はひと蹴りで粉砕、その跳躍力は50階建てビルの屋上まで飛べてしまうらしい・・・これをツェルナはささっと気絶させたのだから昆虫族の潜在的な戦闘力も意外と馬鹿に出来ない。もちろんKAF-78,79も指揮官クラスなのでまだまだトンデモ機能がある。双方片目が化け物、これは3km先まで鮮明に見通す事ができると言ういわゆる千里眼、それだけじゃ無い、U-6同様に腕にナノドローンを装備しており基本飛べる・・・だから短いスカートからU-6が着用している物よりも遥かに過激な下着がチラチラしている・・・趣味思考も武器が大鎌となればそれ相応らしい・・・もちろん昆虫族の服飾とも互換性があるのでツェルナと一緒でも違和感は無い。
ちなみにKAFの二人はまだ可愛い物で、ここには居ないミヴェルマンは完全化け物の重戦士砲と呼ばれるベッティ・PF-678と言う両腕ナノドローン砲の重戦士のたぶん男をささっと仕留めている・・・ちなみにそのPF-678は用途に似合わず戦略家で、話は見た目の割に通じやすく、速攻ヴァテリア・グラコッツ防衛大臣に気に入られてしまい、ステラー王国軍の相談役になってしまっている。ミヴェルマンは本当にどうやって彼を気絶に追い込んだのだろう・・・かなり疑問でならない。
KAFの二人は次の採血はいつだろうか、そんな話をしている・・・採血に快楽を覚えてしまったあたりも尋常なく地雷感がする・・・とりあえずこの中で一番マトモなのはL87である事は分かった、A30も育て方次第ではワンチャン・・・U-6も態度さえどうにかすればな所はある。
「しかし、母星が吹き飛んでしまったのが残念じゃのー?」
「・・・オイコラクソトカゲ、検体なんて1人居りゃ十分だろ・・・そしてお前は何処から湧いて出てきた!」
「何を言う!バリエーションが豊富だからこそそれぞれ違ったサンプルが得られる!サンプルは多ければ多い程良い!そしておぬしの娘と一緒に入って来たのは気が付かんかったのかね?」
「はーかーせぇーつぎの採血いつぅー?」
「のははぁ・・・では明日も実験につきあってもらおうかのー」
「やったぁー!とびきり痛いのよろしくぅー!」
クソトカゲの実験で興奮しているKAFの二人とそれでのろけるクソトカゲ・・・この場に居るエステナ帝国人以外はもう頭を抱えるしか無かった。
「ボス、部下から報告」
「リユンからか・・・あーあ、サリマンの奴、まーた面倒な事起こしやがって・・・」
それから別の日、相変わらず下着丸出しで新生帝国軍の固形レーションを行儀悪く机の上でむさぼるU-6からタブレット端末を受け取る、またサリマンがやらかしている。そのままオロラ星系へ飛べば良かった物の・・・あろうことか、ロックベルト星系に飛んでしまった・・・という物だ。
「クソ帝国の船だろ?助ける価値すら無い無い、ほっとけ!」
「そう・・・まぁ、サリマンに限ってはその通りなんだが・・・あいつら一応民間人だからなぁ・・・あと、逃げ込んだ場所もだ」
「だからどうした?」
「どうしたも何も、国として一応保護してやらなければならない、何だったら同盟国もヤバイ」
「クソ帝国に媚売ってどうする・・・今やボスの国の方が上なんだろ?」
U-6は食べこぼしの固形レーションの破片をその辺に散らかす。ローラが溜息をつきながら箒と塵取りを持って来た。ついでにさっき俺が食べ終えたばかりのカップラーメンの空容器も回収していく・・・最寄りの新生帝国軍の艦隊が救援に向かっているが、オデム=ササラ行きの商船と新生帝国艦でオロラ星系とセルルド星系間のジャンプゲートは転送容量ギリギリに・・・ジャンプゲートも一度に飛ばせる船の数にも限度がある・・・特にアズランド新生帝国行きの交通量が多い上にオヴィルツィッヒ帝国行きのさらに交通量の多い経路が加わっている、元々常時80%の交通量だ、そりゃ直ぐにパンクもする・・・やはりロックベルト星系が大惨事になってしまった。
「・・・ひとまずオデム=ササラ国際交易ステーションが半壊で済んだのは良かったが、サリマンのアホが混乱して共和国軍やオデム=ササラ管制の静止も聞かずにドッキングベイに逃げ込もうとしたせいで大型ドッキングベイと一緒に爆散、隣接する中、小型ベイも巻き添え・・・オデム=ササラは事実上貨物取引が出来なくなったと・・・」
「えぇ・・・次から次へと」
今回対応したのはリーサの艦隊、ドロイド艦隊だけだったので特に苦戦した様子は無かったがジャンプゲートで足止めを食った分到着が遅くなってしまったと言う事・・・共和国軍は相変わらず砲の連射速度の問題でたいした戦果を出せず、いよいよ共和国軍も軍備が苦しくなってきた様子、そして今日はリーサが執務机の目の前で報告している。左手はU-6のスカートを机に押し付ける形・・・その後ろにはワトソンとカトロニコフが大概いつも報告をする位置に立っている・・・猫かのごとく基本机の上に座っているU-6だが、やはり生殖機能が無いせいか貞操概念が無い・・・おかげで男性陣は全く入ってこなくなった・・・そりゃ入って直ぐに下着丸出しの女性が目の前に居れば目のやり場に困るだろう。だがU-6は本当に無難なポジションが新生帝国その他に無い為、メールの通知役にしか役立てていない・・・戦闘部隊の指揮?生身の人間が改造人間前提の作戦についていけない、艦隊の指揮?秒で帝国軍にケンカを吹っ掛けに行きそうだから駄目だ、秘書?戦闘型にそんな機能は無い、なんならL87の方が適任、既にエルゼの秘書官としての立場を確立している・・・こちらもたまに過激な発想が見受けられるが、エステナ帝国人は戦闘用として作られた兵器の末裔である事を忘れてはいけない・・・彼らは基本戦闘狂なのだ、戦場で本領を発揮する種族なのだ。
「ところでファルマン・・・いい加減この痴女にズボンを履かせなさい!」
「ナノドローンアタッチメントが装備出来ないからって嫌がるんだ」
「あ?貴様もアタシの機能を削ろうってか?この姿になんの問題がある?」
U-6はめんどくせぇババァだなと言う顔でリーサを睨む。
「公共秩序ってもんがあるのよ!」
「なんだそれ?こんな布切れ1枚が見えるだけでその公共秩序ってーのが乱れるのか?」
「当たり前じゃない!」
「たかが肌荒れ防止の布なんかに?こんなの一部の欠陥品しか着用しないのだが?なぁ?KAF-78,79?」
「そーそ、あーしら人間に最も近い型は排泄した後肌荒れしがちだかんねー?ねー!はーかせ?」
「そうじゃのー?人間族の、特にメスは確かに排泄器官が短く、雑菌が入りやすい故に衛生管理をしっかりせんと炎症を良く起こしがちな傾向にあるかのー?」
「大体あーしらのボスもこんな布切れ付けてないしー?」
「そう言えば何でパパ達その布切れ見て恥ずかしがるんだろ?」
そこへさらに人間とは異なる種族が入って来た。確かに昆虫族は下着をそもそも着用しない、爬虫類属もズボンこそ履いているが下着は着用していない。なんならエステナ帝国人は大半着用しないと言うか、そもそも着用できなさそうでもある体がそこそこあるし、獣人族連合の一員であると言う事は隣国も大体着用しない種族が多いはずだ。
「・・・ツェールナーァ?」
「ミェッ!?なんでぇ!?」
リーサはツェルナを睨みつける。ツェルナは状況を理解できないがとりあえず執務室から逃げ出した。リーサもそれを追いかける。
「・・・と、言う訳で、銀河全体で言えば下着その物を着用する種族は割と少数なのでございます。エステナ帝国も原則下着を着用しない種族と言う訳なのです」
「・・・そう・・・言われましてもなぁ・・・」
この世の理を全てを理解したような顔でローラは置いて行かれたカトロニコフに結論を言う。そんな事を言われたって流石の人生経験が長いカトロニコフでさえ何とも言い返せない。もう異星人と割り切って気にしないように心がけるしかないようだ・・・ローラはU-6と交渉し、最終的にそう言う結論を出したのである。
・・・いくら容姿が似ていようとも、彼女らも異星人なのである。
とりあえず報告は終わっているのでこの場を解散する事にした。
ー銀河の常識ー
・ヴェリーテェア共和国
魚人族の首脳国にして現存する魚人族としては唯一の国、かつては他の国もあったが著しい人口低下に伴い廃統合され現在に至る。
かつては銀河にジャンプゲートをもたらした大国ではあったものの、現時点の総人口は300人程度と国家としても破綻している為、事実上アズランド新生帝国の一部と言っても良いのかもしれない。
一応現首相はダリア・ミアータ




