経済の豊かさ
国民の生活が豊かでなければ国は成り立たない。
ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー
・AL4000型星間旅客船
エルーラ社製の旅客船。VZR-2000Hの廉価モデルで仕様にもよるが客室を約2千室から5千室ほど備える大衆向け客船。高級客船はVZRシリーズが採用されるが、帝国製の客船の方が豪華で機能性も高い為、VZRシリーズ、ALシリーズ共に格安路線に採用されるのが一般的である。
・AB-7000型航空母艦/貨物船
AB-6000型航空母艦の後継機種(AT3型航空母艦のコピー品)だが、建造されたのはさらに改造を加えた貨物型が先であり、銀河至上初の貨物型がラインナップに存在する航空母艦でもある。(※既存艦からの改修改造は含めない)
設計はAT3型航空母艦ベースだが、より貨物積載、強襲揚陸などに特化した仕様変更、パワートレインなどの再設計を行い、より多くの任務に耐えうる船へと改良された。セブンスターエンジンを採用する事により長距離の高速輸送を実現している。なおエンジンがハイパワー過ぎてドッキングに苦労する。
リストーン星系の再掌握の再掌握・・・それはとても難しい課題とも思われた。
「・・・小型機で・・・済んだらここまでの損失がそもそもでないよな?」
「当然です!わが軍の軍用艦はほぼ修理で動けません!皇国軍の通常艦隊ですら相手にする戦力は無いのです!」
リユン元帥が目の前をくるくる回っている。そしてクソトカゲは残して来た研究機材の心配しかしていない。一応簡単に移動出来た物は全てトラックに積まれて高速道路脇に放置されている・・・そのトラックの台数は3000万台・・・おおよそセントラルプロムナードを走る貨物トラックの半数近くを占めるのだが、それでもまだ足りないとおっしゃる・・・動かせる物など大して研究で使い物にはならないらしい・・・なら何故持ってきた?一個一個が大変高価な物だからである。ちなみにこれを運んだのはジェネレーターの壊れている部品取り用の空母群だった。一部例外もあるが、空母となれば一般的に運用人数も多くなりがちな艦船、それに対応する為の酸素ジェネレーターを搭載している都合、その気になれば貨物船より遥かに人を収容できる代物だ。普通のステーション管理者なら人命引き上げに使うべき代物をたかが研究機材の為に何故使ったと怒鳴り散らかす所だが、そもそもこの空母群、部品取りである。当然日頃から艦内の酸素管理などしていないので使えるようにするには艦内の酸素ジェネレーターや船体の穴などが艦内環境にどのような影響をもたらしているかなども含めて整備しなければならない・・・つまり酸素供給の都合によりこの手の船は直ぐに人を押し込められるようにはならないのだった。しかし酸素など関係ない物品ならいくらでも、という事でトラックその他を詰め込んだらしかった。食料備蓄を優先したはずだがこのザマらしい・・・だが、セントラルプロムナードの貨物車両全てを回収出来てしまっていた・・・不動状態の空母だけでも800隻近くある・・・そりゃ出来て当たり前だろうけど、もっと有益な使い方もあったはずだ・・・現に格納庫には見覚えのある車が全て並べてあった・・・こんな物など本当に置いてきて良かったのだ。
とりあえずリストーン星系まで進軍してきた正規の皇国軍艦隊の撃破を考えなければならない。それは今から会議する所だが、その時にリユン元帥の携帯端末に着信が入る。
「・・・はぁ・・・もうそれはご愁傷様としか・・・とりあえずわが軍に救援で出せる船はありませんので・・・ええ、すみません」
リユン元帥は通話を切った。
「・・・誰から?」
「オレット警視総監からですよ・・・セルルド星系でサリマン運輸所属のアスベド級大型貨物船がまたやらかしたそうですが、運よくリストーン星系に向かう皇国軍主力艦隊と鉢合わせ、アスベド級大型貨物船は皇国軍により撃破されるも、皇国軍もドロイド艦隊に蹂躙され壊滅との事です」
「・・・やっちまったな・・・ではないか」
「むしろ、よくやらかしてくれた・・・ですよ、こうなれば修理の終えた現存艦隊でリストーン星系は再掌握出来ます」
「無理の無いように頼む」
「了解しました」
リユン元帥は拍子抜けした顔をしながらも宮殿の会議室を出る・・・一億を越える皇国軍の大艦隊の撃破、不覚にもサリマンのアスベド級大型貨物船一隻の犠牲だけで成し遂げてしまった。ちょっとは見直したぞ・・・サリマン・・・。
・・・リストーン星系再掌握はほぼ順調、あとは反対側なのだが、ブリッド星系でも拍子抜けする変化が起きていた。
メソポタニア級をそのまま使っての偵察を行っては居るものの、ブリッド星系の在庫は全てカルラ星系へ流れた模様、カルラ星系、シェビド星系を経て魚人族の統治する星系、アウロラ星系にたどり着く訳で、そこからワーグナー星系等々を経由して最終的にセルルド星系にドロイド艦隊が流れる仕組みである。恐らくはドロイド艦隊は資源豊富なワーグナー星系に工場を立てて居ると思われる。何故なら資源惑星すらもテラフォーミングして居住惑星にしなければならない獣人族特有の問題がある為、獣人族の領地には手付かずの資源惑星も多々存在するのだ。
・・・だが、一つ懸念点もある。
魚人族その物がドロイド艦隊によって滅ぼされている可能性もあると言う事だ。その確率は半々、魚人族と言うだけあり、そもそもの生活環境は陸地よりも水中、水中にはドロイド艦隊は入ってこれないので水中の中で経済が完結していれば滅びる要素も無いと言う事である。おまけにアウロラ星系は海面割合が非常に高い海洋惑星が非常に多いのが特徴、勿論陸地もあるにはあるが、資源が採取可能な鉱山になりうる山が無いらしいので割と引きこもるには丁度良い星系とも言える。ちなみに言えば短距離ジャンプで惑星間の移動が出来てしまうので、もしかしたら海を出る事無く惑星間を行き来出来る技術もありそうだ。もしそうであれば宇宙に出る必要すらも無い、つまりドロイド艦隊に追われる事が無い・・・ひとまずこれにかけるしかない。
そんな話をフランクリン大将にすれば要塞建設から各種工業プラントまで、待っていましたと言わんばかりにブリッド星系の大規模開発に乗り出す民間人が大勢駆け込んで来た・・・国家予算がいくらあっても足りない気がするが、建材処理に困ってもいる・・・そして大真面目にいつ寝ているのか本当に分からない彼らのおかげでアズランド新生帝国は様々な危機を乗り越える為の余力を確保出来るようになって来た。しかし彼らいわく現状の2倍の余力を確保したいとの事だ・・・事実、余剰を確保した直後に帳消しにされる状況が多い、これはもうその通り。もっと建てたいステーションはあるかと聞かれたのでとりあえず薬関係でクソトカゲ用の研究ステーションを発注しておいた・・・イペの衛星軌道上にサイズァー薬品の超大型医薬品プラントが完成するのは半年後の話である・・・いや、もっと短期になるかもしれない。
しかし、皇国との戦争以外にもアズランド新生帝国はとある問題を抱えていた。元帝国兵は皇国軍との戦争に躍起が立っているが、元難民はどうだろうか?アズランド新生帝国の人口比率はアグランダー王国からの難民が大半を占める、よってアズランド新生帝国は実質はアグランダー王国とも言える。これの何が問題か・・・元々彼らはフルジア王国の富豪よりも上位の富裕層と言う事である。
・・・飯・・・そう、飯の問題・・・。
フルジア王国民からしたらソウルフード、主食と言っていいコレ・・・流石のフルジア王国民だって毎日3食必ずコレという訳では無いが、低価格なコスパ最強の食品であるカップラーメン、これの何がダメか、非健康的なジャンクフードであるのだが、帝国国民からすれば貧乏食のジャンル、非常食として食べる事はあっても舌の肥えている帝国国民の口には合わない食品なのは確かなはずだ。しかも一時期は数を確保する為に保存食工場を大量に建造していた為、カップラーメンは未だに主食の最前線に君臨している現状もある・・・だからアズランド新生帝国皇帝の机の引き出しから出てくる。
食の不満は国家経営にも重大な支障をもたらすとも言うが、緊急事態だった事もあり、今まで後回しにしていた問題、放置し過ぎたとも言えるが、正直アグランダー王国からの引き上げ以前は帝国軍人の比率が非常に高く、一般市民も毎日カップラーメンでも文句を言わないフルジア王国系、ある程度の内政事情の後回しの不満を我慢してもらっていた・・・そこに今まで甘えていたのだ。帝国系難民を受け入れた時点でこの問題はいずれ発生すると、内政担当の大臣からそれなりに言われてもいた。帝国国民ともなれば生活の質がそもそもフルジア王国とは比にならない程高い・・・公共サービス、流通、行政、全てに置いて不自由の無い生活を送っていた民である・・・現状の市場に出回る物はほとんど高級品が無いのでそれに対する不満がエルゼに集中しているのである。
・・・なお、今やほとんどの国民が皇帝の顔を知らない。皇帝と言えばエルゼと言う認識が一般的なのである。コロニー内では亡命してきたファーレンヒ元皇女を皇帝にしろと言うデモが頻繁に行われている実態が最近ようやく分かったのだ。
・・・だが、高級品と言ったって・・・。
車・・・一番手頃なのはそれしかない。しかしエルーラ製の車はどうあがいても大衆車止まりで高級車にはなれない存在・・・となればゼヌラやプルートなどの高級ブランドメーカーから車を輸入する他無い・・・が、伝手が無い。何故なら帝国方面へ商路を広げた事が無かったから、そして帝国方面へ商路を伸ばすと言う事はルーガとも縁を切る事になるからである・・・戦闘艦を輸出している時点でアウトだろって?まあ、正直に言えばバーボン星系に居る時点でビックになってマスビダ星系から出て行っているという条件を達成してしまっているが、まだルーガからは何も言われていない・・・そもそもルーガのシルバーロッド整備工場も造船業をするくらいにはビックになってしまっている。仲良くマスビダ星系から出て行ったと言えば確かにそうかもしれない。だがネドリー運輸その物はまだマスビダ星系でも活動しているし、シルバーロッド整備工場もそうだ・・・幸いにもリストーン星系とマスビダ星系を繋ぐジャンプゲートはミニジャンプゲートと言う分類の短距離ジャンプゲート、実は最悪無くても良いジャンプゲートである。
元ジャンプゲート管理会社の人間から聞くには、元々オロラ星系からマスビダ星系を直接繋ぐ計画だったらしいが、惑星の周回の都合で迂回が必要となる事が判明した為計画変更、その迂回地点としてリストーン星系へ一旦ジャンプし、角度を変えてマスビダ星系へジャンプする事となり、今に至るのだと言う。勿論詳細なプロジェクトの中身までは知らないのであくまでも概要程度で聞いた話である。ちなみにジャンプゲート破壊は完全に皇国軍の仕業なので今回銀河からのペナルティは無いし、復旧責任も皇国だが、彼らは直す気も無いだろう・・・直したいならエマンクリシット皇国を徹底的に追い詰めて賠償請求する他無い。
ひとまずは内政の現状把握の為にコロニー内部を見てみようと思うが手頃な車が無い。いや、車は存在する、しかしその車と言うのは何故かセントラルプロムナードから持ち出されたクラッシックスーパーカー・・・盗品扱いで価値が無いとは言え、元は超高級車・・・これでは国民の反感を買う。そこで待ってましたと言わんばかりにいつものエルーラの営業が高そうな新作のミニバンを用意して待っていた。
「皇帝陛下!丁度良い所に!」
「ひとまず無事で良かったんだが、あんたは船の営業だよな?自動車部門の営業マンじゃないはずだよな?」
「いやー私も皇帝陛下と唯一お取引させて頂いている営業マンとしてグループ内部から色々頼まれておりまして・・・今回皇帝陛下の為にお持ちしたのはこちらでございます」
「・・・そう来るとは薄々察してたけどな?この前発表してた新作だろ?三流高級ミニバンとかボロクソだったじゃないか?どうせこれはその時のデモカーだろ?」
「しかし、このステーションではゼヌラ社等の高級車を乗り回すと反感を買います。そこで我が社の三流高級ミニバン、LVエステートでございます!」
「・・・自ら三流って言っちゃうのね・・・」
「昆虫族の方もゆったり座れる広い後部席!勿論シートの座り心地にもこだわりました!」
流れるがままに車内に押し込まれる・・・確かに船のシートとかに比べれば極上だが、庶民育ちにはまだ抵抗がある高級感、新型は昆虫族を意識したようで天井高が30センチも高くなったよう。その為見た目のバランスが悪い、おまけに昆虫族からしてもまだ天井高が低め、ズァパリ民国人の平均身長は成人女性で250cm、部下が190cmである。ちょっと中途半端だが、あまり縦に伸ばしすぎると横転しやすくもなるので、そうなればやはり横も必要・・・車幅規制ガン無視で昆虫族向けの仕様を別途作ってしまえば良かったとも言える。人間族の車としては乗用車でここが最大クラスと言った所か・・・色々と欲張った結果の妥協が多く見受けられる。だから三流高級ミニバン扱いされるのだと思う。
「是非とも普段使いや公用車に採用して頂きたく・・・」
「イヴィーラ交通大臣に言ってくれ・・・交通局の仕事でも無いんだけれど、実質何でも省庁だから」
「かしこまりました、ひとまずこの車は皇帝陛下に献上させていただきます」
「そう言われてもだな・・・」
・・・と言いつつエルーラの営業から車の鍵を受け取ってしまった。彼もすっかりカリスマ営業マン、迎えの部下が後ろに控えていた・・・しかし、エルーラから正規のER-3000Cを購入した事が無いのである・・・それはマイラに継がせてからも同じ、部品余りが酷過ぎてエルーラからは主要部品全て持ち込みの特注艦しか買っていない。それでカリスマ扱いもどうかと思うが、エルーラグループとしてはたとえ部品だけだろうと、船体だけだろうと、なんだかんだ細々と利益になる仕事を一番取ってきているのだからそうなってもしょうがないか・・・。
「・・・とはいえ、無難な車が手に入ってしまったな」
助手席に置かれた車検証、扱いとしてはネドリー運輸の社用車になっている。シリアル番号的に10台目なのでデモカーでは無いようだ。車関係の税金は購入と車検の時と充電の電気代にしか掛からないのがアズランド新生帝国、フルジア王国では重量税その他と色々重課税だが、そもそもリストーン星系でも車関係の税制はあって無いような物だった・・・何故なら治外法権だったからであるし、実質今もそう・・・軍用ライセンスとか皇族関係者とか、海外免許とか色々な理由をこじつけて無免許でも車を走らせている人物は相当数いる・・・ツェルナとかリーリアとかシルヴァやローラなどだ。
ひとまず車を管理棟の前に移動させてユリアスへ・・・宮殿でも良いのだが何かと地下の方が便利なのである。重役もまた、セントラルプロムナードで使っていた車を使おうにも使えない状況なので基本的に余り散らかしているES-17戦術偵察機をプライベートシャトルとして皆乗りつけてくるのだ。
ある程度仕事を片付ければ腹が減る。普段はローラが呼びに来るのだが、このステーションに居る以上、ある程度エルゼの警備も厳重でなければならない。気が付けば屋敷の使用人達は全員ビーム拳銃を持っており、そこそこの訓練を受けている気がする。何処で覚えたかまでは知らないが、リユン元帥が用意した宮殿の警備兵一万人が居てもなお武装している・・・おかげで一応皇帝である俺はノーマークだ。まぁ、俺の息の根を止めた所で何かが変わるかと言われたら本当に何も変わらないのがアズランド新生帝国の常識である。実際止めてみたらどうなるか、物流が大きく改善されるかと言えば何も変わらないし、それはどちらかと言えばマイラの守備範囲、軍事方針が大きく変わるかと言えばそうでもないし、最悪な自体にならないように主要武将達が常に頭を抱えている。国交?ルーガかエルゼで代替えが効く。そう考えると本当に何もしていない皇帝とも言える。
ミニバンを走らせて居住区へ上がる。町は荒れ放題、エルゼに対する不満とファーレンヒ元皇女殿下に対する過度な期待、アグランダー王国の再建など、色んな立て看板が目立つ。帝国経済への復帰が元アグランダー王国国民の願望なのは知っていた。どうせヴェルグーリさんの酒場でその手に詳しい奴から内政について言われるだろう・・・そう思って交易ドックへ行けばその手に詳しい奴がやっぱり居た。
「こんなご時世に単身でエルーラの三流ミニバンなんか転がしてこんな所に来て良いんですかい?旦那?」
「アンタこそ命狙われそうなポジションのはずなんだがな?」
「国のトップの方があからさまに狙われるはずなんだが?」
「俺をやった所で何も変わらないんだよ、マジで・・・アズランド新生帝国の常識だろ?」
「内政も、外交も、軍事もそれぞれに特化した人間に任せているのであろう?しかしこんな所で祖国の郷土料理を食べられるとは・・・」
「エルムスミエルさん・・・いや、ヴェルグーリさん・・・その青いスープは何?」
「これはぁ・・・ちと、予想外でのう・・・?」
エルムスミエルが美味しそうに食べる魚の煮つけに近いような謎のスープ、巨大な目玉がぷっかり浮いているのが特徴的だが、ヴェルグーリさんはとある元皇女様をちらっと見ては目を逸らした。
「・・・病院送りになりたくなけりゃ、やめといた方が良いぜ?旦那・・・」
「アブダブバスの魚介スープと言う、我々にとっては慣れ親しんだ味だが、他種族の民には刺激が強すぎるようだ。まぁ、非常にハイカロリーな上に他種族の胃ではまず消化出来ぬので勧めは出来ぬのだが・・・外でこの匂いがして懐かしくてつい寄ってしまった。大変美味である」
「・・・ま、材料はマグロではあるんだがの?」
「事の発端はマグロの頭で魚介スープの出汁をそこの元皇女様が作ろうとしたんだ。料理の練習として指示したんだと・・・試食がてらリユンの頭が一口含んで緊急搬送とまぁ大変だった、事件性は無い」
「だからアンタはここに居るのか」
「ま、そう言う事だ」
「だって!作った事無いんだもの!!」
「・・・そうは言っても、煮込むだけなんだがのう・・・はて、こんな事になるような調味料や食材なんてあったか?」
「どーせ私はロクに料理も作れない女ですよ!わーん!」
「ま、おかげで巨人族の商人で大繁盛って訳だ、失敗作もしっかり金にする所はやはり元皇女なだけはある・・・とりあえずマスター、旦那には普通の料理を頼む、酒は?」
「見りゃ分かるだろ?車で来てる、飯だけ食いに来たんだ」
「フルジア王国時代ならしょっ引くが、アズランド新生帝国は車の法律全然無いぜ?」
「ま、飲んだら自動運転がイマドキ当たり前だからな・・・おめぇもうっせぇな・・・交通局の仕事だろそれは!」
「あのナンデモ大臣は忙しすぎて法律回りは全く手付かずなんだ」
「民間から選ばれた大臣は何してるんだ・・・」
「懇談パーティとか派閥構築でお忙しい様子で・・・ネドリー運輸時代からある教育局とかはまだ健全、大抵どの国でも腐りがちな財務局が腐ってないのが意外って所だが、今の所ヤバイのが厚生局だ、サイズァー薬品にズブズブならまだ分かるんだが、何故かシノノギ製薬にズブズブだ、市場に流通している薬は100%サイズァー製っていうのになんでだろうな?」
「町を見た感じからも帝国経済の中心に戻りたい感じだろうよ」
「まぁ、直近に新設された行政局は軒並み帝国属国主義だ」
「そんなの、自力で帝国領に帰れと言いたい所なんだが、残念ながら帝国との交易は造船業のみじゃ。しかも一方的かつ、それらは全て軍艦だしのう・・・船を買うなど他にもやりようはあるんじゃが、帝国人のめんどくさい所が一つある」
ヴェルグーリさんがステーキ定食を出しながら話に入って来た。
「めんどくさい所?」
「社会的地位さ・・・帝国は貴族社会で格差が激しい。田舎に一度でも移り住んだ者は一律田舎者扱いで笑いものにされるって寸法」
「あー・・・なるほど」
「田舎者として馬鹿にされない方法と言えば、せいぜい国が属国レベルの国力を付ける事くらいかのう?だが、現状だけ見ても既にその国力は帝国以上、あとはそれを帝国皇帝に認めてもらい、その国力を帝国の為に使う見返りに国民にそれ相応の地位を保証してもらうんじゃが・・・」
「えー・・・めんどくさい」
「そうじゃろう?それどころか現状では帝国が属国とも言える・・・エルゼ陛下も帝国傘下に入る事には否定的、なぜならその必要も無い程に帝国が弱ってしまったからじゃの?」
「それでファーレンヒ元皇女殿下を女帝に置く事に躍起になる属国派と、独自の経済力で大国を目指す大国派で議会は毎日戦争じゃ・・・見てて呆れるわい」
「いつの間にそんな派閥が・・・」
「ちなみに言うが、大国主義者の大多数は俺達元フルジア王国民とアズランド新生帝国軍人だぞ?分かりやすくて良いんだが、今となってはその総人口は半分以下だ、だが、属国派が過半数を越えているに関わらず、属国派が負け犬のごとくギャーギャー吠えているのは現状大国主義の希望通りかつ、帝国傘下に入るには支障の出る政策が多いからだ。それで属国派が怒り狂ってるんさ。都合が悪い奴ほど吠えるのはいつの時代も変わらない」
「ま、大国主義の政策でないと銀河が滅びる恐れがあるからの?気にせず領土を広げると良いじゃろう」
「うむ、マスターの言う通りである。銀河の命運が掛かっている今の現状、地位だなんのちっぽけな価値観を主張する馬鹿共に付き合う暇は無いぞ?ファルマン、宇宙は広いのだ」
「お姉様も正直行政介入に興味は無い、好きなだけ軍拡して帝国でもなんでも属国扱いして良いと思うわ?あんなクソ親父が居る国なんて滅んでしまえば良い、私に一個艦隊用意してくれれば直ぐにでも滅ぼして見せるわ!」
「・・・親に向かってなんて事を・・・と、言いたいが、真面目な話、帝国に媚を売ってる暇は無いんだ・・・あと、帝国を滅ぼす為の艦隊を作る余裕も無いからその話も無しな?」
「気が変わったら言ってね?今すぐ滅ぼしてあげる」
「・・・祖国に愛着とかは無いんか?まぁ不平不満を持っていた帝国軍人も多かったが・・・」
ひとまずステーキ定食を平らげて支払いを済ませて車に戻る。そう言えば港湾は立て看板一つ無くとても綺麗である。ちなみにシルバーロッド整備工場の艦船競売場とエルーラのディーラーはここでは隣同士である。エルーラのディーラーから出てきた人は億万長者と言う事である・・・その億万長者が丁度出てきた・・・勿論マイラであるが、ネドリー運輸の場合、現在就航している船は全て特注艦、逆に純粋な中古市場でもネドリー運輸オリジナルの特注艦がほとんどなので正規のER-3000Cは帝国領内以外では全く売れていないのである。
後でマイラに聞いてみたら、フルジア路線が長距離化してしまったので経路改正でフルジア路線の貨物はバーボン星系で載せ替えをする、その長距離路線用の高速超大型貨物船としてAT3型航空母艦を割り当てるのだが、純粋な貨物船登録のAT3型航空母艦は僅か20隻くらいしか無い、そこでAB-6000型航空母艦の次世代艦・・・と言うよりAT3型航空母艦のコピー品であるAB-7000型航空母艦をさらに貨物船改造するとか言う特注品の極みみたいな事をする商談をしていたらしい。そのAB-7000型航空母艦は200隻建造予定で、ドックアウトが一か月後、就航すればその船が銀河で最初のAB-7000型航空母艦となる・・・フルジア王国軍には実はまだ一隻も納めた事が無い船らしい・・・理由?シルバーロッド整備工場が帝国軍のお下がりを横流ししていたからだ。ちなみにこのAB-7000型貨物船、勿論セブンスターエンジンを最初から搭載しているので大容量爆速貨物船になるのはもう約束されているような物、おまけに居住空間もそれ相応、艦載機を運用する気が無いので部品庫や弾薬庫回りが必要無い、そこをインフラ回りとして拡張し、長距離路線特化にしてある、これはもうアスベド級大型貨物船殺しである。問題は、荷役出来るステーションが限られると言った所、だがフルジア王国政府はその対策をラザーニャコロニーに施しているらしい。AB-7000型専用荷役港を増設するようだ・・・何処にそんな国力が残っていたんだと思うが、カトロニコフ大将に言わせれば、良い雇用対策では?と返されたのでそう言われればそうなのかもしれない。
それから一カ月後、色々な船の就航ラッシュで呼ばれる事が多くなった。
まずその最初の火蓋を切ったのはAB-7000型貨物船、通常型よりさらにエンジンが2発多い、その分ジェネレーターも多いが正規空母並みの艦載機を乗せるつもりが無いのと、民間巡視船登録のレギュレーションに合わせて武装を大幅に削ってあるのでこれでも通常型より大幅に軽い仕様らしい。格納庫の天井は荷役用のホイストクレーンの基数が増えてLコンテナ取り扱い用のアタッチメントを標準装備、床も荷役ドローン対応のコンベヤを新たに装備して荷役の迅速化を実現、そして艦載機を乗せないとは言いつつも護衛用のスーパーツァーリー8を2機搭載するのでそれ専用のエレベーター式格納庫が新設された。この手の格納庫は海賊船とかにもよくあるタイプの汎用型である。内装も長距離化に伴い娯楽設備が充実、その気になれば客船としても使用出来そう・・・風呂なんで宇宙が展望出来る大浴場を備えているんだ・・・これは金がかかってそうだが、意外とそうでもない。VZR-2000シリーズの大浴場モジュールポン付け、VZR-2000シリーズがほぼほぼ売れないので在庫処分として採用された感を凄く感じる。
イペのセントラルプロムナードで最初の貨物が搭載された後、僅か1週間後にはラザーニャコロニーで就航式典、それまで頑張っていた在来貨物船は一部を除きマスビダ星系から運用終了扱いで全撤退、その船の就航先は半数がイペから先のオデム=ササラ便として継続運用、残りがブリッド星系路線の新設に当てられた。
その1週間後にはRB26迫撃戦艦の修理が終わる。LRB超新星砲とか言う銀河条約ギリギリの衛星爆撃砲を正面に一門備えて再就航した。これは帝国軍が開発していた現時点最大破壊力を誇る主砲・・・次世代型のRB型特型戦艦に組み込むはずだった物だが、船体の建造に膨大な日数が掛かる事から次世代艦建造がかなり難航していたらしい。しかもおまけに射程が3000kmと短め。まぁ、衛星爆撃程度なら十分な射程だがどうしようもない欠陥を抱えた砲でもあった。
「ま、欠陥に関しては増設でなんとか運用できるだろ」
そうルーガが隣でニヤつく・・・その欠点とは現状のRB26迫撃戦艦単体ではこの主砲を撃つ事が出来ないと言う問題点である。帝国軍はここで苦戦していた・・・ジェネレーターをどうするかを・・・この問題に対して新生帝国軍はMA40型巡洋艦を防御シールド兼サブジェネレーターとして運用する事にした。これにより防御面でガチガチに装甲を積む必要も無くなり、装甲で重くなった分の機動力を補う部品を納める為の船体を拡張する必要も無くなり、さらには防衛能力を随伴艦に依存させる方針とした為多少減らして軽量化、これにより若干速力問題が解決、そしてさらに足りない分はMA40重巡洋艦による牽引で補う、これによりハンマー・オブ・ゴットよりかは高速に移動できると言う物、後はどうやって一撃離脱戦法でハンマー・オブ・ゴットとタイマンするかどうかだけ・・・リチャージ速度も30分以上掛かると言う高出力砲らしいのだ。
最優先で改造修理された人類最後の希望はカルラ星系掌握に向かった。
RB26迫撃戦艦の次は群青の騎兵、船体はセレストスピアー型戦艦と同じだが、ジェネレーターやHA900主砲に若干の改良が入り、よりリチャージ時間が短くなっている。
前の船体は使い物にならないので新造となった。ついでにラペル・プロムナードとローズプリンセスは修理が入った・・・いい加減修理しなければ船体が使い物にならなくなるのもそうだが、リストーン星系の防衛ステーションの撤退支援で大戦果を上げていた功労艦、流石に直してやらなければならなかった。
「ひとまずはこの2隻もついでに直しておいたぜ」
一応この2隻、仕様もそのまま帝国軍の旗艦仕様、なんなら船籍もそのまま帝国軍所属、流石に向こうも船籍自体を殺してあるとは思うが船体番号までそのままとなっている。死んでいるなら違法船だが、軍用艦に民間のルールは通用しないので、細かい事は気にしないでおく。最近くすんでいた皇帝家の金装飾がピカピカに輝いていた。
「まぁ、綺麗に元通りなことで」
金装飾はキッチリ磨けば鏡面仕様、それに対してまあそんな感想が第一に出てくるだけ・・・存在意義を失っている船にここまで手の込んだ修理を普通するか?
「そりゃ製造元だぞ?綺麗に直せなくてどうする?」
ルーガはごもっともな回答を返してくるが・・・まあいいや。
「とはいえ、ローズプリンセスはともかくとしてもラペル・プリムナードの使い道なんて無いぞ?」
「そうは言っても、リストーン星系からの撤退作戦で大活躍だったんだぞ?あの防衛要塞と散る気で居たユーノドア元帥を平手一つで爆散寸前だった要塞から引きずり出したのはカルデナ元皇女だ。居なきゃマジでまた有能な指揮官を失う所だった。いざという時の一隻として手元に置いて損は無いだろう」
ルーガはそう言いながら手に持っていた缶コーヒーを飲み干した。
それからも新しい船が次々と就航、別にリストーン星系では貨物船しか走っていない訳じゃ無い、当然客船もいる。しかしネドリー運輸では旅客は扱っていない、フルジア王国籍の別会社が中型の中距離シャトルを運行していたが、フルジア、リストーン星系間は長距離化してしまった、そこでAL4000型星間旅客船をフルジア王国の会社が導入した。その就航式典が最近では大きな話題となっている。ちなみにこれはVZR2000の廉価船、ありとあらゆる高級装備が省かれて大衆旅客輸送に特化している、AL3000シリーズはそこそこ帝国間を行き来する程度には量産されており、ER-3000Cと似たような需要がある。帝国では格安星間便用機材の代表格の船体だったりする。相変わらずオロラ星系側のエルーラ造船所は余力が無いし、また部品供給が絶たれてしまった、だがマズーラ星系にもエルーラの造船所があり、ここではある程度余力がある、就航式典に使われた船はそこで造船された。ロールアウトから色々ニュースになっていた。
しかしこの就航式典、かなり国民からの反感を買っていたのである。
「パパ大変!」
「小型機で済む範囲で頼む」
「エルゼ陛下が何者かに撃たれたって!」
「何だと?」
「ひとまず今すぐ船を出して!」
来客があるかどうかで常にデスク上に表示している外カメラ映像からスキール音がしたので何事か?とは思っていたがその後直ぐに執務室にしている貴賓室にツェルナが駆け込んで来た。搭乗口からここまでどんなに急いでも10分くらいはかかるはずなのだがまぁそれは今どうでもいい、ドックアウトと言う事は宇宙に退避したと言う事である。
艦橋へ急いで向かい、船を直ぐにドックアウトさせる。距離は大した距離じゃないが、ステーション沖に置いてある病院船に直ぐに横付け、病室まで急げは手当てを受けたエルゼの姿があった。
「過激派の襲撃を警戒しておりましたが、襲撃者に気が付くのが遅れてしまいました、申し訳ございません」
ローラが謝罪してくるも、ローラの傷の方が多い、エルゼは肩を撃たれただけ、比較的軽傷だった。
「私は軽傷ですが、ローラさんはお休みすべきと思います」
「いえ、今休む訳には・・・」
ローラはそう言いながら目を細め、防衛要塞と共に散ろうとしてたどこぞの誰かみたいな事を言い始める。そもそも警護は使用人の仕事ではない、それを言おうとしたら先にツェルナがローラを軽々持ち上げて隣の病室へ運んで行った。
「そもそも私には身辺警護がおります。ローラさんの仕事では無かったのですが・・・」
「確かに使用人の仕事ではないな・・・どうしてこうなった?」
「元帝国軍人の方も元々は帝国国民、完全に信用は出来ないとの事をおっしゃられていたと思います・・・しかしツェルナさんはお仕事が早いですね、行動の早さは大変尊敬できます」
「色々と爆速な種族だからな?とはいえ、帝国軍人は大国主義者と聞いている・・・もう少し信用しても良い気がするが・・・」
「全員がそうとも言い切れませんね・・・しかし、今回の件、どういたしましょうか・・・」
「後始末なら俺が引き継ぐ・・・と言った所で警察の仕事だから・・・そこの汚職警官の出番と言う訳だ」
「最近汚職はしてないと言っているだろう?・・・とはいえ、結論的には旦那の言う通りになる。犯行組織のメンバーは大多数取り押さえた、残りはまだ捜索中。ステーション内ならまぁ星系警察の仕事ですらないが、どうせ俺の仕事だ、報告関係は旦那にも送る」
「ああ、頼む」
目にも止まらない速さで使用人を持ち上げて行った昆虫族の娘を何事か?と言う顔をしながら入って来たオレット警視総監はコンビニの袋をベッド横のテーブルに置いてきた。中身はクリームロール、コンビニスイーツの定番と言えばそう、エルゼはそれを見て目を輝かせる。そもそも皇族はコンビニを知らない、コンビニに入ったのはアズランド新生帝国に来てからである。
「わあ!ホシマチストアのクリームロール!良いのですか?」
「生花は簡単には入手出来ないんでね。なんせ生活必需品の生産が最優先なご時世だ。どうしてもと言うならステラー王国に行って森の中から適当に摘んで来るしかない」
エルゼはクリームロールをスッと俺に差し出してきた。食わせろと言う事だ。どうやら汚職警官もそのつもりで買って来たらしい。
「いつも夜のお楽しみを邪魔してる気がするからな?だが一応未成年である事を忘れるなよ?旦那?」
オレット警視総監はそう言い残して病室を出ていった。
それからもエルゼより命に危険がある気がするどこぞの誰か、リユン元帥がふらっと栄養ドリンクを一箱持っていたのでツェルナが軽く背中をンミッと軽く叩いてリユン元帥を気絶させ、また隣の病室に運んで行った。
・・・この国は仕事に命をかける奴が多くて困る。
気がつけば外はリーサの艦隊で固められていた。
それから内政の仕事を引き継いだが、まぁ課題が多すぎる。マトモに動いているのは軍事面だけとも言える。既存の省庁も属国主義派の妨害で一向に今すぐ通すべき法案を可決出来ずに疲弊していた。
こうなってしまうと後は皇帝自ら強引に可決させる方法しか無い。しかしこの方法は独裁そのものであり、最悪クーデターの原因にもなりかねなかった・・・どう考えてもそんな要素が無い法案ばかりなのだが、現状を放置するわけにもいかない。通さなければ国家運営に支障をが出る物ばかり、皇帝権限で通す他無かった。
エルゼの代わりに議会に出席し、田舎者と罵倒され、必要な法案を皇帝権限で通したら殴り合いが始まる…ここはサルの楽園か?
とりあえず長らく議論していた法案はこれで片付いた。属国主義派の主張はアズランド新生帝国の国力を抑えて帝国に媚を売る内容ばかり、フルジア王国籍の星間旅客会社は利益を求めて帝国路線に手を出すように促す税制を推し進めていたようだが、一般市民団体が会長に手をかけた時点で新生帝国と帝国路線の実現は絶望的となった。そこで国営の星間旅客会社の設立を訴える議員が出てきた。
・・・要求する艦船は10万隻以上、軍艦の造船を半年止めれば良いと簡単に言うが、帝国輸出向け、修理、民間貨物船と軍艦周りを除いたとしても色々造船所は忙しい、メソポタミア級なら今すぐ用意出来ると言えば、わざわざ軍用艦を使わなくても大型の豪華客船を新規に造船で良いだろう?とやっぱり聞く耳を持たない連中ばかり・・・第一、交通インフラは交通局の仕事、もちろん交通局は口を揃えてそんな物に意味はあるのか?と、却下する方針、たしかに俺も何となく思ってた。帝国は新生帝国をそもそも見下して居る、行く奴しか居ないだろうが、行った所で嫌な思いをするだけ、そして建造したところで結局はガラガラの豪華客船だけが帝国領内を意味なく走るだけとなる。緊急時の避難船としても軍用艦や貨物船の下位互換でしかない。個室や居住設備で船体重量が重くなりがちな客船ほど惑星引き上げ等の最悪な非常事態で使い物にならない船は無い。却下したら色々な物が飛んできた、やっぱりここはサルの楽園らしい。
なんとか法廷を抜け出してもやる事は山程ある。・・・外交問題である。
別にシーモア共和国などと断交するとかそう言った類の事件は起きていない、各国との国交も今まで通りの平常運転なのだが、セルルド星系が通行止めに近い危険地帯と化してしまった、そこでまさかのアイツらが大活躍する事となった。
中型船用の貨物ドック、セントラルプロムナード型コロニーの場合、ハブコロニーとしては明らかにコロニー船体に対して割合が異常なまでに少ない、その代わりに大量の貨物を捌く為に大型貨物ドックが多い設計をしている。この手の超大型のハブコロニーは普通は惑星からの陸揚げ港として機能するので中型の割合の方が多いのが常識なのだが母星が無い国なので中型貨物ドックはどうしてももて余す、そこが一杯な状況が増えている。
その主たる原因は海賊船、積載量は微妙だが、速くて武装している、太刀打ち出来ないにしても、暴走したドロイド艦隊から逃げる程度であれば十分可能、大型貨物船を運行するには危険が伴う為海賊船で貨物を捌いていると言う事である。一時期産廃と化していた時期もあったが、海賊船と言う船種はやはりかゆいところに手が届く船なのは健在、再び海賊船はネドリー運輸の主力に返り咲いたのだ。
しばらくすれば運用が見直され、渋滞も減ってきたが、やはり速いと言う事は回転率が良いのである。気が付いたら大規模な貨物ターミナルの建設が始まった。居住インフラはセントラルプロムナードに頼る為コロニーのような見た目をしているが、居住設備がほとんど必要無く、実質中身は空洞と言って良い、しかもセントラルプロムナード型ステーションから住人引き上げ後、そのまま複数船舶で別惑星軌道上まで移動を想定した仕様と、セルルド星系での教訓もしっかり生かした作り、お陰で一月あれば建築が完了する速さ、かつ建材も本来過剰な強度確保で大量使用、材料なんてバーボン星系に一次加工した各種鋼材が小惑星と化している、もう、いっその事惑星を作ろうか?と言う計画もあるレベル、リサイクルプラントを使い捨てにしている国なのでそれはもう、資源の使い道が無いのである。
実際、惑星を作るまでにはいかないが、惑星に都市を築き上げる計画が今進行していた。
惑星リズ、極寒だが一応居住可能な惑星、そのリズの周回軌道を資源投入ついでに若干恒星寄りに修正、地表はもちろん穴だらけだが、大量の金属資源と多少の温暖化にどうやら成功したそうだ。赤道付近で10℃は上がってなんとか居住可能条件を作った上で地表の工事、もちろん地表は建機だらけ、そのへんを作る工場も知らないうちに無駄に建てていたようなのでまたアズランド新生帝国のゼネコンのイカレた場面がまた露呈しているようでなにより・・・国民の反感を買いそうな物だが、税金を無駄な事に使っている訳では無いので特にリサイクル資源の無駄遣いについては何も騒がれない・・・そもそも残骸とリサイクルはアズランド新生帝国建国以来、ずっと抱え続ける環境問題だ。
一方で嗜好品が足りない問題・・・これも無駄に土台を作りまくっているらしいのだが、工場も立てても製品が製造されるには原材料の都合でどうしても時間が掛かってしまう。現状は今の人口の10倍を想定した工場を連日立てている事を公表している為、嗜好品問題は国民の怒りの種にはならない様子だ。これは時間が解決してくれる問題だ。
・・・そして各種一般製品が工場から生み出され、国民に十分な量が行き渡るようになるまで半年が過ぎた。
リズのパワープレイ系テラフォーミングは天文学的大成功を納めた。気温はさらに上がり、地表のあちらこちらに都市を築く。植物はステラー王国から恵んで貰い、赤道付近で最高20℃付近、極部でマイナス70℃の寒冷環境になった。
・・・国と名乗る以上、母星はあって当然だが・・・そこそこ寒い。
隣でサシリアが冬眠を始めたツェルナを揺すっている。昆虫族はあまりにも寒いと冬眠する。その目安が2℃くらい、母星でも大寒波が訪れれば基本冬眠するそうだ。
新しい首都となる都市は赤道付近の一等地、無駄に金属資源を多様した鉄筋コンクリート都市、帝国に多い設計だが、金属資源が無制限なので少しオリジナリティがある。宇宙港は更地だった事を良い事に銀河一、資源がタダな事を良いことに無駄に観光資源も多い、観光資源は国内のデザイナーが躍起になったお陰でスタジアムや博物館など、何でも揃えてあるそうだ。そして捨てたくても捨てられなかった物がいくつも博物館に収まった。
まずはE-900M、長らく格納庫で埃を被っており、基本的に使う事が最近は特に無い、短距離の移動も最近はES17戦術偵察機をよく使う。理由なんて穴が空いてたり故障箇所だらけでは無いからなのだが、気が付けばネドリー運輸のルーツとして所蔵されてしまった。E-900Mがあると言う事はオーエンスもあるのだが、意外な船が屋外展示になっていた。
そういえばこいつらも初期から居るな?
通称レジェンド船団、ER-2000CやジュリエットⅢがジャンプゲート消失事件から徐々に退役の方向に運用縮小がされて来た。それでもまだ上には現役が居る、一番最初期のER-2000Cは未だ現役と中々しぶとい、そしてコイツらがここに居るのはネドリー運輸としてではなくアズランド新生帝国としての功労艦と言う点、もちろんロゼンダ級やササリッサ級の方が難民引き上げに一番活躍したが、コイツらも大気圏突入をしていた船、ボロには代わりが無いのでここにあるのだが、どうやらこのレジェンド船団所属の船、ルーガと手を組んだ初期の頃特有の勝手が分からず補強し過ぎたルーガスペシャル、まだまだ現役運用も可能な船体らしい。捨てたくとも優先してスクラップにする物がアズランド新生帝国の領内には無数に転がっているので動くならとりあえず動いてもらっていた方が銀河の為になると言う物である。なので致命的な穴が開かない限りはほぼ永遠に運用を続ける事になるだろう・・・。
一方で理由が無いと動かせない船もあったりする。
「銀河中のお船だらけ!」
ツェルナが目を輝かせる。最新鋭の帝国艦から皇国艦・・・そしてポライト級・・・ステラー王国艦としては初めての撃沈艦、2分割になったはずのセレストスピアー級、もちろんフルジア王国軍のポンコツ艦も全部揃えている・・・基本的にはガワだけ直した難破船がほとんどで、この中で動かせる物と言えば皇国艦と貨物船、あとは海賊船に限られる。リストーン星系でサルベージした難破船が全種類展示されているのだからもちろんズァパリ民国艦も全部ある・・・それはもう、各国から軍事機密云々でお叱りを受ける気がしてならない最新鋭揃いのラインナップ・・・特に空母系は広大な格納庫を生かして各国の博物館となっている・・・ポライト級もドロイド艦隊の博物館によく出来たな?
・・・もちろんロゼンダ級とササリッサ級も一隻ずつ展示されている。この船自体は元々部品取り、一応船体は余す事無く修理部品として使っては居るが、切り刻んだとしても元が頑丈な船、取る物を取ったとしても恒星レベルの高温に晒さない限り最終処分が難しい、極力骨一本残らず部品として使うのがベスト・・・と言う訳で8隻くらいを無理矢理一つにした、ちょっと実用不向きな船が目の前の2隻と言う訳である。
「あれぇ?ママってこんなに人気者だったっけぇ?」
「ミヴェルマンはフルジア王国国民に女神様扱いされてたんだぞ?」
「・・・そう言えばこの車も最近使っていませんでしたね・・・?シリウスのはともかくとしてこんな所に・・・」
「そう言えば、家出してからはツェルナの横に乗って移動が多いんだっけか?」
「自力で運転もできます!」
サシリアはランドラー王家のリムジンの前で4本の腕をぶんぶん振る・・・それくらいは知っている、だって20台くらい帝国製のクラッシックスーパーカーを押し付・・・献上したのはかく言う俺である・・・もっとも、エルーラモータースもそこそこ新型車を押し付・・・いや、献上しているのだが・・・。
ロゼンダ級に入って見れば、本当に見慣れた物が多い・・・特にロゼンダ級については展示物向けに徹底改造されている様子、貨物室はやはりズァパリ民国博物館、ズァパリ民国がどういう国かとか、フルジア王国とアーバン船団商事の映像記録とか関連グッズとか、そしてある意味では主要な展示物、サシリアとシリウスが使っていたリムジンや、テティア女王の葬儀に使われた色々な物が乗っかっている。艦橋についてはテティア女王をオレスト星系に移送した時のロゼンダ級巡洋艦の艦橋を再現する展示の為だけに内装だけは王族仕様にリフォームされていた・・・もちろんわざわざリフォームした理由は盗難防止である。機器類は本物のロゼンダ級の物だが、地上に降ろした後、健全な機器類は全て故障部品に入れ替えられている。
艦橋から外を見れば本当にピカピカな船が置いてある区画が見えた・・・あの区画はエルーラ、シン、ユーリアスの新型艦展示場・・・MA40重巡洋艦も置いてあるのはいかがな物かとは思うが、固定展示にオキタ艦隊旗艦が2世代居る時点でもう関係ないか・・・。
各船は建造国家それぞれの博物館だが、博物館の本館の館内は何処かで見たことがあるあれやこれ、アズランド新生帝国では産業博物館になってしまうのはしょうがない所があるが、もちろんアートもそれなりにあった、これが宇宙からも視認出来る規模、全てを見て回るには一週間以上かかりそうだが、もちろん大規模施設はそれだけではない、宮殿はさらに大きく、地下には戦艦すら飲み込む特大格納庫がある。衛星軌道から金属資源を投下した際に出来たクレーターを再利用した物らしい、いかにリズのテラフォーミング計画その物がトチ狂った計画だったかがよくわかる。
宮殿には畑を作る過程で撤去された植物が植えられており、中々自然豊か、新しい玉座もたいそう立派な物だが座る気になった事が無いし、首都星系はバーボン星系なのでリズのこの宮殿は完全に別荘扱いになる。よほどの事が無い限りは使う事も無いだろう。
工事関係者は既に入植しているが、本格的な入植はこれから、フルジア王国からの旧帝国難民引き上げが予定されている。フルジア王国の経済はほぼ崩壊、国として機能していないので救済に入らなくてはならなかった。
こうしてまだ国が大きくなってしまったのだが、最近、皇国軍が静か過ぎる気がする。何を企んでいたかについては魚人族の地、アウロラ星系まで進行してからだった。
「皇国軍から直接声明があったのは初めてだな・・・」
どうやら皇国軍が先に侵略戦争を仕掛けていたようです」
「いや、俺らは別に侵略しようとは思っていなかったけどな?」
「皇国軍の目的は恐らく短距離ジャンプ技術、ドロイド艦隊の目を誤魔化して獣人族の星系を我が物顔で横断、銀河ネットワークから切断されていた事を良いことに衛星攻撃を加えつつ侵略を行ったようです、これに対して新生帝国軍はドロイド艦隊と勘違いし、皇国軍巡視艦隊に無差別攻撃を行ったのが今回の皇国の声明でございます」
「・・・どう考えても皇国が悪だろ?」
「銀河ネットワーク全体でもそのような見解でございますが、短距離ジャンプ技術が皇国軍に渡ると帝国も危うくなります」
「なんで?」
「ナバート星系、この星系は獣人族のメルト星系と非常に近い位置関係、獣人族連合とは外交的にも良くは無かった為ジャンプゲートは建築されませんでしたが短距離ジャンプ技術はナバート星系へのアクセスを容易にしてしまいます」
「・・・まじか」
リユン元帥が絶望的な顔をしながら会議室と化しているユリアスの艦橋のレーダーコンソールの前で頭を抱えている。カトロニコフもそう、フランクリン大将も珍しくバーボン星系に戻って来ていた。
ひとまずはもう全面戦争するほか無い・・・そう考えながら時計を見る。順調なら良い時間だ、なんのって?少なくとも飯の時間じゃない。
「所で、リユン元帥、そろそろでは?」
「今は・・・人類存続の危機でございます」
「そうか・・・カトロニコフ、連れて行け、適当に押していればどれかの鍵が開く」
「承知いたしました」
カトロニコフ元帥にエルーラの車の鍵を投げながらリユン元帥をこの場から退場させるように指示を出した。リユン元帥のいた場所にはユーノドア元帥が立つ、カトロニコフ元帥が居た所にはリーサが立った。
「・・・さて、今回はユーノドア元帥、君にこの作戦を一任しようと思う。バックアップにはフランクリン大将を付ける。リストーン星系のような無理はするな、フランクリン大将も引き際を良く見極めて欲しい」
「「何ぞと御命令を」」
二人はまず敬礼する。第一目標はメルト星系の迅速な掌握、リストーン星系にはリーサ艦隊とスギヤマ艦隊を置く、しばらくはリストーン星系も手薄にはなるが、何故か新生帝国の後ろでぬくぬく隠居している帝国を突かれる訳にもいかない。致命的なダメージが入る前にメルト星系の掌握をしなければならない。
補給線も長大になってしまう、これの改善が途方も無い苦労、補給艦のアテなら沢山ある、護衛艦も同じ、問題は食料プラントだ、相変わらず供給がギリギリなのである。
経済的にはかなり豊かと言えるが、食事だけはかなり劣悪、糧食が若干国民食となって居る事実もある。これでも国内食品メーカーか息を吸うように工場を増やし続けた、新規参入もかなり増えたはずなのだ。
新生帝国軍は補給線を整備しつつ迅速に魚人族の地を目指した。たどり着けば容赦無く撃ち合いとなるが、帝国軍とは違う所がかなりある。
新生帝国軍の艦船は確かに帝国設計の船が多い。しかし皇国設計の船も一定数居る事、さらに言えばいいとこ取りも居る事だ。近距離から遠距離まで柔軟に対応出来る艦隊運用は、帝国軍とは比べ物にならないくらい皇国軍を疲弊させる。無謀な作戦なんて実行しようがないくらい隙のない艦隊、当然かなりの大艦隊となってしまうのだが、ここでユーノドア元帥の実力が発揮される。適切な艦隊配置、全てを予期した計画、リユン元帥も確かに優秀だが、アズランド新生帝国軍のほぼ全勢力を動かすとなればユーノドア元帥以外に適任が居ないのだ。
まずは前衛の皇国艦隊が持ち前の速力を生かして皇国軍を撹乱、もちろん主砲は帝国製に換装してあり攻撃射程も正規品より格段には有利、散々撹乱した後は中速域のステラー王国系艦隊が火力支援、後は帝国系艦隊で遠距離攻撃だ。艦隊運用の理想的な状況が構築されている。皇国軍が条約違反の超兵器を持ち出して来ても在来より足が速くなったRB迫撃戦艦がそれを使えなくする…完全に一方的なのだがもちろん弱点がある。
「ドロイド艦隊が無数流れ込んで来ました・・・案の定、想定通りと言えます」
「・・・まぁ、数の暴力に逆らえないのはいつもの事だよな?」
・・・知ってた、目の前の状況は誰でも想定出来た状況、新生帝国軍の人間ですら無いマイラですら予測できた事・・・補給に関してはネドリー運輸の大型艦がかなり関与している。現状大型艦の半数が余剰となっている為かなり余裕があった。前線は激戦が予想される為、マイラは医療物資の調達にだいぶ気を張っていた。おかげでシェビド星系には艦隊全員重症でも対応出来る医療品が集結した・・・全部使い切る事にならない事を願いたい。
「ひとまずは敵艦の残骸でジャンプゲートを塞ぎます」
「妥当な案はどうせそれだよな?」
皇国軍の手口はどうせドロイド艦隊をわざと誘導して手打ちに持ち込む、こうなってしまえばしばらく中域清掃に追われる、時間稼ぎをされてしまった。
戦闘後は前線基地の整備、資源の無駄遣いは色々な星系のあちこちで粛々と進めるとして、ひとまずは魚人族の首都惑星、マピタスの状況を確認する。案の定衛星爆撃の影響で環境が変わってしまっている。一見住人も居なさそう、宇宙からでも異様に海底が深かったり、海岸がかなり干上がっていたりしている。そんな状態、都市らしい都市が見当たらない、見つかった所で訪問が出来ないのだが、とりあえずは降り立ってみる。
「なにもないね?」
「まあ、地上は手つかずだろうしな?」
割と地上に降り立つ時は何故か居るツェルナ、今回は冬眠寸前では無い、比較的温暖な気候、生物が住むには非常に良い環境なのは確かなのだが、衛星爆撃の影響で少し生態系は乱れて居る様子、ユリアスはとりあえず海岸線の広い場所に降り立って居るが、知的生命体の姿は無い、主に衛星爆撃は海面に向けられて行われていた様子で海岸付近は津波の影響で木々が軒並み倒れていた。地上に人工物があったら大災害だろうが、だいたいどうなったかについては既に宇宙からの観測でおおよそ分かっていた。
通常であれば海面への衛星爆撃は射撃ミスでしか無い、恐らくは海底にあった都市は水圧で圧壊したと思われる。魚人族は地上に出たら即絶命する訳でも無いが長くは生きられない、宇宙に出る時は専用のスーツが多分必要となるだろう、地上へ追い出した後に魚人族を片っ端から拉致していそうな印象もある、大きな漁業用のネットが海岸線に転がっていた。
「ファルマン!車は?」
「あ?ねぇよ、そんなもん」
「用意くらいせんか!」
「俺らは異星探索に来た訳じゃねえ!外交しにきただけだ!」
「だが何もおらんぞー?」
「何処から湧いてきたか知らんが知的生命体探しはオメーの専門分野だろ!自分の足で探せ!」
ひとまずはユリアスの貨物搭載リストに無かったクソトカゲにいつものビームライフルを突きつける。
「ひえー!」
突きつけたらいつものように適当に走り去っていったのでとりあえずは魚人族の証跡を探す。海岸線は明らかに連れ去られたような痕跡しか残っていない、と言う事は海底で生き延びた魚人族がある程度居ないかどうかの確認だ。
ひとまずは地上に調査用の拠点整備、瓦礫をある程度片付ける。その日はそれだけ…それだけのはずだった。
ピチピチ・・・。
「パパ!変な魚釣れた!」
そう言ってツェルナが持ってきた生き物・・・何かは誰だって察しが付く、それを真っ先に指摘したのはドーベック将軍だった。
「そちらは・・・魚人族の方では?」
とりあえずは船員総出で慌てて水が入りそうな大きな箱を探す、そして見つけたSコンテナ・・・慌てて海水をぶち込んでツェルナが釣ってきた魚人族を入れた。
チャプン・・・。
ひとまずはしばらく海水に漬けると次第に復活してきたか、釣り上げられた苦情を訴えて来た。
いや、食い付いたアンタが悪い・・・と言いたい所だが、ツェルナが釣り上げた魚人族、話を聞く限りでは地方の長官の娘らしい、つまりは外交を結べるチャンスと言う事なのだが、ここで何となく察しがついていた事が彼女の口から出てきた。
魚人族はそもそも人口が少なく、おおよそ二億人程度の人口まで減少していた。過疎化の影響でほとんどの居住惑星を手放して居るのと、海底にいればドロイド艦隊は攻撃してこない認識をしていたらしく、まさか衛星爆撃をする機能があった事は!と言っていた辺りからもだいぶ今の現状が想定外の状況と認識している所・・・まぁ、仕掛けたのはドロイド艦隊では無く本物の皇国軍なのだが、とりあえず黙って続きを聞いてみたら、なんとか逃げ延びたのは郊外に多いラボの科学者中心でほとんどは陸に追い立てられてそのまま座礁、三つ目の異星人に連行され、現状はそれを逃れた数百人程度しかいないらしい、しかも食料が無く大多数が餓死、つまりツェルナに釣られたのは餌に目がくらんだからと言う何とも魚らしい言い訳、それを聞いてツェルナが海に釣りエサを投げ込んでみたら30人くらいがバシャバシャと食らいついた・・・ちなみに多分これが全数と言うのだから絶滅寸前の種族とも言える。ツェルナはそれを楽しんでいた様子だが、魚人族の存続にはやはりクソトカゲの知識が必要、そう思って居たら釣り竿片手にクソトカゲが魚人族を担いで戻って来た。
「ファルマン!変な魚!」
「テメェもか!」
「ふごふっ」
とりあえずクソトカゲのアタマをグーで殴る、そして魚人族をコンテナの中にぶち込んだ。
「何をする!」
「何をしてる!」
「医学サンプルの入手に決まっている!」
エルムンドドエルはスチャッと注射器を取り出した・・・ならばこちらもスチャッと取り出す物がある。
「オメーはそれを何処に隠し持っていた?」
「医学研究者なら当然の事!そしてファルマン!それは何処に隠し持っていた?」
「皇帝なら当然の事だ!!」
気が付いたら持たされたビームライフルをエルムンドドエルの頭に押し付けると、ひえー!!と、いつものように逃げて行く。
・・・また逃がしたか・・・。
とりあえずビームライフルは持たせてきた海兵に返した。しっかりバッテリーパックを抜いて居た辺りは流石の新生帝国軍だが、クソトカゲのせいで外交にしては最悪の極み、しかしそれ以前にそのへんを掘れば出てくるミミズ的な何かを当たり前のようにモリモリ食べている姿を見て、本当にコイツらは銀河で頭の良い種族なのか凄く疑問に感じてきても居た。まぁ本当に頭のいい奴らは皇国が全て連れ去っている。
とりあえず眼の前のコンテナに収まっている二匹は海にお帰り頂くとして、問題はこの星系をどうするかだ。別に魚人族が居るなら魚人族の領土に代わりが無いのだが、そのまま放って置けば勝手に滅びそうでならない。
魚人族は人魚に近いが生物学的には人間の遺伝子が入っている訳では無く、たまたま容姿が何となく似ているだけ、とりあえず眼の前の二匹はミミズ的な何かをもっと食べたくて渾身の色気で船員達を誘惑しているが、ミミズ的な何かも簡単に見つかる物でも無い。海に返そうとしたら戻って来て陸地でピチピチするようになった。
・・・これは本当に外交か?
結局は陸地で食えそうな物探し、もちろん自分達の分は上に上がれば一応有限ではあるがまだ在庫がある。
手つかずの大自然、魚人族は何を食べるのか検討もつかないが、クソトカゲが言うには雑食、無難な物と言えば木の実や茸類、後は虫的な何かだが、やみくもに適当に採取して食わせる訳にもいかない。
「俺らは・・・食いたくないよな?」
「多分、美味いぞ?ファルマン!」
「多分、美味しくない・・・」
眼の前には巨大なカマキリかバッタ的な何か、エルムンドドエルいわく食えそうと言う判断が出てきたが、ツェルナ的には何か保身的な意見が出てくる・・・確かに人間にもイナゴノツクダニとか言う料理が存在するが、進んで食べたいとも思わない一品、だが奴は攻撃的、となれば食えなくともやる他無い。海兵隊が攻撃を開始する、残念ながらビームライフルはあまり効果は無さそうだ。
・・・勝ち目は、ないぞ?
ひとまずは撤退、しかしカサカサと動きが速い、このままでは死人が出る。
ひとまずは全力撤退、知的生命体陣営は小型で小回りが効くのが唯一の利点、木々を上手く使い、海兵隊をそれぞれ別方向に逃がして何でも良いから何か策を練らせる。
ついにはツェルナも逃す事に成功、後はクソトカゲに押し付けるだけだが、謎の生き物は自分を追って来る、そして開けた所に出てきてしまった・・・海岸である。
あ・・・やっちまった。
大きなカマが上から降ってくる。それを間一髪で避けるが作戦が無い。おまけに砂に足を取られ、もはや転がりながら避ける事しか出来ない。居残りの海兵隊が応戦するも宇宙での戦闘は今や小型軽量のビーム兵器が主流・・・効果が無い、マジで積んだ。
攻撃を避けて起き上がれば眼の前を低空で何かが突っ込んで来た。とっさに近くの大きな岩影に飛び込むと大爆発、なんか緑色の液体が雨のように振って来る・・・見上げて見れば少し赤味がかったF405戦闘機が旋回していた。そして数回旋回した後、宇宙へ向けて上昇を開始していった。
後に助けに来た海兵隊に話を聞けば、衛星軌道上で待機していた01機動艦隊所属の航空母艦エデルゼウス26の艦載機がスクランブルして対応、発艦後に即大気圏突入、減速も不十分なまま対空ミサイルを謎の生物に向けて無誘導投下、そして直撃させて謎の生物をバラバラにしたのだと言う。謎の生物は物理攻撃には流石に耐える事が出来ず、その後の死体処理は魚人族が大喜びでやってくれたと言う訳である。
・・・食えるって事は日頃から狩っていたって事だよな・・・。
どうやら魚人族も狩猟機と言う狩り専用の軽戦闘機でコイツを狩って食用としていたらしい。F405戦闘機の判断がやはり模範解答その物、ズバリ実弾系兵器が一番らしく、今回はオーバーキル、肉にも火が入ってしまい、魚人族的には下手くそと散々の評価だが、衛星軌道上からダイブして一発で仕留める戦闘機パイロットがうちにいた事にも驚きである。
そうと分かれば後は魚人族の狩り道具を使えば地上からでも数は取れる、4体くらい仕留めて引き渡してとりあえず今日はここで引く、この外交に正直意味があるのか分からない。
気が付いたら彼女らは母星を捨ててクソトカゲの実験動物に成り下がっていたが、もちろんある程度の貴族なら・・・眼の前で・・・ピチピチするんだ・・・。
・・・銀河で頭のいい種族と言う自覚はないんか?
「カリカリ!まだ?」
もちろん戦艦もちゃんと保有していた種族、地上で狩りをしていたくらいなので宇宙服と言う名の地上へ上がる為の専用スーツがある。しばらく使う機会もなさそうだったので壊れている物も多いのは分かるが、なぜバーボン星系の宮殿のプールにしっかり住み着いているのだろう・・・。
ここに住み着いたのはツェルナが釣って来た魚人族の娘、ダリヤ ミラータ、彼女が言うカリカリとは魚用のエサ、主に養殖用として生産されていた物だが、先進的な食物と認知されたか、やけに人気、最近はこれしか受け付けない。皿に適当に盛れば魚のように飛び付く・・・うーん、魚か・・・。
しかしタダメシを食うだけの鑑賞魚ではない。やはり魚人族、頭は基本的に良い。最近多忙を極めるエルゼの業務補佐をかなりこなしていた。プールサイドには防水ケースに入れられたタブレット端末がいくつもある。知能指数はエルフ族より上、アズランド新生帝国の国政で属国主義派を黙らせる政策や演説文をいとも簡単に作り上げるが、何故だろう・・・このプールにいる限り、そうは感じられないのである。
しかし、ダリアのおかげでイマイチ勢いが足りないエルゼの発言力が大幅に改善した。この事により、アズランド新生帝国の国内情勢はかなりの勢いで改善する事となるのだった。
LRB超新星砲
次世代型のRB型特型戦艦に搭載される予定だった超高火力ビーム兵器。対艦隊戦用の散弾型広範囲攻撃兵器を搭載するようになる前の世代、侵略戦争の頃のRBシリーズが搭載したMAGレールガン砲の後継機種で、人類版のハンマー・オブ・ゴッドとも言えるが、地上の都市を破壊するのが限界であり、惑星粉砕が出来る程の火力は無い。
オヴィルツィッヒ帝国は戦艦級数百隻が衛星軌道上から攻撃するよりもより効率的な衛星爆撃を可能とする事を想定して開発が進められていたが人類の技術力ではこれに対応するジェネレーターの開発が出来ず、計画としてはかなり難航していた。




