オヴェルツィッヒ帝国
人類最大の大国だがその実情は見た目だけの物に過ぎなくなってきている。未だに豊かな暮らしをしているのは一部の特権階級の人間のみ、残りは徴兵等により前線に赴くなど、急激な人口低下や経済の低下が見られ国家の崩壊の危機に直面している。しかし特権階級はそれを見て見ぬふりをしているようだ。
ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー
・アスベド級大型貨物船
ライオット・エアロスペース社製の重貨物船。実は搭載容量は銀河一だがその分銀河一の鈍足を誇る。長距離運用には不向きで主に帝国領内で運用されがち。重装甲貨物船としては優秀とも言えるが、それ相応の高額艦でもありコスパは最悪、その為銀河貨物船格付けからは基本省かれている。
・リアータ級大型輸送艦
ステラー王国の大型輸送艦。セレストスピアー級の設計を一部流用している為基本的なシルエットはセレストスピアー級に似ているが、搭載武装が少ない分全体的にスマートな見た目をしている。
搭載容量、旋回性能、速力、耐久性能どれにおいても銀河最高水準の仕様となっており多種族商人の間でも評価は大変高いが、主砲を装備している都合、武装貨物船扱いとなり各種税金が高額になる事は避けられない。
現状はネドリー運輸、ステラー王国系物流会社、シルバーロッド整備工場からのリース艦のみの運用となっている。
ジャンプゲートも無事に接続出来た、役者も揃っている、後はサリマンの船を実験台にして動作テスト・・・ちゃんと行って帰ってこれるのを確認したのちにサリマンの船を盾にして全艦突撃、ジャンプゲートの先にはオヴェルツィッヒ帝国軍の出迎えの艦隊が居た。ラベル・プリムナードとローズ・プリンセスが先行気味、そしてHT702主砲が帝国軍艦隊の旗艦をとらえていた。
「恨みはあるとは思うがやめておけ、まずはディソルバート皇帝陛下に今回の件の事情聴取と釈明を聞かなければならない、新生帝国だけなら後始末の責任も持つが、この場にはフルジア王国、ステラー王国、シーモア共和国、ズァパリ民国の首脳や代表が居るんだ」
「・・・しかし」
「自国の行動に不満はあるとは思うが、反乱は我々の仕事が終わってからにしてくれんかのう・・・ファルマン皇帝陛下の尽力があって一応はおとがめなしの方向に流れそうなんだ」
エルムズデブラ首相も悩ましい顔をしながらファーレンヒ皇女殿下を止めてくれる。なんとか落ち着かせればその後は太陽系の惑星火星へ・・・人類の生まれ故郷はただの小惑星、天然衛星だった月がその代わりを務めているが、居住可能な面積もそこまでじゃない。そこで開拓されたのが火星のだったのだが、銀河大戦の直後も、そして現在も移民で溢れている様子、太陽系自体は特に重要な星系では無いが人類が生まれた星系であるのは変わらない、人類各国が集まる国連議会など、政治的な施設が集まる。実質帝国領だが厳密に言えば人類が共同管理している星系である。
そんな太陽系だが、帝国の首都惑星も消滅したので帝国の経済は崩壊しきっている・・・小型機だらけなはずの航路も貨物船しか居ない。火星に降り立てば見た事の無い艦種の船がかなり地上で量産されている・・・軍事優先状態なのだろう。
皇女らの帰還は特に歓迎されていないようで、迎えは特に無し・・・流石に各国大使も呆れるが、ここは造船所併設の軍事ステーションである。
「あれは何?」
「ツシマ造船の新鋭艦、FT14型戦艦の次世代艦・・・本家FT15型戦艦でございます」
ファーレンヒ皇女殿下はそう答えながら太陽系の防衛本部基地へ向かう。
「FT14型だってまだまだ最新鋭の船じゃないのか?」
「戦時であれば戦況次第で戦闘艦の入れ替えなどサイクルは非常に短いでしょう・・・ですが次世代艦は既に新型のローズプリンセスより性能で劣る・・・我が国は技術者を戦場で浪費しすぎたようです」
「さらに言えば、帝国は資源枯渇問題に陥っているはずでございます、陛下」
「おまけに、クローン兵も直ぐに使える訳じゃない、それなりの育成期間が必須となる」
カトロニコフとリーサがそう言いながらも続く。
「・・・まったく、おっしゃる通りでございます」
ファーレンヒ皇女殿下もそう言いながらうつむいた。
「帝国は船をリサイクルしていないのか?」
「する余裕がありません、自走可能な損傷艦を解体して部品取りにするだけです」
ドーベックが解体工場のような場所を指さす。
「思ったより帝国はかなり追い詰められていたらしい」
「・・・後はこのまま、アズランド新生帝国の後ろに付く事で停戦に持ち込めれば良いのだが・・・」
しかし、エルムズデブラ首相すら不服な展開が待ち受けていた。
・・・人類総出で大規模反抗宣言。
この会議・・・と呼ぶよりかは一方的な宣言の講演はギャラクシーネットワーク上で大々と銀河中に公表された。
・・・これは、やられた。
人類各国の首脳陣が並ぶ会場、その最後尾に並ばされた。ここに並ぶと言う事は帝国の宣言に賛同する事であり、そして距離的にもディソルバート皇帝に異論を唱えられるような場所では無く、異論は一切受け付けないと言う口封じも兼ねていた・・・もちろん、フルジア王国、アズランド新生帝国だけで済めばそれでいい、そうじゃないからなおさら問題なのである。
人類大規模反抗宣言に巻き込まれたのはステラー王国、シーモア共和国、そしてズァパリ民国という異星人国家もなのである・・・サシリアをズァパリ民国大使として連れてくるべきでは無かった。
「ディソルバート皇帝陛下!」
ファーレンヒ皇女が声を上げる。そしてディソルバート皇帝の前まで行こうとするも、帝国の衛兵に押さえられる、それはカルデナ皇女が全て引き受けた。ファーレンヒ皇女はさらに前へ進み、演説台の目の前へ、だが、ディソルバート皇帝は無視して演説続行だ。
「ディソルバート皇帝陛下!」
もう一度、大声で演説を遮ろうとする、すると演説が止まる。
「貴様にはもう帝国皇帝家の籍は無い、衛兵、今すぐ引っ捕らえろ」
「お待ちください!フルジア王国、ステラー王国、アズランド新生帝国皇帝に事前にこの事は議論なされたのですか!?シーモア共和国、ズァパリ民国は関係ありません!反抗宣言の前にまずは会談を行うべきです!」
だが、ファーレンヒ皇女の声に全く耳を貸さない、それどころか周りはクスクス笑っている。ファーレンヒ皇女は衛兵に引きずり出されて行ってしまった、カルデナ皇女も同様である。
・・・演説を聴けば・・・かなり一方的である。
惑星2つを粉砕し、なおも人類の領域に攻め入る侵略者、人類は決してこれに屈する事は無い・・・これはエマンクリシット皇国をそう言う目で見ていると言う事を宣言しているが、これも今の戦争、そもそもリストーン星系で起きたジャンプゲート粉砕以前からの執念である。加えて獣人族の領域すらをも脅かすという事に言及を始めた。この事を言い出してしまえば皇国の立場は完全に銀河の敵の位置づけとなる。この場に他種族が居る事によってあたかも同盟か条約何らかが結ばれた事にしている。実に都合の良い状況だ。
実際問題、ドロイド艦隊の暴走は皇国の責任であるし、皇国軍も人類と戦争をするよりも真っ先に迎撃艦隊をドロイド艦隊にぶつけるべきだった・・・必要ならば他国からの支援要請が出来たはずだ。だがそれをしなかったのは種族特有の習性ゆえ、巨人族のプライドはそう簡単に折れる物では無い、特にエマンクリシット皇国の民であればそれはほぼ不可能に等しい・・・その結果として自らの非を認めず、責任の所在を曖昧にしている。その間に獣人族の国家が20国家ほど滅び、獣人族同盟が破綻した・・・このまま行けば、昆虫族、人類、爬虫類族の順に滅び、そして最終的に巨人族は自分の首を締める結果となる。一方で帝国側もそう簡単に機械に滅ぼされるつもりは無い、勿論それはどの国だって同じだが、いくら人類最大の大国と言えど、1国でどうにか出来るような代物じゃない、それはもう既に獣人族が証明している。1国で無理ならばやはり多種族とも同盟を組むしかない。巨人族とは意思が通じそうに無いからそれ以外で同盟を組む事自体は結果としては妥当な考えであるのだが、同盟を組むやり方に問題がある・・・問題はその矛先がドロイド艦隊ではなくエマンクリシット皇国に向いている事である。事の発端なのは確か、それを言ってしまえばそうなのだが、ドロイド艦隊はエマンクリシット皇国領で製造されているかと言えばそうではない、ドロイド艦隊は完全に暴走状況にあるし、このやり方で他の国が賛同するとは到底思えない・・・上手くいくとしたら、新生帝国勢力に帝国が便乗し、手柄を総取りしてこそだろう・・・俺個人としてはドロイド艦隊殲滅の手柄などどうだっていいのだが。
その後の面会のチャンスは無かった。周囲に居るのは各有人星系やステーションその他の代表者クラスだ・・・どこぞの国に似て高慢な奴しか居ないのは田舎者でも一目で分かってしまう。
「貴様ごときの貧民上がりではまず皇帝陛下にお目通り願う事は出来んよ」
やっぱり絡んで来る奴が居る。それもそうだろう、田舎の礼装はひと昔古いんだ、一目で分かる。
「・・・失礼ですが、貴方はどちらでしょう?」
そしてそんな物を着ているのだから目の前のめんどくさそうな人の名前なんて知った事では無い・・・まず名前を聞かない事には話が始まらない。
「ほう、私の名前も知らんとは、流石銀河の最果て、マスビダ星系の田舎育ちはこれだから・・・」
・・・うーんめんどくさい、やっぱり見下してくる・・・が、この手の人種に対しては初手は持ち上げておく、これが鉄則。でなければまず相手に認知されない、認知されなければ相手をコネにすら出来ない。
「アルタイル星系、ワイルナー領の領主、ハインツ ギュンター伯爵・・・少なくともフルジア王国よりかは経済の中心に近い帝国直営星系の領主である」
ハリス国王がそっと補則情報をくれた・・・商人のやり方としてはさっきの手が正解だったかもしれない・・・だが、外交となれば、相手の情報を下調べした上でようやく交渉テーブルにつけるらしい・・・しかし帝国領との流通便を走らせた事など無かったので帝国の支配構図があまり分かっていない。
「流石はただの成り上がり、よくぞまぁそんな頭で国家経営をする気になったものよ。はてさて、新生帝国は何カ月国として存在していられるかせいぜい気にかけるくらいはしておこう。もう諸君ら田舎者のでしゃばる所は無い、せいぜい帝国の防波堤として武勲を立てる事だ。そうすれば皇帝陛下への謁見もそのうち叶う事だろう」
高笑いしながらギュンター伯爵という人物は立ち去っていく。流石にそこそこ帝国領にもネドリー運輸の名が通っているようだった・・・気が付けば他も解散の流れだ。いつまでもここに居る訳にもいかない・・・正直長居したくも無い。
「どうやら、帝国のお貴族様は今の現状をまだ理解できていないらしい」
隣でハリス国王が大きな溜息をつきながら腕を組んだ。
「・・・それをハリス国王陛下がおっしゃいますか?」
「フルジア王国は前線にほど近い国、前線の状況くらい把握している」
確かに周りの貴族はとても余裕そうな顔をしている・・・帝国の首都惑星が吹き飛んで居るというのにだ・・・凄く違和感がある。
「それに・・・どちらかと言えば王国はもう新生帝国の配下に近いであろう?これ以上ここに居るのも無駄とみた、面倒事が増えないうちに我々ももっとマシな星系へ帰ろうではないか。シャーッ!!」
エルムズデブラ首相はそう言ってドアの方へズカズカと歩いていく、後は流れで解散だった。
結局帝国の地へ赴いても釈明と言う釈明は聞き出せなかったし、帝国のやらかしの尻ぬぐいは新生帝国が変わって対応した・・・しかし、一大勢力が皇国のみとなってしまっている、あの手この手を何かのきっかけにエマンクリシット皇国は銀河全てに対して戦争を仕掛けるつもりだ。
・・・勿論抑止力は用意した、ハンマー・オブ・ゴッドである。
船内は一度骨組みになるまで分解され、徹底的に爆発物を取り除いたアレである。やはり毎度おなじみ条約違反の兵器、流石にエンジンは専用品、ハンマー・オブ・ゴッドの残骸などそう銀河中に漂ってる訳が無い、交換出来るエンジンが無い都合、自走が出来ないのでエンデラー級戦艦を馬のように繋いで整備後はビーア星系に不法投棄してある。使うか使わないかは帝国軍次第と言う訳だが、そこまで帝国も落ちぶれては居ないはず、その後帝国軍はそれをラスタバス星系のレミア星系側ゲートの前に置いた。あくまでも抑止力として置いているのだと思う・・・大昔、核兵器を持って互いにけん制しあって平和を保っていたように。ちなみに銀河議会では皇国以外の種族はもう知らんと言う状況、違反を指摘するよりも少しは銀河の均衡を修繕したい様子、その方向性でハンマー・オブ・ゴッドについてはこれ以上議論しない方針だ。
勿論ただ爆発物撤去をした訳では無い、装甲についての調査など条例に影響しない兵器の開発の為にデータも取った。しかし現実問題、ハンマー・オブ・ゴッドを完全に破壊するにはハンマー・オブ・ゴッドもしくは知的生命体では制御しきれない自然エネルギーを使う他無い。惑星破壊兵器と言う物は巨人族だけが持つ宇宙のオーパーツ技術、そもそものエネルギーコアが特殊な物、無数の高電力繊維をモーターのコアのように巻きつけたエネルギーコア、これに核反応を加えると超新星爆発並みのエネルギーを生み出す事が出来るのだが、そもそもそれを他の種族は作る事が出来ない、おまけに巨人族も普段から量産しているような代物でも無い、そんな物は銀河中に出回る事も無いのだ。
・・・もちろん皇国軍も宇宙のオーパーツを盗まれて黙っていられる種族では無いか・・・。
皇国軍は制御下にある皇国軍ドロイド艦隊を製造し、制御不能状態の皇国軍艦隊を引き連れてオロラ星系へ進軍を繰り返している。宣戦布告はされていないし、制御不能な方のドロイド艦隊と判別がつかないので、問答無用に排除する措置を取っている。迎撃されて遺憾を唱えるならせめて航行理由を事前に通告しろと散々銀河議会で説明した。もちろんいちいち許可を取れば軍事作戦の意味が無いので依然硬直状態のままだ。
いつもの執務室、リユン元帥がいつものようにやって来た。
「・・・小型機で済む範囲で頼む」
「普段でしたら艦隊で対応しますが、今回は少し面倒です」
「・・・いつものアレだろう?」
「いつものアレ・・・です、あくまでも、セルルド星系のわが軍の前線基地の破壊が目的と思われますが、いつものアレとは少々別問題が発生しておりまして・・・」
「・・・へぇ」
「別問題とは、サリマン運輸の大型貨物船が少々無理をしたようで、ドロイド艦隊を引き連れてオロラ星系入りした件です」
「・・・またサリマンか・・・」
そもそもサリマン運輸、今度は何が要件だ?
「ええ、サリマンです。サリマン運輸の子会社の船の航行自体はそこまで珍しい事でも無いのですが・・・ひとまずオロラ星系で現在防衛ラインを構築しておりますが、当確艦の退避が完了できません」
「・・・もう、まとめてやっちまえよ・・・めんどくさい」
「・・・仮にも一般人ですが・・・出来る限りの救出に善処します」
「頼んだ」
リユン元帥は敬礼して執務室を出ていく。確認してみれば、ズァパリ民国から薬草を運んでいる船、普段は子会社がせっせか運んでいるのをゲート接続変更後から見かけるようにはなったが、最近のサリマン運輸はすっかり帝国の物流会社の大手に片足を突っ込んでいる様子、救出作戦で名を上げたようだが、シノノギ製薬専属の物流企業である事には変わりなく、メイン基盤はすっかり帝国領内のみの運航、材料調達その他は子会社に全て振り、リスク回避を図っている様子である。
今回の悩みの種の船籍情報が表示されたタブレット端末を片手に窓の外を見る・・・大きな庭に大きな噴水、解放的な窓の外は宇宙、そして置き場の無いロゼンダ級、穴だらけのローズプリンセスにラベル・プリムナードだ・・・ロゼンダ級は前からあるが、なぜこの2隻がこの場にあるのだろう?答えは亡命、それ以外無い。
先代の時点でそれぞれの船員も数える程しか生き延びていなかったが、それでも皇女を慕っていたはず、火星から2隻で逃げてきたようだ。
幸いこの2隻のFT15型戦艦はセブンススターエンジン、帝国版FT15型戦艦とは比にならない巡航速度を誇る高速重戦艦である。加速しきってしまえばもうオリジナルの帝国艦は追いつけない・・・敵となったのは新生帝国が製造して納めた船だった。その為損傷が酷いのである。
指揮官は帝国側が既に身分をはく奪してしまっている為一般人化、特別対応もする気が無いので、ファーレンヒ元皇女殿下はクロノス・エルヴィン元帝国大将に押し付けた。クロノス大将も皇女艦隊指揮官だったとなれば手腕も良いはずだ。そしてエドガー・クレイアット大将がオキタ艦隊とも作戦行動実績があり、オキタ艦隊が無傷だったのもクレイアット大将の采配のおかげだったのでカトロニコフ大佐は艦隊指揮官として2隻の指揮官を新生帝国軍に編入を打診してきた。カルデナ元皇女殿下も皇女としては死んだ為、ユーノドア元帥と寄りを戻しつつある様子で何より・・・。
「・・・なんだが」
ルーガはヴェルグーリの酒場のカウンターで料理を運んできた人物を見る。
「大国の元皇女がキャバクラみたいな食堂兼酒場でウエイトレスとは・・・」
「・・・何か文句でも?汚職警官さん?」
「いんや?新人マークが似合ってるなって話っすよ」
「バカにしてます?」
カルデナはオレット警視長に睨みつけるようにオムライスをテーブルに叩きつけるように提供してきた。
「と言うか、警視長になってもまだ汚職警官のままなんだな?」
「もうその手の仕事から足洗ってますよ・・・そいつぁーもっと下っ端の仕事だ・・・全く誰が吹き込んでるんだか・・・」
「ワシじゃよ」
「アンタか、船長」
「一緒にセルースに大気圏突入した仲じゃないか?コードネームみたいなもんじゃろ?」
「だったらもっと良いのにしてくれ、船長さんよ」
「それならワシも今じゃただの酒場のマスターじゃぞ?若いのに海賊船の大気圏突入は教えた。もう余程の事でも船には乗らんで済んどる」
「で、第一皇女はどうなったんだ?とっつぁん」
「あ?上にいるぞ?」
「・・・上?」
ルーガが指を指した、オレット警視長は上を見上げた。カウンターの頭上にはインテリアとして酒瓶が並ぶ棚があるだけである。
「・・・一国の姫君がこんな所に居ていいのかい?」
マドリニスゾリゾが忙しそうにしているファーレンヒ元帝国皇女殿下をおっかなびっくり眺める。
「・・・帝国での身分をはく奪されちゃったみたい」
あははぁ・・・とミヴェルマンはマドリニスゾリゾにそう言い返した。この場にはよく見る顔もちらほら居る。
「今日は、揃いも揃ってリストーン星系の大手揃いではないかね?ゾリゾはともかく、昆虫族はそう簡単に船を増やせないのではないのか?」
エルムスミエルはノア級の中古の棚を物色しながらそう言う。何かと薄暗いこのシルバーロッドの中古船競売場は船を失った船長やこれから企業する人間族で今日もにぎわっていた。
「うーん?ゾリゾちゃんの付き添いもそうなんだけれど、娘の為にも積載重量の大きい船を揃えなくちゃいけなくってぇ・・・」
「確かにササリッサ級では重量物は輸送出来ない、その手の船はベルドナか帝国の中古空母かステラー王国とネドリー運輸専用艦のリアータ級が適任であろう・・・エルーラ製でもこなせない訳では無いが・・・」
「フルチューンのER-3000Cでもロゼンダ級の足に付いていけないねぇ・・・特に長距離となればその差はかなり出る・・・」
「リアータ級は噂によれば銀河種族最強の大型貨物船と噂に聞いている。積載量はベルドナより上、硬さもズァパリと同等、巡航速度もトライオッドよりも速く、旋回性能も獣人族系列よりも優れていて防御は巡洋艦並み、デザインも良い、今や商人の中でも憧れの船だ」
エルムスミエルの隣に居たソルがそう言いながら腕を組む。勿論マドリニスゾリゾも知らない船では無い。最近ネドリー運輸とステラー王国が実際にセントラル・プロムナードへ乗りつけるようになった最新型のステラー王国系大型貨物船である。発売してから街中で新型の車を見かけるようになったくらいの段階の船なので今こそ珍しいがそのうち数も増えて見慣れてくるようになるだろう。だが実はリアータ級に限らず、ステラー王国並びに新生帝国の民間船はそもそも簡単には買えないとある問題点を抱えている。
「まぁ、リアータ級の最大の欠点はディーラーが無い事だね。あと武装貨物船だから国によっては維持費がかなり高額だよ・・・何処に巡洋艦クラスが装備する主砲を装備した貨物船が存在するんだね?ソル」
「ズァパリ製に1機種あるじゃないか?・・・まぁ、ゾリゾの姉貴の言う通りよ、普通は無いし、あっても民間が維持出来る船じゃない」
ソルは真顔でそう答えた。流石に皇国製の主砲を一基搭載しているとなればどう転んでも武装貨物船扱いは避けられない。見た目からもお財布に厳しい船であると容易に察する事の出来る。
「でもぉ・・・ルーガちゃんがリアータ級を受け取りにこいって・・・」
「へぇ・・・?」
困り顔のミヴェルマン、エルムスミエルもソルも少し先が見えていない様子だ。
「あーしも」
「わたくしもですわ?」
その話を聞いてガレーシャ、ミデルリーニが再生中古船情報の陳列棚の裏からひょこっと顔を出して来た。どうやらミヴェルマンと同様に呼ばれているような気がする。
「新生帝国路線はシルバーロッド整備工場とリース契約するとリアータ級が割り当てられるんだってぇ?」
ねー?と、昆虫族の3人は顔を見合わせた。つまりこの路線は現行銀河最強クラスの新型貨物船を投入しなければならない程の問題を抱えているようだ。事実、オデム=ササラ路線壊滅のしわ寄せで新生帝国路線の負担がかなり重くなっている。ほとんどの貨物がリストーン星系を経由するようになったのだ。
「・・・リース?」
それでマドリニスゾリゾが首を傾げた。
「大概は武装貨物船扱いなんだけれど、リアータ級は銀河船舶検査認証自体をまだ銀河交通局へ申請していないんだってぇ?」
「確かにギャラクシー・スペックがローカルオンリーでもその国の会社は国外運用は可能だが・・・そうであれば外国籍の会社では所有も叶わぬな?」
「あー・・・確かに、でもアンタの所のポライト3000Cは?」
「アレはフルジア王国経由でギャラクシー・スペックの認証も再度受けたクリーンな改造艦である。そもそも改造艦なので認証を再取得しなくとも問題ない、登記上は改造履歴のあるER-3000Cであるぞ?」
「そそ!ニコイチ修繕の船もベース艦が銀河船舶検査認証を持ってるから、エルムスミエルちゃんの所のあの船はこの問題には絡んで来ないの!」
「でも、完全新造艦は別」
「アズランド新生帝国も民間行政はほとんど回っていない物ですしまだまだ外国籍の種族が買える代物にはならなさそう」
ねー?とまた昆虫族三人は顔を見合わせた。
「ま、実質銀河が二つに分かれているような物だからな?・・・所でロゼンダ級とどっちが快適なんだ?」
「それはもうロゼンダ級だよぉ!」
「指が足りない」
「母国の船が一番ですわ?」
ミヴェルマンが腕をぶんぶん振る、ガレーシャは腕を4本見せてきた、ミデルリーニは腕を組む。
「・・・そこまで困るもんかいね?」
「人間族のゲーム機を器用に扱う昆虫族の子供を一人知っておるぞ?ゾリゾよ」
「・・・へぇ、誰の子だい?」
エルムスミエルは無言でスッとミヴェルマンを指さした。
「・・・あぁ・・・ツェルナ・・・」
「医学的に繋がりの無い父親が色々与えたようだな?噂によれば人間族のスーパーカーを乗り回しているようではないかね?未成年であろう?」
「このステーションは実質治外法権さ・・・免許もあって無いような物だからねぇ」
「噂によれば相当速いそうではないか?・・・あいにく我はこの図体だ、トラックに限る」
「ああ、速いよ?処分に困る新古品のスーパーカーがネドリー運輸の倉庫に山ほどあるって話だねぇ?難破船に乗っかっていた物なんだと・・・売ろうにも正規手段では売れないし、せいぜい乗れるのは小柄な一部の獣人族とあたしらだけさ・・・ま、それでも窮屈で乗りにくいけどね」
「だがトラックのノロさとは段違いであろう?」
「あー・・・そういやあんたらも昆虫族に引けを取らないスピード狂だったねぇ・・・」
気が付けばミヴェルマン達はファーレンヒ元帝国皇女殿下が用意した書類にサインをしている。昆虫族は指が一本・・・実質指が無いとも言えるが、進化の過程で指先が軟体生物のようにしなやかに曲がるよう発達した。そのおかげでタッチペンを普通に持って字が書けるし、瓶やペットボトルのキャップも開けられるし、カップラーメンの蓋すらもめくる事が出来てしまうのだ。
対して巨人族の指は3本、爬虫類族は種族系統にもよるが、3か4である。マドリニスゾリゾは4本の種族である。
サインを終えればリアータ級の内覧をさせてくれた。ミヴェルマンは最も多い50隻契約である。リース費用?一隻年間3千万クレジットと・・・もはやタダ同然らしい。
「・・・やっぱまとめてやっちまわないか?」
「ですから一般人もまとめて放火の渦で沈めてしまうのは国際的にも芳しくはありません」
「・・・言ってさぁ・・・虫の息じゃん・・・うちの艦隊もだいぶ損害出てる、たかが数人の一般人に何百人新生帝国軍人が犠牲にならなければならない?うちにまだ死人が出てないのが奇跡にも程がある・・・」
「・・・まぁ・・・左様ですが」
カトロニコフが頭を抱える。この戦犯、サリマン運輸のライオット・エアロスペース社製アスベド級大型貨物船・・・流石は帝国製だけあり中々の耐久力だがもう沈みかけ、おまけに帝国製の貨物船は珍しく、オロラ星系では全く引き上げられない船でもある為何処まで耐えるかはルーガも知らない。ちなみに鈍足大容量の重貨物船、サリマン運輸ではER-3000Cと半々の割合で在籍しているらしいが、人類の中では高速性に優れていたER-3000Cの方が外洋での使い勝手が良く、アスベド級大型貨物船はもっぱら帝国領内での活躍がほとんどである。ちなみにER-3000Cも大型貨物船の中では遅い方である・・・勿論純正での話であり、フルチューンすれば一応ジュリエット級と肩を並べられるが、ジュリエット級をフルチューンしてしまえば結果は同じ・・・やはり大容量のベストセラーはベルドナのジュリエット級である。船速、容量、耐久性全てにおいてバランスが良いのだ。
敵はいつものごとくドロイド艦隊、取り囲むように艦隊を展開し、数を減らしているのだが、ジャンプゲートの転送容量ギリギリの数が流れ込んできている辺り、とても処理しきれる数では無いのがよく分かる・・・新生帝国軍の砲撃も限界、主砲を溶解させた船がおおよそ300隻近く出て来てしまっている。この問題を解決するにはRB26迫撃戦艦なのだがそれは現在リストーン星系にようやくたどり着いたばかり、この船の火力は普段はブリット星系で使われている物で、ブリッド星系のセーフティドームもRB26迫撃戦艦による物だったりする。勿論一点物の船であり、実は現在銀河上で存在する唯一のRB26級でもある・・・元々は帝国軍でも10隻くらいしか生産されなかった特大型艦、火力的には強力だったが使い勝手が非常に悪いのである。これでも実は対ハンマーオブゴット用の人類決戦兵器の末裔、たとえ軍事予算の無駄使いの象徴でも、ある程度は量産されなければならなかった・・・しかし、初代から改良を重ねてきたRB26迫撃戦艦も10隻中9隻がハンマーオブゴットに総攻撃をもってしても無力、有効打を与えられたのはたった1隻だけである、その1隻こそがあの船なのだ・・・たとえ鈍足でも人類最後の希望の船と言っていい。
「アスベド級の船体がもう持ちません」
「ようやくか・・・そんなに硬いのか、あの船は・・・」
「硬く作り過ぎたせいで船速をかなり犠牲にしています。そんな鈍足艦など外洋では全く使い物になりません・・・ともあれこれで正面攻撃が可能となります」
「だが、こっちも持たない・・・そうだろう?」
「さようにございます」
カトロニコフが頭を抱える・・・船自体の損失は無人の特攻艦を除いてはほぼ無い、砲の損失が非常に激しいのが問題点なのである。
「セントラルプロムナードより緊急通信です」
「セントラルプロムナード?」
「このタイミングで何故だ?なんかの暴動か?」
「いえ、共和国の民間商船群から住人避難の申し出がありました」
「・・・共和国の?一体どうして?」
「皇国軍のドロイド艦隊、6千万隻がリストーン星系に向かって動いているとの情報が共和国や民主共和国籍の船から多数提供されているとの事です」
「皇国軍にとっても好機だよな・・・そりゃ・・・」
「いかがなさいましょう?」
「・・・ここはおとなしく従う他無い・・・が、船はあるのか?」
「完全体の船は多くはありませんが・・・あの手この手で動かそうと思えば動く船なら相当数あります」
「ルーガに手配しろ!」
「はっ!」
・・・追加で6千万隻・・・!?
セントラルプロムナードは銀河最大規模の超大型自立ステーション、ここまでくると簡単に動かせるレベルの大きさじゃない。動かそうにも動かす事は出来るが意図しない破損を招く、牽引の為の計算を一年くらいかけて行わなければまず船体がよじれて穴が確実に開く、よって放棄が懸命だ。
幸いにも避難に使える壊れててもなんとか動くガラクタはステーション人口20人に一隻単位で存在、そして操縦士がかなり居るステーションである。ズァパリ民国民向けにはロゼンダ級を優先手配、避難先はひとまずバーボン星系だ、だが居住ステーションはセントラルプロムナードだけじゃない。幸いにも他は拡張を行っていない標準型の自立型ステーション、多少リスクは伴うが、一応そのまま引っ張れるので、被害の届きそうにない資源惑星、アルマプテス2の衛星軌道上まで移動、工場も同様に引っ張れる・・・既存の民間業者の航路に支障が出そうだが緊急事態だ、多少は理解してもらわないといけない。ちなみにアルマプテス2の大気は窒素と二酸化炭素、おまけに重力が非常に重く、居住には向かない替わりに金属資源が非常に豊富な惑星である、採掘業者は地上ではドローンを使って採掘をしており、普段は衛星軌道上の管制ステーションで居住をしている。
「クソッ・・・またサリマンかっ!」
「そんな事は言っても我が社の前の大口顧客じゃないですか・・・そのような関係だったとは全く知りませんでしたが」
ルーガはシルバーロッド整備工場の本社の埃だらけの社長室でタブレット端末両手に動かせる船を探す。ファーレンヒはそれに人員配置だ。流石は艦隊指揮官を経験していただけはある・・・だが問題があるトカゲが一匹、ルーガの回りで埃を巻き上げていた。
「機材搬出で使える船をたのもー!1万隻!」
「小型機で済む範囲に断捨離しろ!」
「おねがいおねがい!」
エルムンドドエルはつぶらな瞳でルーガの机の回りを周回する・・・おかげでくしゃみが止まらない。
「うちのヴァルカンと俺のE-1000Mを貸すからそこに本当に必要な物ぶち込みやがれ!」
「足りない足りない!操縦免許をもっとらんが?」
「諦めろ!人命優先だ!オートパイロットでなんとかしろ!」
「意地悪!」
「そもそも運び出す時間もねーよ!!クソトカゲ!!せいぜいサーバー類の持ち出しにでもつかえ!!」
「その時間を稼げ!」
「我らが皇帝陛下様が今やってる最中だ!」
ルーガは机の下に何故かある帝国軍のビームライフルをエルムンドドエルに突きつけると、わー!と言いながら消えて行く・・・なんでこのステーションの執務室には必ずと言っていい程ビームライフルが置いてあるのだろう・・・。
窓の外を見ればツェルナやファルマンの格納庫周辺から動き出すロゼンダ級が見えた。
「ようやく・・・か」
「そういや慣らし運転してないような気がしてきたな?腕は訛ってないか?セルーナ大佐?」
「最近はずっと偵察機だったからなぁ?・・・だが、あたしらはなんだ?」
「ネドリー運輸時代、一番最初に編成された戦闘機部隊と攻撃部隊だぜ?色んなのに今まで乗って来た」
「そうだ、コイツだって秒で乗りこなせる・・・乗りこなして見せる」
「スーパーツァーリー8に比べりゃ全然簡単だと思うがな?」
「セルーナ隊、出撃準備に入る」
「カンザキ隊、先に上がって待っている」
セルーナ アリス大佐とカンザキ ショウタ大佐はエデルゼウス26の格納庫で敬礼、セルーナ大佐はスターゲイザー型重攻撃機、カンザキ大佐はカザブランカ型戦闘機の方へ歩いて行った。今回初出撃で格納庫のラックには最近乗り慣れてしまったES-17戦術偵察機や愛機のスーパーツァーリー8、たまに使うギャラクシーファイター6、予備機扱いのF405戦闘機に帝国軍時代の相棒、B57重戦闘機が格納されている、予備機が異機種だが帝国時代やネドリー運輸時代、そして新生帝国時代に散々乗り回した相棒達、そして部下達も元編隊長クラスのエリート揃い、当初はその場の勢いで編成された航空機部隊だったが、今では新生帝国軍トップクラスのエース部隊、エデルゼウス26の航空隊は別格とも呼ばれるが、そのほかの空母の戦闘機隊も中々のやり手、なぜなら部下を失った編隊長クラスのエリートが生き残りがちだからである・・・そんな物を寄せ集めてしまったらそれはもう、正規軍のエース部隊がいとも簡単に出来上がってしまうのだ。
「サキ中佐、エンフォード中佐、敵の弱点は分かってるな?」
「艦橋破壊が一番であります」
「よろしい、本来ならばご法度だが相手はどうせ機械だ、遠慮は不要、ヘイトは全てカンザキ隊が買ってくれる、全員やれるな?」
「イェッサー!」
自身の機体へ向かって歩くと副隊長2人と自分の部下がさらに続いてくる、総勢40機分、勿論帝国軍の名だたるエースパイロットがほとんど・・・となれば現在の帝国軍の雷撃隊パイロットは新人のペーペーしか存在していない事となる。
・・・だって帝国軍時代に知っている限りのほぼ総数がここに居るんだ、期待のルーキーが帝国軍に生まれている事を願いたい。
部下達は掛け声と共にそれぞれの機体へ散っていく、変わりに整備兵がやって来た。帝国軍時代からそのままのヘルメットを渡してくる・・・傷だらけのヘルメットには青い宝石のマーク、帝国軍時代はLY23CXB7隊に所属、これは通称ブルーサファイア隊と呼ばれていた。その名残か、これから乗るスターゲイザー型重攻撃機のノーズ付近にも同じノーズアートが施されている、これは各機同じ・・・全員コールサインが帝国軍時代からそのままなのだ、元エースの機体にノーズアートを施さないのはどうか?と整備士の余計な気遣いで勝手に付けられている・・・勿論カンザキ大佐の機体も同様、彼の旧部隊はユニコーン隊、F405戦闘機が導入された時に新設された部隊で、部隊の通称もF405戦闘機の愛称から名づけられた。新型機が一番最初に割り当てられた部隊は大概そう呼ばれる事が多い、勿論部隊マークもF405戦闘機のシルエットなのだが、カンザキ大佐の今使ってる機体の場合、このノーズアートの機体シルエットが変化する、ES-17戦術偵察機に書かれたノーズアートもES-17戦術偵察機のシルエットだったりする。
傷一つ無い機体に傷だらけのヘルメットを被って乗り込む。重攻撃機ともなればパイロット、兵装官、護身用の機銃管制官の3人乗りだ。そして戦闘機よりも大型、Sクラス機に分類される中では最大サイズになってしまう物が大半である。当然コックピットも広々で整備士が立って機体の説明を出来る程度のスペースがある。ステラー王国製特有のスラスターフレームが特徴的、翼のような兵装ラックには皇国製のエネルギー雷撃弾の発射管、そして帝国製の対艦ミサイルであるLX-9000スターバーストミサイル、これは有限兵器だが、駆逐艦クラスの腹に打ち込めば一本で真っ二つに出来る優れモノ、徹甲弾のごとく船の中心まで突き進み、圧倒的な爆発力で卵を割るかのごとく船を真っ二つにする事が出来る特殊弾、弾自体も大きくそんなに本数を抱えられないのがたまに傷だが、皇国軍駆逐艦乗りが最も恐れる兵器である。対空系はもっぱらSRBビームライフル、これが計4基、ちなみにこれは帝国軍機や皇国軍機で最近換装が進んでいる新生帝国軍で開発されたSクラス機用の新型対空兵装。射程が長く、近距離ならそこそこダメージも期待出来るので対艦攻撃にも一応使えなくは無い万能兵器である。これについては重雷撃機の在庫があまり無い新生帝国軍のSクラス戦闘機群の諸事情が背景にあるが・・・そんな物はその辺に漂っているスペースデプリと言う名の金属資源をリサイクルすればいくらでも増やせないだろうか?ともあれスターゲイザー型重攻撃機の主翼には有能な兵器が所狭しと取り付けられている。展開時の横幅もそれ相応なので駐機スペース確保の観点から真上に跳ね上げるように格納されている。
整備士から一通りの説明を受けた後エデルゼウス26の甲板に上げられる。主翼展開は射出後、大概の雷撃機はどの国もそうしなければいけないのは共通している。帝国軍のAT3型航空母艦はそもそも射出しないので甲板デッキから離艦した時点で着艦ギア格納と同時に展開する、そして微速前進で格納庫から出るのだ。
「セルーナ隊、ブルーサファイア、機体システムオールグリーン、これより離艦する」
「ブルーサファイア、了解、これより機体を射出する。生きて帰ってこい、グッドラック」
エデルゼウス26の管制にそう言われた後、左の3次元スロットルスティックを手前に引く、直後にシートに強く押し付けられる。スターゲイザー型重攻撃機はエデルゼウス26から射出、そして発艦した。
「くそっ・・・なんだこれ、舵の効きは悪くも無く、かといって過剰でもない、それでいて加速力がおかしい・・・こんな扱いやすい機体は初めてだ」
「良い事じゃない、予定通りよろしく」
「分かってる」
発艦後にセルーナ隊所属機の周りをカンザキ隊のカサブランカ型戦闘機が複数機取り囲む。流石にカサブランカ型戦闘機に比べれば速力は劣るが、それでも重攻撃機としてはダントツに速いレベル、この巨体でも戦闘機を相手に出来そうというのは右の操縦スティックから何となく感じられる。
だが、敵は残念ながらドロイド艦隊は戦闘機を運用していない。
なぜか、空母を運用していないからである・・・されていても困るのだが、技術的な不可能が理由でフリーゲートクラスしか運用していないのがまだ銀河中の救い・・・巡洋艦クラスをまだ目にした事が無いがそろそろ出てきてもおかしくはないはずである。
まずはエネルギー魚雷における雷撃攻撃を仕掛ける。皇国艦は総じて装甲が薄いのでこれだけでも十分撃沈を狙えるが、やはり船を真っ二つに出来るほどの高出力レーザー砲、リチャージにはそれなりに時間が掛かってしまう。その間に活躍するのがスターバーストミサイル、一本消費してまた一隻撃破、対空攻撃を避けながらまた一隻に狙いをつける。カンザキ隊所属機がある程度の対空兵装を始末してくれるので攻撃がしやすい・・・しかし長くは続かなかった。
「8はカス!」
「あ?405の方がポンコツだろ?」
「アンタそれ一応最新鋭機でしょうに!」
「それいったら8もそうだろうよ!クソッ!もうローパワーだ!先に帰投する!」
「私ももうすぐで充電が死ぬ!もう少し何とかならない?」
「こうなった以上は戦線離脱が最優先!整備士にもそう言われただろ?あいつらだってなにこれ?とか言い出してマニュアル開きだしたんだ!普通じゃねーんだ!ここは!逃げられるうちに逃げとかないとマジで帰れなくなるんだぞ?拾いに来てくれるならもう少し粘ってやるが?」
「分かった分かった!先に行け!雷撃機単独でも逃げて見せる」
・・・そう言い放った瞬間に出た・・・ローパワー通知・・・作りが悪いと定評の皇国製でも一応充電しろと警告は出るらしい・・・ギャラクシーファイター6でカンザキ大佐がさっき表示させて見せたからスーパーツァーリー8でも出る事自体は知っていたが。
「ブルサファイア、ローパワーにより戦線離脱する」
そう通信で言い放った後、周囲を警戒する・・・被弾したら自分だけの死とならないのが重雷撃機である。
ドロイド艦隊の対空砲火から逃げ切った後は宇宙渋滞・・・エデルゼウス26の周りは格納待ちの機体が渋滞を引き起こしていた。
「ブルーサファイア、ユニコーン、最優先で着艦しろ。次の作戦がある」
「渋滞すり抜けは趣味じゃないが?」
「上がそう言うんだ、素直に従おうぜ?」
エデルゼウス26の管制からそう言われて渋々部下達の横を通り過ぎて着艦、カンザキ大佐が先の着艦だ。しかしこの船は着艦に時間が掛かる、これだけでだいぶイライラする。そろそろエデルゼウス26も機種更新が入って欲しいとこの時だけは常々感じる。
着陸パッドが船体から現れる。それまで枠が黄色表示だった物が白に変わる・・・これもこれで人間族の常識に合わないから腹が立つ、普通は緑がGOサイン、赤がNGサインであるのだが、とりあえず機体をひっくり返して着陸パッドに吸い付くように着艦。スーパーツァーリー8はエンジンナセルを前に引き出しながら内側へ格納していく方式、全長が長いのでどうしてもこうなるのだが、果たしてその張り出しに意味はあるのかも良く分からない・・・確かに切り詰めるとデザイン的に不格好になるのは分かる・・・だがなんとなく無駄な気がしてならない。
格納が始まれば下へ下がるように艦内に格納されていく。途中で上下反転されて上に上がる方向に修正される、エアロックを抜ければ格納庫だ。かなり混雑していた。
とりあえず直ぐ降りろと整備士からハンドサイン、機体の電源は入ったままだが降りる準備をする、後ろの二人は疲れ切っているがヘルメットを2回叩いて降りるように促した。その後機体を降りながらヘルメットを外す、とりあえずこの目の前の惨状の原因を何かにぶつけたい。
「・・・クソッ!数が多すぎる!」
「やめて!ヘルメットが割れる!」
「放せっ!」
ヘルメットを整備ドックの中で床に叩きつけようとするのを機付き整備士達に止められる。整備ドック内には続々とジェネレーターがローパワーになって帰って来た機体が山を成している、それに対して整備士は何もしない、いや、なんとかしたくても何も出来ないので放置するしかないのだ。緊急でエデルゼウス26から充電を受けている機体がほとんど、これがせめての対応である。損失は・・・無かったので充電待ち渋滞が酷いのである。スターゲイザー型重攻撃機、カザブランカ型は40分と長く持った方だったがF405戦闘機やスターファイター6などは20分と持たない・・・そして、普通、兵装の使いすぎでジェネレーターキャパシティを超過してローパワーになる事は早々無いのである・・・いかにこの戦場の頭がおかしいかを非常に良く理解した・・・そして、戦闘機がこうなるのだから、当然船もそうなるのである。
エデルゼウス26の所属する部隊、01空母機動艦隊の戦闘艦は軒並み海賊船に大幅グレードダウン・・・戦闘艦不足で別の艦隊の戦闘艦要員と入れ替えで前線押し出しを食らっている・・・か・・・。
整備士から水パックを奪い取って同じ物をチューチューしている先に着艦した奴の所に行く、なんで優先着艦させられたかの詳細は既に機付き整備士から入手していたようだ。
「さーて、次は仲良く戦場偵察だ、気になるだろ?あの無駄に長いデカブツ」
「スターバーストは投げ込んでみたが弾かれたぞ?なんだ?アレ?」
「知らん!それを上も知りたいんだと、俺らが最優先で着艦させられたのはES-17戦術偵察機へ乗り換えが理由だ。喜べ、我らがRB26迫撃戦艦がようやくリストーン星系に到着したらしい。もしかしたら着弾観測要員かもな?俺らは」
「だが位置的には真正面だ、RB26迫撃戦艦にはちょっと不利な条件な気がしてならない」
「その為の弱点探しで飛ぶのが俺らさ!はよ自分の機体取ってこい!ローパワーにするなよ?」
「どうやったら戦術偵察機をローパワーにするまで酷使出来るんだよ!・・・たく」
ケラケラ笑いながらカンザキ大佐は既に用意されているES-17戦術偵察機まで歩いて行った。取ってこいとは言われたが、既にその横に用意されている・・・後ろを振り返ればローパワーにした愛機達が無造作に脇に寄せられている・・・スーパーツァーリー8も整備士達の手によりその中に混ざった。今日は豪華な軍用機乗り比べ祭りだ、最優秀賞は今の所スターゲイザー一択、とりあえずさっき破壊し損ねたヘルメットをもう一度被ってES-17戦術偵察機まで歩く・・・流石に戦術偵察機はローパワーになる訳が無い・・・だってそもそもキャパオーバーするような燃費の悪い高火力武装を搭載していないのだから・・・。
最近は見慣れてるコックピット、ネドリー運輸時代から産廃扱いだが、そもそもこんな物は軍事的行動以外ではまともに使い物にならない。ネドリー運輸時代に適材適所なポジションが無かっただけ、だが今はその時だ。ヒーヒー弱音を吐いている後ろの席二人をES-17戦術偵察機に叩き込んでコックピットへ、その後は速攻で射出甲板まで上げられて射出される。後は対空砲火を避けながら偵察する。
「・・・こりゃ、新型のハンマーオブゴットじゃねーか?」
「コンセプトは同じと見受けられる・・・が、アズランド新生帝国に惑星粉砕兵器を投入する価値のある軍事的障害があるか?」
「あるとするならば軍事要塞くらい・・・だが、正直通常兵器でケリがつくはずだ、もう長くは持たねぇって噂だぞ?」
「じゃあなんだ?持ってきたけど使わなかったって奴か?」
「それもそれでなんかもったいねぇけどな?いや、使って欲しくは無いんだが・・・さて、ある程度データは取得したそうだが、そっちは?」
「もうこれと言って取れそうな情報が無い、いい加減充電が終わった機体がそこそこ出てきているはずだ、戻ってまた攻撃再開といこうや・・・なんとなく弱点のようなポイントは分かった気がする・・・スターバーストをぶち込んでみたい」
「それもそうだな、そろそろ戻ろうか・・・いや、まっ・・・なんかデカブツが何かを撃とうとしている」
「おいおい・・・たかがコロニー相手に・・・たぶん超兵器でも使おうってか?」
「・・・頭沸いてるわね・・・こんな事の為にこんなの持ち込んできた訳?皇国軍は!」
「とりあえずさっさと戻るぞ!もしかしたら近くに居たら危険かもしれねぇ!幸いこの辺はデプリ帯だ!デプリを使って上手く逃げ切るぞ!」
「同感・・・!・・・ん?なんでセレストスピアー級がスペースデプリに混ざって・・・放棄された?いやでも色付きと言う事は旗艦だよね?」
「幻覚見てる暇ねぇぞ!急げ!」
ES-17戦術偵察機を全力でスペースデプリ帯をかっ飛ばしていたら群青色のセレストスピアー級が一瞬目に入った・・・だが、考え事をしていたらスペースデプリに衝突する・・・ここは本来ならば全開で飛ぶようなエリアでは無いのだ。こういうのは小型で軽量、足の速くて機動性の良い偵察機が得意である、まさに適材適所であろう。戻ればスターゲイザーとカザブランカ型が復活していたので乗り換え、しかし乗り換えのタイミングは後処理だった。
・・・船の損失は・・・無い。砲が焼きついた船が多くなってきた。次第に軍艦から海賊船に乗り換えが目立ってきた、船の総数も減少ペースが非常に速い、遂にはリストーン星系への侵入すらも許した。
「ここまでか」
「RB26迫撃戦艦の射程にはまだ入りませんが・・・あの巨体ゆえに・・・リストーン星系の防衛要塞の対応キャパシティも既に限界です」
「撤退の指示は?」
「刺し違えてもリストーン星系は渡さないと、ユーノドア元帥から返答が来ております」
「うちは帝国軍じゃない。防衛要塞なんて資源の無駄使いの象徴なんだ。いくらでも食わせてやれ、いくらでも建ててやるぞ?うちのゼネコンがな?・・・とりあえず撤退の用意を支援してくれ」
「損傷艦を既に要塞裏に待機しております、ラペル・プリムナードが今しがたドッキングを強行いたしました。ローズプリンセスと旧型ラペル・プリムナードがその援護で対応中です」
「よくやった・・・だが何故ラペル・プリムナード?」
「とりあえずは使える船なのは確かです。恐らくはカルデナ元皇女殿下かファーレンヒ元皇女殿下かと思われます。本当に撤退支援をしてくださっているのなら助かりますが・・・しかし、戦況もあまり芳しくはありません。砲損傷艦の船は全力で修理していますが・・・」
「間に合わない・・・だろ?」
・・・だからセントラルプロムナードも放棄した。幸いにもとりあえず動く船ならセントラルプロムナードの想定総人口の10倍以上収容が出来るほどある。セントラルプロムナードの退避は既に完了した、RB26迫撃戦艦も一応リストーン星系にはジャンプしてきては居るが、敵艦隊の正面に居てはいけない・・・悩みの種が敵艦隊に居た。
・・・そもそもこれは何なんだ?
ここに来て新兵器、異様に長い船体の皇国の新型戦艦、当たり前だがトライアド系の商人は知らないと言っているだけ、そしてここ最近皇国軍人を拾う機会が無い、RB26迫撃戦艦も船体は異様に長い方だが、ES-17戦術偵察機からの偵察結果からもそれよりさらに長い様子。そしてとある物との共通点がある・・・ハンマーオブゴットである・・・とりあえず挟撃戦法で対応しては居るが、セントラルプロムナードを破壊するには明らかにオーバースペックな様子である・・・とりあえずは回りの雑魚を片付けなくてはその新兵器に指一本触れられない・・・新生帝国軍はそれに躍起になってはいたが、とうとうセントラルプロムナードが目の前だ・・・時は既に遅かったとも言える・・・いや、最善は尽くした、尽くしきってしまった惨状がこれ・・・セントラルプロムナードの居住区画を一撃で溶かされてしまった。セントラルプロムナードは船体を維持出来なくなり、研究区画類が本体から外れて塵尻になる、だが新兵器は足を止めない。セントラルプロムナードの次はリストーン星系の要塞ステーション・・・では無かった。マスビダ星系方面へ向かってさらに進む・・・要塞ステーションは在来兵器だけでケリを付けるつもりらしいが、工業ステーションを潰した所で何になる?だがその答えが直ぐに分かった。・・・RB26迫撃戦艦である。しかし惑星を破壊できそうな砲をたかが特型戦闘艦相手に使うのか?答えはYES、使うようだ・・・RB26迫撃戦艦はこれらの艦隊の裏に回り込む航路を取っていたが全然真正面もいい所であった。
「RB26迫撃戦艦!射程から逃げられません!」
「無理があったか・・・」
「もとより無理は承知です、ラペル・プリムナードよりユーノドア元帥を確保したとの連絡がありました、これより人員の撤退作戦を開始します」
「そっちは急がせろ」
「陛下!デプリ帯からオキタ艦隊がポップアップしました!」
「乗り換えを指示していたはずだろう?」
「そのように指示したはずです!オキタ艦隊は敵特型戦闘艦エンジンへの攻撃を開始しました!」
「攻撃を中止させて退避を命じろ!」
「応答ありません!」
・・・くっそ・・・うちは本当に仕事に命をかける奴が多すぎる。
レーダーコンソール卓を強く殴る、拳から血が出てきた。痛みは感じなかった。
「させるかっ!全艦、敵主力艦と思われる船のエンジンへ総攻撃を仕掛けろ!」
「到達までに船体が持ちません!」
「刺し違えても・・・止めろ!HA900主砲打ち方始め!」
部下のセレストスピアー級が被弾していく。だがズァパリ民国と帝国の技術の結晶だ、生半可な被弾でそう簡単に沈む船では無い・・・だが敵陣に突っ込む運用はどの国の戦艦だって想定していない。被弾のし過ぎでついにはセレストスピアー級の重力床の機能が消失するがHA900主砲はそれぞれ敵新型艦のエンジンに着弾していた。
・・・人間を・・・見くびるな。
オキタ・カナは艦橋でそう言う笑みを浮かべた・・・敵の新型艦は主砲をもう一度撃ち放った後、何故か爆散・・・エンジンごときが破損した程度で船体が膨れ上がる程の大爆発は起こさないはずだが、その爆発に巻き込まれる・・・このまま皇国艦も全て巻き添えだ。
「・・・特攻したオキタ艦隊・・・消滅、RB26迫撃戦艦も艦首を全て持っていかれました」
「・・・オキタ艦隊は砲が焼きついて撤退指示を出したはずだっただろう?」
「そのように指示は致しましたが・・・おかげで現存勢力でも残りが処理可能です」
「・・・無駄にするな」
「了解」
カトロニコフはそう返答して各艦隊に指示を飛ばし始めた。
レーダーコンソール卓にまた拳を殴りつける。しかし今度はカトロニコフが止めに来た。そもそもレーダーコンソール卓を殴りつけた所で失った物は帰ってこない・・・ユーノドア元帥を要塞ステーションから引きずり出すのに気を取られていたらこれだ。
残存敵勢力の処理は海賊船艦隊でも無茶無謀・・・M2軽主砲ごとき、ただの豆鉄砲である。正規の軍艦をそもそも相手にするような砲塔では無いが、一応数を撃てばいずれ穴が開くから困る・・・ほとんどが雷撃隊の戦果だった。
バーボン星系へ行けば見慣れたステーションがある。セントラルプロムナードと同型だから無理も無いが、一応城がある・・・そう言えば新生帝国の首都星系はバーボン星系である。セントラルプロムナードと大きく違う所は居住区の地下、つまり宇宙側にも大型艦を入れられる格納庫が存在する事である。行政区の直下は政府関係の専用の格納庫で、ここでは一働きした後のロゼンダ級が羽を休めていたが、格納庫があるのであれば当然馴染みある空間も存在するのである。
・・・流石に・・・自販機は無いか・・・。
そもそも今まで誰も使わなかった格納庫、自販機なんて置いていない。青いガス惑星のイペ、そしてリストーン星系のなんだか知らんがあの手この手で動いたガラクタ総勢7億隻、損傷艦が300隻近く・・・無傷なのは現役の貨物船と空母と後方支援艦のみ、あのガラクタの中には新旧ラペル・プリムナードとローズプリンセス、艦首喪失のRB26迫撃戦艦、フルジア王国軍の艦隊、そして損傷の激しいセレストスピアー級20隻も集められた・・・そのうちの一隻のスラスターフレームは青い・・・オキタ艦隊の旗艦だった・・・ズァパリ民国由来の流石の耐熱性、あの大爆発で溶けるようなヤワな船では無かったらしい・・・そうだ、ユリアスもその圧倒的な耐熱性に救われた事があったっけ・・・とはいえ後部分断のオキタ艦がどうしてあの爆発を至近距離で耐えきったのかは未だ謎である。
オキタ大将は意識不明の重体だが一応一命は取り留めている。オキタ艦隊の船員も怪我や火傷は多い物の、全員生還と見た目の割に損失軽微・・・今回の戦闘で総死者数は3万人・・・カトロニコフ大将は人的被害が最小限で済んだと褒めてきたがそれでも多い事には限りない。カトロニコフ大将が最小限と言い張る根拠、それは昔開催されていたセルルド星系の大武術大会一回の総死者数が一千億を越えていた為である、それに比べたら確かにほぼゼロに等しいのではあるが・・・。
「何処からそれを調達してきたのですか?オルドネスク提督」
「帝国の制服は実に機能性が良い」
「・・・ジャンプゲートが粉砕されたからと言って・・・それを着なくとも・・・それにマスビダ星系はジャンプゲート無しでも1カ月かければたどり着ける距離では?」
「とは言え母国への帰還が出来なくなった以上、我々フルジア王国軍の残存艦隊もアズランド新生帝国の軍門に下るのみ、せいぜい人類生存の役に立って見せましょう」
「正直な所、人は多い方が良いのですが・・・」
「・・・どの道、リストーン星系のジャンプゲートは姿形も無い、新造するにも座標の再計算に時間が掛かる、ジャンプゲートその物もポンポン作れる訳では無いのですよ、高速ジャンプを可能にするには何十年もの歳月をかけて、航路上に惑星や宇宙災害が発生するリスクを調査しなければならない・・・帝国がマズーラ星系に太陽系3号機のジャンプゲートを移設出来たのもかつてその計画があったからこそ。マスビダ星系の計画その物は帝国が計画した物であり、そのアーカイブも帝国にしかない」
「それならシルバーロッド傘下の整備士に居ませんかね?」
「社長にお伺い立ててみたが、あくまでもマスビダ星系側のジャンプゲートを開けた時はシステム系には触れていなかった、ジャンプゲート管理会社の人間も会社が保有するサーバーにジャンプゲートの転送座標データが存在するはずだが、保守作業員はそもそもジャンプゲートの転送座標データをいじらないので計画を調べないと分からないそうだ・・・そしてそのデータは吹き飛んでいる・・・惑星、カリルごと・・・」
「・・・くそっ、何処かで似たような話を聞いた事あるぞ?」
「例えば・・・我々田舎者が、何故独立戦争前の自国の歴史を知らないか・・・でしょうかな?」
「その答えは帝国が地上のデータセンターを吹っ飛ばすほど衛星軌道攻撃を加えたからだ・・・」
「ジャンプゲートを丸々消し炭にされてしまった以上、フルジア王国に戦火が及ぶことはまず無いでしょう・・・その代わりにマズーラ星系へ流れてくる・・・その前にリストーン星系の再掌握をしなければなりません」
「・・・王国は取り戻す気にならない?」
「現状はアズランド新生帝国領でしょう?何を今更・・・それに新生帝国が建設したコロニー群はまだ大部分が健在ですぞ?」
「完全に手放す気だな?ドル箱星系だぞ?」
「そもそも私に星系統治の決定権は無いのですよ。どの道、リストーン星系はアズランド新生帝国の影響力に依存しており、フルジア王国領に戻ったとしても到底統治しきれないのは明白・・・」
「・・・それについては俺が悪かったとしか言いようが無いが・・・」
「皇帝陛下はこの豊かさをもっと誇るべきでしょう、行きかう商船の数の多さ、異種族の商船も多い、リストーン星系の交通量の多さもかつてのネドリー運輸時代に築き上げた努力の賜物・・・ひとまず考えるのは目の前の物を守る事です、ドロイド艦隊をどうにかしなければ消耗戦でいずれ負けますでしょう」
「・・・分かっている」
現時点でやらなければいけない事、リストーン星系の再掌握もそうだが、ブリッド星系も掌握しなければならない、確かに窓の外は貨物船その他で混雑しているが、ドロイド艦隊の元を絶たなければ次第に目の前の光景も無くなってしまうだろう。
ー銀河の常識ー
・太陽系
地球消滅以前は宇宙国際連合が管理していた共同管理星系。宇宙国際連合軍が当時は一番の軍事力を持っていたがエマンクリシット皇国による侵略戦争及び地球消滅に伴い宇宙国際連合とそれに関連する国際組織は崩壊した。その後はオヴィルツィッヒ帝国が実権を握るようになり、宇宙国際連合の遺産は現在でも会議の場などで使用される。実質オヴィルツィッヒ帝国領だが扱いとしては現在も共同管理がされている星系である。
こういった遺産は現在でも一部残っており、AT3型航空母艦やRB26迫撃戦艦もまた宇宙国際連合軍が開発した兵器の末裔でもある。




