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この宇宙の片隅に  作者: verisuta
アズランド新生帝国
17/18

人類の反逆

窮地に追い込まれつつある人類、しかし二度も屈する訳にはいかない。


ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー

・アルパ級巡洋艦

ステラー王国が開発し、シルバーロッド整備工場が製造する巡洋艦、セレストスピアー級より小型でおおよそのデザインはほぼ同級と同じであるが、役目は異なり、艦隊の盾として設計され船速も他のクラスと劣らないなど迅速な部隊展開や作戦行動をする上でバランスの良い設計をしている。

アズランド新生帝国で製造している事もあり、新生帝国もオヴィルツィッヒ帝国系造船会社製の船と共に運用しており艦隊の柔軟な作戦行動を支える。


・ハンマーオブゴッド

エマンクリシット皇国のウテラ・ドン社(現プリズムミリタリー社)とエクシオン社(現トライオッド社)、ヴェルデルフ社(トライオッド社と合併)が製造した惑星粉砕兵器、セルルド星系のライラS2惑星とスペ2惑星、太陽系の地球を破壊した兵器で現在は銀河条約にて使用が禁じられた大出量破壊兵器で13隻製造されたとされているが条約により使用禁止とされた後、解体されたのかそれともいつでも建造出来る態勢を残していたか、真意は定かではない。

船体自体がほぼ砲身とジェネレーターを占めており、移動速度は非常に鈍足である。地球へ攻撃を行う最はジャンプゲートを建設し、太陽系へ転送した。

 オロラ星系が皇国の手に落ちてから2カ月経ったある日、ドーベック大佐とカトロニコフ大佐、スギヤマ大佐の尽力もあり人類はオロラ星系を皇国軍の手から取り戻す事が出来た。領有権を確保する為、セルルド星系へのジャンプゲート付近に要塞ステーションを建設しなければならないが、その奪還作戦の中核に居たのはセレストスピアー級戦艦であった。有り余る資材と部品で全力建造された僅か12隻は高速性能に優れる皇国艦の部隊と共に皇国軍へ奇襲をかけ、遠距離からの攻撃で数を減らし、近距離は皇国艦に任せると言う戦法で優勢さを確立、混乱した所で帝国艦で狙い撃ちにする複数軍の船の各特性を活かした戦術で皇国軍をあっさりとねじ伏せて見せたのである。建国早々銀河三大派閥の一つに喧嘩とは関心しないが、中立以上の国からは何を今更そんな事気にしているのかね?という目でしか見られていない・・・銀河全体ではどちらかと言えば好きに暴れてくれと言う空気感なのだ。

 セントラル・プロムナードもD地区の大型交易ステーション型のモジュールまでの建造が終わり、E地区のコロニー建築に入っていた。バーボン星系の開発も息をのむスピード、とにかく食料関係が最優先、難民の中にはそう言ったプラントで仕事をしていた人も多く、会社として独立して運用してもらう運びとなった。

 しかし所詮は難民を寄せ集めたような国、アズランド新生帝国の首都星系はバーボン星系だが、経済の中心はどうしてもリストーン星系になってしまう。ネドリー運輸実質統治時代から人口が急激に増え、フルジア王国でもドル箱星系となっていた為でもある。ではなぜリストーン星系を首都星系にしなかったか、それはセントラル・プロムナードを首都コロニーに出来ない理由がある。持ち主はエルムンドドエルだからである。さらに詳しく言えばシーモア共和国とサイズァー薬品も噛んでいるのでいくら80%以上はネドリー運輸が拡張した物であっても所有権上はエルムンドドエルの物という事になる。好き勝手拡張しているがそれは変えられない。

一方でネドリー運輸の建てた居住型コロニー及び軍事施設はアズランド新生帝国の国営ステーション扱いになる。なぜなら政府とされる機関が建てた物扱いだから・・・よって税金が取れるステーションと取れないステーションが出てくるのだ。セントラル・プロムナードは取れないステーションと言う事になる、ステーション運営の管理費としてうちの建築部門が取っては居るのだが・・・。

 ・・・で、ここからが重要な事・・・なんと俺は結局皇帝になってしまった。

 しかも妻が3人、シルヴァとリーリア、そしてエルゼ皇后陛下だ。エルゼとは、ただの政略結婚と言えよう。今となってはシルヴァも同様であるが、エルゼに関しては部下の妹と言う事もあり手を出す気になれない。それだけにエルゼからの愛を余計に感じる。皇后でありながら側室に遅れを取る事は不本意と言う訳だ、おかげでバーボン星系の宮殿は年中不在になりそうだ。

 国家内政は完全にエルゼに丸投げ、俺は軍事やステーション建築など、ほとんどネドリー運輸でこなしていた事をやるだけ、だが民間から手を洗わざる得なかった。

 ネドリー運輸はマイラに社長の座を譲った。もうマイラの年収は兄をとっくに越えている、借金なんてもう跡形も無い・・・しかしネドリーグループの企業は半ば国営企業に近い。建築部門は国営と民営で二分割、彼らの中で意見が割れた訳では無いが、民間のゼネコンも必要であるから割った。 ルーガのシルバーロッド整備会社も同様で、エルムネス造船会社と言う国営造船会社とアズランド新生帝国軍の整備隊の3つに割れた、しかし総司令塔は基本的にルーガだ・・・なぜだろう・・・。

 その流れでステーション管理の事務職系は細分化と国家組織化した、ほとんど崩れなかったのは警備部門、そのままアズランド新生帝国軍になった。総指揮官はチェ・リユン元帥、正式な軍隊となったので帝国軍時代の階級とはおさらばしてもらう。その中でも特殊部隊が編成された、皇后護衛部隊としてリーサ艦隊スギヤマ艦隊、皇帝直属部隊としてドーベック、カトロニコフ、ワトソン艦隊、この5艦隊が新生帝国騎士団と呼ばれる雑・・・特殊部隊となった。勿論全員大将の地位を与えてある。これまでの護衛業務はどうなるのかと言えば新生帝国軍が後任すると言う変な構図になっている。もとよりズァパリ民国との護衛の件はいまや国家間の約束のような物、しばらくはリユン元帥も階級の正規化に追われる事となるだろう、元々現場では少尉が大佐の上官とか現状かなりの矛盾が生じていたのである。

 新たに新設されたのが星系警察、オレット巡査部長らリストーン星系の星系警察職員がそのままアズランド新生帝国の星系警察に変わったと言う物で、リストーン星系内のフルジア王国国民の国籍移管に巻き添えを食らったと言う物だった、これは難民対応でフルジア王国本国に国民を戻せないが為の処置、フルジア王国籍を望む者は帰国を許される期間中だが、むしろ流入が多い状況なのでほとんどの国民が国籍移管に賛同しているようだった。星系警察職員も同様で、居住地がリストーン星系なので特に何も気にしていないらしい。巡視船はストーム級フリーゲートに替わり、警察職員も今までの400倍、バーボン星系とオロラ星系、ついでにマズーラ星系のパトロール業務をしてもらう事となった。フルジア王国時代からすれば船も人も信じられない程増えている。オレット巡査部長は警視長に格上げ、何故警視総監では無いのかについては汚職もそうだが、現場に近い方が便利そうな気がしたからである。

 交通管制については民間行政化して各ステーションの管制局が担当、おかげでリユン元帥の担当業務が大幅に激減、その総括としてマクシミリア大将を交通局の大臣に任命した・・・もう大将と呼ぶ必要も無いかもしれない。

 だが、俺の業務はかなり増えた、ネドリー運輸よりやる事が多い。

 ネドリー運輸の格納庫はアズランド新生帝国政府の格納庫となり、入っている船も皇帝所有の船へと変わったがあくまでも名目上、相変わらず難破船の残留貨物の積み荷下ろしや救助者の受け入れ等に使われる、それは上も同様、追い出される事無く事務所もそのままアズランド新生帝国政府出張所のような扱い、ネドリー運輸の格納庫と事務所はD地区の軍用区画として設計された区画、そこに行けばマイラに会える。

 俺は忙しいが・・・目の前の奴は暇そうでならない。

 エルムンドドエルは紅茶をすすっている。そして隣ではローラがモジモジしていた。

 「・・・ローラ、大丈夫か?」

 「・・・いえ・・・問題ありません」

 やはり息が少し荒い気がする、顔も赤い・・・風邪か?

 「本当に大丈夫か?」

 「大丈夫・・・です」

 「大丈夫そうには見えないんだが?少し休んで良いぞ?」

 「大丈夫・・・ですから」

 明らかに様子がおかしいローラの肩を掴んでソファーに座らせようとする、すると逆にソファーに押し倒され上に乗られた。

 「・・・もう・・・我慢・・・出来ません・・・!」

 「どういうことだ?ローラさん?」

 顔を真っ赤にするローラ、よだれがダバダバ出ている。

 「・・・発情期じゃな?満足するまで交尾すると治る」

 エルムンドドエルが優雅に紅茶を飲みながら冷静に分析してきた。

 「・・・お許し・・・ください」

 「ちょっと待て!クソトカゲ!助けろ!」

 「だから言うておろう?満足するまで交尾すれば治るとな?丁度獣人族も発情期真っ盛りの時期じゃろうて、ついでだから結果も知りたい!さっさとおっぱじめるとよい!」

 「ぐあぁぁぁぁ!」

 ローラが力尽きるまで無茶苦茶にされた。


 「・・・誠に申し訳ございません」

 ローラが顔を真っ赤にしながら謝って来た。

 「・・・死ぬかと思った」

 「ま、屋敷に戻ればさらに30人も居るんじゃろー?今夜は寝れないかもな?」

 「う・・・そ・・・だろ?」

 「大変申し訳ございません」

 「そう言う遺伝子じゃ、仕方なかろうて、普段は年中発情期の人間に犯されてここまで爆発する事もなさそうだが、全く相手をしてやらねばこうなるようじゃな?定期的に使用人も慰めてやると良いぞ?ファルマン!」

 「勘弁してくれ・・・」

 扉が閉まる音がした。

 「・・・お嬢様です、心配要りません」

 「・・・そうだと良いんだが」


 ・・・どうして・・・ファルマン様は私を選んでくれないの・・・!

 凄い湿気、ベッドの回りには裸で満足そうな顔をして寝ている獣人の使用人達、次から次へと襲ってくる彼女らはいい性欲の捌け口だ、体を撫でまわしあい、お互いに快楽に浸る、ベッドや床が水浸しだ。


 ・・・真下に格納庫があるのは最高だ。

 降りて直ぐのロゼンダ級の船長室で一泊した。抱く気は無かったのだが、このエリアであればどこでも付いてくる侍従長のローラが隣に居る。二人して昨日は家出、ロゼンダ級の船長室はズァパリ民国人の女性特有の甘い香りが凄く、獣人なら気絶しそうな程の物だったらしい。

 とってもサラサラした赤い髪、体系はヤシマ少佐とほぼほぼ変わらない控えめタイプ、乱暴に扱われてきたのか肌の状態は良くは無い、手荒れも少々だ、猫耳がとっても可愛らしい、性感帯は尻尾である。ベースは帝国人なのでツンとした鋭い目もまた侍従長に相応しい。

 「・・・にゃーん」

 ローラは顔を赤くしながら体を密着させてくる・・・この部屋も彼女にとって危険な部屋なのだろう。とりあえず運び出して船長室から食堂へ、離れれば離れるほどローラが正気に戻ってくる。

 「朝から申し訳ございません、ご主人様」

 完全に取り乱しているローラ、このロゼンダ級は救出作戦によく使われるので厨房の冷凍庫にはズァパリ民国産の食材がたんまり入っている。有事はツェルナとサシリアの部下となった人達が飛ばす船だ、それでローラがせめてもの謝罪と言う事で朝から豪勢な料理を用意してくれた。これはこれで食べきれない、しかし侍従長たる者、料理の腕も素晴らしい、そして思った。

 ・・・俺の回りで、料理が作れる人はこの子しかいないんじゃ・・・?

 マイラ・・・は、確かに上手だが、滅多に会う子では無い。リーサの手料理は見た事が無い、ツェルナはカップラーメン、サシリア、ミヴェルマンは部下に作らせている、ヤシマ少佐は基本コンビニ飯、そう言えばパルサー少佐と一緒に階級調整が入って昇格しているので今は少佐である。シルヴァは焚火で直下焼きが基本と文明レベルがそもそも低い、リーリアもたぶん同様だろう。エルゼは身分柄自分で作る事が無い様子、お菓子専門である。

 ・・・本当に結婚するならローラが最適解なんだろうな・・・。

 ひとまずは食べられるだけ食べて、後はローラに食べて貰う、昨日散々カロリーを消費したのか彼女の方がよく食べる。朝食を終えればもういつものローラだ、完全無欠の侍従長である。

 「あー参った!」

 「・・・小型機で済む範囲で頼む」

 「うちが国になったせいで元帝国の奴らがかなりやる気を出し始めやがった!空母!補給艦!民間用の貨物船!戦闘機や偵察機に至るまで!全部建造フェーズに移したいと言ってきやがった!」

 「どんなのだ?」

 「ほらよ!」

 ルーガからタブレット端末を受け取る、しかしそんな数週間で設計できる物じゃないはずだ・・・と思いきや、案の定ステラー王国艦に似たシルエット、ファイルの最終更新日から見ても、事前に設計していた物だった。

 「それだけじゃないぞ?オロラ星系の開発計画もだ!セルルド星系に要塞ステーションも作りたがってる」

 「現状、まだ難民で溢れているからな・・・それにセルルド星系の安全も確保しないと民間商船が全く身動き出来ない、実際、たびたびスタックしてるんだ」

 「マイラちゃんは大型貨物船をさらに増やしたがっている!バーボン星系の定期便用にだ!」

 「確かに定期便は無い、それは早く整備すべきだ」

 「あの汚職警官はバーボン星系に星系警察本部が欲しいと来た!」

 「・・・アイツ、階級だけは警察本部長だぞ?部屋くらい用意してやれよ、ストーム級フリーゲートも相変わらず余り散らかしてるんだろ?高速性能を活かした戦術に使えるとはいえ、時期にそれはテラー級フリーゲートに取って代わられる、パワートレインの都合で砲が貧弱なんだ、ストーム級も・・・」

 「ファルマン!お使いたのもー!」

 「小型機で済む範囲で頼む」

 「小型機じゃ足りない!ロゼンダ級総出で事が済む!」

 「・・・機材の搬入か?まだ手配していなかったのか?」

 「巨人族のせいでキャンセル!」

 「・・・分かった」

 「皇帝陛下、部品倉庫が溢れています、船舶用ジェネレーターの在庫が依然過剰です」

 「それは交通局の仕事かな?マクシミリア大臣」

 「皇帝陛下、帝国軍の惨敗兵の難民、延べ35万人ほどをコロニーより難民受け入れ作業をしている艦隊が回収しました、AT3型航空母艦が14隻にFT14型戦艦が50隻、MA30型巡洋艦が148隻に・・・」

 「順次下で受け入れる!ドーベック大将、ついでだ、下のロゼンダ級に乗り換えてオデム=ササラからそこのクソトカゲの荷物を取って来てくれ・・・オデム=ササラでいいんだよな?」

 「そこにある!」

 「承知いたしました」

 「皇帝陛下、フランクリン大将より、ブリッド星系の近況です、左右残骸を処理し左右から再び進軍を開始しましたが、結果としてさらに巨大な残骸ドームを形成するに終わりました」

 「とりあえず最初の残骸ドームは安心して処理出来るようになったな・・・急いで片付けさせろ」

 「はっ!」

 カトロニコフ大将は敬礼して部屋を出ていく。

 ・・・バーボン星系にどんどん人を送らなければマジでセントラル・プロムナードが破綻する!

 ブリッド星系のゴミを使ってバーボン星系はアズランド新生帝国の一大工場地帯になる計画、他の惑星の衛星にもコロニー建設が始まり、計画上ではリストーン星系を越えると言う、首都星系にふさわしい規模の建築計画が進行中、使い終わったらどうするんだ?と言うレベルのおびただしい建築ドローンとリサイクルプラントは最大効率で稼働、船舶用ジェネレーターにも寿命と言う物は存在するが、使い切るまでは廃炉も危険を伴う代物なので改造や分解転用なども慎重に取り扱わなければならない、その分処理に困っているのでこれらの使い潰しにもかなり役に立っているのだが交換時期も半年に一回なのでなかなか減らないのだ。ちなみに本来は普通に動かせば50年に一度交換になる設計のプラントである。

 とりあえずここに居ても仕事が増えるだけなので下に降りる、ロゼンダ級が動いたおかげで帝国軍の難民受け入れがスムーズに進む。ようこそ、ユートピアへ・・・と言いたい所だが、食料が無い、食品製造プラントを最優先にしているが原材料も直ぐに出来る訳じゃない、ズァパリ民国に無理を言って小麦畑を刈り取る勢いで原材料を輸入している、ステラー王国にも無理を言って大規模農地計画を進めている、幸いセルースの海洋資源は手付かず、難民達は毎日魚を主食として貰っているが、輸送コストも尋常じゃない、国家としては大赤字、まだ物々交易だからマシと言った所、ステラー王国とは建材と食料を物々交換する流れになっているのだ。

 病院船型のC78輸送艦が入って来る。船の大部分は入港不可の破損船、近距離シャトルのような使われ方をしているが、これもれっきとしたアズランド新生帝国軍の病院船、軍隊が持てるようになったからこそ正規で運用が出来るようになった物なのだが・・・何故破損したロゼンダ級が入って来る?ササリッサ級?何故だ?

 「シーモア共和国線の船団です、いよいよズァパリ民国も民間船団の半数を失いました、もっとも、失った3分の1はここにありますが」

 足元を見下ろせば白いアルビノの子、アイリスが腕を組んで隣に立っていた。

 「欲しいってか?」

 「私では無く、ツェルナお姉様と同年代の方達もそろそろ船を走らせる訓練をなされた方が良い・・・サシリア王女殿下がそう、おっしゃっておりました」

 「・・・まだ早すぎる・・・って言ったところで、お前も動かせるんだろ?アイリス」

 「勿論です、サシリア王女殿下より部下を与えられています」

 「親が居ないからと皆してやりたい放題だな」

 「いえ、我々アルビノに居場所を用意していただけるだけありがたいのです」

 「ズァパリ民国に固執しなければ、居場所はいくらでもあるんだがな?」

 「我々はサシリア王女殿下を守る騎士団です、その為に生まれてきた、それだけです」

 「もう少し帝国軍人を頼ろうな?」

 サシリアの頭を撫でる、帝国軍人のようなお堅い顔は崩れる・・・が遺伝子的にはエルフ族の血が入っているはずなのである・・・医学的に面倒だ。

 実際、アルビノの子達は成長が早い。精神年齢上ではもう5歳と言っても良く、アイリスはもう自前の艦隊を持っている。もちろんこの事はルシャーサ女王陛下には内緒、非正規の子供が軍の艦隊の指揮を取ることなどとてもじゃないが報告出来た物では無い。

 ・・・勿論、アイリスも遊びに来た訳じゃない。

 ズァパリ民国人の身元を引き取りに来たらしい。王女の命令を伝え、このステーションで一時待機を知らせる。軽傷な者はB地区のズァパリ民国のコロニーへ行くトラックに乗るよう指示していく。このステーションにズァパリ民国人が乗れるバスは存在しない、普通の貨物トラックの荷台に全員乗せられていった。アイリスの部下は元ズァパリ民国軍兵士達だ、軍服をそのまま着用しているのですぐに分かった。

 残された船?シルバーロッド整備会社の職員達が引き取っていく、修理が終われば、今や在庫の海賊船よりも、ストーム級フリーゲートより多い保管区域に並べられる事だろう、ササリッサ級だけで約2万隻ある。修理が全部上がればロゼンダ級は30隻、銀河一高額な高級中古クルーザーという珍しさも感じなくなる程だ、何処に保管しているかと言えば格納庫の外だ、プリズムライオッド12もユリアスも外に置いてある、乗り降りにはES17戦術偵察機が必須となるのだ。

 勿論サシリアも、ルシャーサもこの現状を良くは思っていない、ズァパリの地に回送するか、B地区に住まう子供達に与えてアズランド新生帝国線に充てるかの2択で口論中、決まるまでは新生帝国としても何も動けない、勿論新生帝国線に充てるならば護衛はちゃんと付けるし船舶の練習なら治安が良いバーボン星系とリストーン星系の間で教育もする、成人するまでフルジア王国線で経験を積んでも良い、今の所はこのサシリアの案が優勢らしい。

 アイリスの部下にこれらの出所を聞けば、セルルド星系で新生帝国線が回収したようだ。

 2週間もすれば、目の前のロゼンダ級もこの格納庫の裏や下に並ぶのだろう・・。

 そう思って2週間後、案の定ロゼンダ級がまた増えてしまった訳だが、ついに決着が付いたようだ。

 アルカミリア、フューリエ、サルマイン、ミールデル、クライン、アピデル。

 このステーションで4番目以降に生まれた子供達に船を貸す貸与式が行われた。本来は納入式だが、彼女らは成人した時にもう一隻ロゼンダ級と自分達が産んだ分だけのササリッサ級を貰う事となる、今から与える中古のロゼンダ級とササリッサ級はその時に不要となるので貸与になるのだ。運用についてはひとまずはネドリー運輸の元で働く事となる、必ず4名のネドリー運輸に在籍する元帝国軍の大佐クラスが乗船し、領内およびステラー王国、フルジア王国領で貨物のやり取りを行いながら船団運用を習得する訓練をする事となる。勿論成人するまでの教育も終わっていないので教育を受けながら船団を学ぶと言う少しハードなスケジュールで生活してもらう事にはなるが、各母親も理解してくれた様子、これでロゼンダ級6隻はB地区の大型交易ドックに保管する事が出来るようになる。少しは格納庫回りとフルジア王国の滞納貨物が片付きそうで何よりだが、ミヴェルマンは押し出しでアズランド新生帝国線に就く事になってしまった。オキタ艦隊が居るので大丈夫だと思いたいが、ササリッサ級を60隻も従える大艦隊になってしまっている、オキタ艦隊の戦力追加も考えなければならない。

 フルジア王国ではアーバン船団商事のフルジア王国路線撤退を悲しむ声が多いが、あくまでも後任と入れ替え、アイドルに等しかったミヴェルマンの人気はそのまま次の世代へ向けられる事となった、今度はその幼さ故にさらに人気も出ていると言う。

 そんなニュースを見ながら各要塞ステーションにある造船設備からある船の到着を待っていた。

 セレストスピアー級が5隻にアルパ級が10隻だ。

 オキタ大将にはセレストスピアー級に乗り換えてもらう。格納庫に居れば一隻だけ群青の船体色に赤いスラスターフレームのセレストスピアー級が入港してきた。

 「どうだ?かっこいいだろ?」

 ルーガが降りてきた、オキタ大将専用艦である。

 「エンジンはセブンスターエンジンをさらに改造してある、だがオキタ大将の真髄は狙撃だ・・・そうだろう?」

 「どーせ良い奴積んできたんだろ?」

 「完全新設計のHA900超長射程主砲だ、威力こそイマイチだが最大射程は90万km、30万km未満で使えば理論上はハンマー・オブ・ゴッドのエンジンくらいは破壊出来る高出力主砲だ、これが1基に在来のHT702主砲が2基だ、対空兵装も在来通り、囲まれた時の砲撃は弱いが、残り4隻はその分HT702主砲を1基増やしてある、艦隊を守るのに分厚い反エネルギー弾装甲を備えたアルパ級を10隻用意したからそれを使いながら在来のFT14型戦艦とかも攻撃に徹する事が出来るようになるはずだ」

 「完全に特注艦揃いじゃないか」

 「言ったろ?ライセンスはうちにあるって」

 「ま・・・結果が良ければステラー王国軍にもフィードバック出来る、悪くは無いだろうな」

 「噂をすれば護衛対象が来たぜ?」

 ちょっと修理跡の目立つミヴェルマンのロゼンダ級が格納庫に入って来た。

 「これがぁ・・・オキタちゃんの新しい船!?かっこいい!」

 ミヴェルマンが目を輝かせながら飛び跳ねる、時期にFT14型戦艦も入港してきた。この船も歴戦の猛者である。船首の一部が赤く塗られているのは帝国軍では旗艦を意味する、うちに来てから旗艦だった船の扱いとかは適当で、旗艦が標準塗装で配下に旗艦カラーを従わせていた運用もかなりある、しかしこの船は帝国籍時代からずっと旗艦だった、剥がれかけの旗艦の赤がそれを物語っている。

 「皇帝陛下、お呼びでしょうか?」

 オキタ大将が敬礼をしてくる、俺もゆっくり敬礼した。

 「まずは大将への出世、おめでとう。君もうちではかなりのベテランだ、今までかなりの苦労をかけて来た、船もだいぶ傷が付いている事だろう、君に新しい船を用意した、ぜひ役立ててくれ、これからもよろしく頼む」

 「勿体なきお言葉」

 「じゃ、ルーガ、後の説明は頼んだ」

 「わかったぜ」

 「そう言えばミヴェルマン、船の替えはあるがどうする?」

 「私はあの船がいいの!壊れても直して乗る!」

 「そうか、何かあったらルーガに言ってくれ、ツェルナがロゼンダ級の部品もある程度向こうで仕入れて送ってくれるんだ・・・修理中の代替えはもうロゼンダ級だけれどな?」

 「そうするぅ!」

 「それじゃ、新生オキタ艦隊との航海楽しんできてくれ」

 「行ってくるぅ!」

 ミヴェルマンはウキウキでロゼンダ級に走っていった。

 ・・・時期にこの艦隊は群青の騎兵隊と皇国軍に恐れられるようになるのは少し先の話である。


 ・・・この調子で旗艦をセレストスピアー級に切り替えていきたい。

 帝国艦と皇国艦、適材適所があり、それを活かしてやればそれぞれとても優秀な船達なのだが、帝国と皇国はそれぞれ片方ずつしか保有していない、そしてわが軍もいつまでもサルベージに頼っては居られない。脱スクラップ再生を図らなければならなかった。

 オキタ大将に専用艦を与えてから一月経った。食料自給も安定し、急いで建てていたコロニー群も居住が可能になっていく、ようやく研究区画などの高速道路が前線規制解除となり、スーパーカーも乗り回せる状況まで落ち着いたが、ローラのお腹が少し出てきたように感じるのは気のせいか・・・シルヴァに変化は無い、リーリアとエルゼからはお誘いこそあるものの、手は出して居ない、リーリアはともかく、亡き部下の妹君に手を出せる訳無かろう?

 「で、呼んでおいて、なんじゃのー?」

 「電話で呼んで本当に来たのは初めてだったな?」

 「そこの娘のその後の事じゃろーと思ってな?」

 「皇帝陛下、皇后のわたくしが居ながら、側室でもない侍従長に手を出すなど・・・」

 「ローラに手を出したのですね?私がいつでもお相手して差し上げましたのに・・・」

 「わたくしとはいつ子作りしていただけますの!?約束しましたわよね!?」

 「・・・そんな約束は・・・したかな?」

 「今すぐ脱ぎなさい!すぐに子種を搾り取って差し上げますわ!」

 「・・・人間族は年中お盛んじゃのー・・・まあ、その腹は一度に確実に受精するまで何度も繰り返し交尾をすれば当然じゃろうて・・・おめでたであるぞ?流石発情期!」

 「ご主人様、大変申し訳ございません、今すぐ降ろします」

 「待て待てぃ!それでは実験にならんでは無いか!貴重な遺伝子改良生物と人間族との間の子の遺伝子サンプル!それは何としてもそれは許さん!シャーッ!!」

 「ですが、我々のような獣人が生まれるだけでして・・・」

 「その遺伝子構造にどのような変化があるのかを知りたいのだ!だからそのまま産め!」

 「・・・博士がそのようにお申し付けくださるのであれば・・・」

 ローラはうつむく。

 「・・・ま、リユンの奴も使用人を何人か孕ませたようじゃがのー?発情期とやらは凄まじいのぅ・・・そりゃ一部の獣人族の奴らも住み家が無くなる程増える物よ・・・」

 「・・・申し訳ありません」

 ローラは顔を赤くする、そしてお腹をさすった、どのような子が生まれてくるのだろう・・・。

 「ほれ、その辺にしておけい、この娘が孕んだのもある種の事故じゃ、その男は悪くないぞ、なぜなら交尾の現場を見ていたからのー?」

 「どのようにすればわたくし達と交わってくれるのでしょう!」

 「やっぱり力押しじゃないと駄目ですか?」

 「ローラがどのようにしてあの男を襲ったか詳しくですわ!?」

 「・・・リーリア様は覗いておられたでしょう?便乗も出来たはず・・・」

 「うぐっ!?・・・人に見られながらは・・・嫌なの!!」

 「・・・その後の自慰も屋敷の使用人を巻き込み盛大にお盛んだったようですが・・・」

 「・・・あんなもの見せられたら・・・抑えられる訳無いじゃない!」

 「・・・おかげでご主人様も助かったご様子ですが・・・今後の発情期への対策も検討せねばなりません、私だけならともかく、屋敷全員となればご主人の体が持ちませんので」

 「リユンも入院するほどだったからのー?」

 「ともあれ皇帝陛下、まずは皇后を優先すべきかと思いますの」

 「死んだ部下の妹君にそんな事出来ないと言っているだろう?」

 「わたくしはスライパーで民に殺されそうになった時に救って頂いた貴方様に純粋な好意を持っています、兄はここに関係ありません!」

 「一人目は私です!私はステラー王国第一王女ですわ!?私だけを見てください!」

 今すぐにでも脱ぎだそうとするシルヴァのエルゼ、その手を止めたのはローラの手を叩く音だった。

 「夜枷は当番制でよろしいでしょう?毎晩エルゼ様、シルヴァ様、リーリア様でローテーションを組めば良いではありませんか」

 「アンタは含まれていないけれども?」

 リーリアがローラを指さす。

 「・・・私は・・・発情を抑えきれなかった為に・・・行為に及んだだけですので・・・」

 ローラが顔を赤らめつつもシルヴァとリーリアの腕を掴んで部屋の外へ引きずり出していく。

 「・・・という事は、今晩はわたくし・・・ですわね?」

 「・・・勘弁してくれ」

 エルゼは顔を真っ赤にしながら微笑んだ・・・汚れを知らないようなこの笑顔・・・スギヤマ大将が間に入ってくれないだろうか・・・無理だ、アイツはボヌア一筋だ、俗にいうおしどり夫婦である。

 その日の夜はエルゼと一夜を過ごした。やましい事など一つも無かったのだ・・・きっとそうだ。

 ・・・そのはずだ。

 「・・・お楽しみ中・・・わりぃ、旦那・・・いや、皇帝陛下・・・巡視船が一斉にこれを受信したんでよ」

 真夜中にオレット警視長が訪ねてきた、要件はいつもの皇国軍のやらかしである。星系警察として使用している巡視船のごく一部、つまりストーム級フリーゲートが一斉受信したらしい。

 「いや?皇后陛下はぐっすりおやすみ中だ、しかし・・・わざわざ極秘作戦を敵にバラす間抜けが何処にいるんだか」

 「ハンマー・オブ・ゴッド?確かこれ、お姫さんの星、破壊した奴だったと思ってよ?その目的地はここ、リストーン星系のセントラル・プロムナードだってさ、おっそろしいなぁ・・・」

 「確かに銀河最強の殺戮兵器だが・・・たかだかコロニー相手に使う代物か?」

 皇国軍の船は皇国軍の作戦を受信する事が出来る、しかし帝国軍はこのような事をしてこない、相変わらず抜けているが、ひとまずはやるべき対策を取るべきだ。

 ・・・だがどうするべきか・・・。

 ドーベック、カトロニコフ、ワトソンをA地区の総合指揮所に集めた。住人を逃がす?逃がせる場所が無い、ならばオロラ星系で手を打つべきだ。それは満場一致、しかしハンマー・オブ・ゴッドに対する対抗馬が無い。

 コロニー全体のカメラの映像がリアルタイムで表示されている指揮所を眺める、各ドックの入口とかその周り、A地区の回りには処理に困るメソポタニア級などの艦船用ジェネレーターの山、ステーション周囲の映像からも未だにメソポタニア級の残骸が視認できる・・・だが、残骸に何が出来る?いや、出来るはず。

 「整備部隊に至急メソポタニア級を最低限整備するよう伝えろ、船舶用のジェネレーターを限界まで付ける、元々遠隔操縦が出来たはずだ」

 「しかしそれでは焼石に水では?」

 「何をするおつもりですか?」

 「・・・コロニー落としの次は・・・無人船爆弾だよ」

 「・・・船・・・ですか・・・いや、そうならば可能でしょう、であれば、オロラ星系ジャンプゲート裏に配置しましょう」

 「後はジャンプゲート前で我々が取り巻きを排除し、無人爆弾とすり替える、オロラ星系の真ん中で全艦航行用エンジンへ突撃させれば!」

 「恐らくはハンマー・オブ・ゴッドはただの固定砲台化すると・・・後はここに海兵を突撃させ、所有権を奪取すれば無力化も可能です・・・いえ、放置しましょう、敵の兵站も無限ではありませんそのうち降伏する事でしょう」

 ・・・やはり、こいつら天才か?

 帝国は惜しい人材を無くしたものだなぁ・・・と、つくづく思う。

 そうと決まれば全力でメソポタニア級の回収と改造が始まった。

 航行用エンジン破壊に必要なジェネレーター数はおおよそ50万個、ジェネレーターは現状600億個ほど余らせている、航行用ジェネレーターも含めて一隻に搭載出来るのはおおよそ10個が限度、となると5万隻必要となる、あいにく船体は30億兆くらい海賊の墓場に漂っている、ただ動けば良いので大した整備も必要ない、そうして集めた手頃な5万隻、丸1日かけてオロラ星系のセルルド星系ジャンプゲート裏に配置した。ただし、現状は電源を落としておいてある、綺麗に整列すらもしていない、残骸に見せかける為だ。それにES17戦術偵察機やF405戦闘機などを忍ばせてある。起動は戦闘機隊や偵察隊の仕事で、起動し終えれば後は発艦して各々リストーン星系まで撤退する流れだ。

 ・・・しかしおかしい。

 偵察隊の報告によると確かにハンマー・オブ・ゴッドの艦隊は居た、しかし航路的に言えはレミア星系へ向かうルートだ。

 「これは、もしかすると偽命令でしょうか?」

 リユン元帥はエナジードリンクをすすりながらギャラクシーネットワークを眺める。レミア星系は皇国の手に落ちた、そうなれば次の星系ラスタバス星系のヴァリア共和国の首都惑星レムである。

 「・・・一本取られたな?」

 「今から急行してもせいぜい助けられるのは1億人程度です」

 「ロゼンダ級とササリッサ級を全部出せ!作戦変更!敵護衛艦を排除しつつ用意した爆弾を予定通りエンジンにぶつける!」

 この命令でロゼンダ級とササリッサ級はスクランブル、オロラ星系で止められなかった時の為にあらかじめ船員は待機していた。直ぐだった。さらにマイラはやけに非番の船を多く用意していた、ER-3000Cなども随伴する。

 ユリアスに飛び乗り、惑星レムへ急行する、レミア星系でハンマー・オブ・ゴッドは追い越した、ラスタバス星系へ飛べば帝国軍は虫の息、全く戦闘艦が居ないのだ。

 ・・・リユン元帥から帝国軍へ今回のハンマー・オブ・ゴッドの目標情報は行っているはずだ・・・!!

 サリマン運輸や帝国の商船達が頑張っているのは良く分かる。だがコロニーへ上げるだけだ、これでは根本的な解決策にはなっていない。

 「レミア星系にはまだコロニー自体は残っていたよな?」

 「残っています!しかし食料や医療物資を切らしております!」

 「地上から引き上げた住民はひとまずそこへ押し込め!C78の病院船に緊急物資を運ばせるよう指示してくれ」

 「了解」

 ・・・うちの船で何処まで引き上げられるか・・・。

 ロゼンダ級などのうちの貨物船が空中衝突覚悟の密集具合で一斉に大気圏突入していく、まさに圧巻だが、戦闘艦はやるべき事がある。

 「戦闘艦はコロニーをレムの衛星から引き剥がせ!」

 帝国軍には許可をもらってある、可能であればビーア星系のジャンプゲートまで引っ張ってこいと言われている・・・しかしそんな余裕は無い。せいぜい惑星崩壊に飲み込まれない範囲まで引っ張るのが精一杯だ。

 そこからは目が回るような作業、コロニーは全て範囲外まで引き剥がしたが、うちの艦隊だけでは護衛を処理しきれなかったようだ、もうこうなったらユリアスの主砲も使うしかない。

 ここに居るのは皇国艦とセレストスピアー級一隻だけだ。

正直勝ち目が無い、だが、アズランド新生帝国軍の損失はそこまで無い、皇国艦は頑張ったようだが同型同士では五分五分もいい所、だが護衛の数もかなり減った。

 「・・・メソポタニア級を突入させろ」

 「了解」

 皇国艦に偽装したと言うか、引き上げてそのまんまの本物のストーム級フリーゲート、その艦隊からメソポタニア級が一斉にオンラインになる、皇国艦、作りが悪いのか真相は不明だが、外部電源を接続すると相手側の電源が入っていなくとも遠隔操縦が出来てしまうようだ。それをルーガ達でもごく一部が知っていたようで、外部電源切り離し後は作戦通り戦闘機隊などが船をアクティブにした後ドッキングしていた戦闘機で脱出する、あとはストーム級フリーゲートなどの遠隔操縦モードでぶつけるだけだ、それに気が付いた皇国軍、もう遅い。

 メソポタニア級の大群は次々にエンジンに激突しエンジンの熱に焼かれ爆発していく、一度爆発すればもう連鎖爆発の嵐、ついにエンジンが壊れた、もうスラスターでしか動けない。

 ・・・なんとかなったか・・・。

 だがハンマー・オブ・ゴッドは主砲を放った、惑星レムの表面が溶けるように焦げたのだ!

 「・・・あの距離から!?」

 「それにしても何という威力・・・」

 何に対しても規格外、惑星レムは一瞬で環境が変わり、死の星となった。

 ・・・皇国軍・・・!

 ハンマー・オブ・ゴッドはまだ生きている。レムの惑星崩壊は成されていないのでコロニーをぶつけてレムと共に葬り去る事も出来ない、第一、もう手数は残っていない。

 皇国軍艦隊はハンマー・オブ・ゴッドを放棄して撤退を開始する。

 「帝国軍の発案通り、援護の海兵隊の突入準備が整いました、今すぐ接近後、作戦を開始出来ます・・・これさえ手に入れれば下手に皇国軍も我々に手出し出来ないでしょう」

 ・・・何か嫌な予感がする。

 手負いの帝国艦隊がハンマー・オブ・ゴッドを取り囲んでいる様子が視認できる。

 「カトロニコフ、ドーベック、ワトソン・・・何故皇国軍はこんな条約違反の兵器をこの場に残した?」

 「後日、回収する予定でしょうか?」

 カトロニコフがそう言えばおかしいと言う顔をする、そしてワトソンの顔が急に青ざめた、ドーベックもおおよそ察したようだ。

 「・・・皇帝陛下!今すぐ撤退のご指示を!」

 「全艦隊退避!帝国軍艦隊にも撤退を要求する!」

 新生帝国軍の船は全力回頭、全速離脱を開始するが、帝国軍は撤退をするつもりが無さそうだ、ハンマー・オブ・ゴッドの船体がどんどん膨れていく。

 ・・・これは・・・!まずい!

 「全員衝撃に備えろ!」

 それぞれがヘルメットを被りだす。被って直ぐに超新星爆発のような大規模な爆発により艦隊がラスタバス星系で塵尻になった。

 ・・・さて、どうなった?

 とりあえず、外の状況的に何処かの整備ドックに突っ込んだのはよく分かる。それも建造途中の船・・・・この形状から察するにMA30型重巡洋艦で間違えない、シン造船社の建造ドックか何かだろう。ゆっくり立ち上がる、ユリアスの船体の状況はエンジン損傷、航行不可だ、MA30型重巡洋艦に突っ込んでいる事により通信装置も軒並み喪失している。

 しかし、大した船だ・・・。

 楕円のようなスラスターフレームが衝撃から船体を守る構造をしている・・・おかげで船体に穴は開いていない様子、普通なら隣のER-3000Cのように船体が真っ二つと言う訳である・・・サリマン運輸のER-3000Cが紙風船のようにくしゃくしゃになっている、近くには折れた事務棟のような施設、そして周りにはレムから引き上げられたヴァリア共和国人の死体が浮いていた。

 ・・・恐らくうちの貨物船は一隻たりとも巻き込まれていないはず。

 まきこまれたとしてもほとんどが硬くて速いロゼンダ級とササリッサ級、宇宙災害程度ならまず沈む事は無い頑丈な船達だ、問題はコロニーや新生帝国軍の艦隊である。帝国軍艦隊は全滅だろう。

 ひとまず生命維持装置は無事みたいだ。

 ただ、乗員は全員未だ意識は無い様子だ、ひとまずは格納庫にES17戦術偵察機がある、流石に通信アンテナの原型は留めているはずだ。

 格納庫に行けばやっぱりES17戦術偵察機は無傷、今までガラクタに等しい扱いをしてきたコイツだが、コイツの長所は高速かつ、遠距離通信に長ける事、つまり電子装置が優秀なのである。

ES17戦術偵察機をアンドッキングして新生帝国軍のIFFを検索する、軒並み無事なようでなによりだが破壊された船も一定数ある・・・無理もないだろう。

 とりあえずシン造船社に助けを求めたい、そう思って造船ドックでドッキング出来そうな所を探す・・・しかし、サリマン運輸のER-3000Cが杭のように相当数突き刺さっている、ドッキング設備も軒並み動いていない、どういう事か・・・サリマンの船が天文学的な大当たりを引いていたからだ。この施設の発電設備をメインとサブ、両方破壊していたのだ。強引にドッキングするも、職員の死体だらけ、施設内の酸素は無い。損傷も激しく、隔壁閉鎖される間もなかったと言った様子だ。

 ・・・やっちまったな、サリマン。

 元を正せば皇国軍が悪いのだが、サリマンの船は大体余計な事をしでかしてくれる。

 人が居ないと分かった以上、もうどうする事も出来ない、建造途中のMA30型重巡洋艦の中でも完成にほど近い船を盗んでユリアスを引っ張る他無いだろう。

 ユリアスに一度戻ればある程度意識を取り戻している人達が出てきた。

 「ひとまずはわが軍の大部分は健在、独自判断でリストーン星系を目指しているが、この船は・・・エンジン損傷で航行不能だ、幸いにもここはシン造船社の軍用造船所、MA30型重巡洋艦でこの船を引っ張ればなんとかなるだろう」

 「まずは生存者の捜索から始めましょう、最悪は独断で持ち出しも考えねばなりませんが、黙って拝借する訳にもいきません」

 「そうだな、人を手配してくれ」

「はっ!」

 そうして手配された海兵隊、乗り込むと言っても動く船はES17戦術偵察機しかない、海兵隊を機体に張り付かせドッキングポートを目指す、このドッキングポートは小型と中型兼用の物、そこに降り立てば閉まりかけの隔壁をひたすら潜っていく、職員の死体があちこちに浮いていた。

 「・・・こりゃ全滅だぞ?」

 「隔壁はどれも閉まりかけと言う事は閉めている最中に予備電源まで喪失したと言う事だ」

海兵隊員はそう会話しながら色々見て回る、生存者など居ない、管理棟へ上がるエレベーターのドアはシャフト側へドアが吹き飛んでおり、シャフトからは宇宙が見えた。

 「さて、向こうはどうなっているか・・・」

 「結果は同じな気がしてならないが・・・」

 ER-3000Cの潰れ具合がいかに強い爆風であったかを物語っている、貨物室がぺしゃんこ、それが管理棟にへばりついている。

 ・・・流石は管理棟と言った所か・・・。

 管理棟側の予備電源は生きている、この事から大抵何処かにあるステーション整備用のエアロックが機能する・・・はずだ。

 「エアロック!ありました!」

 「パスが無いと入れないか・・・」

 「それはこちらにあります」

 「準備が良いな・・・」

 「諜報部隊では初歩の初歩です」

 諜報部隊が持っていた複数枚のIDパスのカード、それをかざせばエアロックが解放される、皇国とは違い、セキュリティはしっかりしている、元とはいえ目の前の人達も帝国軍人だ、この辺の設備の使い方を熟知している。

 中に入れば酸素供給は安定している、中は怪我人が大勢だ、死者も相当数居るようだ。

 「て・・・帝国軍の救援部隊が来たぞ!?」

 「助かった!!」

 中のシン造船社職員はうちの海兵隊達を見て安心する、それは何故か・・・アズランド新生帝国軍の制服は装備も含めてオヴェルツィッヒ帝国軍のままだからだ。

 「・・・こっちも助けて欲しいんだが」

 「ともあれ、ユリアスさえ引っ張り出して後は航行用のエンジンさえ調達出来れば彼らを助けたも同然です」

 「・・・そうだけれどさぁ」

 「とりあえず、我々は現状把握に動きます」

 「頼んだ」

 海兵隊がそれぞれ分かれて負傷者の状況などを確認して回る、その間に管理棟で一番偉そうな人を探す、現状候補は6人、彼らが言うにはさらに上が居るようだ。

 「・・・最近我々の船をサルベージして使う民間商船会社の方でしたか・・・妻や子供がそちらで救助されている事を願うばかりです」

 「コロニーに居住しているのであればおおよそ無事だろう、しかしコロニー自体をレムの衛星軌道上から外してしまったせいでコロニーの居住システムが機能しなくなる、ひとまずは帝国側とリストーン星系へ住民を退避させる流れになっている」

 「母星のレムは・・・?」

 「・・・惑星崩壊は免れたが、テラフォーミングで環境再構築をしなければ再び暮らせる環境にはならない、引き上げが叶ったのもたった5億人だ」

 「惑星破壊兵器が投入されたと聞いておりますが、なぜレムはスライパーのように粉々にならなかったのでしょうか」

 「・・・有効射程に届く前にうちの私兵がエンジンを全部やったんだ、だがうちにはアレを破壊する手が無かった・・・この惨事は惑星破壊兵器の自爆によってもたらされた大爆発・・・もう少し早く気が付いていれば・・・」

 「・・・そうですか、では、こちらに」

 6人の何らかの主任は大きなサーバールームに俺と付き添いの諜報部隊を入れる、そして制御コンソールからセキュリティを解除し、サーバーから記録媒体をどんどん抜き始めたのだ。

 「ひとまずこれを」

 「・・・これは?」

 「当社で今まで開発してきた船の設計や試作データです・・・当社はこれを貴殿に託すべきでしょう」

 「そんな事すれば貴方たちはただで済まないのでは?」

 「・・・帝国軍にはご内密に、それに我々も祖国が無い今、無職も同然です」

 「我々が今欲しいのは下で建造していたMA30型重巡洋艦の現物が2隻だけ、建造途中でも後を引継ぎ完成させて帝国に納品させますので少しの間拝借したい」

 「2隻と言わず、これで何隻もお作りなさってください、悔しいですが今の帝国軍も貴方の私兵に数、質共に到底及びません、これも人類存続の為です、当社の資産、全てお持ちください」

 「・・・分かった」

 目の前の主任は記録媒体を受け取った瞬間に安心したような顔をする、残りの記録媒体は諜報部隊の手に渡った。

 「それでは、上司の元に案内しましょう・・・ここはついでに寄っただけ、生命維持の電力も圧迫しているのでここの電源はもう落としてしまいましょう」

 目の前の主任はサーバールームを出てさらに上へ、最終的に所長室に行き着いた。

 「リ・ソルジュン社長、帝国軍の救助部隊の方々をお連れしました」

 「何と!この状況で助けが!?・・・ん?貴官・・・階級章も無いようだが?」

 丸々太った社長、名前の系統的に凄く聞き覚えがある。

 ・・・レムはリユン元帥の生まれ故郷だったりしないだろうか?

 所長室にはこの造船所の所長や副所長などが居る、そして民間人が3人居た。宝石まみれの女性、見るからに面倒そうなチャラい若者、現状に恐怖している少女・・・たぶん家族だろう・・・社長特権という奴かな?ソルジュン社長はまず大喜びするが、俺を見て次第に本当に救援部隊かどうかを怪しみだす。

 「細かい事を気にしている場合ではございません、我々の迅速な退避の為にも建造最終段階のMA30型を帝国軍に2隻譲渡願います」

 「構わん!早く助けてくれぇ!」

 ソルジュン社長に泣きつかれる・・・凄く重い・・・物理的に。

 「・・・これでよろしいですね?」

 「助かった」

 それから主砲未搭載のMA30型重巡洋艦2隻でユリアスを引っ張り出してユリアスを強引にメンテナンス用エアロックに接続、生存者の退避を行ったのち、MA30型重巡洋艦の牽引でユリアスはリストーン星系へ帰還する航路を取った。

 「・・・貴様!!帝国軍人では無かったな!?」

 「私以外は元帝国軍人です」

 ・・・流れで艦橋までついてきたこの社長、メンドクサイ。

 所長室まで案内してくれた主任クラスの人達もユリアスの設計に興味津々だ。

 「エルーラの貨物船がズタズタになる威力でステーションに激突しても外郭フレーム変形だけで済むとは、噂以上に大した船だよ、父さん!」

 「シュンエイ!関心しとる場合では無いわ!帝国軍と聞いたから船を用意させたのに!」

 「助かるんだから良いじゃない?それより製造は何処なんだ?前時代的なエルーラがこんな船作れる訳が無いよね!?」

 「当艦はステラー王国軍主力戦艦、セレストスピアー級戦艦です。その中でも量産一番艦となる船、名称はユリアスと申します、エルーラ、ズァパリ民国、元帝国軍の技術者がステラー王国に技術指南を行い建造されました」

 「噂のステラー王国艦か・・・なるほど、ズァパリ民国も加わっていれば納得の硬さ、素晴らしい」

 チャラ息子は目を輝かせる、意外な事に造船にかなり関心があるようだ、社長の息子にしては珍しい。こういうタイプは毎日遊んでいるクズ息子になるのが大体慣例なのだが、彼なら時期シン造船社も安泰だったようだ。誠に残念でならない。

 ひとまず、ユリアスはVIPエリアに入れる。ここにはロゼンダ級巡洋艦が入っているだけ、ツェルナ、サシリア、アイリス、シルヴァ、リーリア、エルゼ、ローラ、マイラ、そしてうちの主力幹部にお飾りの帝国軍人が沢山待ち構えていた。造船会社の家族相手にしちゃ、出迎えが豪勢過ぎる。

 「皇帝陛下、ご無事でなによりです」

 「・・・皆、心配かけたな」

 エルゼがまず目の前で一礼する、その後ろでは抱き付こうとするシルヴァとリーリアを止めるローラの姿がある。民間人は膝をついて頭を下げ、軍人は敬礼していた・・・この迎えの相手は俺だったわ。

 「これはエルゼ姫!よくぞご無事で!」

ソルジュン社長が俺とエルザの間に立ち、エルゼ の前に膝をついて手の甲にキスをする、エルゼの顔はそれはもう酷い、貴様に用は無いと言う顔をしていた。

 「・・・これはソルジュン社長、ご無事で何よりです」

 エルゼはすっと手を引き抜き俺の元へ詰め寄ってこようとする。

 「いやいや!アグランダー王国の姫君とあろうお方がかたや一国の商人などと!?そう言えばご結婚がまだでございましたな!?我が息子のシュンエイなどいかがでしょう!!」

 ソルジュン社長はさらに間に居座る、俺としては皇帝の座を他人に押し付けるチャンスではある、大変魅力的だ。

 「・・・そのお方はアズランド新生帝国のファルマン・ネドリー皇帝陛下でございますが?わたくしはアズランド新生帝国の皇后、エルゼ・ネドリーですが、何か?」

 ・・・あー・・・エルゼもそんな顔するんだ・・・。

 エルゼの非常に不愉快そうな顔、わたくしと愛しき皇帝陛下の再開に水を差すんじゃねぇと言う本音がひしひしと伝わる、ソルジュン社長はこんな奴が皇帝陛下・・・?と疑いの目でこちらを見てくる・・・残念ながら、皇帝なんだ、すまんな。

 「まずは父の無礼をご許し願いたい、エルゼ皇后陛下」

 「お父上の教育はしっかりなさってください、シュンエイ殿」

 邪魔者を見下しながらエルゼは俺の腕に絡みついた、そしてリユン元帥の前に連れて行かれる。

 「皇帝陛下、ご無事でなによりでございます」

 「惑星レムの件は一歩及ばずだった」

 「いえ、皇帝陛下がご無事な事が何よりでございます」

 「ひとまずこの船の避難民の手当をよろしく頼む」

 「今すぐ衛生兵を手配します」

 「それと、ツェルナ、シン造船社の社長一族を迎賓館へ頼む。ルーガ、後で諜報部隊から話がある、内容次第ではシン造船社と直接話を付けてもいい」

 「承知しました」

 「了解」

 「カトロニコフ、わが軍の損害は?」

 「はっ!FT14型戦艦5隻、MA30型重巡洋艦7隻、ZB8型フリーゲート28隻大破、スーパーツァーリー8が68機、ギャラクシーファイター44機、F405戦闘機30機損失、ストーム級フリーゲートはハンマー・オブ・ゴッドの自爆に巻き込まれ15隻の損失です、負傷兵は約1万7千人、総死者数は468名でございます。」

 「・・・よくその程度で済んだな・・・?」

 「我々は一度死んだ事がある兵でございます・・・ですが、航行は可能でも損傷はかなりの物です・・・この調子で皇国軍ともう一戦交えると勝ち目はありません」

 「・・・しばらくはオロラ星系に兵を集中させるべきだな」

 「・・・ひとまずはメソポタニア級爆弾の機雷源を整備しようかと思います」

 「・・・それは機雷と呼べるのか?」

 「半ば特攻兵器ゆえ、色々な解釈が出来ましょう、中型整備ドックに余裕はありますのでゴミ処理にも丁度良い、メソポタニア級の制御基盤も未使用品が多数ありますのでこれを改造していくらでも修理が可能です」

 「・・・後で司令部に顔をだすよ」

 「お待ちしております」

 盛大な帰還式典のような場から抜けだしてひとまずは休息を取る。まだ人間族の国家は23もあるとはいえ、もうビーア星系に王手がかかっている。ここにハンマー・オブ・ゴッドをまた持ち込まれる訳にはいかない。

 「メソポタニア級の修理が終わり次第、セルルド星系へ持ち込みます、我々はその間に囮となる要塞ステーションをセルルド星系内に築き上げます」

 「オロラ星系のガス惑星ルチナ衛星上に大型ステーション群と工業用プラットフォームを建築予定です、さらに建築ドローンの増産が必要です」

 リユン元帥と、もはやなんでも大臣のマクシミリア交通大臣が色々な計画を伝えにやって来る。ステーション建築は交通局の仕事なのかね?

 ひとまずはリユン元帥の言う通り、皇国軍の遺産を最大限利用してオロラ星系以降の星系を死守しなければならない。幸いにも船の形をした何かは数字化出来ない単位で存在しており、元々これらは遠隔操作に適している。人類は足らない兵力をクローンで解決する方針だが、新生帝国軍はあくまでも遠隔操作で解決しようと思っている・・・その為の施設こそ、セルルド星系に建築予定の要塞ステーション、ここにはストーム級を改造した艦船爆弾の母艦を配置、そしてサラマンダー級航空母艦を30隻用意する予定、要塞ステーションとしては規模も最低限クラスだが防衛設備として中古のHT702主砲をかなり多めに用意してある。そして回りを帝国軍の軍艦の残骸で囲む、この中には砲が使える残骸も多数ある。

 ・・・そこで、これの出番だ。

 リユン元帥が持ってきた大きな基盤が入った袋を見る。勿論これはごく一部、これを組み合わせたサーバーみたいな箱がメソポタニア級を動かす基盤となっている、AIチップさえ組み込まなければ暴走する事も無い。これらはマズーラ星系の皇国ドロイド艦隊の工場跡地で大量に入手出来る、これを組み合わせて帝国艦の主砲操作を遠隔化しようと言う物、その運用を担う設備が要塞ステーションに組み込まれる、建築期間は3週間と脅威の短さ、その後は拡張を重ねてリストーン星系にある要塞ステーションと同等の規模にする計画だ。

 一方で難民受け入れがだいぶ苦しい。食料事情はバーボン星系が非常に頑張っており、惑星3つ分の非常食工場が出来た。通常食品工場はまだまだ未整備で、工業地帯は銀河最大級の工業ステーションが出来た。工業ステーションはコロニー以上に大きくなるが、半径80kmの大きさともなれば物流管理と交通管制が手に負えなくなる。4層のプラットフォーム集合体の下にかなりの大きさの倉庫、物流ステーションを組み込んである、勿論鉄道網を張り巡らせてある、居住人数も居住特化コロニーの比にならない規模で40億人程の難民はそこで職に付く事が出来た。だが職が無い難民が圧倒的でかなり困っている状況にある。今後の為にもかなり過剰なステーションを用意する必要があった。その為のオロラ星系進出である。もうサルベージ船団は大忙し、適当な船でリサイクルプラントを引っ張りながら使えるメソポタニア級と使えないメソポタニア級、及び民間船を選別している、モジュール輸送も大忙しだ。

 相変わらずの難民の数・・・。

 「・・・食料供給が間に合っていない・・・ですか・・・」

 高級セダンは難民に囲まれている、殴る、蹴る、色々されているがこの車は防弾車、その程度では壊れない。

 ローラは溜息をつきながらクラクションを鳴らしっぱなしで徐行運転させる。

 「こうして暴動を起こすから食料供給が滞るのに・・・全く理解できません、この恩知らずどもが・・・」

 暴動を起こしているのは服装の良い人達、恐らくは金持ちや権力者が中心である、毎日魚か携帯食料、おまけにここは道路なので水から何まで全て配給制、トイレは1kmに1個の工事用仮設共トイレ、シャワーは5km区間に制限付きの仮設の物、非常に劣悪なのは分かっている、もう我慢の限界と言う訳だろう。

 高速道路のあちらこちらには破壊されたトラック、もうセントラル・プロムナードで貨物トラックがまともに使えた物では無い状況に陥っていた。中央区画へは車両で出入りする事は出来ない、貨物列車が頑張っているが本数には限界がある、中央区画への物資輸送は小型機に頼る他無かった。勿論既存の住人の生活が優先、しかし中央区画のスーパーの品薄もかなり、本当は中央区画の人達も暴動を起こしたい、残念ながら権力者は軒並み研究区画から外側に居る事も知っている、相当な我慢をしてもらっているのだ。

 何処も皆急いで建築してはいるのだが・・・。

 建材が無限であるからこれだけで済んでいる。本来コロニー1つ建築するのに3~4年は平気でかかる。本来ならば国家として破綻しているレベル、現にフルジア王国がそうなっているからだ。もう受け入れ拒否されている。


 それから一カ月が過ぎた。セルルド星系に防衛陣が築けた、銀河議会では皇国陣営に侵略行為と糾弾されているが、他の種族はもう言わせておけと呆れている。

 「薬や食料で援助が欲しければいくらでも言うと良い・・・流石に今回ばかりは我々他種族にも仲裁に入る力が足りないのだ、それにしても母星を持たずによく難民受け入れを継続しているようだな?どうしている?」

 エルムズデブラ首相が会議終了後にそんな事を言ってきた、頭の良い爬虫類族でもお手上げの状況であるのはよく分かっている。

 「新生帝国は建材が無限でありますので」

 「エマンクリシット皇国・・・元々巨人族でも大国意識が強い、それは帝国も同じだがそれを抑え込んでいたのは獣人族連合、3大銀河派閥があってこその均衡を保っていた、だがドロイド艦隊のせいでパワーバランスは皇国に傾いてしまった。正直、もう銀河議会でどの種族が何を言っても人間族が悪の象徴と言う風潮になってしまっている状態である。だからこそハンマー・オブ・ゴッドが動かせたらしい、この会議も皇国の権力表明の場だけに設けられたような物、そんな事の為に我々を呼びつけおって・・・皇国派閥の中でやれば良い物を・・・チッ」

 ちょっと首相らしからぬ言葉選びもあるが、それだけ他の種族も内心頭に来ていると言う事だ。

 「そもそもハンマー・オブ・ゴッド、あと何隻あるのでしょうか?」

 「13隻もある。そもそもリストーン星系にあった惑星を2つ粉砕した事が銀河議会で使用禁止の兵器にされた理由、それが大体4百年前、銀河大戦の時代、この頃人類はまだ宇宙へ出て間もなく、ジャンプゲート技術も無しに他の銀河に植民地惑星を置いていた時代、他の種族と遭遇する事無く勢力を広げていた時代だった・・・まだそんな骨董品を後生大事にしまっておったとは・・・」

 つまりは人類はこの頃から皇国軍と戦争をしていたようだ。

 「銀河大戦の原因は植民地開拓をしていた皇国と開拓中だった人類が鉢合わせた、皇国軍が無差別攻撃を仕掛け、人類はこの時侵略者と判断したのが始まり、その後戦争は泥沼化し、皇国軍は消耗戦を強いられた、その打開策として人類掃討作戦が決行された、この時に使用されたのがハンマー・オブ・ゴッドと言う惑星粉砕兵器、皇国はジャンプゲートを建造してリストーン星系にこれを送り込んだ、人類はこれに成すすべなく植民地としていた惑星の一部、そして母星の地球を粉砕された、そしてこの状況の仲裁に入ったのが皇国以外の派閥である」

 大体の他種族の交流関係の歴史は知っている、爬虫類族は面倒見が良い上に頭が良く回る。人類が初めて遭遇した異星人は巨人族、最初は宗教の押し付けをしに来たようだが、その手の奴はどの種族であろうとも門前払いしがち、徐々に関係がこじれて行き戦争に至ったが、当時の人類の船では勝てる相手でも無かった。母星を失った人類が複数の国となった後、オヴェルツィッヒ帝国と接触し、銀河共同体との関係改善を行ったのがシーモア共和国、豊富な援助によりなんとか立て直した人類を銀河議会に呼ぶ事が出来た。勿論シーモア共和国だけが銀河共同体に引き入れようとしていた訳ではない。実はその裏でもかなりの種族が新しい種族である人類の為に様々な国や種族が連合軍を結成し、皇国に戦争を仕掛けた。これが銀河目線で言う銀河大戦である。現状友好関係にある種族もかつて共に戦ってくれた種族なのである。ちなみにその後、銀河議会で正式な国家として承認され、銀河大戦は終わりを告げ、そしてジャンプゲートが人類の管理する星系に整備される事となったのだが、銀河的には相当数の資源豊富な未開の地を領有しており、余りにも勢力が大きかった、その為皇国は事あるごとに領地を奪う為人類に戦争を仕掛けようとしていたのである。この時から第三勢力になっていたのだ。

 「・・・しかしあの時共に人類を認めた種族はほとんど皇国軍ドロイド艦隊に滅ぼされてしまった、あとは魚人族・・・彼女らが生きていれば・・・」

 「彼女ら?」

 「魚人族はズァパリ民国と同じ女性国家、水棲の・・・人間族的に言えば人魚とか言う存在、知能も我々を上回る、ジャンプゲートを開発した国である事は知っていますかな?」

 「それはもう・・・我々が目指していた地です」

 「あとはかの者達が力になってくれれば最低限、皇国に対抗できましょう、とはいえ、新生帝国の領地から先が最も近い、我々は新生帝国の力量に頼る他ありません」

 「・・・早めにブリッド星系の鎮圧に努めます」

 エルムズデブラ首相は非常に面倒な事になったと言う顔をしながら自分の国の船へ目指してとぼとぼと歩いて行った。

 回りを見ても様々な種族が相当苛立っている様子だ、流石にオヴェルツィッヒ帝国皇帝は来なかった、人類も大多数が出席出来ていない。

 ・・・戻ろう。

 自分もプリズムライオッド12を目指した。いつも通り、フルジア王国政府とステラー王国艦隊と一緒に来ている。今日はプリズムライオッド12なのはあくまでも銀河議会の場では皇帝旗艦がプリズムライオッド12になっているからだ。それにステラー王国のオーベルトの隣に同型艦のユリアスがいるのもあまり良くはない。ソデス国王は隷属国家でも良いと言う姿勢だが、建国自体はステラー王国の方が先である、さらに言えば圧倒的に歴史の長いフルジア王国が事実上の隷属国家になってしまっているのもかなり大問題である。背景には難民による国家崩壊があるようだ。やはり経済的打撃の影響で支持率低迷に陥っている、新生帝国も国として破綻しているけれどな?

 セントラル・プロムナードに戻ればある民間人が執務室に居た。

 「いやー参った、この私が鉄道でしか移動出来ないとは」

 「見ただろ?うちのリムジンの悲惨な姿を・・・あれでも防弾らしいんだが、まともに移動したけりゃ外か鉄道しかない・・・で、何の用でしょう・・・リ・シュンエイ殿でしたっけ?エルザ皇后についてでしょうか?」

 「いえ、皇后陛下に手を出す気はございませんよ!・・・少しご提案がございまして」

 「提案?」

 「ええ、まずは皇帝陛下にお礼を申し上げたい、我が社の社員、全員ではありませんが、おおよそ半数程を救い出していただき誠にありがとうございます、そしてこの御身、是非とも皇帝陛下のお役に立ちたいと思い、一つ、許可と支援を頂きたく存じ上げます」

 「皇帝の座を代わってくれるのか?」

 「・・・なんと恐れ多い・・・いえ、我が社、シン造船社にはまだ技術者が大勢生存しております、つきましては我が社の技術、アズランド新生帝国軍のお役に立てたいと思い、バーボン星系に我が社の工場の建築許可、そして建材の支援をしていただきたく、こうしてお願いに参った次第でございます」

 シュンエイは土下座をして頼み込んでくる。

 「・・・確かに帝国艦隊の盾となるMA30型重巡洋艦が製造不能になったのはオヴェルツィッヒ帝国軍にとってはかなりの痛手、多少なり帝国軍にも製造しなければならない」

 「勿論そちらの課題もございますが、まずはアズランド新生帝国軍の軍備増強が最優先でございます、連合諸国への軍備増強も同時に向上させれば、戦場が行き詰まった時の後方援護も期待出来ると言う物でございます」

 「新生帝国としては好きにして構わない、詳しい話はエルムネス造船会社も仕切るルーガ ドミットラーと詰めてくれ」

 「ありがたき幸せ」

 シュンエイはルンルンで立ち上がる。

 「・・・で、そんな話をソルジュン社長抜きでして良いのか?」

 「父上を通せば皇后陛下が黙っておりません、それに父上も良い歳です、この際会社を継承するのも良い機会だと思いまして、それに新生帝国の技術は大変興味深い、是非とも勉強させていただきたく思います」

 「・・・帝国の貴族は私腹を肥やしてふんぞり返っているとは聞いていたが・・・」

 「船には様々なロマンが詰まっています!いつかは自分で船を一から作り上げたい、そう思っておりましたが・・・セレストスピアー級!あれは大変素晴らしい!まだまだ知らぬ船の世界があるのならば私は全力で探求したいと思います」

 「見た目に反して大した奴だな・・・今後に期待するよ」

 「失礼いたします!」

 シュンエイは一度頭を下げて出て行った。

 「・・・変わったお方ですね」

 ローラが目の前に入れたての紅茶を置いた。外からは鼻歌とスキップするような足音がする。

 「あれだけトップがぶっ飛んでいる方が、会社はよく成長するんだ」

 ずずっと紅茶をすすって溜息、のちに新生帝国の一大造船メーカーとなるのはしばらく経った先の話だった。

 ・・・彼らは優秀だった。

 それからバーボン星系にシン造船社の造船ドックが出来たのは2カ月先、一度に200隻が建造可能な巨大造船所、エルーラ社の造船所なんか可愛い物としか言いようの無いかなりの巨大造船ドックがバーボン星系のガス惑星イペの衛星軌道上に作られた。それに関連するコロニー類もイペの衛星軌道上に整備、その2カ月の間にも新型のMA40型重巡洋艦の設計が進められていた。

 ・・・元々は・・・。

 海洋船舶の形状をしているデザイン、しかしデザインを一新、スラスターフレームを追加し、MA30型重巡洋艦では船体組みつけだった反エネルギー弾装甲を可動式に、HA900長射程主砲を船体に4門内臓とした、エアブレーキのように反エネルギー弾装甲を正面展開出来る事や攻撃を受け流しながら正面に攻撃を放つ、在来の帝国艦には無いスーパーシールダーという役割を新たに生み出したのだ。代償として後方火力はHT702主砲が2基だけと防衛設備が乏しい結果となったが、それはZB8型フリーゲートで賄うと言う思い切りの良さ、エンジンはセブンスターエンジンを2基、ジェネレーターは長射程主砲用の大きい物を搭載している。今は在庫過剰なので在庫品を充てているが尽きた時用にセブンスターエンジンを国産化する為に研究解析を進めているようだ・・・まだセルルド星系にしょうもないくらい落ちているのだが・・・そんな新型艦の試作艦をサクッと作って持ってきたようでカトロニコフとドーベックをうならせている。

 「・・・もう少し早ければ、帝国軍もここまで追い込まれる事は無かった事でしょうに」

 「ともあれ、わが軍では損失が出やすいストーム級フリーゲートと共にするのには大変使いやすいかと思います」

 「左様、だが、硬い船を混ぜこんでも一定数は損耗を出してしまう、無血には出来ないのは十分承知だがこれは戦術的常識を大きく変える事が出来るであろう」

見かけは次世代型新生帝国艦と言った様子だ、帝国艦の面影こそあるが、ステラー王国艦とは言えない、そしてズァパリ民国艦のような特徴も無い、完全に新生帝国の船と言えよう。

 性能は装甲が多い分、やはりセレストスピアー級にやや劣る、しかし帝国艦としては異様な速さを誇るであろう。帝国軍が最も欲しかった船だ。

 「・・・これで皇国を・・・」

 「そう早まるな、まずは性能評価からだ」

 だが、カトロニコフの評価はまぁまぁだった、それはワトソンもそうだった。

 「HA900主砲を全く活かしきれていません」

 MA40型重巡洋艦に足りない物、火器用ジェネレーターだった。

 つまりどういう事かと言えば容量不足で威力が半減していると言う物、オキタ艦隊旗艦のセレストスピアー級は中型艦用の火器用ジェネレーターをさらに追加で装備している。そもそもが改造品と言う所もあり、火器用大型ジェネレーターを実質2基積んでいるスペックになっていた。だがMA40型重巡洋艦は戦艦より一回り小さく、防御に振る分、増設も出来ず総負荷に余力が無いようだ、これなら正面は在来のHT702主砲に換装した方がまだ使いやすい、良い船っぽそうだが現場の意見は相当厳しい・・・セレストスピアー級の設計が優秀過ぎるのは現場経験者が設計に携わったからなようだ、うちの設計陣も伊達に徴兵と言う形で一度死んでいる者達では無いと言う事を意味する。

 「これならば、アルパ級を量産し、セレストスピアー級と中速砲艦部隊を編成した方が良いかと思います」

 「・・・新生帝国軍ならそうすべきではあるのだが・・・」

 「・・・そう言えば、この船は帝国軍向けでしたな?」

 「フルジア王国軍も含まれるぞ、カトロニコフ」

 「ですがどちらにせよ、人類が皇国軍に完全に対抗出来る船でなければいけません」

 「・・・それもそうか」

 各コロニーの建築の様子のレポートを見ながらそう答える。

 「本日の評価につきましては、リユン元帥を通してシン造船社に伝えます」

 「そうしてくれ」

 カトロニコフ大将達が敬礼をして執務室を出ていく、現状、皇国軍は皇国軍ドロイド艦隊に苦戦している、きっかけはミヴェルマンの艦隊がドロイド艦隊に追われた事、その時にオキタ大将には建築中の皇国軍軍事要塞をかすめるよう指示したのだ、セレストスピアー級フリーゲートは足も旋回性能も良い、勿論皇国軍艦隊にも集中砲火を食らうのだが、それがドロイド艦隊に皇国軍を敵認識させた、なお、皇国軍には一切手を出していない、皇国軍に押し付けて引き付け役をしたセレストスピアー級フリーゲートは全て無事に離脱、皇国軍に新兵器の性能と自らが生み出した失敗と言う2つの恐怖を打ち付け、なおかつ皇国軍の足止めに成功している。

 その間に作るべき物はおおよそ完成を迎え始めていた。建築ドローンが余り始めるが、まだやる事がある。しばらく何も建築は計画していなかったリストーン星系にシン造船社の造船ドックをもう一つ増やす計画だ。これによりさらに難民が職に就けると言う物、さらにブリッド星系にも色々なコロニー類を建築する為の計画と準備を進めている。ブリッド星系のリサイクルステーションは既に工業用プラットフォームに工業モジュールを制作するユニットを作り始めている。組み立ては完全制圧後だがバーボン星系側のジャンプゲート脇に完成したユニットは全部置いて置く、後は運び込むだけ、もし不足の事態が発生してもバーボン星系で運用も計画出来ている。そのつもりでモジュール生産をしている。そしてフランクリン大将はジャンプゲートからほど近い惑星リズのドロイド艦隊造船所を制圧した。残骸の壁ドームは相変わらずらしいが、新生帝国軍にとってもセーフティドームになっており、この調子で行けばリズにも要塞プラットフォームが建築出来る状況、なにより、惑星リズは居住可能惑星である・・・残念ながら酸素が少し薄く、赤道付近以外は動植物も居ない極寒の地ではあるが、赤道付近であれば暮らせなくもない惑星である、赤道付近の大気温度は平均5度からマイナス20度前後、少し暮らしにくいのでマシにするにはテラフォーミングするしか無い。

ドロイド艦隊も降りれば凍り付けなので資源採掘は行わなかった様子とレポートもある。

 ひとまずは一大リサイクルプラント地帯の完成、皇国艦の在庫はほぼ無限と言っていいが正直要らないので金属資源になってもらうしか無い。

 しかし、時間稼ぎはいつまでも出来る訳じゃない。

 再び誰も居なくなった高速道路、前線開通となった訳だがここに居た人間達はどうなっているか?移送した先で同じ生活をしている。建物はまだまだ建設途中だし、更地の段階で放りこんでいるので穴倉住居を掘られては立ち退きと入居を繰り返している。後は各自が築き上げたクレジットで大体経済が回りだすが、まだまだ民間商船の新たな商路とはならない、補給艦はスクラップビルド、割り当ての無い軍人達には食料輸送に従事してもらい、兵力も確保している、しかし国の財源が無い、お金が回せない。

 そう言えば俺の回りも最近静かだ。

 いつもベッタリなのはローラだけ、そんな彼女はカトロニコフ大将達が口にしていた紅茶のカップを片付けている。勿論やましい関係に無い。普段通り、侍従長の仕事をしているだけだ。どちらかと言えば執事であるのだが。

 ・・・国家予算がたったの300兆クレジット。

 新生帝国国内のニュースは大概不安を煽る皇帝批判だ、何でこんなに少ないか、アグランダー王家の遺産と俺の貯金だからである。無から始まっている国家運営、財源がどうにもならない点がある、唯一外貨獲得出来る企業はネドリー運輸、シルバーロッド整備工場、新生帝国軍に来る帝国からの協力依頼の報酬だけである、現状自給自足が精一杯なのである。

 国民の前に立つのはエルザ単身、アグランダー王国時代から知る国民もほとんどだ、国と言えたものでもない現状に対して不平不満も中々だが、彼女はあくまでも皇后であり、皇帝では無い、実際皇帝である俺の顔は国民でも知る物の方が少ない、普段から軍と公共関係を彼女の後ろでコソコソ担当しているからだ。エルゼには精神的負担もかなり大きい、その為シルヴァとリーリアもエルザの補佐として支えて貰っているのであった。

 「どうにかしたいが・・・俺の担当は浪費だからなぁ・・・」

ニュース映像を見ながら机の周りを眺めるも、特に生産性の無い軍事周り、完成すれば何かを生み出す公共事業達のタブレット端末の山しか無かった・・・俺には無理だ。

ー銀河の常識ー

ヴァリア共和国

大韓民国が日本国と共同で開拓した元植民地国家、地球のアジア圏の人達が多く移り住み、技術の最先端の星系としても有名である。

地球消滅後もアジア系移民の受け入れ地として機能し、シーモア共和国の興味を引く製品も多かった事から人類にとって銀河議会加入の大きな足掛かりとして栄えた。

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