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この宇宙の片隅に  作者: verisuta
ビックカンパニー
13/18

末代の花

人類にとってはあまり良い印象は無いが、ズァパリ民国人にとっては最後の一大イベントである。


ー惑星リズ建国記念博物館の収蔵品ー

・C78多目的輸送艦

帝国スペースクルーザー製の大型輸送艦。ER-3000シリーズ同様にバリエーションは多種多用。民間型はLE78だが高額、重装甲で船速と貨物容量がER-3000シリーズに劣る為帝国領内での運用数はそこそこまぁまぁと言った具合。


・RB26迫撃戦艦

帝国軍ヴィーゲーコフ造船局社製の特型戦艦、いわゆる迫撃砲のような運用がされている。

侵略戦争後に対惑星粉砕兵器として専用に開発された物の、のちに銀河議会にて惑星粉砕兵器の使用が禁止された事により存在意義を失った為、広範囲攻撃艦として設計を変更し、現在に至る。

人類が誇る最大火力艦であり人類が保有する最終兵器でもあるが、その分製造も維持も一筋縄ではいかない為、10隻が生産された。


 「ズンドラ王国が皇国に宣戦布告・・・何をしたのやら」

 「うーん?私達としてはぁ・・・食べられる脅威が減って嬉しいんだけれどもぉ・・・」

 いつもの事務所、部屋にはミヴェルマンが居る。ツェルナもサシリアも大きくなって膝の上にはもう二人同時に座れない。俺の所に遊びに来るのは相変わらずだが、最近は人間族のゲーム機に熱中していた。

 ・・・学校とかは無いのかって?教育もお世話係の仕事なのである。

昆虫族の主要種族であるエルヴァーニ属、人類的に分かりやすく言い換えれば大アリ族は平民家系であってもいわゆる王族と変わらない独特の家庭文化がある。まず最初に生まれる生殖能力を持たない労働者は母の親、つまり祖母の労働者が教育を施す、そして成人した労働者は母と共に会社を起業、ないしは実家を次ぐ、この時お世話係をしていた祖母達は寿命を迎えるのだ、その後に生まれる王子か王女、または両方は母親が指名したお世話係が務めるので、そもそも学校と言うシステムが存在しない。ツェルナ達もいわゆる箱入り娘と言う訳である。同年代との交流は勉強の後の自由時間、特にツェルナとサシリアは仲が良い、幼馴染の関係だろう、だが王族の実質姉妹であるシリウスの一匹狼っぷりは悩みどころ、サシリアもあまり仲良くしようとも思わず、ツェルナが忙しい時は決まって俺にベッタリなのもまた悩みの種である・・・サシリアは母親同様に人見知りが激しいのだ。

 ミヴェルマンが今日は事務所に居るのは定休日だからだ。うちは年中無休のブラックだが、ミヴェルマンはツェルナの為にも他以上に休まなければいけないのだ。薬は飲んでいるとはいえ労働負荷が寿命低下に繋がりやすい為抑制がかかっている。振っている仕事も採算が取れる物なので問題ないだろう・・・そのかわりうちが大赤字なのだが。

 ニュースにもあるズンドラ王国、人間族的に分かりやすく言えば、オオアリクイの民族、そしてズァパリ民国の宿敵であるのだが、ズァパリ民国が存続していると言う事は隣接している国家と言う訳でもない、オレスト星系までの間にいくつもの獣人族国家が存在し、それらが緩衝材の役割を持っているのだがズンドラ王国その物は獣人族の中でもかなりの僻地にあるはずなのである。皇国が攻め入るような距離では無いし、そこまで奥地に入り込めば、まず獣人族連合その物が黙っていないはず・・・資源の観点からも特殊な資源があると言う訳でも無く、植民地にするにもかなり離れている為、本当に攻め入る必要性も無いのだ、だがズンドラ王国領内の星系のほとんどのステーションやコロニーを破壊され、そして迎撃艦隊もステーションやコロニーが邪魔過ぎて迎撃出来ず、一方的にやられていると言う状況・・・その一方的に攻撃している敵艦隊が何故か皇国軍であると言う事である、これに対し皇国軍は艦隊を派遣していないと言うだけだ。その理由を調べる為にマーズラ星系の隣、バーボン星系へ今しがた調査の無人船を送ったのだが・・・。

 「・・・状況から察するに、リストーン星系と同様の事が起きている」

 ルーガがそんな顔をしながら事務所にやって来て、調査結果を見せてきた。

 「・・・へぇ」

 他人事だがそう言うしかない。実際バーボン星系がもぬけの殻になっている。

 「ですが、魚人族の星系ルベルリト星系側のジャンプゲートは遮断されている話では無いでしょうか?」

 なぜかこんな狭くてみずぼらしい部屋に居るテティア女王陛下、やはり外交官らしく獣人族の諸事情をある程度握っている・・・勿論話せる範囲の話だが、どうやらそう言う訳でも無いような感じがしてくる。

 「うちの特殊工作班が適当な工業用ステーションの管制カメラをハッキングしたが、ここからも察するに、この艦影・・・こりゃメソポタニア級だぜ?えげつない量のメソポタニア級が片っ端からステーションやコロニーを食い散らかしていると見た」

 「獣人族連合にも対抗策は流石にあるだろ?」

 「残念ながらうちの船以外は有効打にならない、獣人族系の船は速度と機動力は良いが主砲の射程が短い傾向にある、銀河全体で見てもロングレンジハイパワーの帝国軍艦で遠距離無双が一番理想的だ」

 「在庫は?」

 「いや、うちには在庫はあるが向こうは運用してないに決まってる!獣人族連合と人間族はあまり仲が良いとも言えない、帝国は輸出してないはずだぜ?うちが輸出しようにも・・・あの辺は全部ステラー王国の物にする予定だろ?・・・と言うか、俺らは加担しない方が良いまである」

 「どうしてだ!?人が死んでるだぞ?」

 「・・・ステラー王国に奴ら獣人族連合の大使らが突きつけた最初の無理難題を覚えているか?」

 「なんだっけ?」

 「・・・専用コロニー作らせろ、つまり植民地にするつもりだったんだ、ついでに言えばズンドラ王国民はズァパリ民国民を好んで食べる・・・見なかった事にしておけばうちの主要取引先がほとんど大助かりだ」

 「良いのか?それは・・・」

 「うちはそもそも獣人族とあまり取引が無い、せいぜいお前の友人の故郷、ラクトパレト王国とかだけ、しかもラクトパレト周辺は人口が爆発的に増える要素が比較的少ない種族が多い、ヤベー種族はマジでヤベーらしいじゃないか?下手に助けりゃツェルナ達も食われるようになりかねん、とりあえず今はおとなしくしておけ、ファルマン」

 「4星系分の大艦隊が押し寄せていると考えれば、旦那様の私兵でも無理がありましょう・・・ルシャーサが銀河議会の緊急議会に出向いております、まずはそこで状況を確認すべきです」

テティアに手を握られなすすべを無くす。

 「場合によっては皇国が消し飛ぶかもしれない状況じゃの?」

 「・・・お前はいつからそこに居た?いつも研究室に引きこもっている癖に!」

 「失敬な!これでもかなり外に出歩く科学者だぞ!これをステラー王国に届けてくれんかのー?」

 エルムンドドエルが段ボールの箱をテーブルに置きながらテレビを見ている。

 「・・・そんなの定期便に乗せりゃ良いだろ?」

 「乗せ忘れた☆」

 「次にしろ!次!」

 「今日中に必要なの!お願い!お願い!」

 クソトカゲはつぶらな瞳でこっちを見てくる、残念ながら秘書かのごとく何故かここに居るシルヴァに邪魔されて周回出来ない。

 「他の船に頼め!!というかもっと余裕を持ってスケジューリングしろ!!」

 「誰に?」

 「その辺に一杯居るだろ!?ステーションの警備艦とか!ドーベック大佐辺りに頼んで来い!リユン少佐に言えば適当に手配してくれるぞ?」

 そう言いながらリユン少佐に電話、するとステーションの警備が直ぐに来た。

 「わー」

 エルムンドドエルは段ボールを抱えながら警備に直ぐに連行されていった。ドーベック艦隊のフリーゲートが対応してくれるようだ。

 ちなみにシルヴァはテティアと同じく普段は大使館で外交官をしているのだが、外交その物はソデス国王がほとんど自力でやってしまっている、大使館もアーバン船団商事の空きビル、大使館職員は人手不足から身辺警護10人が全てを兼業状態だが、基本的に会議の会場設営以外の仕事はほとんど無いので、こうして中型交易ドックの事務所でお茶くみをしている事が多い、これではうちの会社の秘書だ。おかげで朝から晩まで一緒に居る事もしばしば。

 「所でさっきの箱は?」

 「品種改良後の種でしょう・・・惑星向けとなれば環境は異なりますので」

 テティア女王陛下はそう言いながらふらふらと事務所を出ていく。

 「・・・何か女王様、様子がおかしいような?」

 ツェルナがそう言いながら首をかしげる。

 「言われてみりゃ・・・そうだな?」

 ルーガがゆっくり立ち上がって事務所の扉に手をかけた、確かに様子がおかしいのは気がかりだ。いくら昆虫族は足が速いとはいえ、出て行って直ぐだ、直ぐ近くに要るはずだ。

 ルーガがドアを開ける、出て直ぐ右にテティア女王陛下が倒れていた。慌てて駆け寄る。サシリアのお世話係も飛んできた。

 「しっかりしてください!」

 しかし返事は無い、体を起こすとお世話係が軽く診察する。

 「大丈夫なのか?」

 「・・・いつもの不整脈です、最近頻度が多いようで・・・今処置します!」

 「うちの衛生兵も呼ぶ!」

 「お願いします」

 ひとまず緊急搬送だ。しかし不整脈?そんなの初耳だ。とにかく電話すれば直ぐに緊急搬送車両がやって来る。そして直ぐの一番大きい病院に運び込んだ。

 「そもそも不整脈は何が原因なんだ?」

 「テティア女王陛下様も120歳と、我々昆虫族の中でも桁違いにご高齢です・・・薬で寿命を伸ばしてきましたが、もう限界かもしれません」

 お世話係は肩を落とす。

 「それじゃ、貴方達も・・・?」

 「いえ、我々はクローンです。女王様のご年齢を考えれば3代目になります。家来である我々はクローンとして最悪いくらでも増やせはしますが、女王様の替えは立場上クローンで代替えが効きません・・・サシリア様とシリウス様が未成年で王位を継承なさる事態もいよいよ現実の物になりましょう・・・幸い我々のストックはもう1世代用意されていますが・・・」

 「シリウスの教育はだいぶ骨が折れるようだよな・・・」

 ・・・あの子の世話はかなり大変、テティア女王陛下の部下も半数以上が付きっきりでサシリアには手が回っていない現状があるが、サシリアはおとなしい上にツェルナも居るので割と学業は計画通りに進むそうだ。ツェルナもそこに混ざるのは果たして良いのかどうか分からないが・・・。

 「ごめんなさい」

 「いえ、ひとまずご無事であれば」

 お世話係と病室で話していればテティア女王陛下が意識を取り戻す。

 「せめて、サシリアが成人になる時まではとは思いましたが・・・どうやらそれも叶いそうにはありません・・・サシリアをどうかお願いします・・・旦那様」

 「お任せください」

 「私の亡き後、あの船は・・・貴方がお好きになさってください」

 「いえ、ルミナスまで我々の艦隊でお守りいたします」

 「ロゼンダ級は本来は生まれてこなかった子供と共にルミナスの光を受け来世に旅立つ為の箱舟、サシリアが居る以上、私はズァパリの地の王家のお墓に入る事が決まっておりますのでルミナスに行く必要はございません、それに、時が来ればサシリアの船の建造もされます、ズァパリに着けば、あとは自由にお使いください。皆さん、私の亡き後の手続きを頼みますよ」

 「かしこまりました!女王陛下様!」

 お世話係が敬礼する、そして外を見る。

 「素敵な町・・・」

 ・・・建物は計画性があった物ではない、正直に言えば他のコロニーよりも乱雑している。そのせいか夜景は地形に影響されて区画整理がしにくい地上の都市のよう、素敵な要素は全く無いが、そもそもズァパリ民国にこう言った金属やコンクリートを使った都市が無いらしい。元々地下で暮らしているらしく、地上はほぼ作物畑となっている。あっても石積みの行政施設などだ。ちなみに居住専用コロニーは無い、交易ステーションとかの類がいくつかあるだけのようだ。この話はエルムンドドエルの新薬発表セレモニーの待機時間にルシャーサ女王陛下の部下から聞いた話である。

コロニーには地下空間と言う概念が無いので、資材置き場として建造した大型コロニーのズァパリ民国が借りている区画が人間族の居住型コロニーと対して変わらないのはまぁ当然の事だろう、そもそも都市設計も人間が行っている。

 翌日からはツェルナだけが事務所に遊びに来る事が増えた、勿論サシリアも来るには来るが、母親との時間を優先させるようにしている。その為事務所に来た時には一緒にテティア女王陛下に会いに行くのだ。

 日に日に弱っていくテティア女王陛下、一カ月もすれば車いす生活、そして部下達も慌ただしい、ついには葬儀のスケジュールまで渡された。フルジア王国政府への事前の根回しはネドリー運輸の担当、その手のコネはズァパリ民国政府よりうちの方が圧倒的に大きい、なぜならば今までほとんどの外交はシーモア共和国を挟んでの間接的な内容が多かったから。だって距離も離れているし、薬などはほとんど完成品、シーモア共和国で加工されて初めて輸入されると言う物、それなりに友好的ではあるがほとんど接点が無いとも言える。どちらかと言えばステラー王国の方がズァパリ民国と近しい関係と言えるだろう。流石に王族となればかなりの参列者候補が居る、これらの護衛用の船は用意してある。主要な艦隊はドーベック、ワトソン、カトロニコフ艦隊、うちの主力は全て出し切る方向、だがそんな事をすればリストーン星系の防衛はどうなる?策ならもう用意してある。

 コーヒーを買いに廊下の休憩スペースへ、アーバン船団商事以外の護衛業務に充てている皇国艦構成のラシード艦隊に加えて新たに用意した皇国艦で新しく編成したエマ艦隊が丁度窓から見える。

 エンデラー級戦艦が23隻、ストーム級フリーゲートが167隻、ポライト級巡洋艦が70隻にサラマンダー級航空母艦が6隻の大艦隊、最終的にはマーズラ星系の防衛に充てるつもりで編成した新しい艦隊ではあるが、問題が一つ、これらは全て皇国の船である。もちろんメソポタニア級より性能は優れて当たり前、武装も帝国製に換装している物がほとんどなので単純な撃ち合いであれば全然戦える事だろう。だが速くする為か、装甲が弱いので帝国艦のように無双までには至らず、海賊に対しては五分五分もいい所、そこでFT14戦艦1隻を旗艦としたDG9型巡洋艦13隻とZB8型フリーゲート215隻の帝国軍艦隊も用意している・・・艦隊総司令はリーサ ファルマインだ。

 オーエンスは一応直して中型交易ドックの片隅に置いてあるが、戦闘を伴わない星間航行がやっと、これ以上の損傷を受ければ船体がもう持たないのでこの機会にリーサにはFT14戦艦に乗り換えて貰い、オーエンスはE-900M同様、クソトカゲ専属のお使い要員に降格した・・・これでもう何がこようとも対処出来るが、最近はもうプリズムライオッド12一択な気もしてならない・・・大は小を兼ねると言うだろう?しかし最近はステラー王国のお召艦要員でもある為、あまり雑な運用も出来ないのでいずれは出番も来るはずだ。そう考えていたら知らない皇国軍と帝国軍の連合艦隊がやって来た。

 ・・・あの艦隊は・・・まさか・・・まさかな?

 運用に向けて整備した艦隊とはまた別の艦隊なのは明らか、大型交易ステーションを目指してやって来ていた。どうせ対応はいつも通りなのだがこれをどうするか・・・軍拡に充てるなら銀河議会からもお叱りを受けそうなレベルだが、ステラー王国の防衛問題もあるので下手に口出しも出来ない様子・・・リストーン星系は現在非常にピリピリしている・・・なのにセルルド星系からのゴミは相変わらずな訳である。皇国艦の処理は巨人族の同族国家に押し付けては居るのだが、時間差でトライアドからも移民交換と言う名目の物々交換で修理品が入庫するので修理待ちの宙域のゴミの山は増える一方、どうやらあっちの保管宙域も一杯らしい、まぁ、そうだろうよ。

 さっそく電話が来た、リユン少佐からだ、流石に今日は数が多いからだろう。要件はもちろん目の前の大艦隊をどうするか・・・だ。

 「皇国軍人は6千人、帝国軍人は3千人・・・?いつも通りにしてくれ、この日の為にポライト3000Cを量産してきたんだ、ノースソルドック商事がリストーン星系に支社を作るってよ」

 ・・・毎年恒例の大艦隊戦、セルルド星系が全面通行止めになるという、商人にとっては迷惑極まりない大きな武術大会みたいな何か。今回は帝国の勝利だそうだ。やはりHT-712主砲の威力は絶大と言う事だろうか?だが違うらしい、帝国軍自体はボロ負け、しかし獣人族が横から皇国軍をフルボッコで逆転勝利らしい。

 ・・・で、今回の戦利品はこれか・・・。

 FT14型戦艦35隻・・・もう見慣れた、だがもっとデカい船がある。今回の回収品目に含まれる帝国軍の司令官ソル フランクリン大将が言うにはRB26型迫撃戦艦と言うらしい。

 で、これは何か・・・長射程広範囲散弾主砲を搭載している帝国軍の決戦兵器、銀河条約違反ギリギリの超火力艦である。

 「私も、海兵が専門かつ、帝国軍を離れてから期間が経ちますので詳細はそこまで詳しくはありませんが、HT712主砲を全面に20門備えた戦艦と言う認識でよろしいかと思います」

 「それだけの主砲を使うんだから、この巨体はほとんどジェネレーターだな?」

 「そのようです、そして鈍足、砲は正面固定式の為エンジンやスラスターを破壊されてしまえばもう何もできません、今回我が社の貨物船団が連れてきた帝国艦に後方支援艦が多いのは皇国軍に後ろを完全に取られていたと言う事でしょう・・・正直、使い勝手は非常に悪い部類かと」

リユン少佐が軽く戦況を説明してくれる。C78多目的輸送艦が180隻、帝国軍ではベストセラーを誇る軍用輸送艦、この中には医療船なども含まれるが、今まで拾ってこなかった艦種がかなり多いようだ。しかし帝国軍にも医療船が存在していたのか・・・。

 「・・・で、指揮官殿に相談がありまして・・・」

 「輸送艦は民間転用は可能だが・・・」

 「今回救出した帝国軍人の一部はクローンとの事です」

 「・・・人手不足のなんとやらか?」

 「処遇はいかがなさいましょう?」

 「クローンとはいえ、生き物だしな・・・何か案は?」

 「我々の艦隊の人員を入れ替えて戦闘艦勤務、もしくはステラー王国に譲渡を検討したく思います」

 RB26型迫撃戦艦の回りを周回するリユン少佐配下のZB8型フリーゲートの艦橋で少し悩む、差別はしたく無いが作られた人間、国籍的に厄介極まりないのは事実、フルジア王国ではまず人扱いされない人達だ。うちでも正直雇う事は行政面で不可能に近い・・・そうなれば生い立ち的にも作られた種族の国家であるステラー王国に押し付けるのが一番の解決策と言えよう。ステラー王国が独自の軍隊を持ってうちから独立するのも早める事が出来る。

 「・・・後でシルヴァに相談する」

 とりあえずそう返事はした。

 「問題がどんどん増えていく・・・」

 いつもの事務所に戻れば新たなステーション建築依頼、大型交易ドックの部品倉庫が一杯らしい。しかし建築回りはルーガの仕事、正確には建設子会社・・・それが貨物と警備業を営むうちに回ってくると言う事はルーガに蹴られた訳だ。

 ・・・そう言えばマーズラ星系にも造船ドックがあったよな?

 「お船の部品・・・ですか?」

 「ああ、そうだ・・・いるか?と言ってもそもそもステラー王国はまだ船を建造出来る技術力が無いしなぁ・・・」

 「治安維持の為、何らかの船舶は建造出来るようにならなければ・・・そうですね・・・」

 シルヴァがお茶を目の前に置きながらそう言う・・・しかしエルーラは今フルジア王国の軍拡でヒーヒーしているので外注は無理に近い・・・だが冗談のつもりで言ったのだがシルヴァは本気そうだ・・・。

 「・・・マジで作るのか?」

 「必要」

 「・・・ルーガの所に一から設計できないか聞いてみるか」

 ひとまず立ち上がる、そして大型交易ドックへ、適当な作業員に聞いてみたら理論上は可能らしい、だが、手が開いていないのでノウハウは教えるから自力で設計してくれと言う事だった。

 まずは外形コンセプトをシルヴァにデザインしてもらう、その為に色んな船を見てもらう必要があった。

 「まずはFT14戦艦、帝国軍の主力艦だ、角ばっているのが特徴だな」

 「とても強そうです」

 「砲の威力は銀河の中でもピカイチだ」

 修理中のFT14戦艦を大型交易ドックの展望台から指さす、基本的に尖っている、丸い所はほとんどないが四角形では無い。惑星海洋船に最も近い形をしており、離着水を想定した造形となっている。これはZB8型フリーゲートなどもそう、唯一の例外はAT3型航空母艦である、あれは完全に長方形の箱型であるがあの見た目でも着水可能でなおかつ海上からでも艦載機を放つ事が出来る。

 これらと対照的なのは皇国軍の船で、とにかく丸い・・・何から何まで曲線、商船類は美しい見た目なので人気こそ高いが整備士泣かせが非常に多く、割と維持にお金がかかりがち、サラマンダー級を外交ではうちから良くチャーターするのでステラー王国的には最も見慣れた船な事だろう。

 続いてその辺に浮いているジャガー級中型輸送艦、シーモア共和国の毎度おなじみベルドナカンパニー製、見た目こそ突起物も多く、美しさは無に等しい、デザイン面では全く参考にならないが、参考にして欲しいのは巨人族の船で一番欠けている堅牢さにある。適当に見つけたのは修理待ちスクラップ置き場のジャガーⅣスーパーカーゴLM、年式次第でグレード名もコロコロ姿を変えてしまうのがベルドナカンパニーのややこしい所だが、ざっくり言ってしまえば4代目の後期モデルに相当するであろう物、マドリニスゾリゾが使っているジャガー級は6代目中期モデル、最新の1世代型落ちだったはずなので、目の前のは直す価値より切り刻んで海賊船にするべき年式、しかしベルドナカンパニー製の船舶全てに言える事、どの年式でも壊れにくいのだ・・・流石に物理的にエンジンを破壊されているのでアレは動かないのだが、この堅牢性は是非とも参考にしていただきたい所ではある。

 「うちにはまだあるぞ?」

 「ロゼンダ級、ササリッサ級・・・」

 「そうだ、参考にするならそっちが一番だろう、銀河で最も美しい船だ」

 ひとまず研究ステーションまで戻り、運用していない大型交易ドックへ、ここには通常型のロゼンダ級と巡洋艦型のロゼンダ級がある。ミヴェルマンのロゼンダ級、修理を重ね過ぎて少しガタが出始めているがまだまだ大気圏突入が可能な範囲、近くで見れば修繕痕がかなり目立つが遠目なら美しい船である。それとは対照的にピカピカに磨き上げられているのはテティア女王陛下のロゼンダ級、今日も船員達が磨き上げている様子が目に入る・・・だが基本的に全く動かない船、仕事もほとんどやりつくしている様子だ。ステラー王国の王女様が来たと聞いて仕事を求めて船員達がロゼンダ級の内覧をさせようとしてくる。

 「そう言えばジェリーガン船団運輸は銀河中で大破したロゼンダ級の修理をしていたんだよな?」

 「外交以外ではそのように」

 「ある程度、造船関連には詳しい?」

 「船体構造は完璧に心得ております・・・我々の知らない難破船がおありですか?」

 「ちょっとステラー王国の造船事業を手伝って欲しいんだけれども」

 「喜んでお引き受けしましょう!」

 船員達はそう言ってロゼンダ級の船内にシルヴァを引き入れる。

 「良いのですか?」

 シルヴァはそう言いながらも直ぐにロゼンダ級の船内へ消えて行った。のちに運用終了している大型交易ドックの旧管制棟でステラー王国の造船事業が始まった。外観コンセプトはテティア女王陛下の部下達が、設備面はルーガ傘下の整備士達が集まり、来月には図面が完成していると言う何たる速さ。基本的には曲面型、それにロゼンダ級に見られるデザインパネルのようなカラーアクセントだ。何故そこまで早く設計出来たのか、内部設計は数の暴力、シルヴァ担当分は外観設計だけだからである。

 エンジンはいつものセブンスターエンジン、ジェネレーターも余り散らかしている帝国軍製の軍用ジェネレーター、戦闘艦に関しても武装回りを帝国軍の物を流用する。こうして出来上がった戦艦、巡洋艦、駆逐艦の3種類、マーズラ星系の造船ドックの建築ドローンに製造を頼めば直ぐに作ってくれる。最初に出来上がったのはセレストスピアー級戦艦、天空の槍と言う意味でセルースの空を守る意味合いを持つ命名だと言う。これにはソデス国王も大満足、ロゼンダ級と並ぶ美しい船である。ちなみに巡洋艦はアルパ級巡洋艦、駆逐艦はテラー級フリーゲートと命名されている。しかし、これらの船の建造がのちに大惨事を引き起こす事となった。

 「やっちまった・・・あーやっちまった!」

 ルーガがまた目の前でくるくる回っている、リユン少佐もいつになく軍拡に必死な顔をしている。それはだ・・・。

 ズンドラ王国滅亡、リビューイ帝国、ドムンド王国、ズライヤー共和国他4種族の国家がエマンクリシット皇国に相次いで宣戦布告、そしてなすすべなくステーションを破壊されている始末、当然皇国軍が艦隊を送った訳じゃない、ズンドラ王国を滅ぼしたバトルドロイド艦隊が獣人族星系全域になだれ込んできているのだ。うちが艦隊を送っておけば良かった・・・だがルーガの悩みはそれじゃない。

 「・・・現行型の船をバトルドロイドが急に運用し始めた件だよな?何したんだ?」

 「建造ドローンとその管制モジュールのファームウェアアップデートをしたんだ!そうしないと最新型は作れないからな?そのファームウェアには新しいモジュールの設計図の他に現行型の艦船の設計図へのアクセス権限も含まれていたんだ!俺はその事に1週間近く気が付かなかった!」

 「・・・元々皇国軍の軍用ドローンです、放置していても自動アップデートが働いていた可能性もありそうですが・・・しかしツメが甘い、本当にツメが甘い、普通あり得ません、軍事機密ですよ?何故プロテクトが存在していないのか・・・理論上は民間でも軍用艦が容易に建造可能です・・・全く・・・」

 リユン少佐は目の前で頭を抱える。

 「だが何で設計図を?」

 「建造ドローンには船体検査機能があります、ようするにこれで船の不具合を直しているんです。その修理に設計図が必要な訳ですが、たとえアクセス権限がフリーでも本来建築までは出来ないようにプロテクトが入っているはずなんです・・・しかしプリズムミリタリー社製の船舶にはこれが一切無い・・・諜報部隊の報告ではそう上がっています・・・恐らく前線でも建造を可能にしたかったのでしょう」

 「でもそれを適応したのはうちの支配下のドローンだったはずだ」

 「アップデートには皇国軍のネットワークが必要だったんだ。だから繋いでアップデートしたんだよ、それが皇国軍のバトルドロイド艦隊の造船ドローンにも自動アップデートされちまって今に至るんだ!ステラー王国艦はうちのネットワークに戻した後に建造だから流失こそしていないのが救いだが、銀河大戦争の始まりだ!やっちまった!」

 ルーガが奇声を上げる・・・とは言う物の、皇国軍の怠慢が原因である。この件はバトルドロイド側が勝手にアップデートした事にして知らん顔しておけばいい・・・だが数えられない程の死者が出ている。

 「とは言え、皇国軍艦の設計図は我々の物です・・・リストーン星系に転がるメソポタニア級を固めてストーム級なんかに作り変えるチャンスかと・・・今後に備えて我々も造船を行い、余剰在庫を確保も検討したい所です、部品倉庫も既に限界を迎えています」

 「欠陥船より皇国と帝国のいい所取りのセレストスピアー級をもっと増やすべきだとは思うがな・・・?・・・で、その中には戦闘機とかは含まれているのか?スーパーツァーリー8があれば無茶苦茶嬉しいぞ?あの辺は機動性も良くて無限高火力兵器を搭載している、セルルド星系でもあまり出てこない掘り出し物なんだ」

 「勿論含んでるぜ?もっともネドリー運輸にとってはクライラー級輸送艦が大目玉だと思うがな?大気圏突入が可能な大型軍用輸送艦だぜ?その民生品がエルドーラ級と言っていい、これさえあればトライアドの薬事情はもっと改善する・・・だがその前に軍艦を増やすべきだ」

 「軍艦を増やすなら帝国艦だろ?皇国艦で何が出来る?」

 「メソポタニア級相手ならまだ勝ち目はありましたが・・・」

 「・・・うーん、帝国艦の武装乗っければいいんじゃないかなぁ?それよりパパ大変!」

 いつの間にかツェルナが居る。

 「どうした?ツェルナ?」

 「テティア様がもう危ないみたい!」

 「まじか・・・ついにか・・・」

 急いで立ち上がってツェルナを抱える、その後にリユン少佐達も続く。

 「お外に車があるよ?」

 事務所を出ればランドラー王家のリムジンが待っている。それに急いで飛び乗って近くの病院へ、病院の前にはズァパリ民国の子供達や商人達が集まっていた、ミヴェルマンは特別なのか、病室の前に居る、しかしその先に入れるのは王族関係者とステラー王国を代表してシルヴァ、そして何故かツェルナのみ、だがシリウスは居ない、テティア女王陛下はかなり衰弱している。サシリアがずっとテティア女王陛下の手を握っている様子がまず目に入る。ルシャーサ女王陛下はギャラクシーネットワークの映像通信で繋がっている、本国からはかなり距離がある、直ぐに駆け付けられないので致し方ないだろう。

 テティア女王陛下は一度目を開いた後、何も言わないまま目を閉じる。

 「・・・ご逝去なされました」

 回りの医療機器からもそうとしか言えない状況が伺える。

 「・・・皆の者、テティアを頼むぞ」

 「かしこまりました、ルシャーサ女王陛下」

 テティア女王陛下の部下達がホログラムモニターに向かって敬礼する。悲しそうな顔をするルシャーサ女王陛下は涙を隠すように通信を切った。

 「・・・ルーガさん、打合せ通りに」

 「・・・分かってる、準備はもう出来ている」

 「リユン少佐、明日の昼過ぎまでに式典準備だ」

 「かしこまりました」

 「私の国からは明日までに花を用意します」

 「頼む」

 3人は式典準備に向けて動き出す。俺はその花を取りに行くのだ。

 「・・・ツェルナ、サシリアを頼む」

 「うん」

 この場をツェルナに任せて中型交易ドックへ、オーエンスの横にはヴァルカン、マイラが待っていた。

 「社長、準備は出来ています」

 「せっかくの休日にすまないな」

 「いえ、生花の輸送であれば私の船にお任せください」

 「プリズムライオッド12まで頼む、セルース衛星軌道上に待機している」

 「かしこまりました」

 ヴァルカンに乗り込む、最優先でアンドッキング、マーズラ星系へ飛べばリーサの艦隊の中にあるプリズムライオット12へ、ヴァルカンは大気圏突入出来ないのでここからはプリズムライオッド12の出番、ヴァルカンは衛星軌道上に残ってもらい、流れるように大気圏突入、降り立てばステラー王国の国民が一つのS貨物コンテナを用意して待っていた。これはシルヴァが手配したもの、大概は森の中で取れる植物だが、野生化した観葉植物がかなりある。人間族にとっては見慣れた色々な花が収められていた。

 「国民総出で集めてくれたんだってな・・・ありがとう」

 「既に計画されており、いつでも行動に移せる準備が出来ていました、道中お気をつけて」

 ステラー王国の国民に敬礼されて貨物コンテナを引き取る。コンテナはプリズムライオッド12の船員達によって載せられ、セルースを後にした。


 マイラのおかげで生花は式典までには十分余裕を持って間に合った。

 事前に用意された棺、これはロゼンダ級の棺保管室と呼ばれる部屋に保管されている物で、短距離シャトルなどの小型機を除いたササリッサ級などのその他の艦艇にも標準で装備されている物、女王用はひと際大きく、かなり多めに用意された生花を全て収められるほどだった。

 装飾は研究ステーションで生まれた子供達が行う。その中でも上物の花束をツェルナはサシリアに手渡した。その様子は近隣諸国のメディアがライブ中継する。時期女王であるサシリアはその花束をテティア女王陛下の胸元へ載せた瞬間のフラッシュの量はそこそこ・・・この後はこの日の為にエルーラモータースの特殊架装部門が制作した特注霊柩車で研究ステーションの居住区の大通りを凱旋してロゼンダ級巡洋艦に積みこまれるのだ。

 道中は帝国軍人が全員正装で道路の脇に綺麗に並ぶ、それ以外は一般人、その様子をランドラー王家のいつものリムジンの後席からルーガと一緒に眺める。

 「・・・実際やってみると壮観だな」

 「ああ・・・だが、これは帝国のやり方だ、ズァパリ民国のやり方じゃない」

 「とはいえ女王陛下の希望通りなんだ」

 「まぁ、決める時は楽しそうだったからな?まさかこの時が来るとは・・・」

 「昆虫族は本来短命だ、人間族の平均以上生きていればそりゃな・・・」

 たいした距離でも無いが、それでも大通りに隙間なく並べられる程の帝国軍人の数、それは自分らが通り過ぎれば警備の車のその後ろに列を作り、綺麗に行進をはじめる。港湾付近に近づくと皇国軍人も混ざる・・・彼らは急な声かけに全員一言も文句を漏らさず付き合ってくれた。

 ロゼンダ級の艦橋へ積み込む、艦長席は撤去され中央の航行コンソール前に移動してある。そこにはサシリアが座るが、本来は完全に船外に出してしまうそうだ。そしてロゼンダ級の棺としての機能が初めて使われる、艦長が普段居るデッキの床は冷やされ、このデッキは冷凍安置室になる。本来は艦橋丸ごと冷やすそうだが、そうしてしまえば部下が凍死してしまうのでそれ以外が冷えないように大半の配線を切断、安置場所のみをガラスで隔離する改造を施した。女王が死ぬ時には本来部下も既に死んでいるのだ、親族による自動操縦の操作でルミナスへ送られるのだから艦橋に生存能力は必要無くなるのである。

 「サシリア、テティア女王陛下を頼むぞ」

 玉座のような艦長シートに座らされたサシリアは何も言わない。ひとまず頭を撫でて艦橋を後にした。

 まずはロゼンダ級巡洋艦のアンドッキングを見守る。その間にうちの艦隊の準備は出来ているはずだ。大型交易ドックに入れていたE-900Mに乗り込みプリズムライオッド12へ、真横には新造したてのセレストスピアー級戦艦が1隻だけ、これにはソデス国王陛下が乗っている。フルジア王国政府のVZR-1000Hも居る、うちの護衛艦隊に便乗する予定なのだろう。

 艦隊は惑星ズァパリまでの航海を開始した。セルルド星系からはシーモア共和国の艦隊が加わって来る、シーモア共和国の首相、エルムズデブラを乗せた艦隊だと言う。だが銀河は面倒な事態に陥っていた。

 「皇国軍が我が艦隊に発砲してきます!」

 「おい!ネドリー!本当にこの艦隊は皇国軍に事前に通過予告しているのだろうな!!」

 先行するドーベック艦隊が何故か皇国軍のストーム級艦隊に一方的に攻撃されている、共和国軍のエルブルドソリス提督がこの様子に発狂している。

 「エマンクリシット皇国政府に事前通告はしたはずですが・・・クソっどういう事だ?皇国軍の要求は?」

 「応答がありません!」

 ・・・これはもしや・・・バトルドロイド艦隊では?

 だが悩んでいる暇は無い、このままでは前衛がやられる。

 「攻撃を許可する!ドーベック艦隊、カトロニコフ艦隊は左右に展開し挟みこめ、ワトソン艦隊は前衛に防御を固めろ」

 「了解」

 両脇のドーベック艦隊とカトロニコフ艦隊は迎撃行動を始める、ワトソン艦隊は中心となるプリズムライオッド12の前に全ての船を集中する。

 「おい!ネドリー!貴様戦争を始める気かっ!?」

 エルブルドソリス提督がまずそんな声を上げる・・・当たり前だ、実際攻撃して来た時点でもう戦争状態ではあるのだが、爬虫類族は戦争を好む種族じゃない、この状況でも平和的解決を模索しようと考えている・・・だが、思いついた時点で犠牲者は無視できない数に増えてしまうのだ。

 「一方的に攻撃してくる、こちらの呼びかけに応答しない・・・確かにロゼンダ級には価値がありますが、正規軍が盗もうとするのはおかしい、そもそも4カ国の要人がまとまって行動する艦隊を攻撃する事自体は銀河全体を敵に回すような物・・・となると、こんな所に現れるはずが無いとは思いますが皇国軍のバトルドロイド艦隊でほぼ確定でしょう」

 「はぁ?!13星系を支配しているリビューイ帝国領すらも突破してきたとでも言うのかね!?」

 「そうだとしてもおかしくはない・・・政治的に手を付けられなかった可能性もある」

 オルドネスク提督はそう推測した、獣人族国家は溶けるように数を減らしている現実がある。

 「だがここは皇国領だぞ!?手を出してしまえば!?」

 「その前にこの艦隊が全滅です、それに4カ国の要人が居る・・・やるしかありませんよ」

 「面倒事は避けるべきだが・・・」

 「そもそも手出ししてきたのは向こうである・・・我々も指揮官としてまず優先すべき事があるはずだ、そうだろう?ネドリー社長?」

 「オルドネスク提督の言う通り、残念ながら我々にも任務があります・・・皇国軍にも確認を取れ」

 ・・・さぁ、本物か、それともガラクタか。

 ドーベック、カトロニコフ共にうちに来て長い元帝国軍の指揮官、相変わらずの指揮能力と言えよう、皇国軍の返事が届く頃には全てが終わった。

 「ネドリー!どうなっても知らんぞ!」

 「・・・どのみちうちはフルジア王国籍のPMCだ、王国軍に艦船提供から宙域警護まで、ドロイド艦隊と戦争までしてる、皇国といい加減砲火を交えるのも時間の問題だ・・・どうやら皇国軍は知らないと言い張るようだ・・・ドロイド艦隊確定のようです」

 「あいつらは都合の悪い時はいつもそれだ!まだ確定していない!」

 「・・・それは、どうだろうか」

 未だ戦う意思を見せないエルブルドソリス提督、一方でオルドネスク提督はフルジア王国艦隊を2分割してドーベック艦隊とカトロニコフ艦隊の援護に回していた・・・航路上であちこちから自動発信された民間船からの救難信号を受信している・・・これが発せられる時、つまり船が撃沈した時である。

 「指揮官殿、航路上に無数の民間貨物船の残骸が!」

 「了解、生存者の確認急げ」

 明らかに無差別、航路的にラクトパレト王国やリビューイ帝国籍が大多数を占めるが、エマンクリシット皇国籍の民間貨物船も被害にあっている・・・当然ズァパリ民国籍もかなりある。他国の船ならまだしも、皇国軍が自国籍の民間船まで沈めるか?ドロイド艦隊でなければ説明出来ない。

 ・・・しかし酷い。

 生存者はほとんど居ない、500隻近い船が居ながら原型を留めているのはロゼンダ級のみ、理由など分かる、ササリッサ級が盾となったのだろう。しかしササリッサ級が無い、それほどまでに容赦なく砲撃を加えられたようだ。ロゼンダ級は8隻、乗員も死亡、唯一の生き残りは彼女らの卵だけ・・・サラマンダー級に冷凍保管庫は無いのでテティア女王陛下のロゼンダ級の冷凍設備に移動してもらう。これならば大破に近いロゼンダ級も乗員の生死関係なく牽引出来る。他種族の船員達はプリズムライオッド12が引き受けた。リビューイ帝国軍のフリーゲートがここまで連れてきたようだ。全ての船員がそう証言していた。

 「・・・各国、戦争の準備をしているようです」

 「そのようだな」

 ギャラクシーネットワークのニュースは民間商船の被害を受けてエマンクリシット皇国へ宣戦布告も検討せざる得ないと言う批難の声明を上げている。そうこうしている間にズァパリ民国のあるズァパリ星系へ、惑星ズァパリ、赤みがかった印象だが地上に降りれば何故か青い空、赤い葉の植物が多いだけらしい。

 ドーベック艦隊と他の商人のロゼンダ級は衛星軌道上の物流ステーション付近に残してカトロニコフ艦隊と各国要人を連れて惑星ズァパリに大気圏突入、大きな宇宙港、ルシャーサ女王陛下のロゼンダ級があるVIPターミナルのような場所に誘導される。テティア女王陛下のロゼンダ級は式典の為に用意された特別な区画へ降り立った。

 「長旅ご苦労だった、道中もガラクタに襲われたと聞いたぞ?我が国の民の船も引っ張って来たそうだな?」

 「お久しぶりです、ルシャーサ女王陛下」

 「・・・いずれこの時が来るとは分かっていた、だが、我が命もそう長くは無い」

 ルシャーサ女王陛下はテティア女王陛下のロゼンダ級に乗り込んでいく、テティア女王陛下の部下達は丁重に艦橋まで案内する。他の船の船長の卵は船長席に仮置きされている。サシリアとツェルナはその横に立っていた。どうしてツェルナが居るのか、サシリアはシリウスを避けがち、いくらお世話係が居ようとも、心から頼れる存在が居なかったからである。サシリアの精神安定に実質姉のような立ち位置のツェルナが必要だったのだ。そして研究ステーションでもそうだったように、これからも様々な式典にサシリアの付き人として動いて貰う事となる。

 「・・・最後に隣におらず申し訳なかった・・・テティアよ」

 ルシャーサ女王陛下は棺に収められたテティア女王陛下の頬を撫でる、その様子を乗組員と一緒に眺める。

 「司令官殿、シリウス王女殿下の下船の準備が整いました」

 「・・・了解、直ぐに行く」

 無線でカトロニコフ大佐とやり取りする。

 「・・・すみません、シリウス王女殿下の下船に出向きます」

 「・・・後はお任せください」

 一番近くに居た船員にそう言ってロゼンダ級を降りる。後ろの方に着陸しているササリッサ級へ、貨物ゲートの前にはエルーラモータース製の高級セダン、防弾装甲のいわゆるプレジデント仕様が止められている。本来コロニー専用なので電気自動車であるが、リストーン星系でのシリウス王女殿下専用車、ズァパリ民国製のリムジンは車幅が広い都合、交通規制絡みで毎日のように使える代物では無いので人間族の車に乗ってもらうのだ、ちなみにズァパリ民国製のリムジンは外出が比較的少ないサシリア女王陛下が主に使用していた。

 真っ白なリムジンの後ろを通り過ぎ、ササリッサ級へ乗船、車ごと宇宙に引きずりだされてご不満なシリウス王女殿下、ロゼンダ級では無いので貴賓室と言った装備はササリッサ級には存在しない、その為貨物室にはエルーラモータースに無理言って作ってもらった最大限の高級設備を詰め込んだキャンピングトレーラーがあるが、どうやらそこから出てこない様子、研究ステーションの式典も車に乗せっぱなしで無理矢理参加させた、とにかく退屈な事がお嫌いなお年頃・・・お世話係の最大の懸念点だったので当初よりコロニー内で建設中のテーマパークの視察の名目で車に乗せた後、葬儀に参列させる計画を立てていた。王位継承権一位はシリウスだが、本当にこのままではズァパリ民国の未来が危うい。ちなみにテーマパークの完成は3カ月後である。

 「・・・自力で出てこないのは分かった」

 「申し訳ありません」

 お世話係からキャンピングトレーラーの鍵を受け取る。トレーラーの鍵を開けて未だイヤイヤ期のシリウスを探す。ベッドで布団を被っていた。

 「シリウス!」

 「やだやだ!お家帰りたい!」

 「お母様に怒られるぞ?」

 「お母様はここに居ないもん!」

「目の前に!居るんだ!俺らが怒鳴られるんだ!」

 シリウスを引き剥がそうとするもツメをしっかりベッドに食い込ませて抵抗する。一本一本外そうとしても腕は4本・・・俺ら人間属の腕が足りない。本当にお世話係はどうしているのだろうか?お世話係はこれ以上強引な手は使えないらしいようで手を貸してこない。

 「カトロニコフ!」

 「・・・失礼致します」

 カトロニコフ大佐を呼んでシーツからツメを外していく、外せば大暴れだ。

 「グハッ!」

 カトロニコフ大佐は顔を思いっきり引っかかれる。だが確保は出来た。急いでリムジンに放り込みに走る。報道の為にせっかく船外へ用意したリムジンもトレーラーの横に来ている。そこへ駆け込めばもう勝ちだ、シリウスは諦めて大泣きする、これ以上は車内備え付けのアメニティでお世話係になんとかしてもらう他無い。

 ・・・いてぇ。

 リムジンから抜けだした後はササリッサ級の乗員に手当してもらう。

 「・・・すみません」

 「いえ」

 カトロニコフ大佐は大怪我だ。シリウス王女殿下を乗せたリムジンはようやく予定通りランドラー王家の護衛の車列に加わる。報道のカメラは全然向かない、テティア女王陛下がロゼンダ級から下船するタイミングだからだ。

 テティア女王陛下は船員達の手でロゼンダ級から人力で降ろされる。その後ろにはルシャーサ女王陛下、そしてツェルナと手を繋ぐサシリアが続く、テティア女王陛下は霊柩車に乗せられて、3人はリムジンへ乗る。

 その様子を見届けてからカトロニコフ大佐と黒いセダンに乗り込む。これはネドリー運輸の役員用の普通のクラッシックセダン、防弾装備とかそんな物は無い・・・なぜならそこまでの大物でも無いからだ。もちろん新古品で元々難破船が乗せていた物である。今までは貨物車等が優先、新車で乗用車を買えるようになったのは極最近の話である。

 車列に続くよう指示されているので、ランドラー王家の車列に続く、車は空港を出て大きなトンネルへ侵入、どんどん地下へ潜っていく、しばらくして広い空間に出た。壁には住居、道路の脇にはズァパリ国民が並んでいる。基本的には日中問わず夜と言う感じ、街灯はあるが薄暗い。トンネルの中に家を建てて暮らしているようだ。高度文明を持ったアリの巣とも言えよう、トンネル構造の一部を兼ねる為、建物の高さも決まっており、違いと言えばせいぜい窓と外観くらいしか無い。研究ステーションの乱雑さを美しい街と称したテティア女王陛下の気持ちが分かったかもしれない。

・・・ズァパリの街並みは整備され過ぎている。

 ランドラー王家の王城は地下神殿のような建物、全面石作りでひと際広い空間の天井を支える役目を持ちつつも壮大、これは凄い。

 しかしズァパリ国営放送は人違いをしているのか、シリウス王女殿下についてはほとんど触れない、次期女王としてなのか、ツェルナをよく映す。

 「・・・勘違い、されておりますな?」

 「どうやらそのようだ」

 テティア女王陛下の久しぶりのご帰宅、メディアはその様子をライブ配信している。葬儀は来週である。その後は各国代表との挨拶にしばらくは翻弄されるだろう。

 「王族って色々大変・・・」

 ミヒィ・・・。

 ひとまずは役目を終えたツェルナ、もうへとへとで俺の膝の上で横たわっている。

 「よく頑張ったな・・・ロゼンダ級の食堂が豪華なご飯用意してくれるってよ」

 「普通のご飯が食べたい・・・カップラーメン・・・」

 「それは普通以下の食事だぞ、ツェルナ・・・」

 ツェルナの頭を撫でながらそれもそれでどうかと悩む・・・昆虫族にはあまり良くない食事だからだ・・・人間にもあまり良い物とは言えないが。

 「サシリアも良く頑張ったよ」

 ぐじゅびっ・・・。

 最近は滅多に泣く事も無かったサシリア、ズァパリの偉い人達にもみくちゃにされ足にしがみついて離れない。ほとんどはツェルナ越しに対応したようだが、人見知りのサシリアには相当厳しかった事だろう・・・わがままもほとんど言わないサシリアだが、他種族のコロニーに慣れてしまっているせいか、地下のお城にお泊りが怖いらしく、プリズムライオッド12まで付いてきてしまった。シリウス?お母様にベッタリだからもうそんなの関係ない。

 「・・・ツェルナがお姫様だったら良かったのに・・・」

 サシリアはボソッとそんな事を言う・・・どうやって励ませば良いのか分からない。

 「もうちょっと気楽にいこうよぉー・・・ルシャーサ様みたいにドンと構えていればいいと思うよぉ?」

 「でも迷惑かけてばかり」

 「背負い過ぎだってばぁ・・・まだ女王様じゃないんだし、一人で駄目でも二人ならなんとかなるじゃん?もっと回りを頼っちゃおうよ?出来る範囲で力になるからぁ・・・と言う訳でご飯食べに行こう!」

 「でも・・・」

 ツェルナは膝からぴょんと飛び降りてサシリアを連れて目にも止まらぬ速さでロゼンダ級に走っていく。

 ・・・昆虫族の子供とはここまで成長が速いのか?

 ツェルナのような事が全く言えなかった事が歯がゆい。


 翌日、する事はまだある。プリズムライオッド12は離陸、上空で待機しているドーベック艦隊に合流する。ジェリーガン船団運輸がロゼンダ級に最低限の修理を施している様子が見受けられる、残念ながら在来の葬儀を執り行う事が決定しているので卵は全ての船に戻さなければならない。

プリズムライオッド12はロゼンダ級巡洋艦が代表して抱えていた卵を元の船に戻す為に離陸したのだ。

 与圧は無し、オートパイロットが動けばそれで良い。

 滅茶苦茶なロゼンダ級の艦内、ドーベック艦隊の海兵隊員が曳航航行中に遺体は搭載の棺に収めたとはいえ、艦内通路には色々な物が散乱している。ジェリーガン船団運輸・・・だけでは無いが、ズァパリ民国の修理業者が大きな修理船を持ち込んで主機とジェネレーター、航行装置だけの修理をしている様子・・・ジェリーガン船団運輸も修理その物は本国で行うらしい。そもそもロゼンダ級自体の整備性が極めて悪い為、他国の整備ドックで大規模修理が出来ない・・・ズァパリ民国からすればルーガの整備工場の技術力が異常なのだと言う。ミヴェルマンのロゼンダ級のような現地修理は極めて稀だったのだ。

 ジェネレーター修理で再び動き始めた冷凍保管庫に卵を収めていく・・・しかし船によっては壊れている。ルシャーサの部下には気にしなくていいと言われた。理由は明日には恒星ルミナスの炎に当たるからだと言う。ちゃくちゃくと葬儀に向けた準備をしていく様子を眺める。明日には8隻まとめて葬儀が執り行われる予定、ほとんど吹き飛ばされた艦橋から見える修理船とは違う大きな船、あれが葬儀船らしいが、原型は大型星間クルーズ船、主にズァパリ民国人が他の星系へ旅行する為の豪華客船、しかし乗客一人につき使用人が複数人付く他、さらに船その物にも船員が大勢乗る、結果として民間船としては銀河最大級とも呼ばれる何処のステーションにも入らない大きな巨体を有する。建造費用もロゼンダ級の比にならない額で、ズァパリ民国製の艦船では唯一世代継承される船舶とも言える。

 そんな葬儀船のまわりには今回亡くなった彼女らの友人らしき商船も何隻かは居る。その中には見覚えのある船もちらほら居た。

 仕事を終えれば、ルシャーサの部下達によって葬儀船へ連れて行かれる。マドリニスゾリゾのジャガーⅥエステートがノースソルドック商事のノア級の真横に停泊している・・・割と昆虫族は爬虫類族と仲が良いようで、ジャガー級が最も多い、人間族は基本うちだけだろう・・・なにせ接点がほとんど無いからである。

 「昼食を用意しております」

 「うちの船にもあるが・・・?」

 「人間族の食事は栄養バランスに偏りがあります、ささ、こちらへ」

 「うっ・・・」

 ・・・それを言われれば確かにそうとも言える。だが、プリズムライオッド12もそうだが、最近は緊急時を除いては艦内料理は比較的ちゃんとした料理にするように食材にも投資はしている。今日はカレーだったはずだ。

 案内された場所は葬儀船のダイニングルーム、内装もかなり豪華、さしずめ高級ホテルと言った所だが、そもそも銀河でも指折りの高級クルーズ船ベースである。この船は葬儀に参列する客人を式典までもてなす為の船だ、ラウンジの奥には今回の8名の犠牲者の棺がある・・・一体いくらかかっているのだろう?

 「ファルマンじゃないか?帝国軍と皇国軍の船が居るからもしかしてとは思ったが・・・こりゃ確実にルミナスまでたどり着けそうだねぇ?」

 「・・・うちの私兵が居れば余裕だよ、ゾリゾさん」

 「ついこの前知り合ったばかりだとおもったのだが・・・」

 「アンタと知り合いはルイーゼとワーナーだっけ?かれこれ10年近い付き合いじゃないかね?」

 「我らの寿命は長いのでな・・・あっという間に感じるのだよ」

 マドリニスゾリゾに隣に座れば?と誘われたので二人のテーブルの席に座りながらエルムスミエルの長寿ゆえの悩みを聞く。

 「・・・で、皆はどうせ君がここまで引っ張ってきてくれたんだろう?」

 「テティア女王陛下の護衛もしながら・・・しかし何があったのかね?砲撃の後が多いでは無いかね?海賊か?」

 「いいや、違う、皇国軍のドロイド艦隊だ、リビューイ帝国のフリーゲートが引っ張って来たって噂だ、帝国に押し付けるつもりだったか、それとも民間人への被害を出さない為に捨て身で別の星系へ誘導したか・・・真相は不明だが、獣人族はかなり危機的状況にある」

 「君の私兵でどうにかならない?・・・訳無いか」

 「ゾリゾよ・・・ボランティアで戦争始める企業が何処にあると言うのだね?軍艦を動かすクレジットも馬鹿には出来んぞ?」

 「分かってるさ・・・国家・・・それこそ銀河議会から多額のクレジットを貰って初めて出来る軍事行動だ・・・帝国軍が動いてくれれば良いが、そこまで関係がいいとも言えないからねぇ・・・ああ、物騒な世の中な事で・・・」

 「お主らが生まれる前から銀河が平和だった事は一度も無いぞ?」

 「・・・全く何処の国のせいなんだか・・・外は危なっかしくてたまらないね、これだから大型には乗りたくない」

 「護衛要員ならいくらでも用意出来ますよ?」

 「銀河の為に軍拡に当てとくれ!」

 出てきた料理は大変豪勢、あくまでも人間目線ではあるが、マドリニスゾリゾは味が薄いと言うし、エルムスミエルは食べた気にならないとも言う。向き不向きが種族ごとにあるのだろう。

 食後は三ツ星ホテル級のおもてなしがあるが、商船乗りは自宅に乗っているような物、富豪か小型以下の人達は極上のサービスを求めて葬儀船に宿泊するが、エルムスミエルとマドリニスゾリゾは自分の船に戻ってしまう・・・勿論自分も宿泊は丁重にお断りした。武器商人がクルーザーとして所有する自衛能力のある代表格の船が目の前にあるのに宿泊する理由は特に無い、それどころかルミナスまでの護衛陣形などの打合せがある。流石に8隻となれば組織だった略奪も想定されるだろう。

 翌日は葬儀船で葬儀式典が執り行われる。式典が終わった後はルミナスまで移動、中型以上は随伴する者も居れば葬儀だけ出席して帰ってしまう者も居る。

 「来世に幸あれ」

 葬儀船の神官がそう告げてルミナス前で停船、それで艦隊が止まる、これ以上近づけば船が溶けてしまう。真っ白な光を放つ恒星ルミナス、8隻のロゼンダ級は自動で突入していく、虹色の光を放ちながら船体が燃え始めた。恒星ルミナスの大気層まで到達出来るように耐熱温度が非常に高い船体素材を使用しているらしい、これが大変希少な材料なのでロゼンダ級は大量生産が出来ないらしい。これはルーガから聞いた話、ミヴェルマンのロゼンダ級の修理に苦戦する一番の理由である。

 「・・・こりゃ美しいわ」

 つい関心してしまう、まるで花を咲かせるかのごとく虹色の尾を引きながら溶解していくロゼンダ級、損傷が激しい為、大気層までは到達しないだろうが、最後まで美しい船である。

 一族最後の花は大きな光を放って消えていく、最後の1隻が燃え尽きた後、葬儀船の案内で惑星ズァパリまで、そこからは各々自由に国へ帰っていくのだった。

 だが、ネドリー運輸の仕事はまだまだ終わっていない、ティティア女王陛下の葬儀がまだ残っている。サシリアはツェルナに任せっぱなしだがカトロニコフ大佐も居る。惑星ズァパリに戻ればカトロニコフ大佐の出迎えを受ける。

 「葬儀、お疲れ様でございました」

 「二人は?」

 「それが・・・ロゼンダ級に籠りっぱなしでして・・・」

 「やっぱりいきなり重圧過ぎたか」

 「いえ、それが・・・サシリア王女殿下、葬儀後はズァパリで生活すると言うルシャーサ女王陛下のご命令を聞き入れず・・・」

 「サシリアにしては珍しい・・・で、なんて?」

 「サシリア王女殿下はティティア女王陛下の後を継いでリストーン星系で外交官を務めると申しております」

 「・・・そりゃ中々厄介な事になってきたぞ?」

 「おっしゃる通りでございます、そもそも昆虫族は家業を継ぐ事はご姉妹が居る事を除いてはほぼ絶対とされています、よってサシリア王女殿下がリストーン星系で外交業務の任に着く事はごく自然な流れとも言えます」

 「だが、まだ成人していない、教養もまだまだ不十分だ」

 「ルシャーサ女王陛下のお考えも良く分かります、陛下はその時までズァパリの地で教養を学ばせるお考えでいらっしゃいます」

 「・・・親権はランドラー王家だ、俺が親扱いされているが実際婚姻関係も無ければ医学的に血の繋がりも無い」

 「我々がズァパリの地に置いていけば済む話でもありますが、リストーン星系の借用ステーション区画には管理者が居ないと今後、フルジア王国と滞在ビザ問題等も発生しかねません。ティティア女王陛下の代役が居なければステーションに居る子供達の行き場がそのうち無くなります、生育的にもビザの滞在期間を余裕で超過します。そのビザをフルジア王国側に更新申請するのがリストーン星系の大使館の仕事です」

 「それは知らなかった」

 「ちなみにエルムンドドエル様は年に一度本国に帰られてビザの更新を行っています、我々元帝国軍人は人間族で3年の移民ルールが適応されます。ミヴェルマン様は商人ライセンスがある為、星系一時滞在扱いでビザ等の申請が不要です。ツェルナ様も大使館が出来るまでは船上生活をしている事になっていたはずだったと思います。この件につきましては勿論、ルシャーサ女王陛下も代わりを置く事を考えておられますが、陛下の家臣達はクローンとの事で、これも物議が懸念されます」

 「えっ?でもティティア女王陛下も家臣にほとんどは振ってたんじゃないのか?」

 「業務自体はおっしゃる通りですが、その代表者にクローンは流石に置けないかと思います」

 「・・・流石にそうだが・・・オリジナルの人を後任で配置できたりとかしないのか?」

 「原則、家業を継ぐ事が絶対な種族でございますので直ぐに用意出来ないのが現状かと思われます・・・サシリア王女殿下は大使館運営の件について細かく言及しており、ルシャーサ女王陛下もかなり弱腰になってしまわれているかと」

 「・・・ここまではサシリアが全て考えたのか?」

 「さようにございます」

 「・・・もうそこまで考えられるのか・・・将来有望だな?」

 「将来的にはズァパリ民国を背負う者、サシリア王女殿下は非常に熱心にお勉強されておりました、テティア女王陛下の先は長く無いと言う事もご覚悟されていたのでしょう」

 「下手に色々言えないな・・・シリウスにも見習ってほしい所だが・・・その要因の一つにシリウスの素行も含まれているからしょうがないか」

カトロニコフ大佐と一緒に溜息。親として説得すべきか、それとも国政介入はしないとしてルシャーサに任せるか悩み所である。

 「・・・我々は商船会社、ズァパリ民国の行政介入はすべきでは無いかと存じ上げます」

 「・・・カトロニコフ大佐、貴方の言う事もごもっともだ」

 親・・・と言いつつ血の繋がりも無ければ婚姻関係にもあった訳では無い、これ以上はズァパリ民国側から声がかからない限りは介入すべきでは無いのだ。そして、この件はテティア女王陛下の葬儀式典まで解決する事が無かった。

 王家の墓は地上にあるらしい。巨大な大神殿、宇宙からも視認出来ていた惑星ズァパリ上にある巨大なランドマークの一つ、地上の人工物は工場や保管庫、空港などを除いてほとんど無い惑星ズァパリ、神殿に向かう地上の道路脇には大勢のズァパリ民国人が列を作っている。昆虫属も実は大アリ属だけじゃない、蝶、カブトムシのような種族など様々居る、ただし、大アリ属以外は人間族はもちろん爬虫類属とも関係がほとんどない為見かける事はほとんど無いだけ・・・まだまだ銀河には知らない事が沢山あるようだ。

 「ようやく俺は一般人扱いだな」

 「忘れてはなりません、我々はあくまでも一国の会社組織に過ぎません」

 「分かってるさ」

 式典自体は首脳クラスの地位に居る者しか参加出来ない、その為神殿に向かう沿道に並んでいた、地上の一部は異星人が多い、それなりに面識があった銀河中の有力者達・・・と言った辺りだろう、ここは空港に近い場所だ。

 目の前をテティア女王陛下を乗せたひと際豪華な馬車が通り過ぎる。その後ろをルシャーサ女王陛下、サシリア王女殿下が続く、その後ろには疲れたと泣き叫ぶシリウス王女殿下の手を強引に引っ張るツェルナ・・・ツェルナはいつから王族の側近になったのかと思う所はあるが、元々予定されていた事、ツェルナの仕事はサシリア王女殿下が王城まで帰還する所までなのだ。

 見送りを終え、しばらくすればまわりは解散する、ここから先は中継で見るのだ。

 全てが無事に終わった。

 後はツェルナを迎えに行くだけだ。王城に行けば高そうなソファーで平たくなっているツェルナが居る。最終的にシリウス王女を背負って8kmも歩いた代償という事だ。その式典中騒がしかったシリウス王女を叱るルシャーサ女王陛下の喧騒が王城中に響き渡っている。

 「よく・・・頑張ったな」

 ひとまずツェルナの頭を撫でる・・・が、返答する余裕も無さそうだ、プルプル震える右腕は高そうなソファーにぽふっと落ちた。

 「ネドリー様、ツェルナ様をありがとうございました、君主に代わり、お礼申し上げます」

ルシャーサ女王の部下が頭を下げてくる。

 「本来ならば、一度陛下とご謁見させて頂く所ですが、フルジア王国およびステラー王国の要人護衛がありますがゆえ、我々は直ぐにこの地を発たねばなりません」

 「それではこちらを・・・」

 ルシャーサ女王の部下は一つの勲章を差し出してくる。

 「これは?」

 「ツェルナ様はシリウス殿下に変わる女王の器を有しています。是非ともサシリア殿下のご友人関係を継続していただきたく思いますが、スミオル卿の3女のご氏族となれば平民に等しいご立場・・・本来は王宮に立ち入る権限を有しておりません。そこでスミオル辺境領の隣、ファランス領の時期当主の座をこの度の報酬としてツェルナ様に与える事となりました」

 「ツェルナはまだ未成年ですが?」

 「元々はスミオル辺境領当主に代理統治を任せていた土地でして、成人なさる時まではスミオル卿の統治が継続される事でしょう・・・現状、我が国も後継者不足が深刻でして・・・」

 「成人まではリストーン星系に居てもいいのか?」

 「構いません、こちらのファランス卿の紋章時計があれば王宮への出入りは自由となります。どうぞお受け取りください。それと、ネドリー様には今回の護衛の報酬を用意してございます、その明細がこちらとなります」

 明細の書かれた紙を受け取る。億単位のクレジット、故人とはいえ、王族の護衛としてはかなりの少額だが、ロゼンダ級巡洋艦の所有権が追加の報酬にある・・・ロゼンダ級は過剰な程に高価な報酬とも言える、だが王族の船を譲り受けるなど恐れ多すぎる。

 「・・・ロゼンダ級は流石に貰えないぞ?」

 「テティア女王陛下からのご希望ですので・・・」

 ルシャーサ女王の部下も困り顔をする・・・こっちだって困る、普通のロゼンダ級だって運用に相当苦労する船だ、巡洋艦型なので自衛が出来ると言えば確かに楽かもしれないが・・・。

 ・・・他に手は・・・?

 応接室を見渡すもルシャーサ女王の部下数人とソファーで平たくなっているツェルナしか居ない・・・。

 あっ・・・そうだ。

 ひらめいた。

 「それであれば・・・ファランス領に保管しておいて頂けますでしょうか・・・」

 ・・・そう、本国に置いておけば、成人したツェルナが使うかもしれないし、使わなくとも何かの記念艦として保存とか出来るかもしれない、それに部品調達難易度も低ければ窃盗リスクも少ない。

「かしこまりました、そのように手配します」

 ルシャーサ女王の部下は一礼する・・・ようやく解放された。

 平たいツェルナを抱き上げて王宮を後にする、ルシャーサ女王陛下の喧騒はまだ続いていた・・・色々割れる音がする・・・。

 社用車をプリズムライオッド12に積載して出発だ、もうセレストスピアー級とVZR-1000Rは離陸を開始している。

 「ルシャーサ女王陛下にお会いしなくて本当によろしいのですか?」

 「・・・ありゃそれどころじゃないよ」

 プリズムライオッド12も離陸、大気圏を突破し、リストーン星系へ向けて帰路に着いた。


 ・・・まあ、帰りも楽では無いな?

 「皇国軍の艦隊が前方を塞いでいます!応答はありません!」

 周囲の様子を見るに、商船の残骸だらけ・・・ロゼンダ級を破壊した奴らは標的を変えて反転してきている。

 「全艦戦闘体制、遠方から極力仕留めろ!」

 ・・・マジで皇国軍はどう落とし前つけるつもりだろうか?

 流石に多方面に喧嘩を売り過ぎなこの状況、いくら暴走した機械がやらかしているとはいえ、皇国軍が後始末をしに来ないのが不可解な所、確かに皇国艦では勝ち目が無いからと言う気持ちも実際に運用しているからよく分かるが、もう少し関係改善の為に努力はして欲しい所ではある。

 「敵艦が多すぎます!」

 「そりゃそうだよな?リストーン星系側に置いてある全勢力が欲しい所だ」

 敵艦総数は6万隻以上、一方でうちは200隻程度だ、いくら帝国艦が高火力&長射程とはいえ距離を詰められれば勝ち目は無いのだ。

 ・・・しかし。

 撤退を選べばオレスト星系に戦火が届く、逃げるならセルルド星系を目指す形を取らなければいけない、その為には敵軍の艦隊に突っ込まなくてはいけない、要人艦だけはオレスト星系へ逃がすのも手だ。

 「VZR-1000Rは180度回頭、オレスト星系へ全速力で退避を命じろ、セレストスピアー級はその護衛に随伴、我々はやれるだけ数を減らすぞ」

 「了解しました」

 オルドネスク提督の命令で目の前の2隻が回頭を始める、最悪はズァパリに亡命出来る、それにセレストスピアー級だけでも十分な攻撃力を持つ、お召艦が他国のお召艦を護衛するのも聞いた事が無いのはともかくとして、VZR-1000Rを単艦で十分守りきる事が可能なスペックがあるはずだ。 一方で共和国軍は旗艦の防御を強化する陣形、エルムズデブラ首相は旗艦に搭乗しているので戦線離脱が出来ないのだ。

 ・・・さあ、どこまで減らせるか・・・。

 時間が経つにつれてどんどん不利になっていく、直ぐに増援を寄こして来やがれ!皇国軍!

 「第1部隊の損傷が過大です!」

 「G座標まで反転、これ以降は第5部隊と同様のタイミングで反転指示を出せ!」

 全力砲撃でも砲が焼きつく、リチャージ不足の諸問題がある、いくつかの部隊に細かく分けて後方に下がらせながら交代させる事で距離を稼いでいるが、皇国軍の船の方が足が速い、損傷がかなり目立ってきていた。

 ・・・2万は削ってやったぞ。

 もうダメだ、ドーベック大佐からも、カトロニコフ大佐からもプリズムライオッド12の撤退を打診されている、二人はしんがりを務めるつもりだ。

 「指揮官!後方からロゼンダ級が1隻!」

 「ロゼンダ級?ルシャーサ女王陛下が軍を出したのか?」

 「いえ、この船は・・・船籍的にもテティア女王陛下のロゼンダ級巡洋艦かと・・・」

 「・・・ルシャーサ女王陛下は専用の船を持っているだろ?何でテティア女王陛下の船を引っ張り出してくる?」

 「分かりません!しかしズァパリ民国軍の軍用艦おおよそ1万隻がその後に続いています!」

 「旗艦が突出しているのは意味が分からないが・・・増援と言う事で良いのか?」

 「それにしては到着が早すぎます!我々が戦闘を始める前には惑星ズァパリを発っていない限りは間に合いません」

 「まあいい、ズァパリ民国軍の手も借りたい所だった!」

 しばらくすればズァパリ民国軍からの通信が来た・・・内容はこう、勝手に離陸したテティア女王陛下のロゼンダ級巡洋艦を追って来ただけ、皇国のドロイド艦隊とは全く関係が無いらしく、このロゼンダ級巡洋艦は何者かによって盗まれたそうだ。

 とはいえ、1万隻くらいの増援はありがたい、戦況がだいぶマシになる。ズァパリ民国軍と共同で皇国ドロイド艦隊を二手に分断し、左右から挟み撃ちにする、砲射程はズァパリ民国軍は平凡なのでどうしてもズァパリ民国軍に損害が多く出てしまうがズァパリ民国軍の中にドーベック艦隊を混ぜこんでいる、その代わりにズァパリ民国軍を少し融通してもらったが、耐久力の良いズァパリ民国軍艦は帝国艦の前衛に好都合、ズァパリ民国軍半壊を代償に皇国ドロイド艦隊を全滅に追い込んだのだ。

 ゲート付近に撤退していたVZR-1000Rとセレストスピアー級を呼び戻す間は戦後処理、民間船の生存者捜索はドーベック大佐とカトロニコフ大佐にやらせるとして、自分は一応親としてロゼンダ級巡洋艦窃盗犯に説教をしなければならなかった。

 「サシリア、結果としては助かったが、何をしたか分かるな?」

 「私はお母様の後継ぎ、外交官としてリストーン星系大使館に駐在します」

 「代わりはルシャーサ女王陛下が用意してくれる話だっただろう?」

 「ズァパリ民国において子が親の家業を継ぐ事は絶対です!お父上が何を言おうと、お母様の跡継ぎを諦めるつもりはございません、それに現状、この船が無ければ一部の生存者が収容出来ません」

 「・・・一部・・・ねぇ」

 サシリアは偶然を味方に付けたようだ・・・ロゼンダ級はほとんど大破が13隻、ササリッサ級は跡形もないが、これらのロゼンダ級、必ずと言っていい程ある物を抱えている・・・そう、卵だ。

 ドーベック達の報告によれば、牽引その物は可能だが、卵を保存出来る設備が生きている船が無い・・・しかも厨房の冷凍庫にただ突っ込めば良い代物でもない、専用装置を搭載している船はこの場にはロゼンダ級巡洋艦しか無いと言う事だ。これはしてやられた。

 ・・・しかもだ。

 ズァパリ民国軍は負傷兵の回収その他で統率が取れていない、混乱でロゼンダ級巡洋艦追撃任務どころでは無くなっている。うちも修理の為にオレスト星系に引き返しても良いが、修理が終わればまた遭遇も十分あり得る。そうなれば一生リストーン星系に帰れない・・・なのでこのまま修理もせず船を進める他無い。

 ・・・俺はなんだかんだ甘いんだな。

 ロゼンダ級巡洋艦にはサシリアのみ、ルシャーサの部下が配置換えの為に一斉下船したタイミングを見計らってロゼンダ級のみに搭載しているオートパイロット機能で離陸させた。これはそのままルミナスに向かってしまうプログラムであるが、途中解除も可能である。従って、宇宙まで上げてしまえば一人で操縦も可能となってしまう。・・・なぜ一国の王女が一人で船を宇宙まで上げられたのか・・・元帝国その他の英才教育の賜物だろう、そう言えばササリッサ級で船長ごっことかしてたっけ、その過程で覚えたのだろう。

 ズァパリ民国軍はロゼンダ級巡洋艦追撃が困難な状況なので自国へ撤退、ネドリー運輸も全力でセルルド星系を目指さなければならなかった。

ー銀河の常識ー

・ズンドラ王国

人類的に言えばオオアリクイに似た容姿を持つ獣人族系列の国家、船のエンジンが壊れる程に領有星系にコロニーを構える程人口が多い国でドロイド艦隊によって初めて滅ぼされた国の一つ。

主食は昆虫型クリーチャーで、ズァパリ民国人も好物の一つである。

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