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 死体の効果は高い。


 殺されたとか、死んだらしいとかではなく、死体が転がっていたという方が実感しやすい。だから、殺す時はできる限り静かにやらなくてはならない。そして、後から死体を発見させる。


 前回は街の中で派手にやり合ってしまったので、街の人間は、戦闘があったという方に関心を持ってしまっている。そうなると、根島国の傭兵が壬海の人間を殺したと扇動する連中がいるため、余計な反発が生まれてしまうのである。


 本当は死体よりも良いのがあった。だが、この国では無理だ。そこまでやれば、王が政治に口を出しすぎていると民が怒り出すし、国が腐り始める。


 王は、あくまで国の象徴でなくてはならない。民にはそう思わせておかなくてはならないのだ。ただ、少しずつその均衡は動き始めている。


 そもそも自分たちがここにいること自体、昔の壬海では考えられないことだった。大昔とまでいけば、また話は別だが、今生きている者たちには考えられないだろう。


 熊と竜は仲が良かったと言っても、何の話か理解できないはずだ。


 それと根島国から兵が入ってきていることもあり、比酎の街は、少し浮き足立っている。


 兵たちは街へは入らず、ほとんどが北へ向かう。西の国境沿いは山だが、人が通れないわけではない。


 軍行の間に、狩猟や採集をしている余裕はないだろう。彼らは朗読者ではないのだ。


 そのため、兵たちは比酎の東のはずれを通っている。塑山派に扇動された民が集まり、出ていけ、帰れ、と騒いでいるが、それに対して自分たちが動くことはない。


 そこらは夜になると赤くなる。


 五百人近く集まった者たちが、火をたいて騒いでいるからだ。蔵上家の者たちは館の屋上からそれを見て、楽しんでいる。そして、トルストはそれを見上げている。


 眠そうに目をこする子供を、見上げている。


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