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いざとなれば、壬海北部の自国の兵、そして壬海の兵も使い、鉈欧を攻めるつもりだろう。自分を送り届ける理由で鉈欧へ上陸できるのは、せいぜい百かそこらだ。真結はそう考えた。
尾花は、三千の兵を散らして北部へ移動させている。
理由も場所も数も様々で、三十人前後の小隊での移動などが多い。多くて二百人の塊。
それは壬海の要請に答え、ただの遠征軍としてだった。
自分が王の暗殺に失敗しても、尾花は鉈欧をあきらめるつもりはない。
つまり、それほど塑山に押されているということだ。
壬海も根島国も、できればこれ以上、塑山に領土を与えたくないのだ。要は、塑山に鉈欧を取られる前に自分たちで攻め落とし、自分たちの領土にしてしまおうというわけである。
それには時期が重要になってくる。鉈欧が倒される直前に仕掛ける。壬海なら、そうする。だから根島国は、それより先に自分たちの息のかかった俺を送り、王位につかせたいのだ。
それは壬海と根島国間の競い合いと言える。
尾花としては、壬海との連合軍で鉈欧を獲るより、新しい王を作り、独立を維持させた方がましなのである。
俺が、父を殺す。壬海がそんなことを予想できると思うか。無理だろう。むしろ、逆に護送に兵を使ってくれるような気もする。
街二つを堕されたのは大きいが、鉈欧はまだ死んでいない。壬海でも根島国でも星老でもいい。少しずつ兵を集めて、必ず取り返してやる。利用できるものは何でも利用してやる
これは、戦争なんだ。
負けられない。
負けたら、鉈欧がなくなる。
塑山にだけじゃない。他の国にだって鉈欧はやらない。
だから悪いが、俺は根島国に肩入れするつもりはない。
それなりに、あんたらには世話になった。だから、悪いとは思う。
供は誰もいない。八月二十四日。涼しいぐらいに冷たく、濡れた風がどんよりとした雲の下で吹いた。
特に用もないのに、真結は竜廓の街を一人で歩いた。供のかわりに、つけてくる男は二人いた。だがもう見知った顔なので、まったく気にはならない。
人の数は多い。足元で跳ねる泥で、汚れることにも慣れた。水の溜まりも意識することなく避けることができる。
多分、十月になるか。俺が自分の足で迎えにいけたら良かったな。
昨夜、シイカに手紙を出した。
手紙は朗読者に宛てたものなので、ふくろうを使って飛ばした。
初めて久光に手紙を出した時も、何も言わなかった。だが、久光は手紙がどこにあるのかを理解した。
久光でもわかったのだから、シイカにわからないわけがない。




