表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/80

46

 根島国には島が六つあった。


 極端に小さなものも大きなものもなく、シイカの生まれた南風島には、約二百万人が生活していた。南東には、同じくらいの大きさの南風二島があった。そちらには約百八十万人がいた。

 

 その二つの島は大陸から一番離れていたため、他の島々より生活は質素だった。自分たちが食べるものを自分たちで作り、そして、海から獲っていた。


 新しいものは全部、竜廓島から入ってきた。


 本などほとんどなく、子供は外で走り回り、腹が減れば磯へ行き、釣りをするのが当たり前だった。シイカには居心地の悪い、ただ暑くて風の強い場所でしかなかった。


 大きくはあった。外を歩けば、知らない場所はたくさんあった。


 一日では端から端へ渡ることはできない広さなので、シイカは北部、西部のことはほとんど知らなかった。船の出入りが多いのは、北の竜廓島の方ではなく、シイカの住んでいた南東部であったため、むしろ栄えている方だった。


 ただ生活し、多くを望まなければ、十分に生きることはできたのだ。

 

 それなのに治安は最悪だった。昼間でも子供たちだけで遊ぶことは許されず、常に誰かの親が一人か二人、そばにいた。


 もれなく、そこも旧世界だった。どこだろうと、朗読者の価値は測り知れない。


 さらに、二年ほど前だった。南風島と南風二島で、いきなり子供の朗読者がたくさん現れたという噂が流れた。


 噂じゃなかった。シイカは知っていた。


 すぐ近くに住んでいた友達が急におかしなことを言い、それを実際に見たのだった。練成だった。


 実は気付いた時から、誰か別の人のことを知っているのだとその友達は言った。初めは意味がわからなかった。でも、その友達はわかっていた。自分が、朗読者であることを。


 とりあえず、二人だけの秘密だった。


 だから、僕は誰にも言わなかった。でも、半月ほど経っただろうか。


 友達がいなくなった。その友達の両親は家の中で死んでいた。


 何が父と母を変えてしまったのか。なぜ、自分は売られたのか。


 愛されていた。何も疑わなかった。母は、自分たちによくつき添って、外を散歩したりしていた。むしろ、家で本ばかり読むな、もっと遊べと外へ連れ出したりしていた。


 父は、ミラモたちが来る少し前まで、自警団の一員で、夜、寝ずに近所の身回りなどに参加していた。


 二人の何をどう疑えば、わかったのだろう。


 理解できたのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ