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根島国には島が六つあった。
極端に小さなものも大きなものもなく、シイカの生まれた南風島には、約二百万人が生活していた。南東には、同じくらいの大きさの南風二島があった。そちらには約百八十万人がいた。
その二つの島は大陸から一番離れていたため、他の島々より生活は質素だった。自分たちが食べるものを自分たちで作り、そして、海から獲っていた。
新しいものは全部、竜廓島から入ってきた。
本などほとんどなく、子供は外で走り回り、腹が減れば磯へ行き、釣りをするのが当たり前だった。シイカには居心地の悪い、ただ暑くて風の強い場所でしかなかった。
大きくはあった。外を歩けば、知らない場所はたくさんあった。
一日では端から端へ渡ることはできない広さなので、シイカは北部、西部のことはほとんど知らなかった。船の出入りが多いのは、北の竜廓島の方ではなく、シイカの住んでいた南東部であったため、むしろ栄えている方だった。
ただ生活し、多くを望まなければ、十分に生きることはできたのだ。
それなのに治安は最悪だった。昼間でも子供たちだけで遊ぶことは許されず、常に誰かの親が一人か二人、そばにいた。
もれなく、そこも旧世界だった。どこだろうと、朗読者の価値は測り知れない。
さらに、二年ほど前だった。南風島と南風二島で、いきなり子供の朗読者がたくさん現れたという噂が流れた。
噂じゃなかった。シイカは知っていた。
すぐ近くに住んでいた友達が急におかしなことを言い、それを実際に見たのだった。練成だった。
実は気付いた時から、誰か別の人のことを知っているのだとその友達は言った。初めは意味がわからなかった。でも、その友達はわかっていた。自分が、朗読者であることを。
とりあえず、二人だけの秘密だった。
だから、僕は誰にも言わなかった。でも、半月ほど経っただろうか。
友達がいなくなった。その友達の両親は家の中で死んでいた。
何が父と母を変えてしまったのか。なぜ、自分は売られたのか。
愛されていた。何も疑わなかった。母は、自分たちによくつき添って、外を散歩したりしていた。むしろ、家で本ばかり読むな、もっと遊べと外へ連れ出したりしていた。
父は、ミラモたちが来る少し前まで、自警団の一員で、夜、寝ずに近所の身回りなどに参加していた。
二人の何をどう疑えば、わかったのだろう。
理解できたのだろう。




