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夜。シイカは船に乗った。二人もいた。
別れの言葉はなかった。そもそも、あの時僕は別れだということすら、知らなかった。
小船が闇の中を進んだ。とても眠かった。父と母と僕。三人を乗せて。
港ではなかった。岩がただ海から顔を出しているような場所。足元まで黒い水に浸し、船に乗った。
父と母が櫓で漕いだ。頭の中にはたくさんの疑問が浮かんだ。聞いても、二人は何も答えてはくれなかった。
小船が岸を離れるほど、海に浮いているという感覚は強くなった。巨大な水の溜まりに、下から揺すられていた。
急におかしな方向から風が吹いた。
真上から。
風に飛ばされたと思った。腹を包み込むように、巨大な爪ですくわれていた。
よく、覚えている。
目を開けると、僕はもう空にいた。
翼竜。
しかも、巨大な。見たのは初めてじゃなかった。
それと、その背に立つ男。もちろん、見たのは初めてじゃなかった。
知らない人間は根島国にはいない。首だけを回し、その顔を見ていた。何か、両手で動きをした。横にさらに二頭の翼竜が現れた。
下に二人がいた。そこへ翼竜は向かう。もう一頭の方は知らなかったが、羅亜南のリムを追ったらしい。
翼竜は小船の辺りに、頭から突っ込んだ。白っぽく海が光った。二人は、ひっくり返った船につかまっていた。何をしているのか。なぜ、こんなことをするのか。腹をつかまれたまま見下ろしていると、島の方から何頭もの翼竜がやってきた。
ミラモはもう大丈夫だ、心配するなと僕に言ったが、これ以上、父と母に何かしないという意味だと、その時は思った。
翼竜の背に引き上げられ、空を飛び、南風島へと向かった。僕は何を言ったらいいのかわからなくて、ただ、ミラモにしがみついていた。
リムに乗ったのは初めてだった。ミラモが呼び出す翼竜は、他の朗読者が呼び出すものの二倍か三倍の大きさがあった。
左右の翼はゆっくりと動く。この動きで空を飛んでいるということが、シイカには不自然に思えた。
巨大な拡がりに浮かぶ小船にすがる。
最後に見た両親は、そんな感じだった。
暗くて遠かった。
だから、どんな顔をしていたのか、何を言っていたのかはわからなかった。




