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アリアの長い説教のような説明がやっと終わった。とりあえず補助、回復魔法の実演を見せてくれると言う。
「それでは補助魔法からいたしますので、手を前に出してください」
「おう」
言われるがままに手を前に出すと、アリアが俺の手の平に手の平を合わせてきた。少しドキっとしたが、身長差があまりないせいなのか、手のサイズが同じで少しめげた。
そんなことを思っていると、アリアが詠唱を唱え始めた。
「精気よ 我が魔力と共に彼を支え導きたまえ 魔力付加」
それと同時に、アリアの魔力が俺へと流れ込んできた。急に流れ込んできた違和感に、俺はついアリアの手を払いのけてしまった。アリアはビックリしてその場に尻餅をついてしまう。
「きゃあ!」
「あ・・・スマン!」
【連結魔法陣】を習得するために常に魔力操作で、体内の魔力の流れを感じ取っていた所為だろう。他人の魔力が流れ込んできたその違和感に耐え切れなかった。
少し涙目になって女の子座りのアリアが見上げてくる。参ったな。泣かせてしまった。とりあえず手を差し出したら、アリアは握り返してくれたのだ。引っ張り上げた。
「えーっと 悪かった。 そのなんというか魔力制御の訓練をしてたんだが、その所為で魔力の流れには敏感になっててな・・・」
「ぐす・・・はい。私こそごめんなさい。説明不足でしたよね」
「いやいやいやいや! アリアは何も悪くない。 俺の不注意だ。 だからもう説明はいらないぜ?」
なんとかアリアを宥めて説明という名の説教は免れることができた。
気が付くともう夕方だったので、今日はこの辺にしてまた明日教えてもらうことになった。補助、回復魔法を教えてもらう代わりに、武術や体術の基礎を教える交換条件です!と両手を掴まれて懇願された。当然だと返すとアリアは嬉しそうにしていた。女子寮へとアリアを送り、俺は夕日が傾く空の景色を眺めながら男子寮へと帰った。
まず風呂に入り、その後に夕飯を済ました。味噌汁が飲みたいと女将さんに言っておいたのは正解だった。わかめ入りの味噌汁を堪能して。腹が落ち着いてから、明日の学校の準備を始める。
といっても特別に何か準備が必要というわけではない。教科書などは授業ごとに配られるらしいし、何より戦闘科である以上。カリキュラムは座学よりも戦闘系が多いのだ。したがって必要となるのは筆記用具と着替えぐらいだ。
リリネルが鉄拳制裁すると言っていた、忘れ物と遅刻だが。俺は早朝から鍛錬をするのを日課にしているので遅刻する心配はない。もう準備は終了したので、アリアの説明もとい説教で鍛錬できなかった分を早朝に付け足すことにした。いつもは5時に目覚ましをセットしているが、4時に合わせて就寝する。
翌朝。一番乗りで第二訓練所で鍛錬を始めた。しばらくするとツキノワがやってきたので組手に誘う。まあ昨日俺を見捨てて先に帰ったお仕置きだ。少し本気でツキノワと組手してやった。当然圧勝。ツキノワの一撃は喰らえば必殺だか躱せれば大したことないし、隙だらけである。しこたま蹴りまくたった。
ツキノワをボコボコにしているとアルナとアリアが揃ってやってきた。
「おはよレッド と・・・ツキノワ」「おはようございますレッド ツキノワさん」
「おう、おはよう」「ぐふぅ おはよう」
「何してんのレッド?」
「いやあなぁアルナ。ちょっと昨日は鍛錬不足でよ、ツキノワにその分の消化を手伝ってもらってただけだぜ?」
俺が悪い笑みを浮かべながらアルナに一歩一歩近づくと、アルナは昨日アリアの説明と言う名の説教から逃れ。俺を置き去りにしたことを思い出したのか、一歩一歩近づいた分だけ後ずさっていく。
「わ 私は悪くないもんっ 用事を思い出しただけだもん!」
「そうかそうか まあそんなことどうでもいいんだ。 仲良く組手でもしようぜぇ」
「いーやー レッドの鬼ー」
「ははははは!逃げるなこの野郎!」
壮絶な追いかけっこが始まった。機動力にスピードが全く勝負にならない上に、持久力が無いアルナはすぐに捕まった。俺は捕獲したアルナに馬乗りになって、アルナの弱点を攻める。
「お仕置きの時間だ こちょこちょー」
「あうぅ くすぐったいよー ごめんレッドー もうやめてー」
すでに俺にしばかれてボロボロのツキノワが、くすぐられてピクピクしているアルナに合掌。
「安らかに眠るであろう友よ」
こうなっている原因のアリアというと。羨ましそうにアルナを見ていた。
「レッドに馬乗りされるだなんて。・・・ズルいです。私もレッドに悪戯したら馬乗りされるでしょうか」




