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アルナとツキノワが俺にしばかれて疲労しているので、良い機会だからと思いアリアに二人に回復魔法をかけてもらうことになった。その際にアリアが何故か俺に「えいっ」とデコピンしてきたのだが、対応に困った。「女の子に馬乗りはよくないんですっ ・・・羨ましいです」何が羨ましいのか本当に分からない。女心というのは一生理解できないだろうな。
兎にも角にも回復魔法を実演できる良い機会なので、じっくりと見させてもらう。魔力操作で前に魔力を流して、アリアの魔力の流れを観察する。
「精気よ 我が魔力に応え彼らの傷を癒したまえ 回復促進」
アリアは詠唱を唱えながら、アルナとツキノワに触れた。目を凝らしてみると、アリアからクリスタル色魔力が、アルナとツキノワの体内へ二人の魔力を押しのけるように流れ。怪我や疲労している患部へと到達すると、それを癒していった。ツキノワの肩の内出血がみるみるうちに治っていく。アルナは俺にくすぐられた疲労感が無くなったようだ。
俺が昨日感じた違和感の正体が分かった。アリアの補助、回復魔法は只の魔法ではない。希少性があるのだと思うが、あまりにも強力過ぎる。使い方を少し工夫したら最悪の魔法になりかねない。
患者体内の魔力を押しのけて強制的に魔力を流したのだ。ありえない。そんなことがあっていいのかと俺は言葉を失った。
俺やエリスが使えるようになった、魔力を乱す魔法とは全然違う。あれはあくまで、相手の魔力の流れを阻害するだけで、他人の身体に魔力を通すなど無理だし。無理矢理押しのけたりは出来ない。ましてや体に影響を与えるのは不可能だ。
「アリアすごい! 疲れがなくなったよっ」
「うむ。 某の怪我も完治しているであろう」
「はいっ ちょっと頑張りました」
呑気すぎる。今起こった出来事を軽く見過ぎだ。
強制的に他者の体内へ己の魔力を流し込み患部を治す魔法。治すが壊すになれば触れるだけで他者を殺せる魔法になる。しかもアリアが行ったのは詠唱だ。もしも同じことが魔法陣で可能なら、大量虐殺も可能だろう。魔方陣が消えれば証拠も残らない。死因も壊し方壊す部位によって様々に設定できる。最悪だ。俺が知っている魔法の中で【竜魔導】の問答無用の破壊の次に恐ろしいだろう。
「アリアちょっといいか? その魔法は一体どこで覚えたんだ?」
「ええと口外はしないでくださいね? 本当はルーラー教の枢機院以上の方にしか教えてはいけないことなのですが。私が魔法を習ったのは、法王である父が所有している【聖導書】で学びました。アダム・ルーラー様が書き記した最古の書物だそうです。代々の法王が受け継いでいるとのことです」
「最古の書物? ということは古代魔法の一種になるってことか?」
「・・・古代魔法では無い。そう父には教わったのですが。おそらく・・・」
アリアは言葉を濁す。古代魔法は禁忌指定されているのだ。過去にある種族が古代魔法での大量虐殺をおこなった負の歴史からそうなっている。そして最もネックなのが、ルーラー教は古代魔法を最も忌避しており。それ専用の取り締まり機関である禁忌異端審問まで行っている。アリアの長々とした説教に古代魔法がいかに悪いものであるかを語っていた。
となると、補助や回復魔法が古代魔法であることはルーラー教にとって大きな痛手だろう。故にこれらの魔法を信者に奇跡と呼ばせているのかもしれない。
やっぱり宗教はクズだな。悪いが俺から言わせたら古代魔法も現代の魔法も大差ないんだけどな・・・そう言えば、俺めっちゃ古代魔法使えるし使いまくってるけど一度もバレていない。やっぱり古代魔法云々は伝聞程度しか分かっていないのだろうか。
「聞きづらいことを聞いて悪かったな」
「い いえ」
なんだかすごく空気が悪くなってきたので話を変えた。まあこのことは後で何かに使えるかもしれないし、後で【魔導書】なり学園の図書館なりを使って調べてみよう。【聖導書】もどんなものか気になるし、エリスに聞くのが手っ取り早いかもしれないな。休日にでも聞いてみよう。
「そうだった! アリアの訓練のメニューを考えてみたんだ」
「本当ですか? ありがとうございます」
「ついでにアルナのもさらに厳しくしてみたんだっ」
「え!? なんかとばっちりだよー 最近レッドが私に厳しいー」
この後は7時になるまでたっぷりと鍛錬をして過ごした。朝食をしにそれぞれ寮に戻り、8時前には特別クラスへ登校する。待ち合わせはしていなかったが、俺とツキノワが男子寮を出るとアルナとアリアが待っていた。四人で雑談しながら楽しくクラスルームへと向かった。
さほど重要でもないけどなんか忘れているなとか思ったが、なんだったっけ?




