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学園エリアの中心に聳え立つ王城のすぐ手前にある建物だった。王城は姫路城のような和風の城で、天辺の天守閣のしゃちほこのような黄金の龍に光が反射して輝いて見えた。なんだか俺以外にも元地球のしかも日本人がいるではないだろうかと疑うほどだ。
王城と学園エリアの間には堀があり、下には清流のような透き通った水が流れていた。赤く塗装された跳ね橋がかけられ。王城に入るには跳ね橋を通る以外の方法はなさそうだ。
「こっちだよレッド」
王城に見とれているとアルナに腕を引っ張られる。アルナが俺を連れて来たかったという場所も、なかなかに煌びやかな建物だった。女子寮のベルサイユ宮殿が霞んで見えてしまうほどの豪邸。騎士甲冑を着込んだ警備までいた。
何故かアルナと俺はスルーパスで中に入れた。学園の生徒ならだれでも入れるのだろうか・・・
半ば場違いのような感覚を覚えながらも、アルナに手を引かれて最深部にあった豪華絢爛なドアの前に誘導される。
『理事長室』という立札を見て硬直する。どうも地球の名残のせいか学校のお偉いさまがいる部屋というのは苦手だ。不良世代全盛期の俺にとって鬼門だった。喫煙で呼び出されること数回、喧嘩で呼び出されること数回、何故か理事長に気に入られて酒盛りさせられること数回・・・良い思い出が全く無い。
「・・・なあアルナ 帰っていいか?」
「ダメに決まってるじゃん! さ、入ろうっ」
「いやいやいやいや! 我が家のように入ろうとするな! 入り方ってのもあるんだ、マナーだマナー!」
「ふふっ 大丈夫だよ!」
「あっ ちょっと待て!」
俺の制止を振り切ったアルナは――
「ママー ただいまー!」
なんと理事長の娘だったのだ。可笑しいと思ってたんだ。門番も女将も、アルナお嬢様って言ってたし。そう言うことだったか・・・
「あらアルナちゃん、お帰りなさい。そちらは噂のレッド君ね?」
理事長も言わずもがな信じられないほどの美人だった。アルナをそのまま大きくして色気を足したような顔つきで、ブロンドヘアの外国人のようだ。なにより身長が高くてスタイルが良すぎる。タイトなスカートスーツで出るとこは出て引っこむところは引っ込んでいる。網タイツがヤバい。オルガの嫁じゃなかったら是非ともアプローチしたいものだ。
「初めまして。レッド・ジャバヴォックです」
名前を名乗ると少し驚いた様子を見せたが、すぐに笑顔になってとんでもないことを言われた。
「あらあら礼儀正しいのね はじめまして。アルナちゃんの母のエリスよ よろしくねレッド君 ああそうだわ!これからもアルナちゃんを末永くよろしくお願いするわねっ」
「さすがママ! 分かってる」
「え!?」
ダメだ。話を全く聞いてくれないタイプだ。母と娘による息の合ったトークに入り込む余地は何処にもなかった。俺が黙っていても二人の話は盛り上がっていく。アルナに関してはあることないこといいやがる。誰が何時何処でお前に告白したよ? 俺は一度もお前に愛してるだなんて言ってねーぞ!
「そうね・・・レッド君の強さがどれくらいなのか知りたくなってきたわ。 ちょっと手合せしてみない?」
「え? 手合せですか?」
「ええ そうよ」
何故戦うことになってんだ。もしかしてエリスさんも戦闘狂なのか?
横を見るとアルナが呆れたようにため息を漏らしていた。
「第三訓練所を使いましょ! あそこは対魔法設計で建てられてるの Sランク冒険者の私の魔法でも傷一つ突かないわよっ」
Sランク!? きいてねーぞ!
絶対に勝てないかもしれないが、Sランクっていうのがどのくらい強いのかを知れるなら。
それに、今の俺の実力でどこまで通用するのか。
「ママの二つ名は【虐殺のエリス】だよ レッド・・・死なないで・・・」
やっぱやめたいな・・・




