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脱衣所を出ると、再び熊男と遭遇した。また俺を凝視した後に逃げようとしたので、腕を掴んで捕まえてみた。
「まて! なぜ逃げる?」
「此処は男子寮のはずであろう」
何が言いたいのかサッパリわからん。顔を逸らして目すら合わせようとしない。そして先ほどと同じように、お腹の下辺りを隠すように抑えた前傾姿勢になった。
俺にとっては初の同年代の男友達をゲットするチャンスなのだ。
「そうか! 腹が痛いんだな なら部屋に来いよいい薬をもってるんだ」
「ちがっ!」
強引に引きずるように熊男を、梅の間へと連行する。腹痛に効く薬はオグマに貰ってる。何度か飲んだことはある。とてもいい効きだったんだ。
「ようこそって言っても、さっき着いたばっかりだし人を上げるのは初めてなんだけどな!」
「な!? 不用心であろう! 軽々しく男を部屋にあげるでない!」
「まあいいってことよっ それより薬だろ。 これやるよ!」
「だから違うと言っておるであろう!」
「え? 腹が痛いんじゃないのか?」
何か二人して誤解があった――
落ち着いて話を合わせていくと、とんでもない勘違いをしていたことに気が付いた。
熊男は俺を女だと勘違いしていて、俺は熊男が腹が痛いのだと勘違いしていた。
腹が痛かったのではなく・・・男の尊厳というものがあるので黙秘しておこう。その対象として見られた俺も意外と恥ずかしいのだ。はやく髪を切りに行こう。
「まあなんかいろいろあったが自己紹介がまだだったな。 俺のレッド。レッド・ジャバヴォックだ。よろしくな」
「うむ。水に流してくれるとありがたいであろう。 某の名は、ツキノワ・ククルカン よろしく頼むであろう。 貴殿のその名は、もしかして深淵深緑の魔境で生まれであろうか?」
生まれってか転生?なんだが、たぶんそう言うことだろう。
「ああ。ジャバヴォックっていうのは、イヴ・ジャバヴォックっていう紅色のドラゴンにそう名乗れって言われたんだ。気が付いたら本名も勝手に変わってたんだ」
「まさか王都に来て早々同じ境遇の者に会えるとは思ってもなかったであろう。 某も貴殿と同じようなもんであろう。 南の魔境の一つである、深怒深宮の遺跡でメギド・ククルカンという紫色のドラゴンに改名を命じられたであろう。忘れもせぬあの時は死を覚悟したであろう」
「そうなんだ。俺もあの時は死を覚悟したけど、どうせ死ぬなら全力で戦う気だったんだけどな」
ツキノワはコイツ馬鹿かか?という目で俺を見てきた。
「あ! てことはお前も、【竜魔導】を?」
「うむ。スキルを得たのは確かであるが、全く使い方がわからないのであろう」
俺も【魔導書】が無ければ使い方なんて分からなかった。いつか俺が【竜魔導】を完全に制御できたら教えてやるか。アルナには禁止されてるが、練習するに決まってるだろう!
たぶんツキノワとはこれから仲良くなれるだろうし。好敵手にもなるかもしれない。根拠はないがそんな気がした。
ツキノワはこの後、温泉を堪能したいという。また明日にでも一緒に訓練してみようと約束すると、ツキノワは部屋を出ていった。最後に「髪は切ることを勧めするであろう」と言葉を残していった。
またいらぬ誤解をされるのも嫌だし、早めに切っておくことにしよう。学園の授業が始まる、一か月後までだな。オグマから貰った短剣も研磨したいし、王都を見て回りたい。意外と一か月なんてすぐ過ぎてしまいそうだ。
夕飯までまだまだ時間があるので、寝転がっていた。
部屋の電話みたいな魔道具が急になりだしたので、受話器を取ってみる。
「レッド様 お客様がいらっしゃいました」
「お客様?」
「アルナお嬢様でございます。連れて行きたいところがあるから、早く出てこい。とのことでございます」
電話を切ってから大きくため息を吐いた。
何かある。連れて行きたいところだと? アルナが何か企んでいる気がしてならない。
仕方なしに着替えて梅の間を後にした。キングは行きたくなさそうにしていたので、留守番だ。
「遅いよレッド なにしてたの?」
「温泉を堪能してたんだ。 まったりしてたってのに、何所に連れてく気だ?」
そう言うと、アルナは嬉しそうに破顔した。この笑顔は卑怯だと思う。
「着いてからのお楽しみだよっ」
ピッタリ60000文字!
ここまで呼んでいただいて、ありがとうございました。




