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第三訓練所は理事校舎の目と鼻の先のドーム型の建物だった。
最近、建物のサイズを見る感覚が可笑しくなってきているような気がする。面積で言えばノートのギルドの地下にある訓練闘技場の倍ほどの広さだった。普通なら広すぎると思うところが、学園エリアの豪華絢爛な建物が基準になると狭いし大したことないと思ってしまった。
「ママー 頑張らないでー レッドは死なないでー」
どんな応援だ。ちゃっかりアルナは安全地帯である観客席へと逃げている。グラウンドと観客席は堀と透明な壁(魔法陣だとおもわれる)で隔てられている。
「さっ 始めましょうか」
とか何事も無かったかのようなエリスだが。
第三訓練所は上級生と思われる戦闘学科の生徒たちが、先に訓練を強いていたのだ。それを理事長権限で終了させて解散させていた。本当に申し訳ない。訓練の邪魔をされるのは俺だって好きじゃない。後でしっかり謝っておこう。でも解散させられた上級生たちは、嫌な顔することなかった。むしろSランクであるエリスの闘いを生で見られるのが嬉しかったのだろう。もれなく全員、観客席へと上がっていった。
「お手柔らかにお願いしますよ」
握手を交わしてお互いに数歩ずつさがる。
「手を抜くことは私のポリシーに反するのよっ」
「はぁ・・・ 胸を借りさせてもらいます」
「ふふ ドンと来なさい」
拳を作って胸を叩いてジェスチャーしていたが、柔らかそうでボリュームのある胸がポヨンと揺れていただけだった。なんだか気の抜けそうになったが、引締めようか。相手はSランクの化け物なんだ。最初から全力でいこう!
「雷よ 我が身体に迸れ 身体雷化」
【雷詠唱5】で全身に電気を纏う。魔力が全身を巡り、黄色に淡く光る。これだけじゃ足りない。直感なんて冴えてる方じゃないが。
ただエリスさんは俺の魔法を見て顔色一つ変えなかった。肩幅に脚を開いて自然な体勢で俺を見据えている。フワフワした感じが一切なくなった。ヴォルような野生本能丸出しの荒々しいものじゃない。だが殺気が尖って俺に突き刺さる。骨の王の威圧と同じだ。日本刀のような切れ味のいい刃が俺の心臓を一突きするような。
なら期待に応えようか。【魔導書】で新たに学んだ古代魔法だ。
「雷よ 更なる高みへ 紫電」
【身体雷化】で纏っていた黄色の電気が、紫色へと変色して放電していた音が、強まった。古代魔法に一つにあった雷魔法の上位変換の【紫電】だ。雷の質を変え、思考や魔力でより操作しやすくなったのである。無理矢理高めていた身体能力の代償が軽くなり、中距離攻撃も使えるようになったのだ。
「私の魔法と似てるわね」
「へえ そうなんですかっ!」
言葉を吐き捨てながら、高速で接近する。紫電を拳に集めて強化した一撃を試しに打ち込んでみた。狙いは顔面だ。武器や素手で拳自体が防がれても、俺が意図的に放った紫電が追撃する仕組みだ。
「精気よ 我に纏え 身体帝化」
雷が落ちた様な轟音が第三訓練所に鳴り響く。舞いあがった砂埃が収まると。
「まさか正面から受け止められるなんて思ってませんでしたよ」
クリスタルのような半透明なオーラを纏ったエリス。紫電を纏った拳は人差し指だけで防がれてしまった。拳の威力も放電も全く届かなかったようだ。
「過激ね でも足りないわ」




