ふれねさんは、フレネミー 4話
キーンコーンカーンコーン・・・
今日も授業が終わった。
HRは終わっても、この田舎は1時間に1回しか電車が来ないのでとにかく待ち時間は長かった。
「ぎゃははは!おもしれーじゃん!」
「だろ!やばいよな!!」
教室にはなぜか先輩たちが机の上に座りヤンキーたちと騒いでいる。
人様の教室だというのに図太いな・・・というか、令和の時代でもこんな人いるんだなって軽く軽蔑に近い感情がする。
どれ、俺が注意でもしてやろう。
「あ・・・あの!!」
「あ?誰だお前・・・。」
前言撤回、この人たち怖いんだけど。
「あ・・・お疲れさまでした。」
「あ?ああ・・・。」
いかん、つまらない正義感でトラブルを起こすところだった。
ただでさえ俺にはフレネミーがいるというのに・・・このヤンキーたちまで敵に回したら四面楚歌もこの上ないだろう。
俺は教室から出るときに、ふとあいつのことを思い出してしまった。
「あれ、そういえばフレネミー・・・帰ったのかな。」
ここ最近はフレネミーにこの時間に呼ばれてたから妙に違和感を感じる。
べ・・・別に気になってるわけじゃないけど・・・それでも気になってしまうものだ。
なんとなく学校を歩き回り、体育館のそばに行くと・・・すぐにその理由がわかった。
「いっちにーいっちにー!」
「ちょ!美衣はやすぎー!」
「おっそいわよ!もたもたしてると置いていくからね!!」
そこには体操着でランニングをしているフレネミーがそこにいた。
珍しくポニーテールをしていて、小さい顔のせいか小柄でもスタイルがよく見えてしまった。
そういえばあいつ・・・バスケ部だったな。
普段距離感が近くて、ちゃんとあいつの顔を見ることはなかった。
相変わらず、誰よりもくそ真面目で周りの部員よりも練習がんばっている。
他の部員が100回でシュート練習をやめても、あいつは止まることなくシュートをしていた。
「・・・無駄にかっこいいんだよな。」
気が付いたら、俺は彼女のことを見ていた。
あいつ・・・普段あんなに俺に絡むけど遠目から見ると、あんなに輝いてたんだなって・・・無駄に遠く見えてしまっていた。
そんな時、俺はどこか胸が苦しくなっていた。
あいつが俺のことをどう思っているのかは・・・わからない。
最近、少しだけ仲良くなれたと思ったけど、あいつはどこまでも遠かった。
俺とあいつは・・・生きてる世界観が違う。
「帰ろう。」
そうつぶやき、俺は後ろを向いた瞬間だった。
あの甘い声が・・・俺の背中を止めたのだった。
「あれ・・・オタクくん・・・?」
背中がびくっと反応して怯む。
妙に変な汗がして、呼吸が浅くなる気がした。
「珍しい~!どうしたの!」
「た・・・たまたま近くを通っただけだよ!なんか見たことあるなって・・・。」
フレネミーはさっきの必死に練習してる姿と違っていつも通りの含みのある笑顔に変わる。
それをみて、俺は必死に目を逸らした。
というか、目線があると思った瞬間に彼女の目が見れなくなる癖・・・自分でも嫌いだと思った。
「えー、ほんと?実は・・・こっそりうちを見ていたり?」
その言葉に・・・俺はびくっと反応して固まってしまう。
手まで湿っていて、緊張してるようだった。
というか、なんでこいつこんな鋭いんだろう。
妙な・・・罪悪感に押しつぶされそうだ。
「なーんて!冗談よ冗談!あはは・・・真に受けすぎ。」
そう言って笑う様子に・・・俺は再確認した。
そうだ、こいつはやっぱりフレネミーだ。
下手に弱いところを見せたら・・・高校生活死んでしまう。
「ねえ、今暇なの?」
「ま・・・まあな、電車の時間待ちだし。」
「そうなんだ、でも16時の電車そろそろ行っちゃうんじゃない?」
「まじで!?」
俺はスマホを確認すると、時刻は16時16分・・・電車まで残り2分を切っていた。
「やべえ・・・次の電車18時なのに・・・。」
「じゃあさ!ちょっとうちの練習見てってよ!」
「え・・・。」
ちょっと何言ってるのかわからなかったけど、俺はなぜだか練習を見る権限をフレネミーから得ることが出来た。
ただ、てっきり除き魔だと思われて悲鳴を上げられると思ったから・・・その事実を認識するのに時間がかかってしまった。
「先輩!ちょっとこの人見学させてもいいですか~?」
「ちょ・・・振音さん!」
「2階ならいいわよー!」
1年生の振音さんが勝手にやってるから門前払いされるかと思ったら、あっさり承諾を得てしまった。
俺は汗だくになりながら体育座りで体育館の床を眺めている。
「ね・・・ねえ、あの子大丈夫?」
「さ・・・さあ。」
うおおい!ほかの人からはがっつり不審者扱いされてるよ!
今日はなんてついてないんだろう。
俺は心を無にして練習を眺めていると、その気持ちは一瞬で吹き飛んでいった。
「ヘイ!パース。」
2年生の先輩が練習試合でボールを受け取ろうとした・・・その時だった。
「ふんっ!!」
フレネミーが鋭くパスカットして、一気にゴールへと進む。
ドリブルの音は重く、足どりは軽い動きだった。
というか、めちゃくちゃ足が速かった。
「させないわよ!」
しかし、その直線には俺よりも背の高い女性が彼女の前に立ちはだかる。
流石に体格差があるから、無理だと思ったその時だった。
キュン!
バスケットシューズが甲高い音が体育館を切るかのごとく鳴り響くとフレネミーはスピンフェイントをして先輩を抜いて・・・レイアップシュートというジャンプしたシュートを決めていった。
ボールは彼女の動きに合わせて弧を描き・・・軽やかにゴールへと入っていった。
ピピー!!
「・・・かっこいい。」
俺は、先輩たちに臆することなくプレーするフレネミーがどうしようもなくかっこよかった。
そんな俺を見てフレネミーは満面の笑みでVサインをするのだった。
「どや!!」
その笑顔は妙に憎たらしいけど、どうにも夢に出てきそうなくらいまぶしい笑顔だった。
☆☆
「今日の練習は終わり!!」
「「「お疲れさまでした~!」」」
俺は気が付いたら、練習が終わる19時までその場にいてしまったみたいだった。
結局引き時がわからず、最後まで人様の部活を眺めるとんでもないやつになっていった。
そんな自分が嫌になる。
ここ最近、流されてばかりいる自分が情けなくてしょうがなかった。
「オタクくん!おつ~。」
「お・・・お疲れ様。」
「最後までみてたね~!うちのスーパープレイみてた?」
そう言って彼女は鼻を高くして、ぽんと肩に手を置く。
今の俺の中ではフレネミーはなんかスゲー頑張り屋に見えて・・・いつも以上に目線を合わせずらくなっていた。
「す・・・すごかった。気が付いたら・・・こんな時間まで見てた。」
「えへへ!でしょでしょ!うちバスケに命かけてますから!」
そう言って彼女はバンバンと背中を叩く。
妙に力があって痛い。
「ねえ、今度オタクくんもバスケやる?」
「いや・・・俺、運動神経悪いしさ。ドリブルとかもできないかも。」
恥ずかしいけど、俺の運動神経はそのレベルだった。
すると、彼女は指を顎に当てて考えた。
そして、何かを思いついて・・・にやりと含みの笑顔をする。
その様子に、何か悪い予感がしたが・・・俺は相変わらず流されてばかりだった。
「じゃあ・・・土曜暇?」
「え・・・なんで?」
「うちがバスケ教えてあげるから・・・今度やろうよ!」
そう言って、彼女は得意げにボールを回す。
こうして・・・俺は少しずつ彼女に支配されていくのだった。




