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ふれねさんは、フレネミー  作者: kyonkyon


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5/5

ふれねさんは、フレネミー 5話

春も5月に近づくと、一気に気温が上がり・・・陽光も少しずつ強さを増していく。

そんな中、なぜか俺は坂道を登って森林まで来ていた。


「な・・・なんであいつこんなとこまで呼び出してるんだ?」


俺の地元の町の中とはいえほとんど山に進んでいた。

というか、俺はあまり外に出ないので、ここまで来たことがない。

長野県は無駄に坂道が多くて本当に困ったものである。


そして、木々が生い茂ってきて俺は車通りのないところまで来ていた。

先ほどまで照り付けていた太陽がまるでタープを張ったかのように一気にシャットアウトして涼しくなっていく。

そして、森の中だというのにいろんな工場があり、そこを抜けると森林公園が目の前になった。

近所の大きな河川があり、大きなつり橋がかかっている。


「・・・俺、あいつにバスケ誘われに来たんだよな?」


辺りを探してもフレネミーはいない。

というか、本当に待ち合わせの約束したのかも怪しい。

いっそ俺の妄想の中ならいいんだけどな。


そう思って俺は森林の花や草木を眺めながら、コーラを飲む。

いや、やっぱ今日は俺の勘違いだったのかもしれない。

明後日フレネミーにはすれ違って会えなかった。

そういうことにしよう。


そう思って、自転車に向かったその時だった。


「わあ!」

「ぎいやああああああああ!!!!」


なにか大きな声が聞こえて、俺は腰がすくんでしまった。

芝生に尻餅をついてその主をみる。


「あっはっはっはっは!ご・・・ごめん・・・!そんなリアクション・・・・するとは思えなくて。」


やはり、声の主はフレネミーだった。

相変わらず少し紫がかった髪をツインテールにして、小悪魔のような髪飾りをしている。

余程俺の反応がツボったのか、腹を抱えて笑っていた。


「なんだよ・・・からかうなら帰るからな!」

「ええー!ご・・・ごめんて。」


そう言ってフレネミーは両手を合わせて申し訳なさそうに謝罪をする。

相変わらず、フレンドなのかエネミーなのかわからないやつだ。

ほんと・・・俺はこいつが苦手なはずなのにどうしてこうも休みの日に会っているのだろう。


「じゃあ・・・バスケしよっか!」

「はいはい、お手柔らかに頼むよ。」


ちょっとドッキリには腹が立ったのだけど、そんなことで気を取られちゃいけない。

そうなったらこいつの思うつぼだしな。


この公園には、屋外のハーフバスケットコートがあった

他にもスケートボードのコースや、ボルダリングなど・・・0円でできるにしてはアクティビティに溢れているところだった。

そんな中、ボールをついてみる。


「あ・・・あれ。」


しかし、ボールがバウンドする度に低くなり、俺は気が付いたらバウンドが足りずにコロコロとコートに転がってしまった。


か・・・かっこ悪い。

俺は赤面して固まってしまう。

フレネミーに笑われるかと一瞬不安になったのだが、そんなことはなかった。


「う~ん・・・ちょっと手首が固いかも。」

「手首?」

「うん!こうやって、手首を柔らかくスナップしてみて!うちも最初はそうだったから!」

「こ・・・こう?」


フレネミーがお手本を見せるけど・・・全然うまくいかない。

すると、フレネミーは急に近づいてきた。


「ちょっと手を貸して!」

「手・・・手?」

「ほら!」


すると、フレネミーは俺の手の甲をつかんでバスケットボールをバウンドさせる。

ボールをつかむときは柔らかく受け止めて、つくときは力強く押していた。

だけど、それ以上にフレネミーの手の感触が気になってしまう。


サラサラの肌に・・・細長い指、そして自分よりも運動するからか、少し体温が高い。

その妙に生々しい女子の感触の方に意識が取られて、俺は完全にバスケをしていることを忘れていた。


「な・・・!」

「おー、なんかいい感じになった!そうそう、まずはこうやって基礎の動きを鳴らしてからドリブルとかやればいいからね!」


そう言って、何分もフレネミーの横で下手くそなドリブルをする。

だけど、さっきまでボールをろくにバウンドもできなかった俺が小さく成長するのは、妙な達成感があった。


「いいね!慣れると・・・こういうのもできるよ!」


そういってフレネミーはボールを持って足を前後に開くと股の間をボールが抜けて、交前足と後ろ足を入れ替えながら、細長い指でボールを転がしたりとかまるでマジシャンのように動いていた。


「い・・・いや!流石にそれは・・・!」

「あはは!ここまでは無理だよね!」


俺は気が付いたら森の中で汗だくになっていった。

息が上がり、こんなに運動をしたのは初めてかもしれない。

だけど、フレネミーは俺以上に動いてるのに・・・息が上がる様子もなかった。


「オタクくん・・・死にそうじゃん。ちょっと休む?」

「あ・・・ああ。」


すると、フレネミーは施設の人にバスケットボールを返すと俺の手を引いた。

い・・・いかん、今手汗すごいからキモがられる。

だけど、そんなこと気にする素振りもなくフレネミーは吊り橋を歩いて、向こう岸まで歩いて行った。


「ここね~ソフトクリームがあるんだよね。」

「そ・・・そうなのか?」

「あ、ここはうちが出すね!さっきのドッキリのお詫び!」


俺たちは木のテーブルに座ると、フレネミーは笑顔でソフトクリームを持ってきていた。

そして、俺に差し出してくる。


「ほーれ、オタクくんはおっきい方と小さい方・・・どっちにする?」

「いや、ぱっと見変わらんだろ。」

「い~や、こっちの方が・・・0.25巻き少ない。」


そう言って、フレネミーはカッと目を見開いてソフトクリームの先端を俺に近づける。

う・・・うっとうしい。


「あ~わかった、わかったから小さい方もらうよ!」

「ほんと?オタクくん優しいじゃん!」


そう言って、フレネミーはおいしそうにソフトクリームをほおばる。

でも・・・なんというか食べ方が独特だ。

普通に食えばいいのに・・・彼女の舌がクリームを絡めとるかのように舐めていた。


なんだその舐め方。


彼女のプルンとした唇に少し長めの舌が別の生き物のようにうねっている。

女子ってもっと上品に食べるのかと思ったら、意外と食べ方に特徴が出てるのか。


食べるのをやめたなと思ったらにヘラと笑うフレネミーと目が合ってしまった。


「・・・オタクくん、見過ぎじゃない?」

「み・・・見てないし!」

「いーや、すごい見てたよ。さては、ムッツりなのかな?」


そう言って、フレネミーは人によっては悲鳴をあげそうなのに、余裕の表情だった。

スクールカースト下位の俺の視線など気にしないということだろうか?


それはそれで男としてのプライドが傷つくのだが・・・いや、ここは一泡吹かせるチャンスかもしれない。


「ムッツりだったらどうなのさ?」

「気にしない!だってウチとオタクくんはフレンドだからさ!」

「エネミーの可能性は?」

「エネミーってなあに?」


こ・・・こいつ。

こういう時だっけ無知になりやがるな。


しかし、そんな時だった。

急に物陰から何かが飛び出してきて・・・俺はその様子に言葉を失った。


「え・・・。」

「うそ・・・!」


それは、ツキノワグマという生き物だった。

体長は2m弱で迫力があり、明らかに大型犬よりも筋肉質でのっしのっしと歩いていた。


「た・・・たすけ・・・!」


俺は気が付いたら、フレネミーの前にいた。

そして、ツキノワグマと目線を合わせつつ・・・一定の距離を保っている。

なぜ、俺がフレネミーをかばうように前に出たのかはわからない。


野生動物は何考えてるかわからない。

急に殺しにかかるかもしれない。

そんな恐怖におびえながら・・・俺は必死に図鑑で見たツキノワグマの生態とか、ネットで何度か見た熊対策の内容を思い出していた。


さっきまで恐れていたフレネミーの手を・・・今は臆することなく握っている。


「大丈夫・・・大丈夫だ・・・だから、安心して。絶対に大きな声を出しちゃだめだ。」


そういうのだが、半分自分に言い聞かせていた。

ツキノワグマも俺たちと対峙して驚いている。


これは襲いに来たわけではなく・・・間違って人里に降りてきてしまったのだ。

ここで大きな声を出したり逃げたら、下手に刺激して襲い掛かってくる。

逃げるんじゃなくて、対峙しながら下がるんだ。


「いい?絶対に背中を向けないように静かに下がって。」

「う・・・うん。」


俺たちは少しずつ下がり・・・ある程度距離を置く。

その時だった。


ツキノワグマは俺たちをまた見つめると、森の中に消えていった。


俺は、ぺたんと座ると・・・その瞬間だった。

フレネミーは俺を抱きしめていた。


いつものからかいの様子もなく、酷く怯えていて手が震えている。

怖いもの知らずの不敵な笑顔も・・・この時はなくなっていた。

その様子に、俺は頭が真っ白になっていった。



「オタクく~ん!!怖かった・・・怖かったよー!」


俺も怖かった。

だけど、こういう時になぜだかフレネミーを守らなきゃだと思った。

いやいや来ていた休みの日だったけど、俺はある意味で彼女を助けることが出来たのだった。


そして、この行動が・・・少しずつ俺たちの距離感を近づけるとは、思いもしなかった。



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