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第二話 初戦闘

評価、コメント、ブックマークありがとうございます!

「…ちょっと待って。い、いったん落ち着こう。」


 テイムできた喜びで浮かれていたミツハだったが、ふと我に返った。目の前で起きたありえないことをきちんと把握しなくては。


「ちゃんと確認しないと…。」



 昨日から何度も見ていたステータス画面を、もう一度開く。


 ◇


 名前:胡蝶 ミツハ

 年齢:18

 種族:人間

 レベル:1

 ジョブ:テイマー

 HP:80 / 80

 MP:110 / 110

 SP:90 / 90

 STR:5

 VIT:5

 AGI:9

 DEX:6

 INT:7

 MND:4

 LUK:15


【スキル】

 ・テイム(I)


 契約数:1 / 1


【契約虫】NEW


 ・オオクロアリ(女王)NEW


 ◇


「…本当に、テイムできてる。」


 何度見ても、契約数は1/1。

 その数字を確認しただけで、胸の奥が少しだけ熱くなる。

 しかし、今度はスキルそのものが気になった。


「詳細…。」


 ステータス画面を操作すると、テイム(I)の詳細情報が表示された。


 ◇


 【テイム(I)】


 対象:昆虫


 ◇


「…………。」


 ミツハの動きが止まった。

 もう一度、画面を見る。


「……え?」


 本来であれば。


 『テイム(Ⅰ)』

 ランクⅠに区分される魔物をテイムすることができる。


 そう表示されるはずだった。

 ミツハも、当然そうだと思っていた。

 だからこそ、プチスパイダーやラージラットをテイムしようとしていたのだ。なのに…。


「……昆虫?」


 ミツハは、表示された一文字を指でなぞるように見つめる。


 ランクⅠではない。

 数字ですらない。

 魔物ですらない。


『昆虫』


「……どういうこと?」


 ミツハは首を傾げた。

 そして、しばらく考えたあと、ある可能性に思い至る。

 魔物とそうでないただの昆虫。

 ミツハの頭の中で、バラバラだった出来事が少しずつ繋がっていく。


「……もしかして。」


 ミツハは、もう一度スキルの詳細を確認する。


【テイム(I)】


 対象:昆虫


「これ……」


 ミツハは画面を見つめたまま、小さく呟いた。


「1じゃなくて……I?インセクトのアイ??」


 今まで、ずっと勘違いしていた。

 そして、その意味を理解した瞬間。

 ミツハの頭の中に、昨日までの出来事が一気に蘇ってきた。


 今まで、ずっと勘違いしていた。

 テイム(I)の『I』は、スキルのランクを示すローマ数字ではない。

 アルファベットのI。


「…プチスパイダー。」


 プチスパイダーは蜘蛛の姿をしていた。

 見た目だけなら、どう考えても昆虫。

 だが、明確に違うところと言えば、魔物かそうでないかだ。


「でも…あれは昆虫じゃない。」


 プチスパイダーは、現実の蜘蛛とは違う。

 ダンジョンから生まれた魔物だ。

 それならば、テイムできなかった理由も説明がつく。


「……魔物だから。」


 ラージラットも同じだ。

 どれだけ弱い魔物でも、どれだけテイム(I)の対象になりそうな強さでも、昆虫ではない。

 だから、何度やっても成功しなかった。

 そして。


「アリは……昆虫だから。」


 ミツハの視線が、透明な飼育ケースへと向く。

 その中には、先ほどテイムに成功した女王アリがいる。


「…………。」


 すべてが繋がった。

 テイムできなかったのではない。

 自分が、テイムできる対象を勘違いしていただけだったのだ。

 ミツハは、もう一度ステータス画面を開く。

 すると、今まで存在していなかった項目が追加されていることに気がついた。


 【契約虫】


 ・オオクロアリ(女王)NEW


「……このスキル、本当に虫をテイムするためのスキルなんだ…。でもこんなスキル聞いたこともないけど…。…もしかして…ユニークスキルなの?」


 ユニークスキル。

 それは、この世界に一つしか存在しない、唯一無二のスキルだ。

 同じ名前、同じ効果を持つスキルは、この世に二つと存在しない。


 そして現在、世界でトップクラスの探索者として知られている者たちの中には、ユニークスキルを持つ者や、通常の職業からさらに上位へと派生した上位職に就いている者が数多く存在している。


 つまり、ユニークスキルを持っているというだけで、探索者として大きなアドバンテージになるということだ。


「…私にも、その可能性があるってこと?」


 このスキルがあれば、探索者として十分にやっていける可能性があるということに、ミツハは身震いした。


 ミツハはさらに契約虫であるオオクロアリの詳細を表示する。


 ◇


 ・オオクロアリ(女王)


【詳細】


 名前:なし

 種族:魔昆虫

 レベル:1

 階級:女王

 眷属:68匹

 状態:やや空腹

 HP30+6.8

 MP50+6.8

 STR6+6.8

 VIT4+6.8

 AGI6+6.8

 INT2+6.8

 DEX6+6.8

 MND:6+6.8


 ・固有スキル

【眷属生成】【フェロモン支配】【還元(Ⅰ)】



 ◇


「私より強くない?それに……スキルもちゃんとあるんだ……。魔昆虫って言うのも聞いたことないし、ステータスにプラスがついているし…。こんなに小さいのに…。」


 6.8という数字について少し考えるが、その答えはすぐに出た。


「眷属の数ってことだよね?一匹で0.1ポイント加算されてる。」


 表示されたステータスを指でなぞりながら、ミツハは首を傾げる。


「たぶん、この【還元(Ⅰ)】ってスキルの効果かな?じゃあ、眷属が百匹になったら……全部、10プラスになるの?いや、でもそうなると、女王自身がどんどん強くなるわけで…。」


 ぶつぶつと独り言を続ける。


「ちなみに眷属達のステータスは…。」


 ◇


 種族:魔昆虫

 階級:働きアリ

 眷属:68匹

【内訳】

 ・働きアリ41匹

 ・休息アリ14匹

 ・不活発アリ13匹

 状態:やや空腹

 HP15

 MP25

 STR3

 VIT2

 AGI3

 INT1

 DEX3

 MND:3



 ・眷属スキル

【怪力(Ⅰ)】【蟻酸】【女王への忠誠】


 ◇


「レベル表記がないけど、女王アリのステータス数値の約半分ってことね。スキルだけはわかれているみたいだけど、あくまでも女王基準のステータスってことは、女王がレベルアップすれば、眷属も強くなる。今のところランクⅠの魔物より少し弱いくらいだけど、数によっては通常の探索者パーティーを凌駕するよね。小さいのに…。」


 ミツハは、新しく追加されていた情報を黙々と覗いて言った。

 深く知ることで、今後の自分の行動を最適化し、いかに効率良く稼ぐかを図るためだ。


 しかし、いくら考えたところで、今の状態では机上の空論。実際にアリ達の動きを見てみないことには始まらないことに思い至る。


 ◇


 ミツハは蟻の巣が入ったアクリルケースの蓋を開けた。


「ねえ、私の声が聞こえる?」


 ミツハは、蟻たちに呼びかける。


「わぁ…。」


 声をかけた瞬間先ほどまで餌に群がっていたアリたちが、一斉に動きを止めた。そして、何十本もの触角がミツハへ向く。

 その統率された動きに、ミツハは思わず感動する。


「すごいっ!すごいっ!皆、私の声がちゃんと聞こえるんだね!」


 どうやら、言葉そのものを理解しているらしい。ならば次は、どこまで細かい指示を理解できるのか、ミツハはちょっとした実験を試してみることにした。


「じゃあ、これから私が言うことをみんなにやってもらうね。まずは、右前脚を上げて!」


 蟻たちは寸分違わず、一斉に右前脚を上げた。

 ミツハの顔がぱっと明るくなる。


「うわぁー。ちゃんと理解できてるんだねっ!じゃあ、次は、そのまま左後脚を上げてみて!」


 先ほどと同様に、蟻たちはミツハの指示を実行する。


「いいね、いいね!次に行く前に、今あげている脚を降ろしていいよ。」


 蟻たちが一斉に脚を降ろす。


「うんうん、できてるね。じゃあ、右を向いて!!」


 蟻たちは一斉に六本の脚を動かし、身体の向きを右へと変えた。


「すごいっ!かわいいっ!!私の子たちって天才!?」


 褒められた蟻たちは、しばらくその場で動かなかった。

 けれど、何匹かの触角が、先ほどよりも激しく動いている。

よく見てみると、動かない個体もいるようだが、今はそんなことよりも目の前で起きている出来事に感動していた。


 マスターであるミツハに褒められることを、その小さな身体でも受け止めたアリ達。アリ達が喜びと言える感情を身体で表現したことで、ミツハは胸の奥に、ふわりとした感覚が広がった気がした。


「え…?嬉しい…?」


 ミツハは目を丸くする。どうしてそう思ったのか、自分でも分からない。

 ただ、確かに感じるのだ。この子たちは今、ミツハに褒められたことを喜んでいる。


「ふふっ…。」


 自然と、頬が緩んでいく。

 ただ、今は嬉しかった。自分の言葉を理解してくれる。自分を見てくれる

 たったそれだけのことなのに。胸の奥が、じんわりと温かくなる。

 ミツハはその感覚を、ゆっくりと噛みしめるように目の前のアリたちを見つめた。

 そして、自分でも驚くほど自然に、笑顔を作った。


 アリ達の触角が、一斉に揺れた。

 まるで返事をするようなその動きに、ミツハの笑顔がさらに深くなる。

 ミツハは久しぶりに、心から笑っていた。


 ◇


 翌日。

 あれから様々な、実験をしてみたミツハだったが、夜が深くになるにつれ、蟻たちの動きが鈍くなったことで実験は強制的に終了となった。


 そして、今朝は早々と支度を済ませると、急いで原付バイクにまたがり、ダンジョンへと向かった。


 ダンジョンへ入場すると、すぐに人目に付きにくい場所を探し、カバンからアリ達が入ったアクリルケースを出す。


「ここなら人は来なさそうだよね。」


 まずは働きアリ5匹に命令し、アクリルケースの外に出てもらう。

 そして、動きの鈍そうな魔物をミツハが拘束し、蟻たちに攻撃してもらう作戦だ。


「こんなに小さいのに、昨日は簡単に椅子を持ち上げてたもんね。私が乗ってても全然へっちゃらだったし。」


 ミツハは出した蟻たちに肩で待機を命じる。多少激しく動いても落ちないのは確認済みだ。


 それと昨日の実験では、アリならではのどれだけ重い物を運べるかを調べていた。

 通常のアリは、自分の重さの数倍から10倍ほどの重さまで持ち運ぶことが可能だ。

 その元の虫としての特性がどう強化されているのかを知ったミツハは、今日は攻撃力を見てみようと思っていた。


 しかしVITの数値が心もとないからと、拘束して安全に攻撃できる魔物を探す。


 ミツハはあたりを見回し、目的の魔物を探す。


「あ、いたっ!!ダンジョンモスだ!」


 ダンジョンモスは、体長30cmほどの蛾の魔物だ。

 飛んでいるけど動きが遅く、体表も柔らかい。

 攻撃方法も、噛みつきくらいしかないので、上から押さえつければ、リスクなしで攻撃できるはずだ。


 ミツハは、虫取りの経験を活かし、素早く移動する。

 そして、アルミロッドすら買えないミツハが持ってきた武器である熊手(納屋にあった)を巧みに操り、低空を飛んでいたダンジョンモスを地面に拘束する。


「えいっ!」


 低空を飛んでいたダンジョンモスへ熊手を引っかけ、そのまま地面へ押さえつける。ダンジョンモスが羽をばたつかせるが熊手に押さえつけられているため、うまく飛び上がることができない。


「よしっ!まずは、一匹で攻撃して!!」


 ミツハが指示をすると、一匹の蟻が肩から飛び降りる。

 小さな身体がふわりとダンジョンモスへ向かって舞い降りる。


 そして一匹の働きアリは、ダンジョンモスの柔らかい胴体を噛みつき始めた。

 よく見てみると、アリの腹部の先端から蟻酸も噴出しているようで、ダンジョンモスの胴体に黒い焦げ跡のような斑点が浮かび上がる。


 一匹で攻撃し続けること、5分。

 ようやくダンジョンモスの抵抗がなくなり、倒したことを確認する。


「ずいぶん時間がかかったように見えるけど…。」


 自分の指先ほどしかないアリと、三十センチほどもあるダンジョンモス。その体格差を考えれば、


「十分、強いよねっ!」


 ミツハが思考しているうちに、ダンジョンモスを倒し終えた働きアリは、そのまま魔石を咥え持ち上げた。


「わざわざありがとうねっ!本当に賢いなぁー!」


 褒められたアリは、触角を激しく動かしながら、その場で身体を小刻みに動かしている。


 魔石を受け取ると、「10円ゲット!」と、小さくガッツポーズをする。


「蟻酸は強そうに見えたけど、身体が小さい分、威力も効果範囲もまだ弱いね。それにスキルだから、MPを使っているんだよね。もしなくなれば攻撃手段はかみつきだけになるから…やっぱりそうなると、複数体で攻撃に加わることがよさそうよね。」


 昨日の実験からやはりアリの真骨頂は数で戦うことだと、改めて思うミツハ。


「次は、複数で試してみよう。」


 先ほどの個体は休ませ、別の個体と入れ替える。

 すると、肩にいる五匹が、ミツハの肩の上で触角を激しく動かし始めた。先ほどの戦いを見ていたのだろう。

 まるで、『次は私たち!』と、アピールしているようだった。


「はいはい。分かったから。」


 ミツハは思わず笑う。


「ちゃんと順番ね。」


 そんなアリたちを肩に乗せたまま、次のダンジョンモスを探す。


「あ、いた!!」


 先ほどと同じように見つけたダンジョンモスを拘束して、次は肩に乗っている5匹で攻撃を加えるように命令する。


「よし、5匹で攻撃開始っ!!」


 一斉に肩から飛び降りる5匹の働きアリ。

 各々近い場所に着地し、柔らかい場所を的確に攻撃しはじめる。


 先ほどと同じように攻撃すると思っていたミツハだったが、5匹の攻撃で討伐に掛かった時間は、2分もかからなかった。

 先ほどとは違い、5匹が連携攻撃をしたからだ。


「すごい!2匹がかみつきで傷を作って、残りの3匹で蟻酸をその傷に直接注入してる!!」


 ミツハは攻撃命令を出しただけなのに、働きアリ達が勝手に連携をし、攻撃を加えたことにミツハは感動を覚えた。


「元々持っている狩猟本能かなぁ?それともINTのおかげで頭がよくなったから?」


「うーん?」と思考するミツハだったが、今はその疑問を一旦置いておくことにした。


 アリ達から魔石を受け取り、ポケットに入れる。

 労いの言葉をかけて、一度アリ達をアクリルケースに戻した。


 ◇


 昨日の実験結果のうち、アリたちはそれぞれ働きアリ、休憩アリ、不活性アリがいることがわかっている。


「働きアリが41匹で、休息アリが14匹。不活発アリが13匹……」


 ミツハは、アクリルケースの中を覗き込む。

 ケースの中では、先ほど戦闘を終えたアリたちが戻ってきていた。

 その中から、数匹がすぐに別のアリと入れ替わる。


「……やっぱり」


 ミツハは目を細めた。

 戦闘に参加していたアリが巣の中に戻ってくると、今度は休んでいたアリたちが巣の外へ出ていく。

 まるで、交代する要員が決められているかのようだった。


「これ、ちゃんとローテーションしてるんだ。」


 最初は、単純に状態の違いを表しているだけだと思っていた。

 しかし、実際に動きを見てみると、どうやらそうではないらしい。


「働きアリは、今みたいに外に出て活動する子たち……」


 ミツハは指を折りながら整理していく。


「休息アリは、働きアリが戻ってきたときに交代する子たち……かな?それで働きアリ達が休息アリに変わる。」


 ケースの中を覗く。


「じゃあ…不活発アリは?」


 ミツハは、ケースの隅に集まっているアリたちへ視線を向ける。

 そこにいるアリたちは、ほとんど動いていない。

 視線だけはミツハのことを見上げているが、ほとんど動こうとしなかった。昨日の実験でも、椅子を持ち上げるメンバーの中には入っておらず、もちろん休息アリもその実験には不参加であった。



「ちゃんと蟻としてのコロニーの役割に従順なんだね。68匹全員で戦えればもっと強いんだろうけど、下手すると全滅の危険もあるし、ちょうどいいのかもね。そうなると、働きアリが41匹だから、4班に分けて行動させておいた方がいいかな?」


 不活性アリ達のことを棚上げして、ミツハは蟻たちに、10匹で1班を編成するように命令を下す。

 すると、働きアリたちはアクリスケース内で、キレイな隊列を作り始めた。


「おおっ!どこかの体育大みたいなキレイな動き!」


 隊列を見ていると、一匹だけあぶれてオロオロしている個体を発見する。


「あっ、一匹あまっちゃってた。うーん、じゃあ君は、休憩アリに伝令をする役ね。戦い終わった働きアリ達が帰ってきたら、次に働きアリになる子達に指示を出すの。いい?」


 ミツハに直接役割を与えられたことで、右前脚を上げ了承を示す。


「……ふふっ。了解ってことね。」


 昨日の実験で確認した、アリたちの返事。

 どうやら、この子は自分に与えられた役割を理解しているらしい。


「ちゃんと交代制にするから、無理しちゃダメだよ。」


 ミツハは肩に10匹の蟻達を乗せ、歩き出した。


 ◇


「十匹、いって!」


 ミツハの指示とともに、肩に乗っていたアリたちが一斉に飛び降りる。

 先ほどと同じように、数匹がダンジョンモスへ噛みつき、その傷口へ別の個体が蟻酸を流し込む。

 十匹のアリたちは、その実、見事な連携を見せていた。


「すごい…。」


 ミツハは、その様子をじっと観察していた。

 一匹で戦わせたときとは、明らかに違う。

 誰かに細かな指示を出しているわけでもないのに、自然と役割が分かれている。


「……やっぱり、群れで戦うことが前提なんだ。」


そう呟いたところで、ダンジョンモスが動かなくなった。


「討伐完了っと」


 戦闘を終えたアリたちは、魔石を拾ってミツハのもとへ戻ってくる。

 そして、先ほど任命した伝令役の一匹が、休息していたアリを呼びに行く。


「お、ちゃんと交代してる。」


 ミツハが声をかけると、次の班の10匹のアリたちが一斉に肩へと登ってくる。


「じゃあ、次の班ね。」


 こうしてミツハは、十匹ずつ班を交代させながら、ダンジョンモスとの戦闘を続けた。

アリたちは戦闘を繰り返すたびに、まるで自分たちで最適な動きを探すかのように、連携を変えていく。


 噛みつきに集中する個体。蟻酸を使う個体。噛みつきと蟻酸役を交代する個体。


「……すごいなぁ。」


 ミツハは、何度目か分からない感嘆の言葉を漏らした。

 戦闘を繰り返しているというのに、アリたちに目立った疲労は見られない。

 十匹ずつの班を交代させているため、一匹一匹が無理をする必要がないのだ。


「これなら……ずっと戦い続けられるんじゃない?」


 もちろん、魔力や体力には限界があるだろう。

 それでも、少なくとも今のミツハには、アリたちが疲弊しているようには見えなかった。


 むしろ、


「私のほうが疲れてきた…。」


 何度も魔石を拾い、アリたちの様子を観察し続けたミツハのほうが疲労を感じ始めていた。


「……ちょっと休憩しようかな。」


 そう呟いた、その時だった。

 突然、視界の端に見慣れた表示が浮かび上がった。


 ◇


【レベルが上がりました】


 レベル:1 → 2


 ◇


「……え?」


 ミツハは、思わず目を瞬かせる。


「レベルが上がった?」


 昨日まで何度確認しても、レベル1から変化することのなかった自分のステータス。

 それが今、確かにレベル2へと変わっていた。


「やった……!」


 思わず拳を握る。

 しかし、喜ぶミツハの目の前で、さらにもう一つ表示が現れた。


 ◇


【契約虫のレベルが上がりました】


 対象:オオクロアリ(女王)


 レベル:1 → 2


 ◇


「……え?」


 ミツハの表情が固まる。


「女王アリも……?」


 視線をアクリルケースへ向ける。

 そこには、いつもと変わらない様子で触角を動かす女王アリの姿があった。


「女王アリ自身が戦闘に参加しなくてもレベルは上がるんだね!私も、攻撃はしてないけど、テイムしている子が戦闘に参加したことで、レベルが上がったんだね。」


 ミツハは、納得したように何度も頷く。


 これで、いくつか分かったことがある。

 アリたちは、ミツハの命令を正確に理解できる。

 複数で戦わせれば、互いに連携して戦うことができる。

 そして、戦闘に参加したアリたちを交代させることで、疲労を抑えながら戦い続けることもできる。

 さらに、戦闘によって得た経験値は、女王アリにも共有されるらしい。


「みんなお疲れ様」


 そう声をかけると、十匹の触角が一斉に動いた。


「一度、休憩を入れるね。みんな一度巣に戻ってね。」


 アクリルケースを取り出し一匹ずつケースの中へ戻していった。

 最後の一匹がケースへ戻ったことを確認すると、蓋をしっかり閉める。


「じゃあ、地上に帰ろうか!」


 ◇


 名前:胡蝶 ミツハ

 年齢:18

 種族:人間

 レベル:2

 ジョブ:テイマー


 HP:80 → 85 / 85

 MP:110 → 115 / 115

 SP:90 → 95 / 95


 STR:5 → 6

 VIT:5 → 6

 AGI:9 → 10

 DEX:6 → 7

 INT:7 → 8

 MND:4 → 5

 LUK:15 → 15


【スキル】

 ・テイム(I)


 契約数:1 / 1


【契約虫】

 ・オオクロアリ(女王)


 ◇


 ・オオクロアリ(女王)


【詳細】


 名前:なし

 種族:魔昆虫

 レベル:2

 階級:女王

 眷属:68匹

 眷属上限:68 → 78匹 NEW

 状態:やや空腹


 HP 30 → 33 + 6.8

 MP 50 → 53+ 6.8

 STR 6 → 7 + 6.8

 VIT 4 → 5 + 6.8

 AGI 6 → 7 + 6.8

 INT 2 → 3 + 6.8

 DEX 6 → 7 + 6.8

 MND 6 → 7+ 6.8


 ・固有スキル

【眷属生成】【フェロモン支配】【眷属還元】


 ◇


本作を読んでいただきありがとうございました。

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