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第23話 最後の証明

 三日後。


 王都中央広場は、人で埋め尽くされていた。


 貴族、商人、職人、兵士、信徒。


 誰もが、この国の未来を見届けようとしている。


 中央の高台。


 左に王太子アレクシス。


 右に私。


 教会代表と重臣が並ぶ。


 ざわめきが止む。


 王太子が一歩前へ出た。


「私は王太子として育てられた」


 低く、揺るぎない声。


「王家の正統。軍の統率。外交の実績」


 民衆が頷く。


「安定を約束できる」


 確かに。


 彼は正しい。


「レティシアの才覚は認める」


 視線が私へ向く。


「だが王位は実験ではない」


 静かな重み。


 安定か、変革か。


 彼は下がる。


 私の番。


 深く息を吸う。


 数千の視線が刺さる。


「私は婚約破棄され、追放されました」


 ざわめき。


「王太子に宿るはずの戴冠の兆しが、私に現れたから」


 視線を逸らさない。


「私は選ばれなかった」


 静寂。


「守られる王妃として」


 一歩前へ出る。


「ですが、王になる可能性を与えられた」


 胸に手を当てる。


「私は守られるために王になるのではありません」


 声を強める。


「守るために王になります」


 風が吹く。


「安定は尊い」


 王太子を見る。


「ですが、今の王国は静かに腐りかけている」


 教会席がざわつく。


「横領、密約、権力の私物化」


 民衆がざわめく。


「それを正すために、私は戦います」


 沈黙。


「敵国将軍と通じていると疑われました」


 エヴァンの名を出さない。


「私は誰の所有物でもありません」


 強く言う。


「王になるなら、誰にも従わない」


 王太子の瞳が揺れる。


「私は悪女と呼ばれても構いません」


 広場が静まる。


「それでも、この国を選びます」


 最後に。


「三ヶ月後、決めるのは評議会です」


 民を見渡す。


「ですが、今日決めるのはあなた方です」


 静寂。


 やがて。


 どこかで拍手が起こる。


 小さく。


 だが確実に。


 拍手は広がる。


 歓声に変わる。


 王太子はそれを見つめている。


 苦く。


 だが誇らしげに。


 そのとき。


 群衆の中から叫び声。


「魔女を殺せ!」


 刃が閃く。


 急進派司祭カロス。


 短剣が一直線に私へ向かう。


 反応が遅れた。


 その瞬間。


 体が押し倒される。


 衝撃。


 温かい液体。


「……殿下?」


 王太子が、私の前に立っていた。


 肩に深い傷。


 血が溢れる。


 カロスは騎士に取り押さえられる。


 広場が悲鳴に包まれる。


「なぜ」


 私は震える声で問う。


 王太子が微笑む。


「守ると言った」


 その言葉が胸を裂く。


「私は王になる」


 彼は苦しく息を吐く。


「だが、君が王になるなら」


 視線が真っ直ぐ私を射抜く。


「命は賭ける」


 私は初めて、声を失った。


 凍らせたはずの感情が、砕ける。


 王太子は支えられながら退く。


 広場は騒然。


 だが民衆の視線は、私へ向いている。


 守られた。


 だが同時に。


 守らせてしまった。


 私は震える手を握り締める。


 王になる。


 その代償が。


 今、目の前で血を流している。


 風が吹く。


 歓声と悲鳴が交じる中。


 私は立っている。


 王になる女として。

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