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【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】  作者: ナロー


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【『星になった銃使い』】 4


 およそ一ヶ月後。


 この一ヶ月の間、暗殺者は依然として部屋の隅にうずくまり、その身体はとても痩せ細っていた。


 ろくに食事も取ろうとしないので、カミラを始めとした使用人達が無理矢理にでも食べさせて、ときには点滴を施して、なんとか生き長らえさせているような状態だった。


 そうして、そんな暗殺者の元へとアイラはまた訪れていた。



「久しぶり。枯れ木みたいな姿になってるけど、ぎりぎり生きてるみたいね」


「…………」



 暗殺者は膝を抱えて座り、以前と同じように膝に顔を埋めていた。



「挨拶がないところも相変わらずね。まあいいわ。さっそく本題を話すけど、貴女がいた組織、潰してきたわ」


「…………!」



 暗殺者が顔を上げた。痩せこけた顔に窪んだ目がついていて、まるで骸骨のようだった。


 その目はフクロウのように見開かれていた。



「苦労したわ。手掛かりは少ないくせに組織の規模はやたらとでかくて、完全に叩き潰そうとしたら一ヶ月も掛かっちゃった。ま、早い方だと自慢しておくけどね」


「…………」


「警察に捕まるのが嫌みたいで自殺しちゃった人もいたし、中には貴女と同じ境遇で口封じの為に殺されちゃった人もいたけどね。流石の私でも全員を生け捕りにすることは出来なかったわ。それでも大部分は警察にぶちこんでやったけど。とにかく、これで貴女を縛るものは名実共になくなったことになるってわけ」


「……何も、変わりません……」



 暗殺者は目を伏せる。



「……私は既にいらない存在です……こうして生きていることすら、必要ない……貴女が組織を潰したとしても、それは変わらない……」


「あんたねえ」



 アイラは自分の腰に手を当てた。威風堂々と言う。



「何も変わらない、存在理由が欲しいっていうなら、私があげてあげるわ。私の専属メイドになりなさい。貴女の持つ全ての知識と技術を、私の為に使いなさい」


「…………!」



 暗殺者は再びアイラを見た。



「…………何故……?」


「理由は簡単。私、専属の使用人が欲しかったのよね。それもお父様の息がかかってなくて、なおかつ超優秀な奴。貴女はそれにぴったりだったってわけ」


「……それだけの理由で……私は貴女を殺そうと……」


「いまは殺そうとしてないじゃない。前に会った時も」


「……それは……」


「私の暗殺は貴女の本意ではなく、あくまで命令されていただけ。命令の無視や失敗は死を意味する、貴女の身体ごと爆散させて証拠を隠滅する。それがあの首輪で、組織のやり方だった。貴女は使い捨ての駒だった」


「…………」


「なら私がその駒を拾って、また使ってやるってわけ。捨てる神あれば拾う神あり、私は拾う女神様ってところね」


「……ですが……」


「うだうだうるさい!」



 アイラはびしっ!と人差し指を向けた。



「いいから言うことを聞きなさい。組織の為に使っていた力を、私の為に使いなさい。貴女はこんなところで無駄死にする人間じゃないし、させないんだから」


「…………」


「前に名前がないって言ってたわよね、貴女の名前も考えておいたわ、感謝しなさい。貴女のこれからの名前は『グロリア』、栄光を掴む者って意味よ。この私に仕える専属メイドとして恥じない立派な名前でしょう?」


「……『グロリア』……」


「名字はまだ考えてないけど、そうね、どうしようかしら?」



 小さな顎に指を当てて考える彼女の耳に、つぶやく声。



「……『ガンナスター』……」


「え?」


「……名字は、『ガンナスター』でお願いします……『グロリア=ガンナスター』……」


「何その名字? ま、貴女が決めたのなら別にいいけど。それじゃあグロリア、まず貴女がやるべきことはご飯を食べなさい。そんな枯れ木みたいな身体じゃあ、専属メイドとして働かせられないじゃない」


「……かしこまりました……アイラ様……」


「よろしい」




 ドアの外で話を聞いていたカミラがつぶやいていた。



「アイラ様も素直じゃありませんね。言い方が回りくどいです。誰に似たのでしょう」



 マギエルがつぶやいた。


「思春期なのだろう。蛙の子は蛙という言葉がある」


「蛙の子はおたまじゃくしですよ」


「細かい奴だ」



 この日、グロリアはアイラの専属メイドに任命された。




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