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【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】  作者: ナロー


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【『星になった銃使い』】 3


 アイラの父親、ウォール=エインズの書斎にて。


 椅子に座るウォールの前にアイラは立っていた。



「呼び出した理由は分かっているな?」


「『どうしてあの暗殺者を警察に通報しないのか?』、でしょう?」



 暗殺者はエインズ家の使用人によって捕らえられたあと、アイラの命令によって屋敷内の別室に監禁されていた。


 その別室には暗殺者が逃げ出したり外部と連絡できないように、外界と遮断する魔法が施されていた。



「分かっているのなら、答えてもらおうか。いくら我が娘の言うことといえど、気紛れでは済まされんぞ。命を狙われたんだからな」


「あの女なら、もう私達の命を狙ってくることはないわよ」


「何故断言出来る?」


「あの女は爆破の首輪で飼い慣らされていたに過ぎないから。その首輪を取った時点で、あの女がどっかの誰かの命令を聞く理由はなくなったわ」


「脅されていただけだと言いたいのか?」


「拘束具を付けてないのに、逃げ出そうとしたり暴れたりしていないのがその証拠じゃない? 食事もろくに取らずに、部屋の隅で縮こまってるみたいだし」


「ただの演技だという可能性もある」


「私はそういう人間だと見たわ」


「…………」


「…………」



 ウォールは視線を鋭くして言った。



「自分専用の使用人が欲しいだけだろう?」



 悪びれずにアイラは答えた。



「ええそうよ。悪い? お父様だってちょくちょく拾ってくるじゃない」


「それとこれでは話が違う」


「命を狙われた私自身が言ってるのよ。どこが不満なの?」


「全部に決まってるだろう」



 ウォールは深すぎる溜め息を吐き、やれやれと首を振った。



「どうしてもわがままを通したいのなら、それに見合った条件を提示してもらうぞ」


「どうせ、『あの暗殺者が所属していた組織を見つけ出して潰すこと』、『あの暗殺者がこの屋敷の正式な使用人になるまでの、食費やその他諸々の費用を私が負担すること』、でしょう?」


「もう一つだ。『もしあの暗殺者が我々エインズ家の者や使用人に危害を加えた場合、即刻警察に突き出して、アイラにも相応の処罰を与える』」


「二つじゃない」


「なら二つだ」


「細かいところでいい加減ね」


「お前に言われたくはない。とにかく、条件は以上だ。我を通したいなら、実力を示せ」


「はいはい、分かったわよ。一、二ヶ月くらいで終わらせるわ」



 踵を返して、アイラは書斎から出ていった。


 その足で、アイラは暗殺者のいる部屋へと向かう。


 暗殺者の部屋の前には、白髪の執事長と年配のメイド長が見張り役として立っていた。



「どう、あの女の様子は?」



 アイラの言葉に執事長が答える。



「おとなしいものです。部屋の隅に膝を抱えるようにして座り込んだまま、ずっと動こうとしません。無論、演技の可能性もありますが」



 アイラが今度はメイド長に尋ねる。



「カミラはどう思った?」


「……執事長と同じく、演技の可能性は充分あります。しかし、私個人の希望的観測を言えば、あれがあの子の性質や気質なのではないかと」


「私もそう思うわ。中に入るわよ」


「充分お気を付けください」


「分かってるわ」



 アイラは室内に入り、部屋の隅にいる暗殺者に向かっていく。


 改めて見るその暗殺者は、アイラと同年代か少し上くらいに見えた。


 その彼女は膝を抱えるようにして座り、立てたその膝に顔を埋めていた。テーブルに置かれている食事は、全然減っていなかった。


 アイラが彼女に言う。



「アイラ=エインズよ。まだ聞いてなかったわね、貴女の名前は?」



 膝に顔を埋めたまま、くぐもった声が返ってくる。



「…………Aセブン、と呼ばれていました」


「コードネームね。それじゃなくて、貴女自身の名前は?」


「…………ありません。Aセブンが、私の名です」


「…………。じゃあ次の質問よ。貴女がいた組織を言いなさい。私が潰してあげるわ」


「…………組織の名前も実態も、私は知りません。命令されて、任務を遂行する。それを死ぬまで繰り返す。それが私です。組織を潰すことなど、出来るわけがありません」


「…………。貴女に聞くのが一番手っ取り早いと思ったけど、当てが外れたわね。さようなら。思い出した時にまた来るわ」


「…………」



 部屋から出たアイラに、執事長が尋ねた。



「アイラ様、調べるのなら、あの者に記録魔法の探査をおこなうのが最も早いのでは?」


「いまのはあの女の、人となりを見る為の質問よ。あの女に嘘を吐いている様子はなかった、それが分かれば充分」


「……そのような人物ではないと判断したのですね」


「私の使用人にするに当たって大事な条件よ。それに、組織を探り出すヒントならもうあるわ」



 アイラは収納魔法から、解除されている首輪を取り出した。



「これを最初の出発点として調べ始めていくわ。お父様との取引だから、私一人でやるから、貴方達は手伝わなくていいからね」



「「…………」」


「じゃ、また時々来るわ。私が組織を潰すまで、あの女を生かしておきなさい」


「「かしこまりました」」



 アイラの一人での調査が始まった。




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