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【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】  作者: ナロー


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【クエル孤児院の来訪者】 1


「クーイや、こっちに来て手伝ってくれんか?」


「はい」



 俺は院長の元に向かいます。院長は近くの林で拾ってきた枝を資材置場に置いているところでした。



「いま枝を拾ってきたのだがな、これだけでは足りないからその材木を切って薪を用意しておいてくれんか」


「分かりました」



 孤児院の院長は既に還暦を迎えている方で、頭の方はつるりとなっています。


 しかし若い者にはまだまだ負けんわいと言って、自分に出来ることを元気良くおこなっています。


 流石に斧を振って薪を用意する体力はもうないみたいですが。


 その時、孤児院で預かっている二人の子供達が駆けてきました。



「院長ー、赤ちゃんが泣いてるー」


「副院長はトイレだから院長にお願いってー」



 副院長は院長の奥さんで、やはり院長と同じく六十代の溌剌とした女性です。



「おやおや、お腹が空いたのかな? それともトイレかな?」



 院長はそう言いながら、子供達とともに孤児院のなかへと入っていきました。


 俺は風魔法を使って一本の材木を空中に持ち上げると、同じく風魔法の刃で切って薪を作っていきます。


 それを後二、三度繰り返して、薪の山を作ると、今度はそれらを風魔法で整然と薪置場に並べていきました。



「こんなもんかな」



 ここまでの作業で、十分から十五分くらい。院長達は魔法をあまり使えないので、体力を使うような作業は俺に任せることが多いです。


 その時、今度は副院長がやってきました。



「クーイ、食材の買い出しをお願い出来ないかい?」


「分かりました」


「ありがとう、これ買い出しのメモね」


「はい」



 メモ用紙を受け取った後、俺は尋ねます。



「さっき赤ちゃんが泣いていたようですが、大丈夫ですか?」


「あの人に任せておけば大丈夫よ。なんたって私よりも子供に好かれるんだから」



 副院長は苦笑しながら肩を竦めます。



「ま、あの人も人助けが好きみたいだし、だから孤児院なんてやってるんだろうし」


「副院長も、だから結婚したんですよね?」


「まったく、言うようになったもんだねクー坊も。いいからさっさと買い出し行ってきな!」



 照れ隠しのように副院長はそう言ってから、付け加えて言いました。



「あ、馬車使うなら馬車代も出さないとね」


「いえ、大丈夫です。転移魔法で向かいます」



 孤児院は王都の中心から外れた、近くに林や丘がある区画に建てられています。


 一応、個人経営の商店なども点在してはいますが、やはり多量の買い出しとなると馬車や馬といった移動手段は必須になってきます。


 あくまで転移魔法を使わないのならの話ですが。


 副院長は小さく息をつきました。



「やれやれ、素直な子だね。別に馬車代くらい、臨時の小遣いだと思って、ちょろまかしても良いだろうに」


「ちょろまかす意味がありませんし、バレた時の方が面倒ですから」


「まったく、頭が良くて素直な子を持って、わたしゃ達は嬉しいよ」


「褒め言葉だと受け取っておきます」


「褒めてるんだよ! 何でそういうとこだけひねくれてるんだよ!」



 副院長は盛大に呆れたような溜め息を吐きました。



「それじゃあ行ってきます」


「はいはい行ってらっしゃい。気を付けるんだよ」


「はい」



 俺は足元に転移魔法の陣を出して、転移していきました。



 買い出しを終えて孤児院に戻った時、既に夕方で茜色の太陽が綺麗でした。


 買い出しのいくつかの紙袋を収納魔法から取り出して、リビングで掃除をしていた副院長に渡します。



「ありがとうね。いまから料理を作るから、勉強でもして待ってておくれよ」


「いえ、手伝います」


「気持ちはありがたいけど、あんたは学生なんだから勉強してな。家の手伝いをして成績が落ちたとか、本末転倒だろう?」



 やんわりとですが、怒られてしまいました。


 仕方ありません。最近の俺の成績はちょうど真ん中ですから。以前は上の方だったのに、です。


 血が繋がっていないとはいえ、親として心配するのは当たり前でしょう。



「分かりました。勉強してきます」


「そうしな」



 俺は背を向けます。副院長はキッチンに向かっていきました。


 流石に、そろそろ成績を少しは上げないといけないかもしれません。目立たないように真ん中を維持してきましたが、それが逆に目立つ原因になりつつあるようです。


 ついこの前も、エインズ家のキャロルさんに目を付けられてしまった感じが否めませんでしたし。


 もし仮にエインズ家が俺のことを本気で調べたら、いままでのことなんかすぐにバレてしまうでしょう。


 そしてもしそれが院長や副院長達に知られてしまったら……。この孤児院に迷惑を掛けるわけにはいきませんから、俺は……。


 その時、玄関のチャイムが鳴りました。誰か来たようです。



「はい、いま出ます」



 玄関に一番近くにいたのが俺だったので、俺が出ます。


 開けたドアの先には、一人の男性が立っていました。


 身なりの良い人でした。どこかの貴族でしょうか?



「どちら様でしょうか?」


「初めまして。私はバリアン=バンディミックと申します」


「バンディミックさん……?」



 どこかで聞いたことがあるような……?


 男性は微笑みました。



「はい、四大公爵家の一つ、バンディミック家の現当主でございます。以後お見知りおきを、よろしくお願いします」


「……!」



 思い出しました。


 エインズ家と同じ、四大公爵家のバンディミック家。


 まさかその現当主、本人が……⁉


 何故?



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