【●年●月●日付新聞朝刊】
二日前の夜中に発見された身元不明死体について、警察捜査による新たな進展があったことが分かった。
その内容を記す前に、件の身元不明死体の発見時の状況を再掲する。
二日前の夜中、日時としては●月●日●時頃、三十代の男女が王都の中心を流れているレヴィル川のそばの道を歩いていた時のことである。
男女が会話をしながら歩いていると、暗い川面に何かしらが浮かんでいるのを男性が発見した。最初は流木や誰かが投棄した粗大ゴミだと思ったそうだ。
それは川を流れていたが、男性が見ている間に川縁近くに引っ掛かったそうだ。その付近には街灯魔法具が灯されていて、その明かりがそれを照らし出していた。
遠くからそれに気付いた男性は女性にそのことを伝えて、気になった男性は、不気味がる女性にその場に待っているように言った後、その漂流物の正体を確認しに向かった。
そしてそれが人間の死体だと気付いて、慌てて警察に通報したとのことだった。
以下はその男女に取材した際の言葉である。
男性。
『いやぁ、びっくりしましたよ。彼女と観劇の帰りで、これからどこかのレストランにでも食べに行こうかと話していたら、川の向こうから何かが流れてくるのが見えたんです。レヴィル川は王都の中心を流れる大きな川で、景観を損ねないようにゴミや汚れは綺麗にされているはずですからね。気になって見に行ってみたら、アレでしょう? 思わず腰を抜かしてしまいましたよ。彼女には格好悪いとこ見せちゃったな』
女性。
『ええ、彼と観劇の帰りに食事に行こうかと話していた時に、彼がアレに先に気付きました。私はよく分からなかったのですが、私は不気味だったからやめましょうよと言ったのですけど、彼が確認しに行ってしまって……うわぁっ⁉って彼が声を上げたので、私も慌てて向かったんです。アレを見た瞬間、私も腰を抜かしてしまいそうになりましたけど何とか耐えて、動けないでいる彼を引きずるようにして離れさせてから、彼が立ち上がれるまで待って、それから警察に通報しに行きました。はい、私も彼も通信魔法が使えませんから、近くのお店に駆け寄って、通信魔法具を貸してもらったんです』
その死体には頭部がなく、衣服の下にあるはずの手足も切断されていた。衣服以外に身元が分かるような物は身に付けられておらず、分かったのは妙齢の女性の胴体だけの死体だということだけだった。
警察が記録探査魔法で死体の情報を調べようとしたが、死体には何らの情報も残されていなかったという。
おそらく死体の情報は記録抹消魔法によって消されていて、その魔法を行使した魔力の痕跡も消されたのだろうとのことだった。
その為、警察の捜査は非常に難航していたのである。
そして先述したように、その事件に進展があった。
昨日の夕方から夜にかけて、その死体の手足部分だと思われる身体の一部が王都の各地から発見されたのである。
警察は発見者に事情聴取をおこない、手足に関しても記録探査魔法を施したが、やはり胴体と同じくあらゆる情報が抹消されていた。指紋や掌紋も消滅されていて、警察は復元しようとしているが、復元を妨害する魔法が掛けられているらしく復元が難航しているようである。
そんな捜査が難航している中、日付が変わった深夜、つまり日付的には本日に、警察にとある家族が姿を見せた。
彼らはドロパウト男爵家であり、最近保釈されたばかりの娘のデリー=ドロパウトが失踪した為、まさかと思って警察署を訪れたそうである。
警察がドロパウト男爵家族に死体を見せたところ、家族はその場で泣き崩れたそうである。
着用していた衣服こそ異なるものの、手足のほくろの位置や形、大きさが同じだとの話だった。
現在、警察はドロパウト男爵家族及びその使用人から詳しく事情を聞き、それらを参考にしつつ、死体がデリー=ドロパウトの可能性を考慮して捜査を継続している。
また一方では、保釈中の者が唐突に失踪したことについて、警察の内外で批判が寄せられている。
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