【ジグソウ元伯爵の後悔】 3
[●年●月●日]
今朝、家に警察がやってきて、ベリンダ=ジグソウが昨夜逮捕されたことを聞かされた。
よりにもよってエインズ公爵家の第一令嬢を殺害しようとしたらしい。
あまりのことに私は膝から崩れ落ちそうになってしまった。
呆然としている私の横では妻が床にへたり込んでいて、顔を手で覆って泣き崩れていた。
ベリンダは逮捕される際には気絶していたそうだが、気絶から目覚めた後、留置所や警察の取り調べ時には意味の分からないことを喚き散らしていたらしい。
その為、警察はベリンダを一旦精神鑑定するとのことだった。
ベリンダの今後については、その鑑定の結果によって変わってくるだろう。
異常ありと見なされれば、彼女は精神病院に送られて、警察と医師の監視の元で生活することになる。
異常なしと診断されれば、終身刑を言い渡されて、余生を刑務所で過ごすことになる。
いずれにしろ、ベリンダがエインズ家のお方の前に姿を見せることは、もう二度とないはずだろうとのことだった。
それ以外のことも色々と警察に聞かれた気がするが、呆然としていた私の耳には届いていなく、記憶には残っていなかった。
私の息子がベリンダと結婚していることから、もしかしたら私達にも処罰が及ぶのではないかと恐れた。
しかしエインズ家も警察も、あくまで殺害を企てて実行に移したベリンダだけを処罰するつもりのようだった。
私達は確かに姻戚ではあるけれど、それだけの理由で責任を負わせることは出来ないとのことだった。
一般庶民の常識であれば、その判断は正しいのだろう。
それでも私は、私達は、エインズ家の寛大さに感謝の念を抱かずにはいられなかった。
王家も無視出来ない権力と財力の持ち主であるエインズ家のご令嬢を狙ったのだ、本来ならば一族郎党、末代まで処罰されてもおかしくなかったのだから。
[●年●月●日]
私達はいま住んでいる家を離れて、王都から程近い郊外へと引っ越すことにした。
本当は知り合いの全くいない地域に移住したかったのだが、息子への面会に行く必要がある関係上、郊外へ引っ越すのが私達に出来る限界だった。
私達は周囲の人々の視線が気になったのだ。外を歩いている時、周りの人々がひそひそ話をするのが、私達のことを話しているのではと不安になってしまうのだ。
だから、私達はなるべく人のいない場所へと移り住むことにした。
だがそれでも妻は家の中で塞ぎ込んでしまい、私もなるべく外出は控えて引きこもりがちになった。
破産した後になんとか見つけた仕事も失ってしまっていた。
いまはまだなけなしの貯金を切り崩して生活出来てはいるが……。
家の中に引きこもり、塞ぎ込む妻を見ながら、これからどうすればいいのかと私は絶望していた。
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