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【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】  作者: ナロー


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【学園生:クーイ=クエル】 2


 学食からの帰り、キャロルとカトリーナが渡り廊下を歩いていると、庭園のほうから声が聞こえてきた。



「おいテメー無視してんじゃねーぞ! この俺様がわざわざ話し掛けてやってんだぞ!」



 キャロルとカトリーナ、および周りにいた何人かの学生がそちらを見る。


 一人の大柄な男子が、ジョウロを持つ男子に掴み掛かっていた。


 ジョウロを持っているほうはさっきキャロルが見掛けた男子であり、彼は落ち着いた様子で声を出した。



「これは話し掛けているんじゃなくて、絡んでいるんじゃないですか?」


「どっちでもいいんだよ! いいから金寄越せって言ってんだよ! じゃなきゃパンと飲みもん買ってこい! 俺は腹が減ってんだからな!」


「なるほど。恐喝とパシリですか。こんなに目立つ大声を上げて」


「ハッ! 先公がやってくるってか⁉ 上等だぜ! 先公くれえ俺様がブッ殺してやんよ! なんせ俺は滅茶苦茶強えーからな!」


「井の中の蛙、か」


「アァッ⁉ 買わず⁉ 買わねえってのか⁉」


「知識もなければ耳も悪い」


「テメー馬鹿にしてんのか⁉」



 大柄な男子が拳を握る。ジョウロを持つ男子に殴り掛かろうとしたとき、端から見ていたキャロルが見かねて声を掛けた。



「貴方達、喧嘩は駄目ですよ!」


「ちょ、ちょっとキャロル⁉」



 拳を止めて、大柄がキャロルのほうに振り向いた。


 ジョウロを持つ男子も彼女のほうに視線を向けている。


 周囲の注目を一身に受けるなか、キャロルは毅然としていた。彼女の背には、隠れるようにして怖々としているカトリーナもいた。


 大柄がキャロルに怒鳴り声を上げた。



「何だテメー⁉」


「私はキャロル=エインズ、エインズ公爵家の第二令嬢です」


「ハッ、エインズ公爵家かッ! 知ってるぜ! この国で屈指の力を持っていて、この学園でも学園長やオーナーを動かせるくらいの怪物だってなァッ!」



 怪物って……私、そんなふうに思われてるの?


 地味にキャロルはショックを受けた。


 大柄はジョウロを持つ男子を突き飛ばすようにしてから、キャロルのほうへと近寄ってくる。


 カトリーナはさらにキャロルの背に隠れたが、キャロルは依然堂々と毅然とした態度を保った。


 キャロルの前に立った大柄が顔を近付けて、睨みつけて言う。



「テメーが怪物ならなァ、俺はそれを狩る勇者ってところよ! いくらテメーが金と権力に物を言わせた所で、この俺の実力の敵じゃねーんだよ!」



 それは実力ではなくて暴力じゃあ?


 キャロルがそう思ったとき、



「それは暴力って言うんですよ。お前は勇者でも何でもなく、力任せに暴れるだけの蛮勇だ」


「アァッ⁉」



 大柄が振り返る。


 言ったのはジョウロを持つ男子だった。彼は続けて言う。



「いや、猿と言った方が良いかな。違うか、それだと猿に失礼だ。猿はお前なんかよりもっと賢いからな。喧嘩を吹っ掛ける相手を選ばないお前は猿未満だ」


「ンダとッ⁉」



 大柄が再びジョウロを持つ男子に迫って、その顔を一発殴り飛ばした。



「「っ!」」



 キャロルとカトリーナ、および騒ぎを聞きつけて集まっていた周囲の者達が目を見開く。


 ジョウロを持つ男子は地面に倒れることこそしなかったものの、唇か口中を切ったのか、口の端からわずかに血を流していた。また殴られた衝撃でジョウロを手放してしまっていた。


 大柄が勝ち誇ったように言った。



「ハッ! いまのを避けられねーようなら俺の敵じゃねーな! ザコはザコらしくビビって震えてろってんだよ!」



 大柄が振り返り、渡り廊下のほうへと歩いていく。



「邪魔だ! 散れ! ザコ共が! この俺の邪魔すんじゃねーよ!」



 川を割るようにして周囲の者達が道を空けて、その間を肩を揺らしながら大柄が歩いていく。キャロル達はその背中を見ていた。


 大柄が遠くに行った頃、ようやくのことで騒ぎを聞きつけた教師達が駆けつけてきた。



「何だ⁉ 何があった⁉」


「先生っ、遅いですよっ」



 カトリーナや周りに残っていた者達が事情を説明するなか、キャロルは殴られた男子に近寄っていく。


 その男子は地面に転がるジョウロを拾っていた。



「大丈夫ですか、怪我……」


「…………」



 男子はキャロルを見たが、すぐに視線を逸らして、ジョウロを花壇の近くに置いた。


 男子は血を拭おうとはせず、口からは未だに血が出ている。


 キャロルはハンカチを取り出すと、彼の口元にそっと触れた。


 彼がびくっとして、びっくりした目でキャロルを見た。



「血、出ていましたから……」


「……ありがとう、ございます……」



 お礼を言ったものの、彼はそのハンカチを取ると、キャロルに背を向けて、



「あまり無茶はしない方が良いですよ。例え強力な家だとしても」



 忠告するようにそう言って、早足でその場を去っていった。


 その背中を、キャロルは見つめていることしかできなかった。




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