第47話 再び異世界へ
20分後。
島に在中している医者の手を借り、四人の血を集めると、すぐにまた扉の向こう側へとスミレは戻った。今度は扉をしっかりと閉める。目でも閉まっているのを確認して振り返ると、そこにはにこやかな顔をしたヴァンが立っていた。その後ろには鍵の塔。
「やあ。ご苦労様。スミレくんのおかげでスムーズに事が運んだよ。ありがとう。私も忙しい身なのでね。本当に助かった」
「いえ」
感謝をされているのに、素直に喜べないのはなぜなのか。
「さてと、では後は最後の儀式だね。とりあえず、貴船の直系四人に渡すものと、後は少し小さめの石になるけど渡せる範囲だけ持って来た。なんせ、新たな鍵を作るのに大量の貴煌石を使ってしまったからね。あまりないのだよ。さて、シリン彼らの血だ。では頼むよ」
「はい」
シリンは前に一歩踏み出る。
今回儀式に参加するかの問いはない。
自分たち側の人間の為だから、強制参加なのか。それとも聞く前から答えが分かっていたのか。
(もしかしたら、単純に時間なのかもしれないわね)
シリンが腕を振る。軽やかな音が1つ。
音楽はない。ない筈なのに、前の舞よりも重く、張りつめている。併せて場の雰囲気も。
塔を作った時、開ける時ともまた異なる。舞。
回る。手足を伸ばし、動きは鋭く、早く。早く。
床を蹴る。高く。
跳ねる。跳ねる。
高まる、気。
高まる、圧。
高まる。高まる。
そこで、シリンは血を塔の頭上に向け、放つ。
一つ。二つ。三つ。四つ。
容器を投げ捨てる。割れたガラスの音。
それさえ、組み込まれたようで。
血は小さな小さな球体になり、塔を囲む。
廻る廻る廻る。
シリンも廻る。塔を囲み。
激しく鳴る。鈴。
廻る廻る廻る。
廻って。一斉に塔へと吸い込まれた。
と、同時に。激しい鈴、一つ。
鎮まる。空気が緩む。
「終わった?」
知らず詰めていた息を、スミレは一気に吐き出した。
「ああ。これでまた貴船は扉の守護者になった」
途端来る、虚脱感。
前回ほどではないにしろ、かなり精神を削られた。
ヴァンは塔に近付くと、下の膨らみの中央、少し上のところを押した。するとそこが軽い音を立てながら開く。彼はそこに手を入れると、石を取り出した。
それを丁寧に白い袋に入れると、ズボンのポケットにしまった。
「オム、貴煌石を持ってきてくれ」
その声と同時かと思うくらいに、袋を抱えたオムが入って来た。
ヴァンはそれを受け取ると、袋ごと塔に入れる。
「これでよし」
それからスミレに向き直る。
「いいかい。あちらに帰って、一月したら、あちら側の塔の同じ部分の戸を開けてごらん。石は青く染まっている筈だ。その石を貴船一族に配ってほしい。その際に、古い石を必ず回収して、同じ場所に入れて欲しい。こちらで浄化して再利用するから」
「わかりました。でも、その役目は私でなくともいいのではないですか?」
「そうだね。今は貴船の直系四人は、この塔に触れる。けど、今回の不手際をした当事者に、この役をやって欲しくない。第三者である、君にやってもらいたい。そうすることで、きっと貴船も気持ちが引き締まると思うからね」
この男やっぱり鬼だ。身内の恥を身内内で解決させず、敢えて人目に晒して更に戒めるとは。
恥と屈辱を忘れさせないという事か。
「わかりました」
しかしこれについてはスミレは口を挟めない。ヴァンの言う通り、スミレは巻き込またとは言え、部外者だ。粛々と受けるだけだ。
「スミレ、すまないが、後少し付き合ってくれ。扉を再度開けるのに、シリンはエネルギーを補給しなければつらい。その時間を使って、アゲハのケアなど、もう少し話しておきたいんだ」
「承知しました」
「では場所を移そうか。時間は有効に使おう」
ヴァンは軽い足取りで歩き出した。
本日は短め。すみません。




