第37話 敵襲
急展開です!
次いで、響く爆音。
「な、なに!?」
楓とスミレは、不安に顔を見合わせた。
と、そこに入口から榊が飛び込んでくる。
「楓さま! 今何者かが、島内に上陸! 屋敷内にも侵入し、攻撃を仕掛けてきております!」
「なぜ、上陸されるまで気づかなかったの?!」
「わかりません! ただ今はそれを追及してる暇はありません! 流さまが今応戦しております! 楓様は今のうちに避難を!」
片膝をついた榊が叫ぶ。
「私だけ逃げる訳に行かないわ!」
「危険です! 敵は何者かわかりません! どうか避難を!」
「私だって、貴船の一員です! ここを守らなければ! この扉は厚い! 閉めれば、そう簡単には破れないでしょう! 榊は流お兄様の援護を! 行って!」
「わかりました! 扉の前に人を残して行きます!」
説得は困難と見てとったのだろう榊は、外に飛び出していく。
(敵!? 攻撃って!?)
説教どころではない。いったい何が起こっているのか。
急展開についていけない。
スミレが混乱している中、楓は扉に歩みよる。
と、スカートのポケットから小刀を出し、親指を切る。
流れ出た血で、扉の内側に紋を描く。
瞬間。血が光り、扉の境目が消えた。
「さあ、これで当分は大丈夫でしょう」
ほっと息をつき、楓は後ろにいたスミレに向き直った。
「ごめんなさい。とんでもない日にスミレさんを呼んでしまったみたい。巻き込んでしまって、本当ごめんなさい。でも大丈夫、流兄様は強いわ。榊もね。すぐに敵を排除してくれるわ。それまでここで待っていましょう。外に出るより、ここの方が安全だから」
「は、はい。あの、楓さん、手を」
スミレはハンカチを取り出し、楓の親指に巻き付ける。
「楓さん、すごいですね。瞬時に状況を判断して、命令できるなんて。私なんて狼狽えて、ただお2人のやり取りを眺めてるだけでした」
「貴女を守らなきゃって思ったからよ。1人だったら、榊に従ってしまったかも。貴船としてはダメね」
そう笑った楓の手は、小刻みに震えている。
楓だって、怖いのだ。
(私だけじゃない)
そうわかって、スミレは少し気持ちが落ち着いた。
自分には何もできない。楓と大人しく、ここで闘いが終わるのを待とう。
「ふう。それにしても、これはスミレさんの説が、当たっていたのかもしれないわね」
「え?」
「ほら、さっき言ってたでしょう? 私が力を使えなくなった自体が、メッセージだって。危険を伝えるメッセージ。今日のこの襲撃を意味していたのかもしれない」
「ええ?!」
「だとしたら、敵の狙いは、貴船の力。その源であるこの部屋が狙いかも」
「そんな!じゃあ、敵はここに向かってくるんですか?」
「その可能性は大ね」
「じゃあ、ここが一番危険なんじゃ」
「大丈夫! ここは貴船の最深部よ。来るにしても時間がかかし、それまでに、兄様たちが敵をやっつけてくれるわ。安心して」
楓の力強い笑顔に、スミレは不安を和らげた。
そうだ。この部屋を守るために、貴船は常時備えている筈だ。
それを信じて、待つしかない。
神頼みではないが、塔に誰も怪我せず収拾できるよう、お願いしようと振り返った。
「え!?」
瞬間。スミレは目を疑う。
塔がぐにゃりと歪む。霞む。
(消える?!)
「楓さん! 塔が変!」
スミレは咄嗟に近付き、鍵の塔に手を伸ばした。
と。
刹那。スミレの手が塔の側面を通り抜けた。そればかりでなく身体まで。
「ええ!?」
転がるように、スミレは塔の中へ。
「スミレさん!?」
後方より聞こえる楓の声にスミレの意識は、一瞬暗転した。
スミレの危機です!




