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第36話 貴船の最深部

やっと、やっと題名のキーワードが出てきました。長かった!

「妖精みたい」


 前を行く、楓だ。

 足取り軽やかに、跳ねるように進んでいく。

 白いワンピースだからか、余計に人外に見える。


 向かっていく先の廊下、いつしか板張りから白石へと変わっていた。

 どのくらい歩いたのかわからない。ほんの数秒なのか数分なのか。

 時間感覚がマヒしているようだ。楓の姿と相まって現実感が薄れてくる。

 この廊下自体がそのように作られていると言われたら、納得する。


「着きましたわ」


 振り返った楓の先。そこには大きな扉があった。色は青。

 観音開きの扉。複雑に絡み合っている蔦模様が芸術的だ。

 重そうに見えた扉は、楓がノブを引くと、ゆっくりと開いた。


「すごい」


 思わずスミレの口から、感嘆の声が漏れる。


 高く丸いドーム型の天井にはステンドグラスで飾られて、部屋全体が光であふれている。

 そして何よりも圧倒されるのは、壁一面の青。

 細やかに絡み合う蔓や花。すべてが青に染まっている。

 部屋の中央には、大きな四角垂のオブジェ。それも同じ青。

 高さは5メートルあるだろうか。表面はどこにも継ぎ目がない。それどころか傷1つない。


(吸い寄せられる。青)


 青に溺れそうだ。

 思わずオブジェに近寄り、手を伸ばした。

 その手を楓がやんわり押さえる。


「ダメ。これは貴女でも、触わらせてあげられないの」

「ごめんなさい。つい」


 スミレは慌てて謝った。

 それはそうだろう。きっとこれは貴船にとって重要なものなのだ。


「いいの。触れたいと思う気持ち、わかるから。私でも触りたくなるもの。これだけは私も触ってはいけないものなの。でも、これに触れるのを許されているのは当主だけ」

「これは?」

「鍵の塔と呼ばれてるわ」

「鍵というと、この塔自体が何か、どこかを開く鍵なの?」

「ええ、見て」


 楓が指差した先、それは鍵の塔の奥にあった。

 大きな扉。鍵の塔と同じ青。つるりとした表面には何も模様がない。

 そればかりか、なくてはならないものが、ない。


「あの扉、ノブがない。鍵穴もない」


 ノブがある筈のところは、丸い台座があるだけである。


「なるほど。あの扉を開ける鍵が、この塔なのね? だから鍵の塔。でも、こんな大きな塔をどうやって鍵として使うの?」

「それがわからないのよね」


 楓が可愛く小首をかしげる。


「え?」

「大昔、火事があって、その時に古い文献が殆ど焼失してしまったの。そのせいで、あの扉、開け方がわからなくなってしまったの」


 楓は、頬に手のひらを当てた。


「はっきりしていることは、貴船の役割は、この部屋を守ること。この部屋というより、あの扉とこの鍵の塔を守る事だと、理解してるわ」


 楓は塔を周り、奥の扉へと近づく。


「この扉はね、異世界につながっていると言われているわ。貴船はその扉を守る番人なの」


 これまた中二病的な単語が飛び出した。

 眉唾ものだと思いつつも、自分でも不可思議な体験をこのところ頻繁にしているので、複雑だ。

 況してや貴船の神聖な場所だ。あからさまに笑い飛ばせない。

 それに。

 この青の間に居る信じたくなる。

 流れる空気が明らかに違う。


「開いたことはあるの?」

「ないわ。何人も開けてはならないとされているの。この扉を開けようとするものを貴船は全力で排除するようにと教えられてるわ。貴船の異能は、本来この扉を守るための物なの。だから血族は皆、何かしらの能力持ちよ」

「全員?」

「ええ。直系に近い程、その能力は大きいわ。それはご先祖様がこの部屋を、この地を守ると約束をしたからだといわれているの」

「誰と?」

「それはもちろん、あの扉の向こうにいる人達とでしょう?」


 ニッコリ笑って告げる楓。

 どうにも嘘くさく感じるのは、内容が内容だからか。はたまた楓の話し方からか。


「実際、この扉押しても開かないし、引くにもノブがないし」


(やってみたんだ。やってみたのね)


 この扉は触っていいのか。怒られなかったのか。

 スミレは内心で突っ込みを入れる。


「やっぱり、鍵がないと開かないのかもしれませんね」


 ただの飾り扉なのでは、という疑問は心に置いておく。


「やっぱりそう思う? あ~あ。火事がなかったら、正しく伝わっていたのに。残念」

「口伝されていないんですか?」

「そうなの! それも廃れちゃったのよ! もう先祖何やってるって感じよね!」


 楓がなんだか、随分砕けてフレンドリーになっている気がする。

 というか。今思ったが。

 今楓が話してくれた事柄は、貴船のトップシークレットではないのか。

 さらりと話されたから気づかなかった。


「か、楓さん、これ私なんかに話してしまっていいんですか?」


 スミレは恐る恐る尋ねた。


「んー。スミレさんが話さなければ大丈夫! あ、あとね。貴船の一族に子供が誕生すると、この頂点のくぼみに、守り石が出現するの」


 なぜスミレにそこまで話す。

 もう突っ込む気力もない。


「それで? スミレさん、この部屋で何か感じる? 視えたりする?」


 げっそりした気持ちを抱えつつも、楓に言われて改めて部屋を見回す。


「特に変わった感じはしません。強いて言うなら空気がとても濃厚な気がします」

「濃厚?」

「はい。清浄な空気すぎるというか。気のせいかもしれません」


 意識しなければ、気づかない程度だ。ただ雰囲気と片づけられない程度ではある。


「そんなこと言ったの、貴女が初めてよ。まあ、この部屋に入る人間が限られているせいもあるけど。やっぱり連れてきてよかった。新しい発見よね。これで兄様にここに貴女を連れて来たのがばれても、言い訳が立つわね」


 本当にそうだといい。そう願うばかりである。


「お兄様は、楓さんに似ているのですか?」

「どうかしら? 似てなくもないかな?」


 という事は、美形。それもかなりの。


「性格は固いわよ。融通が利かないの。カチンコチン」

「ええ!?」


 だとしたら、ここにいるのがばれたら、確実に叱られるではないか。


「楓さん! もうそろそろ、戻りましょう!」

「え~。せっかく来たんだから、もっとゆっくり見ててもいいのよ?」

「いえ! 本当! 十分拝見しましたから!」

「そう? じゃあ、戻りましょうか。榊が探しに来たら、うるさいしね」

「はい!」


(榊さん、もう少し楓さんのお兄様とお話しててください!)


 そうスミレが願った刹那、

 けたたましい警報が鳴り響いた。


自体は急展開です。明日も更新できますように。。

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