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第32話 眠る前のひと時

また短いです。すいません。

「はあ」


 異能の訓練後。すぐに寮に帰って来て。早めの夕食を取り、予習復習を済ませ、風呂に入り。

 身体をベッドに投げ出したのはいつもより、一時間ばかり早かった。

 これから読書でもしたいところだが、その体力がスミレには残っていなかった。

 クタクタである。

 ベッドにたどり着くのもやっとの状態だ。

 新垣に最初に言われた通り、力を使うと消耗するのかもしれない。

 もっと体力がつけば、もっと力が引き出せるのだろうか。

 片桐も夜は同じような状態なのだろうか。

 彼は叔母の会社のトレーニングを受けていたから、大分ましなのかもしれない。

 いや、それを見越しして更に過酷なメニューを汲まれているかもしれない。

 名取の楽しそうな顔しか、今は浮かばない。


 これから二年半こんな日々が続くのだろうか。

 “辺境の地”は自分にできる限り力を貸してくれた。

 その結果は、決してスミレの望み通りの結果にはならなかった。

 けれど、今度は自分はできる限り“辺境の地”に貢献しなくてはならない。

 この慌ただしさがスミレにはありがたかった。一人でいたら、結局叔父を助けられなかったと、気持ちが後ろ向きになってしまいそうだからだ。今はやらなければならない事がある。

 そして1人ではない。巻き込む形で申し訳ないが、片桐が一緒だという事が、スミレにはことのほか心強かった。

 まさかここまで彼と関わり合うことになるとは思わなかった。

 彼には迷惑だろうが、今は甘えさせてもらおう。

 片桐とはクラスが分かれ、今は放課後も別メニューでなかなか会えないが、一緒の学校で一緒の目的を持ち、励んでいる。それでも、土日など、授業がない時には、彼とお茶するくらいの時間は持てた。

 その事が、今のスミレにとって、楽しみであり、癒しでもあった。


 この学校は大きな休みの時以外、生徒は島の外に行かない。休みでも学校の敷地内で過ごす。届け出を出せば、外出は可能だが、島から出るために船を乗り、更に娯楽施設のある場所まではかなり時間を要するため、滅多に外出しないのだ。その為、施設内はかなり充実している。元々人と関わり合いたくなく、出不精のスミレには、今の環境は快適に近い。

 特待生になった事に加え、“辺境の地”に協力する事で、ここにいる際の費用はすべて無料なのだから、破格の待遇である。


 契約を結んだ後、工藤に聞いてみた。学園を卒業した後、制約はないのかと。

 工藤は少し困った顔をして言った。


 血筋ではなく、突然に発現した能力者は、10代をすぎると異能力はほとんどの人は徐々に失われていくのだと。だから、よほどでなければ、それ以降、契約で縛ったとしても益はないのだと。

 なくなれば、一般人。なくならなければ、この“辺境の地”の意義の通り、その異能者に生きるすべを一つでも多く与える。

 なるほど。納得である。

 だが、果たしてそこまで異能を持つ者たちの事を考えてくれて、組織として“辺境の地”にメリットがあるのだろうか。

 この組織は慈善事業ではない筈。組織に益がなくて、長く続くわけがない。

 能力の研究の他に、何か目的があるのではないか。

 そこまで考えて、スミレは考えをやめた。


 スミレたちに話した以上の目的が組織にあったとしても、今自分たちに影響がなければそれでいい

 へたに追及して不利益を被ったらたまらない。


 先ほどの考えに頭を戻す。

 自分はどちらだろうか。片桐は。


(10代をすぎれば、能力は消える? 消えない?)


 家族と疎遠になった原因の異能が消える可能性がある。

 消えた時、自分は果たしてどうするのか。

 消える可能性があるなら。

 異能を伸ばす努力をしない方が、いいのではないか。


 しかし、スミレにはその選択肢は残されていなかった。

 工藤もその選択肢をさせないために、あえて言わなかったのだろう。

 不利益を被る可能性を示唆しなかったと契約不履行を訴えてもいいのかもないが、組織はできるかぎりの力を貸してくれたし、今のこの環境もよいとなれば、文句をいったら罰があたるだろう。

 きっと組織にスカウトされた人間は同じように考え、組織に協力してきたのかもしれない。


「だめだわ。考えが散らばってきた」


 スミレはこれ以上考えるのを放棄し、目を瞑った。

 今日は一時間早く眠れることに感謝して眠ろう。



眠る前って色々考えてしまいますよね。。

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