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第25話 第3の予告

短くてすみませーん(汗)

(何か、聞こえる)


 微かな音。徐々にはっきりと。

 穏やかな水音。寄せては返す。太古から続く営み。

 瞼の裏に浮かぶは、眩しい日差し。小さく揺らぐ水辺。砂浜。


 誰かいる。

 誰?


 5歳位の女の子。青地に黒の小さい水玉のワンピース。

 顔に合わない大きなサングラスをかけて、はしゃいでいる。


(あれは私だ)


 スミレは思う。

 まだ奇妙な子供だと忌避される前の私。

 屈託なく笑えた日々。


 ここはそうだ。親族みんなで旅行に行った。由比ガ浜。

 父がいて。母もいて。兄もスミレの手を引いて、二人で遊んだ。

 この1年後自分は家族から見放される。そう最後の楽しい思い出。


 でもこの場面では家族はいない。

 これは早朝。確か早く目が覚めて、ホテルの部屋を抜け出したところを見つかった。

 そして、その人とともに浜辺に降りて、二人で遊んだ。


(誰だった?)


 あの不釣り合いなサングラスはその人のものだ。

 そう思っている間に、その人物が5歳の私に近付いた。


 ああ。そうだ。

 とても穏やかに笑う人だった。

 5歳の私は嬉しそうにその人の手を握り、振っている。

 その人とはその一度きりしか会った事がない。

 だからこの時まですっかり忘れてしまっていた。


 とても優しく笑う人で。強面の父とは違って、私はすぐにその人と仲良くなった。

 だけど、私は家族と折り合いが悪くなって。

 その人と会う機会もなくなってしまった。


 今も元気でいるだろうか。

 こんな私でもあの人なら、今も微笑んでくれるだろうか。

 また頭を撫でてくれるだろうか。

 それは贅沢な願いなのだろうか。

 そう思っている間に、異変が起こった。


 優しくしてくれたその人の足もと。渦が巻き、沈んでいく。

 5歳の私は恐怖で立ち竦む。


 沈む。沈んで行く。

 飲み込んでいく。

 優しいその人を。

 砂が飲み込む。もはや片手しかみえない。やがて指の先まで。


「やめて!」


 スミレはがばりと起き上がった。

 荒く息を吐く。


「夢?」


 胸がどくどくと音を立てている。

 いやな夢だ。自室のベッド。部屋は暗い。まだ夜は明けてないようだ。

 目をこすると、手に水滴がついた。


「涙?」


 スミレは俯き、両手で顔を覆い、首を振る。


「なんでこんな夢」


 今まで忘れていた筈の人。

 一度きりしか会ったことのない人。

 忘却の中にあった優しい思い出。

 今まで思い出しもしなかった。


 なぜ。今。

 しかも。

 砂に飲み込まれるなんて。


「いやな夢だわ」


 こういった夢は、必ず意味がある。

 そして当たって欲しくないのに、当たるのだ。

 これはおそらく最後の警告だ。


「それにしても、こんなにはっきりと視るのは初めてだわ」


 いつもは相手の顔など出て来ない。

 状況より判断してこの人だろうと推測するだけだった。

 だからこそ、“辺境の地”に協力を依頼したのに。


 なのに今回は。


「力を伸ばそうと決めたのが、原因?」


 わからない。どちらにしても。

「これは報告しないといけないわね」


 スミレは一つ大きく息をつくと、起き上がった。



体力がもう少しでよいから欲しいです(涙)

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